再出発エンゲージケーキ5
いよいよ、一徹とみのりの結婚を
認めてもらう話し合いが始まる。
その日三人はかたい握手をした。

桶作家の台所では久美と藍子が
話している。
お互い子供の決意でびっくりした
年末年始だった。
「どう思う?」と久美が藍子に聞く。
「みのりちゃんがお嫁にきて
くれるのは嬉しいけど
少し早いかな」という。
すると聞いていた文が
「私が結婚したのは18歳の時
だった」といった。
文はというと
「子供の結婚に賛成反対とワーワー
騒ぐのは親の特権やから
好きなだけもめたらいい」という。

久美は、みのりの後にひとり男のが
いたが生まれる前にダメになった
という。
だからみのりを大事に育てた
のでそれが重いのかもしれないと
久美が言う。

やがて反対と賛成に分かれて
話し合いがはじめられた。

「おじちゃん、おばちゃん
まずは新年のご挨拶から。」と希。
そういって「あけましておめでとう
ございます」と
一同が挨拶をした。

真人が口を切った。
「いくら希ちゃんの頼みでも
この話は反対する」という。
「いきなり先制ジャブや」と
慎一郎がいう。
「一徹はいい子や。
かしこいし、こんな父親のもとで
よくぞぐれずに来たものだ」と
真人はほめたが、
徹は「なんてことを言う」と口をはさむ。

「ほやけど、今はだめや。
今は大事な娘を任せることは
できない。」

「うちもそう思う」と
希が言ったので
「はぁ?」と真人は言う。
「ディトレードで生活をしようと
思ったらコツコツ情報を収集して
勉強してそれでも運が悪かった
ら負け続けることもあるから。
収入も保証されてないし
肩書もない。
職歴にもならないし
転職も難しい・・」

だから条件付きで賛成すると希が言う。
その条件とは一徹が話をした。
「それは高校を卒業して
三年、ディトレードをして
しかしものにならなかったら
やめて普通の就職をする」と
いう。
一徹はそういって
「みのりさんには苦労を掛けない。
一生大事にするから
結婚を許してほしい」といった。

そして頭を下げた。
みのりも後ろにいる賛成派の
仲間たちも一斉にである。
大人たちは感動した。
「まこっちゃん」
と、徹は言う。
「一徹は俺を見て育っているから
約束は破らない。
三年でやめるというなら、必ず
やめるから・・」

圭太は、真人に「許してやってくれんけ」
という。
「みのりがこんなに頑固に思いを
通そうとしているのは
はじめてやがいね。」
洋一郎は
「ほうや、みのりかわいそうや」と
単純に言う。
希は
「大丈夫や。
キットディトレードに失敗して
地道な仕事に就くさけ。」
という。

「お父さん?」
久美が聞く。

じんわりといいムードになって
来た時だった。

文が「ほんなら
三年たってから結婚しても
いいのでは?」といった。

これで今までの説得が台無し
になってしまった。

「そうだ、三年待ってもまだ
若いから・・・」と。
「そうだ」、「そうだ」と
みんな言い始めた。

「墓穴掘っちゃったね・・・」
と大輔がつぶやく。
圭太は
「あんたは黙っとれま」
といった。

「文さん~~
もう少しやったがいに!!」
真人は
「あぶね~~わ~~
危うく一徹の作戦に乗せられる
ところやった。」と。
マキは
「三年あれば男の見極めも
つくしね。」
とあっさり。
みのりはついに発言した。

「いやわいね。
うちはできるだけ、早く結婚したいげん。
三年も待っとられんわいね!!!」

はるさんは、「結婚は勢いで行きたいとき
程よく考えたがいいのよ。
結婚する運命なら必ず
一緒になれるから」と。

みのりは早く結婚しないと
子供たくさん産めないと
いった。
9人産みたいという。

久美は思い出した。
息子を亡くしてしまったことで
落ち込んでいる久美に
みのりはいった。
自分がたくさん子供を産むから
と。
男の子を9人。
野球チームを作るからと
と。

「それやったらさみしくないね」と
久美は言った。

あの時の約束を思い出した。

「うち、お母さんみたいなお母さんに
なりたいから、
苦労するかもしれないけど
わたしは一徹と家族を作りたい。
たくさん、たくさん子供を産んで
にぎやかで楽しい家庭を作りたい
から・・・。
お母さんみたいになるのがうちの夢や
から・・・」

久美は泣いた。

あの時の約束のために
と思ったのか?

真人は、「こういう子や!!」
といった。
「こういう子や!!
こういう子なんや
みのりはこういうこなんやぞ」

一徹にいう。

「不幸にした絶対許さん。
すぐに連れて帰るから。

二人で必ず幸せになれや!!

分かったな。」

希も泣いた。
一徹も
泣きながら「わかりました。
必ず幸せにします」という。

「おとうさん、おかあさん
ありがとう!!」とみのりが言った。

洋一郎は
「やったがいえ
みのり、一徹」といって
皆で喜んだ。

一子は「みのりと一徹の
パーティをしよう」と
いう。

みんなで一徹を胴上げした。

大輔は「みんな家族なんですね」
と藍子にいう。
「いつもこうです。
ひとのことなのに、自分のこと
のように、泣いたり笑ったり。

しあわせです。
私たち」と
藍子は言う。

はるさんたちはマキちゃんと
一緒に家に帰った。

そして、一子は心に思って
いることを家族にいった。

そのころ桶作家の台所では
エンゲージケーキを希が作って
いる。

大輔は声をかけた。
「せっかくだから明日北陸を回って
帰る」という。

「君はこれからどうするか決めた?」

「今日の見てて思ったけどさ
腹をくくった人間て強いね。
つまり、覚悟だよ。」
希は考えた。

藍子が「ゴンタさ~~ん」と
声をかけた。
「文さんが車どうぞ使って下さい」
って。
そういって鍵を渡した。
その辺ドライブにいくらしい。
「来る?」と大輔が希に言うが
「結構です」と希は断った。
大輔は出て行った。
藍子は希が考え事をしている
ので「どうしたの?」
と聞く。
「何でもない」という希。

一徹たちはどこに住むのかという
話になった。
輪島かなというが
藍子はここにいたらいいという。
徹は東京にいくが
藍子は行かない。
そういった。
希は驚いて藍子を見た。
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いい話でした。
みのりは九人の男の子が
欲しいのですね。
そんな話をしたことも
ないのに。
ずっとその思いを持っていた
のですね。
おとうさん、おかあさんのそばにいて
たくさん子供を作って
野球チームができるほどに。
するとさみしくないからと
あの小さいみのりが母にいった
ことばは、心からの
真実だったということ
ですね・・。
そのことだけでも久美は慰められと
思いますが。

まさか、それが本当に実行されるとは。

一徹は
若くして早々と
九人の父親になる予定なのですね・・・
えらいなぁ・・・・
子育ては、久美も真人も
いてくれるから
きっと大丈夫だし、
親戚のようなご近所さんが
これほどたくさんいると
誰も知らん顔なんかしないだろうし。
人がたくさん出入りする家になるかも
しれないし・・・。

現実桶作家は津村家が来てから
にぎやかですよね。

さて

覚悟を決めたものは強い・・と
大輔がいったけど

希は

どうするのでしょうか????