情熱ミルフィーユ1
希がとの市役所に就職して
半年がたった。
希は能登の過疎化と高齢化
対策として移住定住の推進のため
体験ツアーを企画した。
能登で暮らすための体験が
できるというものだ。
それが話題を呼び、テレビ局
から取材が来た。
「こちらは津村さんのご家族です。」

徹と藍子は緊張して
「こんにちわ」といった。

津村家は八年前に移住してきたので
移住の先駆けとして紹介された。

「御苦労はあったのではありませんか?」

と聞かれ津村家はそれぞれが
思っていることが違うので・・・。

徹は。
「いいえ、全く。僕は家長として
家族をしっかり守ろうと決めていました
から・・・」

藍子は。
「夜逃げ同然だったのでとにかく必死でした。」
希は。
「住むところもなかったのですが・・
桶作元冶さんと文さんが・・」
徹は。
「でも、でっかい夢をかなえようと
言う思いは当時からありました」

文と元治にも取材が行く。

「人類は助け合いだから・・」
と文。
「で、希さんは今度は移住してきた
人のサポートをされるのですね。」

今日の体験ツアーメンバーを紹介する。

「山中です。」と中年男性。
「高槻です」。とやや若めの男性。
「岡野亜美っす・・」と、ラフなわかめの女性。
「安西です。」と、風采の上がらない男性。

「以上、外浦村からでした!」

と、取材が終わった。


その様子の報道を見て桶作家に集まった
いつものメンバーと移住希望の
メンバーたちはテレビの前で
わぁっとわいた。
・・・宴会?
だけではなく
ここで、能登の夕食を食べる体験。

大きな鯛が出てくる。
魚は豊富である。
そのうえ、野菜も豊富である。
文の畑で採れた野菜。
裏山のキノコ・・などが
並ぶ。

すると岡野亜美が「すみません
肉ないっすか?自分
魚も野菜もくえないんですけど。」

すると文が
「なら、食うな」という。
藍子は笑いながら
「皆さんはなぜ移住を考えたのですか」と
聞く。

山中は妻を亡くし子供が独立し
のんびり暮らしたいと思ったという。
高槻はデイトレードをやっている
株屋である。
パソコンと回線があればどこでも
できるので、何も東京でなくても
いいと思ったという。
岡野は自分は何もないという。
お金もないし、彼氏とも別れたし。
「何で」とマキが聞く。
「ダメンズけ?」
安西は人生に疲れたという。
要領が悪いから仕事もうまくいかないし
人付き合いもできないし・・
話し相手はインコの白ちゃんだけ。
その白にも逃げられた。
能登に来るとホッとしたと話す。
道を歩いていても近所の子供に
きもい、と指をさされないし・・

希はその話に
疑問を感じる。
「飲め、とりあえず
飲め!!」
誰かに言われて
安西は飲んで話の中にはいって
いった。

「いいな、こんなところで暮らしたら
しあわせだろうな・・・」と安西。

「あんた、まだ若いんだから
しっかりしよし」とはるは激励する。

安西は「こんなにやさしくされたのは
何年振りだろう」と泣き始めた。

「人生なんとでもなるさけ」

みんなで
「かんぱーーーーーい!!」

宴会となった。

そのあとかたづけの時だった。
みのりと一子が手伝った。
「大成功やったね、希ちゃん。」
みのりがいう。
「涙が出てきそうだった・・
手伝ってくれてありがとう。」
希は台所でかたずけをしながら
みのりにいった。
一子にも「ありがとう」といった。
「あの人たち移住してくるの?」と
一子が聞くが、希にはまだ
わからない。
「そうだったらいいけどね」という。
明日は輪島塗の体験で圭太に
案内してもらう約束だった。
でも、一子は圭太から来るなと
言われたという。
みのりは
一子が持っていた
携帯にプリクラが
あるのを目ざとく見つけた。

圭太と撮った
という。
なかよく、写って
いる。
お花までまき散らして。

「で・・・・もうしたの?」
とみのりが聞く。

一瞬、空気が真剣になる。

「キスよ。」

「あ、電波が通じた」と
一子は言って出て行った。

その頃圭太は明日の体験の準備をして
いた。横には洋一郎がいた。
洋一郎はまだ、一子と圭太のこと
が納得いかない。

「本気なんか?」

と聞く。

圭太は「本気や」という。
そんなにあってないくせにと
洋一郎は言う。
まるでストーカーである。
いつもいつも毎日毎日
会うわけにはいかない。
圭太は修行中である。
一子に本気であっても
漆にも本気である。
もしかしたら、漆のほうが強いかも
しれない。

洋一郎は、漁師の子であるが
昔、魚の瞼のない目が怖くて
魚を見ることができなかった
話をした。
小学校一年生の時だった。
一子に、意気地なしやら
弱虫やらいわれて
ののしられた。

圭太は「ののしられて好きになったんか?」
と聞く。

なんと一子はみんなに内緒で特訓に付き合って
くれたのだった。
魚の目を見る特訓だ。
実は、一子は強がりだが
本当は弱い人間だ。
弱いことを知っているからこそ
攻撃されたら負けるから自分から
攻撃していると
洋一郎は言う。

圭太は「知っている」といった。
「話をしているとそうなんだと
わかった」という。
「それが新鮮だった。」

圭太は洋一郎にいった。
「本気で付き合っている。
でも今は漆にも本気だから
そんなに余裕はない。
そこは勘弁してくれ・・」と。
洋一郎は「わかった」と言って
明日の準備の手伝いをした。

そして体験の日。
工房の井田が輪島塗の
レクチャーをしている。
希は、その様子を見にやってきた。
何層も何層も重ね塗りをして
100年も200年ももつ
漆器ができる話をしている。

そして実際に漆の塗りをしてみる。
その塗り方を安西に教える圭太。

「難しいね」と安西が言うと
「一人前になるのに10年20年かかり
ますから」と圭太は言った。

「若いのに、遊びたいとか思わないの?」
と聞くと、圭太は「それよりも
漆のほうが楽しい」という。

希はその日のお菓子をミルフィーユにした。

何層も重ね塗りをする輪島塗になぞらえて
ミルフィーユを作ったといった。
岡野亜美は「何層も重ねる必要があるのか」と
聞く。
「口に入れたら同じではないか。」

希は、「何層も重ねているから
サクッとしておいしいのです」と
いった。

それから亜美は、「漆もこんなに重ね
なくても、塗ってしまえば
同じだ」という。

圭太は「ええ?」と聞き返したが。
希が止めた。

その横で安西がまじまじと漆を見て
いた。
聞くと、漆器に感動しているらしい。
「漆器の職人になるために輪島に来る人
もいるのでいかがですか」と
希は勧めた。
「もう少し詳しく聞きたい」という安西に
圭太に説明してもらおうと
希は思った。

しかし、まだ修行のみの圭太。
希は「安西さんは能登でどんな仕事を
したらいいのかと、考えているから」
と説得する。
安西は「面倒なことを言ってごめんね」と
圭太に言った。

安西は日本の伝統産業の継承は
このようにされているのかと
感動したという。
地道に圭太のような若い子が
遊びもしないで何十年も
修行して継承されていく。
こういう仕事なら人生をやり直せる
気がする。
もう年だからどこまでできるか
わからないけど・・・
そういう安西に圭太は
「話だけ」といった。
「おれにできることなら」と
答えてくれた。

安西はお礼を言って立ち上がった。
その時、一枚のレシートを落とした。
その合計は
252,000円とあった。
これは・・・・???
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希の計画した移住定住は
このように体験することで
理解を得られていっているのだと
思った。
何も知らずに能登に来た希にとって
こういうツアーがあったらいいなと
思ったのだろうか。
紺谷課長にあれほど
向いてない。
やめろと
言われておきながら
頑張る希。
希はまだ、圭太が好きなのだろうか。
圭太は、まだ、希が好きなの
では?と思ったりする。
男の子だから
二人ぐらいは一度に好きになれる
だろうけどね。
しかも、希と一子では
タイプが違う。

この先、どうなるのだろう??
この二人の関係・・・・。

で、安西さん・・
なにか

ひとくせ

ありますか?