横浜激辛プチガトー1
希が決心をした。
人の応援だけではなく
自分が頑張りたいと。
藍子は巣立っていこうとする
娘を応援した。
「わたし、パティシエになりたい。」
この夢をかなえるためには
まず何をするべきか?
希はパティシエになるためにコースを
シュミレーションした。
製菓学校へ行くコースが最も
普通であるが・・・お金がかかる。
どこかに就職して修行をするという
コースになる。
就職するとしても
お店とか
ホテルとか
レストランのデザート担当とか
ある・・・
「こまかいね・・・」と藍子
「夢に対してもくそまじめや」と
一徹。
「ほんで希はどこにするつもりや?」
と文が聞く。
希は「個人の店」という。
「おばあちゃんが技術を覚えるには
個人の店が一番やというとったさけ。」
「それはアットホームでさみしくないね」
と藍子が言うと
文が「実力をつけてその店を
のっとってやろうと
思わんかいね」という。
一徹は「俺やったらメーカーの
工場やな。
商品開発に専念するわ」という。
元冶は「これは希の夢だから」と
いうが、
徹は「ホテルがいい」という。
「金持ちの目にとまって
キミ、お店を出しなさいなんてね・・
それだったら経営は俺に任せたら
いいんだしさ・・・ね??」
と
徹は人の分の夢にも大きすぎる。
希にはやっかいなことが残っていた。
それは、紺谷課長に辞表を提出して
納得してもらうことだった。
案の定、辞表を提出すると
「今度はだれの差し金だ?」
と聞く。
「今度は私の気持ちです」といった。
「理由は?」と
紺谷は納得がいかない。
「入所して、8か月やそこいらで
どうしてパティシエになどなりたいと
言うのかが問題だ。
おまえはあれか?就職してから
自分の進路を考えるのか。」
紺谷は希の周りをぐるぐると
回りながら話をする。
希は「スミマセン」と何度も言う。
「とりあえず給料をもらいながら
別の道を探すのか?」
キミ子と徹は壁の上から顔を出して
様子をうかがっていた。
紺谷がぐるぐる回るということは
相当怒っているらしい。
「応援するために就職したといったな。
目の前の熱い思いを応援するために
就職するといったな。」
希は目が回りかけていたので
「すみません・・・回らずに話を」と
いったが・・・
「数か月もしない間にやめるなんて
無責任な奴に何ができる。」
「すみません、申し訳ありません
でした!!!」
希は深々と頭を下げた。
「新人一人育てるのにどれだけの
手間と時間がかかると思う?
おまえの給料は市民の税金や。
これまで払ってきた八か月分は
どぶに捨てたということだ。」
徹はいてもたってもいられずに
「ちょっとまってくださいよ」と
口をはさんだ。
「紺谷君!!!
いえ、紺谷さん
おっしゃりたいことはよくわかります。
いろいろ悩んで出した答えなんです。
はじめてです。
自分のわがままを言うのは。
確かに社会人としては失格だ。
それは私が父親としてわびます。
だから
気持ちよくいかせてやってください。」
頭を下げる徹だった。
「お父さん・・・・」
紺谷は、希に「こいつを見ろ」と言った。
「でっかい夢を追っているはずの男が
どうしてこんなところにいる?
俺はおまえが父親を反面教師に
して将来を見据えてここに入って来たと
思った。
買いかぶりだったな。
所詮蛙の子は蛙だ。」
徹は「そこまで言うことはないでしょ」と
いうと、紺谷は
「あんたはだまっとらんかいね。」と
なまった。
感情が入っている。
「こうなりたいなら別に止めんわいえ。
好きにしまし!」
紺谷は部屋から出て行こうとした。
希は「ありがとうございました」と
大声で言った。
紺谷は立ち止まった。
「ここで働かせてもらった
おかげで夢を応援する素晴らしさを
知りました。
応援してくれる人の気持ちを知った
さけ、これから目標に向かって
頑張れます。
世界一のパティシエになって
恩返ししますさけ・・・
今まで本当にありがとうございました!!」
紺谷はそのまま部屋から出て行った。
徹は世界一と希が言ったので
驚いた。
「希が初めてでかい口をきいた・・」
キミ子は「希、がんばるましや。」と。
「キミさんにもお世話になりました。」
「待て、」と松谷がいう。
「おれが二人分の仕事をひとりでするん
かいねいえ。」
「だから、うるさいんだよ、君は!!」
と徹だった。
希は市役所を出た。
そして、回れ右をして市役所に向かって
深々とおじきをした。
朝市の食堂で希の退職祝いをした。
みのり、一子、洋一郎だった。
みのりは「こうなったらいいな」と
思っていたという。
洋一郎は「夢嫌いな希がよく決心を
したものだ」という。
一子は「地道にコツコツ頑張るまし。」
と。
「ありがとう」と希は言う。
で、修業はどこでという話
になった。
希は、まだ決めていない。
金沢かな
大阪かな・・・
東京かな・・・
などという。
一子は東京という言葉に
反応したが・・・。
幸枝はフランスで修業をしたら
いいという・・しかし・・・
圭太に電話をしてそのことを話すと
フランスで修業もいいのではという。
希には飛行機代が問題で、出してくれるかと
現実的な話をして、電話を切ろうとした。
「抱負とかないのか」と圭太は聞くが
希はまだ修行をする店も決まって
いないという。
ケーキ屋はたくさんある。
圭太は自分はじいちゃんがいる
からここにしたわけではないという。
「初めてここで輪島塗を見た感動で
ここに決めたという。
原点が弥太郎の店だった。
だからここにした」という。
希は「原点か」と考えた。
一子は、希が大阪だの東京だの
に行くかもしれないという
話にショックを受けていた。
「どうしようマキちゃん、わたしより
先に希が東京へ行ってしまう。」
マキは「まだ、巻き返せるわいね。
この間のオーディション受かったら
東京へいけれるんやろ?」
黙る一子にマキは、「落ちたの」と聞く。
一子は泣き出した。
ため息をつくマキ。
夕飯時に、徹は市役所をやめるときの
希の様子を逐一みんなに報告した。
「頑張らないとね」と藍子は言う。
希は店は昔誕生日に魔女姫ケーキを
買ってきた店にするという。
あの幸せな味を忘れられないから
という。
「このケーキどこでこうたか
教えて!!」
徹は「え???」という。
忘れている。
一徹がPCで探し始めた。
「あのころは不動産会社だったんやろ?
どの辺でやってたん」
「会社が有楽町で
取引先が五反田?
品川???
いや、渋谷かな」
「うちから遠い店やと思う。
ケーキに保冷剤がたくさん入って
いたから・・・」
と藍子。
「そうだ、あの時行ったのは
横浜・・・
で・・・△△で
それから・・・●●にいって・・」
「ああ、あの店でしょ?
ともみとかという女の子がいた・・」
「そうだ、その店のマスターがすごい
おいしいケーキ屋が
桜木町にあるって・・・
聞いたんだ!」
まだその店は営業をしていた。
希は早速その店に就職の問い合わせ
の電話を入れた。
話は素早く進んだ。
「大丈夫です。
行きます
絶対に行きます!」
と返事をした。
マスターが面接をするという。
でも、彼は今週末出張に行くので
それまでに来てほしいという。
明後日である。
帰ってきてからだとクリスマスの
繁忙期にはいるので、それまでに
面接をしたいと・・・
「明後日??」
「明後日までに行かないと・・・
横浜!!!」
希の決意は形になりつつあった。
*****************
退職をするということは
確かに裏切りである。
多くの期待を込めて人材として
採用したのに、一年も働いていない。
自分の道を見つけたから
やめるというのは紺谷には
理解できないほど無責任と
思われた。
でも、わかってくれたと思います
けどね。
一子の気持ちは複雑で希に東京へ
さきに越されるかもしれないと
思うと我慢できない。
しかし、オーデションは落ちている。
このままだと夢をあきらめて
しまうしかない。
この年でオーディションは厳しい。
ほんとうなら高校入学時ぐらいでは
ないだろうか?
希は自分の原点となった店に
就職しようと決めた。
そこは東京ではなく
横浜だった。
能登からどれほど遠いことか。
そこへ一人で道なき道を
開拓しに行くのだった。
勇敢である。
この年齢はそれができるもので
ある。
希が決心をした。
人の応援だけではなく
自分が頑張りたいと。
藍子は巣立っていこうとする
娘を応援した。
「わたし、パティシエになりたい。」
この夢をかなえるためには
まず何をするべきか?
希はパティシエになるためにコースを
シュミレーションした。
製菓学校へ行くコースが最も
普通であるが・・・お金がかかる。
どこかに就職して修行をするという
コースになる。
就職するとしても
お店とか
ホテルとか
レストランのデザート担当とか
ある・・・
「こまかいね・・・」と藍子
「夢に対してもくそまじめや」と
一徹。
「ほんで希はどこにするつもりや?」
と文が聞く。
希は「個人の店」という。
「おばあちゃんが技術を覚えるには
個人の店が一番やというとったさけ。」
「それはアットホームでさみしくないね」
と藍子が言うと
文が「実力をつけてその店を
のっとってやろうと
思わんかいね」という。
一徹は「俺やったらメーカーの
工場やな。
商品開発に専念するわ」という。
元冶は「これは希の夢だから」と
いうが、
徹は「ホテルがいい」という。
「金持ちの目にとまって
キミ、お店を出しなさいなんてね・・
それだったら経営は俺に任せたら
いいんだしさ・・・ね??」
と
徹は人の分の夢にも大きすぎる。
希にはやっかいなことが残っていた。
それは、紺谷課長に辞表を提出して
納得してもらうことだった。
案の定、辞表を提出すると
「今度はだれの差し金だ?」
と聞く。
「今度は私の気持ちです」といった。
「理由は?」と
紺谷は納得がいかない。
「入所して、8か月やそこいらで
どうしてパティシエになどなりたいと
言うのかが問題だ。
おまえはあれか?就職してから
自分の進路を考えるのか。」
紺谷は希の周りをぐるぐると
回りながら話をする。
希は「スミマセン」と何度も言う。
「とりあえず給料をもらいながら
別の道を探すのか?」
キミ子と徹は壁の上から顔を出して
様子をうかがっていた。
紺谷がぐるぐる回るということは
相当怒っているらしい。
「応援するために就職したといったな。
目の前の熱い思いを応援するために
就職するといったな。」
希は目が回りかけていたので
「すみません・・・回らずに話を」と
いったが・・・
「数か月もしない間にやめるなんて
無責任な奴に何ができる。」
「すみません、申し訳ありません
でした!!!」
希は深々と頭を下げた。
「新人一人育てるのにどれだけの
手間と時間がかかると思う?
おまえの給料は市民の税金や。
これまで払ってきた八か月分は
どぶに捨てたということだ。」
徹はいてもたってもいられずに
「ちょっとまってくださいよ」と
口をはさんだ。
「紺谷君!!!
いえ、紺谷さん
おっしゃりたいことはよくわかります。
いろいろ悩んで出した答えなんです。
はじめてです。
自分のわがままを言うのは。
確かに社会人としては失格だ。
それは私が父親としてわびます。
だから
気持ちよくいかせてやってください。」
頭を下げる徹だった。
「お父さん・・・・」
紺谷は、希に「こいつを見ろ」と言った。
「でっかい夢を追っているはずの男が
どうしてこんなところにいる?
俺はおまえが父親を反面教師に
して将来を見据えてここに入って来たと
思った。
買いかぶりだったな。
所詮蛙の子は蛙だ。」
徹は「そこまで言うことはないでしょ」と
いうと、紺谷は
「あんたはだまっとらんかいね。」と
なまった。
感情が入っている。
「こうなりたいなら別に止めんわいえ。
好きにしまし!」
紺谷は部屋から出て行こうとした。
希は「ありがとうございました」と
大声で言った。
紺谷は立ち止まった。
「ここで働かせてもらった
おかげで夢を応援する素晴らしさを
知りました。
応援してくれる人の気持ちを知った
さけ、これから目標に向かって
頑張れます。
世界一のパティシエになって
恩返ししますさけ・・・
今まで本当にありがとうございました!!」
紺谷はそのまま部屋から出て行った。
徹は世界一と希が言ったので
驚いた。
「希が初めてでかい口をきいた・・」
キミ子は「希、がんばるましや。」と。
「キミさんにもお世話になりました。」
「待て、」と松谷がいう。
「おれが二人分の仕事をひとりでするん
かいねいえ。」
「だから、うるさいんだよ、君は!!」
と徹だった。
希は市役所を出た。
そして、回れ右をして市役所に向かって
深々とおじきをした。
朝市の食堂で希の退職祝いをした。
みのり、一子、洋一郎だった。
みのりは「こうなったらいいな」と
思っていたという。
洋一郎は「夢嫌いな希がよく決心を
したものだ」という。
一子は「地道にコツコツ頑張るまし。」
と。
「ありがとう」と希は言う。
で、修業はどこでという話
になった。
希は、まだ決めていない。
金沢かな
大阪かな・・・
東京かな・・・
などという。
一子は東京という言葉に
反応したが・・・。
幸枝はフランスで修業をしたら
いいという・・しかし・・・
圭太に電話をしてそのことを話すと
フランスで修業もいいのではという。
希には飛行機代が問題で、出してくれるかと
現実的な話をして、電話を切ろうとした。
「抱負とかないのか」と圭太は聞くが
希はまだ修行をする店も決まって
いないという。
ケーキ屋はたくさんある。
圭太は自分はじいちゃんがいる
からここにしたわけではないという。
「初めてここで輪島塗を見た感動で
ここに決めたという。
原点が弥太郎の店だった。
だからここにした」という。
希は「原点か」と考えた。
一子は、希が大阪だの東京だの
に行くかもしれないという
話にショックを受けていた。
「どうしようマキちゃん、わたしより
先に希が東京へ行ってしまう。」
マキは「まだ、巻き返せるわいね。
この間のオーディション受かったら
東京へいけれるんやろ?」
黙る一子にマキは、「落ちたの」と聞く。
一子は泣き出した。
ため息をつくマキ。
夕飯時に、徹は市役所をやめるときの
希の様子を逐一みんなに報告した。
「頑張らないとね」と藍子は言う。
希は店は昔誕生日に魔女姫ケーキを
買ってきた店にするという。
あの幸せな味を忘れられないから
という。
「このケーキどこでこうたか
教えて!!」
徹は「え???」という。
忘れている。
一徹がPCで探し始めた。
「あのころは不動産会社だったんやろ?
どの辺でやってたん」
「会社が有楽町で
取引先が五反田?
品川???
いや、渋谷かな」
「うちから遠い店やと思う。
ケーキに保冷剤がたくさん入って
いたから・・・」
と藍子。
「そうだ、あの時行ったのは
横浜・・・
で・・・△△で
それから・・・●●にいって・・」
「ああ、あの店でしょ?
ともみとかという女の子がいた・・」
「そうだ、その店のマスターがすごい
おいしいケーキ屋が
桜木町にあるって・・・
聞いたんだ!」
まだその店は営業をしていた。
希は早速その店に就職の問い合わせ
の電話を入れた。
話は素早く進んだ。
「大丈夫です。
行きます
絶対に行きます!」
と返事をした。
マスターが面接をするという。
でも、彼は今週末出張に行くので
それまでに来てほしいという。
明後日である。
帰ってきてからだとクリスマスの
繁忙期にはいるので、それまでに
面接をしたいと・・・
「明後日??」
「明後日までに行かないと・・・
横浜!!!」
希の決意は形になりつつあった。
*****************
退職をするということは
確かに裏切りである。
多くの期待を込めて人材として
採用したのに、一年も働いていない。
自分の道を見つけたから
やめるというのは紺谷には
理解できないほど無責任と
思われた。
でも、わかってくれたと思います
けどね。
一子の気持ちは複雑で希に東京へ
さきに越されるかもしれないと
思うと我慢できない。
しかし、オーデションは落ちている。
このままだと夢をあきらめて
しまうしかない。
この年でオーディションは厳しい。
ほんとうなら高校入学時ぐらいでは
ないだろうか?
希は自分の原点となった店に
就職しようと決めた。
そこは東京ではなく
横浜だった。
能登からどれほど遠いことか。
そこへ一人で道なき道を
開拓しに行くのだった。
勇敢である。
この年齢はそれができるもので
ある。
