運命カカオ64%5
一子と言い争いになった。
圭太のことはもう、自分にとって
過去のことだという一子に
希はまだ圭太は一子を好きなのに
と思って、気持ちを止めようと
する。
一子は「希が付き合ったらいい」という。
「できたらそうしたい、けど」
と言いかけた時
美南が聞いていた。
「だったらなぜお兄ちゃんと付き合うって
いうのか」と希を非難した。

そして、
「最低」といった。

そんな最悪の状況で一子とは
けんか別れ、
美南とは
きまずい関係になり

落ち込んだ希は
暗い部屋のベッドの上で
ひとり
考え事をしていた。

そこへ文が入って来る。

「おったんかいね。

なしたん?」
「最低ねん
ほんとうにうちは
前にお母さんが・・・

自分の中に知らん自分がいる
といったけど
こんな自分なら
見つけたくなかった・・・。」

あっちもすき
でもこっちも
あきらめられないと
いう、よくばりな
本性か??

文は自分にもあったという。
今回47年越しの新婚旅行やというた
その意味を話す。
「弥太郎さんへの償いの旅やネン。」

弥太郎がもともと文の見合いあいて
だった
その前から文は元冶に惚れていた。
でも、ああいう愛想のない人だから
せめてその親友である弥太郎と結婚
してそばにおろうと思って
弥太郎と見合いをした。
いよいよ、式の日取りも決まったけど
どうしても元冶と結婚したくて
ねばって、ねばって
駆け落ち同然に結婚してもらったという。
「ひどい話や・・・。

うそやけどな。

普通に見合いして
普通に心変わりして
普通に婚約破棄した
だけや・・」

「普通に?」

それぐらいはやりかねん
と自分をそう見ていたので
あまり驚かないという。

「誰の心にものぞいたら
人に言えないものがどろどろと
ねむっている。
おまえだけではない。
飲みよし
アオサの味噌汁や・・・」

さっき文が話をするまえから
作っていた味噌汁を飲む
希だった。

文は「そんな汚い自分が嫌い
やったら、隠したらいい。
誰にも見つからないように
隠したらいい」と
いった。

「だが、自分にだけは隠してはダメや。
だれが知らなくても
ほんとうはここに
汚いものがあるということを
自分で認めておくことや。」

文は胸をたたいて、ここにと
いった。

「もがいたらいい
どうにかしても
60過ぎたら
皆笑い話やぁ。」

能登の桶作家では
藍子、一徹
みのり…元冶が
夕餉を終えていた。
元冶はショックで
お酒を飲んでいた。
「ごちそうさまでした。」

三人が食事を終えたとき
電話が鳴った。

元冶はあわてて電話を取った。
文と思ったのだろうか?

「だら、おれやわい」

「われ、人の嫁、かってにつれだし
とって!」
元冶は弥太郎が出たので怒った。

「文ちゃんは一緒にきたいというので
きたんや。」

「うそつけだら!」
と元冶は怒鳴った。
「何か言うとるか?
急に旅に出たのって
何か言うとるのかと
聞いているんや。」
「なにかっていうと
おまえとの暮らしがもう飽きたとか?
あはははは・・
安心せい。
文ちゃんが横浜に来たのはほかに
理由がある。」

「なんや?」
「自分で聞け!」
そういって弥太郎は電話を切った。

元冶は怒った。

希は気持ちの整理をしなくては
と大輔の部屋を訪ねた。

大輔は珈琲を入れてくれた。
「いれたてをどうぞ。」

「その前に話が」

「あとね、おみやげ!」
大輔は怒人か何かのお面を
つけてがおっと
いった。

希は「ごめんなさい」と
謝った。

「やっぱり・・・・」
と希は、いってそのお面をとった。

「もう一個あるよ」と言って大輔は
また、お面をつけた。

「大輔さんとは付き合われんげ。

ついこの間、うちのほうから
つきあってといったのに。
いうことではないけど。」

大輔はじっと希を見た

「他に好きな人がいるから」

大輔は「告白したの?
漆職人でしょ
いい雰囲気だったからさ
なんかやばいかなって
思っていたの。

いったの?彼に?」

「言うつもりはないけど。」

「このままでいいじゃん。
女の子は二番目に好きな人と
一緒になったほうがいいって。」

「うちはかまうげ」

「まじめだね」

「普通や」

大輔は今から山梨のクライアントの所へ
出張だといった。
「どうせなら前倒して釣りでもしてからと
思ったの。」

そういって大輔は身支度を始めた。
「あら、脱いじゃった・・・見る?」

希は「言うたからね」と
いって「つきあわれんさけね」と
叫んで
ドアの外に出る。
その間に、大輔は話を聞かないように
と思ったのか
「どうする?」
「2~3日帰らないから」
とか叫んで
二人の会話はぐちゃぐちゃになって
終わった。
希は外に出て
ため息をついた。

希の後ろに猫の声がした。
高志だった。

ライブのチラシをくれた。
「新曲がまだ・・・」

といった。

「どんな曲?」

「ラブソング・・」
「へぇ・・・・
恋っちゃ、難しいね。」

高志は希を見た。

大輔に断ってきた
といった。
「ばれとったよね。高志には。」
「・・・
言わんが?圭太に・・・」
「怖いよ・・・」

高志はじっと見た。


いよいよ、フランス菓子と
輪島塗のコラボの日となった。
大吾の店では
大忙しだった。
大吾が多数のフィエルテを作った。
運搬用に箱に
それをつめて
会場へ運ぶ。
美南と希はきまずい雰囲気は
そのままだった。

会場へケーキが運ばれた。
運搬箱を5箱ぐらい抱えると
前が見えなかったりする。

「気を付けてくださいよ
もう~~」と浅井が
いったけど

こいつが、足元が不安定で

つまずいて

こけて

箱をぶちまけて

ケーキを一瞬にして
台無しにしてしまった。

フィエルテである。

圭太が希に、フィエルテが全滅だと
連絡した。

希は「作り直すさけ
浅井さんには帰るように言って」と
いった。

しかし・・・
陶子がいう。

「作り直せないのよ。」
「はぁ?」
「チョコがないのよ。
フィエルテでつかう
カカオ64%のチョコが」


「だったら圭太の蒔地は?」


会場では弥太郎が圭太に言った。
「ケーキが間に合わなかったら
蒔地は展示から外す」といった。
****************
高志はいい雰囲気ですね。
希の気持ちをよくわかって
いたのかもしれない。
「いわんが、圭太に」
方言、勘弁してほしいけど
この意味・・・わかる?
「言わないの?圭太に」というた
のかな?
きっとそうだね・・。
この流れからして。
あははは・・・・。

で、高志のかくラブソング。
聞いてみたいですね。

大輔とは別れたとしても
圭太とは、その気持ちを
伝えることはできないと
希は思っている。

それで

いいのかも

しれない・・・。