男たちのウイークエンド6
徹の手紙にはこうあった。
「バカな俺はこうなるまで
自分がたくさんの
ひとから家族を奪い
人生を壊してきたことに
きづけませんでした。
おまえたちはこんな俺を
かばってくれると思うから
黙って行きます。
藍子、この間の夜
言えなかったことを言います。
離れていた三年間で気づいたこと
です。
俺はずっと三年間家族のために
夢を追っていたと思って
いたけど違っていた。
俺には家族が夢だった。
だから俺はお前たちと一緒に
いられない。
それがお父さんの家族の幸せの
形です。
さようなら、元気でな。」
「バカ!!!
バカバカバカ!!!」
希は徹の手紙を読み
添付されていた離婚届を見て
叫んだ。
徹の失踪事件は
翌日、みんなの知るところとなり
はるさんたちは桶作家に
集まった。
「悪いのは山口という男のせいだ。
あの男に脅迫されたんだ」と
真人が言う。
みのりは「山口さんは悪くないって
手紙に書いてあるよ。悪いのは
自分だって・・一人になるのが
皆への償いだって」
という。
「なんとかするだろうね」と藍子。
「いつもの失踪だし
なんでもない、お騒がせしました」
と藍子は言う。
「明日にでも帰って来るからもしれない
し・・
以前も6年間も失踪したから
大丈夫、大丈夫、お茶でも
飲んで行って。」
希もその言葉に、お茶を入れて
みんなに笑顔で答えたが。
その後、自室で
泣いている藍子を見た。
徹の手紙には
離婚届が入っていて
徹は自分のかく欄には
書き込み、あとを藍子に託した。
その手紙をたたきつけるように
畳に投げ捨てる藍子。
「希・・・」
元冶が言う。
徹が渡してくれと
いっていたという。
紙袋がふたつ。
希の店の企画書だった。
そして参考書。
「迷惑やわ。
ごみ出すのも大変だわ」
「読まないのか」と圭太。
「わかってないからね。
お父さんは・・
うちの腕を眠らせていては
もったいないとか
人の夢を商売のために使う
ひどいひとやから。
うちらの気持ちも聞かないで
自分だけできめてしまう
なんて・・・
お父さんが一人になるという事は
うちらはお父さんに会えなくなると
いうことやわ
何でそんなことも考えないで・・・」
大声で
泣く希を圭太は抱きしめた。
桶作家では
元冶がふみに「お茶をくれ」というが
ふみは機嫌が悪い。
ふみはいままで
本気で怒ったのは
二度。
「結婚のとき大事に持ってきた
着物を祭りの法被に着ると言って
切り刻まれた時。」
「いらんやつだと思ったから・・・」
「二度目はその法被を隣組の奥さん
にくれてやったとき。
そして新たに三回目が加わった
わいね。
希に企画書をいつ徹から
受け取ったのか」とふみがきく。
「あんなバカみたいな企画書より
徹をなぜ留めなかったのか。
柱にくくりつけても止めるべき
だった」とふみは怒った。
「あの企画書には徹の思いが・・・」
と元冶は話を始めた。
塗師屋では希が呆然としていた。
圭太が希に紙袋を二つ
もってきた。徹から受け取った
ものだった。
「これを読んでみろ」
「嫌だわ」
「お父さんは商売だけで店をやれと
いっていたわけではない」と
圭太が言う。
元冶の言い分は
「もうじき失踪するという男を
止めるなんて無理だ」といった。
希のケーキの話はそれなりに元冶に
伝わったらしい。
あの時・・徹が出て行くときだった。
徹は希がパティシエになるといったとき
うれしかったという。
「希のケーキのファン第一号は俺だ。
希のケーキには元気になる何かが
ある」という。
「東京にいたとき小さな希がケーキを作った。
そのころ、仕事がどんどんダメになっていた。
死のうかと思っていたという。
家に帰ると希がケーキを作っていて
食べたらもう一度だけ頑張ろうと
思った」という。
「救われたな。希のケーキに。
あいつのケーキにはそんな力がある。
すごいのよ、あいつは。
ね、おいしいでしょ、希のケーキ!!!」
そういう話だった。
圭太も徹の資料を見てそれを感じたらしい。
「希のケーキの腕を眠らせておくのは
もったいないというのは商売で
いっているのではない。
希のケーキの力を信じていたから
ではないか」という。
「希という名前は、夢を持てと決めつけられたと
いっていたけど
希自身がお父さんの夢なんじゃないか?
絶対に邪魔したくないから
消えたんではないか?」
希は資料をもう一度読んだ。
すると
手書きで
『希
世界一の
パティシエになれよ』
と
書いた紙があった。
あの日
徹は村を出るとき
元冶にその話をして
そして、出て行った。
見送ったのは
元冶と
一徹。
一徹は去っていく徹の後姿に
なにを思ったのか。
ずっと考え込んでいた。
それをしっているのは
みのりだけ。
希は女将さんの仕事をしながら
ふと・・・・
手を止めた。
希は自転車を走らせた。
**************
徹のあるべき姿が浮き上がってきた。
いままでは奥さんを困らせる
困ったご主人という
イメージだったけど
徹は山口の恨みという狂気に
家族を巻き込みたくないと
思ったのだろう。
そして、自分が今までやって
きて、何人もの人を
不幸にしてしまったことを
わびる気持ちで出て行った。
この切羽詰まった断崖絶壁の
人生観が徹を変えたと思う。
徹を変えて・・
徹がどうなるのか・・
それがこれからの楽しみなんだと
思った。
徹の夢である希は
パティシエになるべく
その運命を切り開いて
行くと思われる。
それからその先に
徹との交差点が
あるのだろうかと
いう楽しみができた。
で・・・山口君はどうなの?
で・・・高志はこれからどうするの?
不思議に思うけど高志の両親は
いるの?
徹の手紙にはこうあった。
「バカな俺はこうなるまで
自分がたくさんの
ひとから家族を奪い
人生を壊してきたことに
きづけませんでした。
おまえたちはこんな俺を
かばってくれると思うから
黙って行きます。
藍子、この間の夜
言えなかったことを言います。
離れていた三年間で気づいたこと
です。
俺はずっと三年間家族のために
夢を追っていたと思って
いたけど違っていた。
俺には家族が夢だった。
だから俺はお前たちと一緒に
いられない。
それがお父さんの家族の幸せの
形です。
さようなら、元気でな。」
「バカ!!!
バカバカバカ!!!」
希は徹の手紙を読み
添付されていた離婚届を見て
叫んだ。
徹の失踪事件は
翌日、みんなの知るところとなり
はるさんたちは桶作家に
集まった。
「悪いのは山口という男のせいだ。
あの男に脅迫されたんだ」と
真人が言う。
みのりは「山口さんは悪くないって
手紙に書いてあるよ。悪いのは
自分だって・・一人になるのが
皆への償いだって」
という。
「なんとかするだろうね」と藍子。
「いつもの失踪だし
なんでもない、お騒がせしました」
と藍子は言う。
「明日にでも帰って来るからもしれない
し・・
以前も6年間も失踪したから
大丈夫、大丈夫、お茶でも
飲んで行って。」
希もその言葉に、お茶を入れて
みんなに笑顔で答えたが。
その後、自室で
泣いている藍子を見た。
徹の手紙には
離婚届が入っていて
徹は自分のかく欄には
書き込み、あとを藍子に託した。
その手紙をたたきつけるように
畳に投げ捨てる藍子。
「希・・・」
元冶が言う。
徹が渡してくれと
いっていたという。
紙袋がふたつ。
希の店の企画書だった。
そして参考書。
「迷惑やわ。
ごみ出すのも大変だわ」
「読まないのか」と圭太。
「わかってないからね。
お父さんは・・
うちの腕を眠らせていては
もったいないとか
人の夢を商売のために使う
ひどいひとやから。
うちらの気持ちも聞かないで
自分だけできめてしまう
なんて・・・
お父さんが一人になるという事は
うちらはお父さんに会えなくなると
いうことやわ
何でそんなことも考えないで・・・」
大声で
泣く希を圭太は抱きしめた。
桶作家では
元冶がふみに「お茶をくれ」というが
ふみは機嫌が悪い。
ふみはいままで
本気で怒ったのは
二度。
「結婚のとき大事に持ってきた
着物を祭りの法被に着ると言って
切り刻まれた時。」
「いらんやつだと思ったから・・・」
「二度目はその法被を隣組の奥さん
にくれてやったとき。
そして新たに三回目が加わった
わいね。
希に企画書をいつ徹から
受け取ったのか」とふみがきく。
「あんなバカみたいな企画書より
徹をなぜ留めなかったのか。
柱にくくりつけても止めるべき
だった」とふみは怒った。
「あの企画書には徹の思いが・・・」
と元冶は話を始めた。
塗師屋では希が呆然としていた。
圭太が希に紙袋を二つ
もってきた。徹から受け取った
ものだった。
「これを読んでみろ」
「嫌だわ」
「お父さんは商売だけで店をやれと
いっていたわけではない」と
圭太が言う。
元冶の言い分は
「もうじき失踪するという男を
止めるなんて無理だ」といった。
希のケーキの話はそれなりに元冶に
伝わったらしい。
あの時・・徹が出て行くときだった。
徹は希がパティシエになるといったとき
うれしかったという。
「希のケーキのファン第一号は俺だ。
希のケーキには元気になる何かが
ある」という。
「東京にいたとき小さな希がケーキを作った。
そのころ、仕事がどんどんダメになっていた。
死のうかと思っていたという。
家に帰ると希がケーキを作っていて
食べたらもう一度だけ頑張ろうと
思った」という。
「救われたな。希のケーキに。
あいつのケーキにはそんな力がある。
すごいのよ、あいつは。
ね、おいしいでしょ、希のケーキ!!!」
そういう話だった。
圭太も徹の資料を見てそれを感じたらしい。
「希のケーキの腕を眠らせておくのは
もったいないというのは商売で
いっているのではない。
希のケーキの力を信じていたから
ではないか」という。
「希という名前は、夢を持てと決めつけられたと
いっていたけど
希自身がお父さんの夢なんじゃないか?
絶対に邪魔したくないから
消えたんではないか?」
希は資料をもう一度読んだ。
すると
手書きで
『希
世界一の
パティシエになれよ』
と
書いた紙があった。
あの日
徹は村を出るとき
元冶にその話をして
そして、出て行った。
見送ったのは
元冶と
一徹。
一徹は去っていく徹の後姿に
なにを思ったのか。
ずっと考え込んでいた。
それをしっているのは
みのりだけ。
希は女将さんの仕事をしながら
ふと・・・・
手を止めた。
希は自転車を走らせた。
**************
徹のあるべき姿が浮き上がってきた。
いままでは奥さんを困らせる
困ったご主人という
イメージだったけど
徹は山口の恨みという狂気に
家族を巻き込みたくないと
思ったのだろう。
そして、自分が今までやって
きて、何人もの人を
不幸にしてしまったことを
わびる気持ちで出て行った。
この切羽詰まった断崖絶壁の
人生観が徹を変えたと思う。
徹を変えて・・
徹がどうなるのか・・
それがこれからの楽しみなんだと
思った。
徹の夢である希は
パティシエになるべく
その運命を切り開いて
行くと思われる。
それからその先に
徹との交差点が
あるのだろうかと
いう楽しみができた。
で・・・山口君はどうなの?
で・・・高志はこれからどうするの?
不思議に思うけど高志の両親は
いるの?
