危機的クリスマスケーキ4
素晴らしいケーキを考えられな
かったら、従業員はみんなくび。
店も潰すと断言した大吾。

希の部屋でのこと。
希は必死でケーキを考える。
こういうことは好きなので
どんどんアイディアが浮かんでくる。

それを浅井に見せると
「これはないです」と、あっさりと
却下するのだった。

「なぜ?」

大吾が作るケーキとは伝統的な
フランス菓子なのである。
たとえばデコレーションケーキ。
生クリームにスポンジの組み合わせ。
これはフランスにはないという。

希は驚く。

ショートケーキも日本人に合わせて
作られたものなのでそもそも
フランスにはない。

フランスの伝統的菓子というもの
ではない。

希はがっかりした。
何も知らない自分に。

「ほんなんけ・・・・・」
と。

「あの、盗まれたルセットのことなんです
けど・・・」
「浅井さん!!!
一緒にルセットを考えてください。」

希はアイディアは思いつくけど
基本的なことは何も知らないので
浅井の知識が必要となった。

「いいですけど・・・」
「ほんとけ!!」
「その前に話があるのですが」

「じゃ、行かんけ!」

「ちょっと聞いてくださいよ」
希は浅井を置いて出て行った。

一方能登では
ちょっとした
不安要素がくすぶっていた。

徹のことである。

そのために三人のおっさんは
誰が、藍子にちゃんと言うかと
といって
お互い、おまえが言えと
譲り合っている。

はるさんは、何のことなのか
ちゃんと言えと
いう。

徹のことだというと
藍子は「なにか?」と反応した。
三人のおっさんは
希の話から刺激をうけて
徹に、でっかい夢をまた見たら
どうだ?と炊きつけたことを
藍子に詫びた。

はるさんたちは、大変だ、やめさせ
なくてはという。

その徹は、パソコンに向かって
あの能登のフレンチレストランの話を
もう一度、挑戦していた。

あれこれと計画書をつくっている。

「ほうやったんけ。
道理で最近機嫌がいいと思ったわ。」
と藍子が言う。

「でっかい夢を追っている徹さんは
生き生きして楽しそう・・。」


はるさんは、「そんなこと言うてたら
また失敗して痛い目に合うよ」と
藍子にいうが、藍子は
今までと違って徹底して徹の夢に
反対する様子はない。

その夜、徹はフレンチレストランの計画書
をプリントアウトしたものを
みている。
そこへ藍子が入って来る。

一徹は友だちのところに泊まると
いっているという。
毎日受験勉強しているのかと
まの抜けたことを言う徹。
一徹は、受験をするとは
言ってないのに。

藍子は、フレンチレストランの計画書
が見えるといった。
「ああ、これは別に、考えているだけだから」
と徹は言う。
「おれはもういい、これからは希が夢を追う
番だって・・。

これからはこうなるのかな?
子供たちが出て行って
夫婦二人になるってことかな。

年寄りが意味もなくそこらに座って
いる・・
俺たちもそうなるのかな。」

そういうので、藍子は「自分に言い聞かせて
いるみたいだ」といった。

徹は「それが一番いいことだ」と
いう。


さて、アイディアをまた書いた希。
浅井は、「ありがちですね。
大したアイディアでませんね。
無理ですよ、あのシェフが気に入る
ルセットを作るなんて。」
という。
浅井は、やる前から負け戦である。
なぜかというと・・・。
浅井は希に、あの人はどう言う人がしって
いるのかと聞く。
希は知らない。
あのひと、つまり大吾は
この業界では第一人者である。
フランス帰りの巨匠である。

単なるお菓子バカと思っていた
希はびっくりする。

その巨匠は、働かざる者、食うべからず
と輪子に言われて、
天中殺でウエイターをしていた。

「早くいえ、さっさと言え」
と注文をお客に聞く。
また、
「さっさと食べろ、かたづかない」と
客に言うので、ブーイングがでている。

巨匠もかわいそうなものだ。

希は、びっくりして、そんなすごい人が
納得するようなケーキを考えるなんて
無理だといった。

浅井は「だからそういっているでしょ?」
と、いう。

浅井は、この窮状でやけになった。
パテシエをやめるという。
田舎に帰る。
どこにも雇ってくれるところなんて
ないし・・・という。

希は自分の力不足に何も言えない。

浅井は寝てしまった。

希はどんなにルセットを書いても
納得がいかない。
ふと、美南の言葉を思い出した。
「うちは、何年も家族でクリスマスを
したことがない。
お客さんがうちのケーキを食べて
喜んでくれるから
かろうじて、我慢してきたけど。」

希は、夜の海岸を歩いた。
ベンチに座ってため息をつく。


「あれ?なにしているの?
こんな夜中に。
俺は夜釣り・・。」

大輔が現れた。

希は、緊急事態なので大輔の
のんきな話に
「ぬるいやつだ」と思った。
そして立ち上がってそそくさと
離れようとした。

「なにしているの?」としつこく聞く。

「ケーキのルセットを考えつかない」と
言った。

「うまいケーキなんてたくさんあるのに
何で君がわざわざ作らないと
いけないのか」とまた聞く。

「禅問答している場合ではない」と
希は言った。

大輔は真面目に聞いてるのにと
いって、希が抱きしめていた
ケーキのノートを
取り上げた。

「一子のシュークリーム・・・」
あの、帽子のシュークリームだ。
「お母さんのキャロットケーキ・・
あ、これすごい
魔女姫ケーキ!!」

希は「これは東京でお父さんが誕生日に
買ってくれたものだ」といって
ノートをひったくった。
「ちゅうか、かえさんかいね!!!」

大輔は「東京?」と聞く。

希は出身は東京であること。
小学校の時能登に夜逃げしたこと。
を話した。
「もう帰るさけ!」
希はどんどんと歩いて行った。
大輔は、
「能登で生まれたんだね。
キミの作るケーキはみんな。」
といった、
希は、ふと大輔を見た。
「寒いね。俺もカエろ。」
大輔は希をいてさっさと前を歩く。

希は立ち止まった。
「ほれかもしれん・・・」

希は走って帰った。

大輔は「どれ?」という。

そして部屋に帰った。

あの時持ってきた
リュックの中から
荷物を出していた。

能登の食材を使おう。
そう思ったのだった。

大輔は「能登?」と聞く。

荷物の中から目指す食材が
でてきた。

「あった・・・・。」

そして希は台所で
ケーキを作り始めた。

大輔はさすが手つきがいいと
いいながらのんきに見ている。

「もう寝たらどうですか?」
「別に明日何もないし。」
「働かんかいね!!!」

そして、大輔は
ケーキのふちを指で
すくって食べた。

「芋とキーウイフルーツは
会わないじゃないの?」

希は、はっとした。

「今年の生活費は夏までに稼いだし
後はのんびりと暮らすの。」

のんきであるゆえんはそうである
らしい。

「あのね、ゴンタ~。」

大輔は「ゴンタって俺?」
と聞く。

「悪いこと言わんさけ
人生もっとまじめに考えた
ほうがいいよ。

地道にコツコツ
目標をもっていきな。」

希はケーキを作りながら言う。

大輔は、「そういう男が好きなんだ」
と聞く。
「いるんでしょ?能登に。好きだった人。」
美南と話をしていた元彼のことを
聞いていたらしい。
「なんだっけ?
漆を塗っている職人さん?」
「関係ないやろ」
「やっぱりあれ?
無口で頑固で『自分不器用ですけん』
みたいな?」

「日本一
日本一ちゅうて
暑苦しい男やわいね!!!」

「お?」

希は、そのひとが夢を見ることを
思い出させてくれたことを言った。

「へぇ・・・・
まだ、好きなの?」

「終わった話やわいね
もう彼女おるさけ。」

希は手を休めることなくケーキを
つくった。

その頃、その圭太は
職場で寝ていた。
時計の音で起きた。

「よし!!」

そして
漆を塗り始めた・・・。

希も・・・ケーキを作る。

そして朝・・・・

「できた・・・・。」

希のケーキができた。

******************
全くのど素人である希である。
そりゃ、大吾が怒るのも
無理はない。
あっちは苦労して修行した業界の
巨匠である。
それが、趣味のケーキづくりしか
したことのない希から
アイディを考えますからと
言われたら、プライドがめちゃめちゃ
である。
しかし、お菓子づくりしかできない
巨匠が中華のウエイターをしても周囲に
迷惑だろう。

ポイントは浅井と、大輔と
美南である。
美南は家族みんなでという
思いをもっている。
何とかかなえさせてあげたいと
思うが。
大輔はチクチクと禅問答を
するかのように希に絡んでくる。

その中で能登の食材をつかうこと
をひらめいた。

浅井からはフランス菓子の要素について
学んだ。
理解ではできないが、自分が作った
ものがフランス菓子であるかどうか
浅井のアドバイスが欲しいのだ。

この能登の食材を使った
ケーキ・・・・
当たるか?????

あの盗まれたルセットの
ケーキは、希少価値のマダガスカル産
のチョコレートをふんだんに使い・・
である。

一方、こちらはまるでフランスではない
が、能登の食材を使った・・・
芋とキィウィ?
なんだろう???
希少価値の
チョコレートではないわけだ。