卒業ロールケーキ5
藍子は、はるが一子のオーディション
雑誌を隠していたことを
みつけて藍子につげたらしい。
藍子は、希が一子と一緒に
オーディションへ行ったと
思ったらしい。
文は真ん中で聞いていて
「一子は脇が甘い」といった。
「え?」誤解されていた。
希は金沢にいったのに
一子は金沢から東京へ。
何と一緒にオーディションをうけた
と勘違いしている。
「ほんとうのことをなぜいわないの。
反対されたらこそこそ行くの?
ほんとうに行きたいなら正々堂々と
親を説得するぐらいではなくては
何をしてもダメだ」と藍子は言った。
「うん、ダメだった。」
希が言うとそこにいた家族が
驚いた。
藍子は「だれの反対にあっても
やりとおすという根性が
必要だ」という。
徹はいたたまれずにいった。
「俺は出て行くから。」
「なにもわかってないよ」
「六年も留守にしたことだろ」
「六年も留守にしたら今度こそと
思った。だから六年も我慢して
きたのに。
私たちのことを嫌いになったのか
もう、家を捨てたのかという不安を
抱えてずっと待っていたのに。」
と藍子。
「なのに、やっぱり駄目でしたと
いってのこのこ帰って来るなんて
どういうこと?
地道にやると言っても続かないで逃げ出す。
夢も中途半端。
ほんとうに心底ダメ人間でいいの?
負け犬でいいの?」
そこに元冶が徹に「立て」と言った。
徹が立った。
腰に手を当てている。
この間から腰を痛めていた。
いきなり塩水をたくさん
くむからこうなると
元冶と文は言う。
「腰を痛めては塩づくりはできない。
だから東京で稼ごうと
思ったのか」と聞く。
「元はと言えばこうなったのはおれの
せいだ。
ここまで逃げてきて役に立たないことを
思い知らされて東京へ行った」という。
「塩田では働けないし
何とかしなくてはと思った」という。
「家に帰れないぞ」と思ったという。
「で?」と藍子。
「結局帰ってきたけど、かってに思いつめて
家族に心配かけて。」
と一徹。
「悲劇の主人公か?」と文。
「ほんとうにダメなんだね。
お父さんは。」
と、希。
徹は「どうせ俺はダメ人間ですよ。
がんばってもダメで
おまえたちの顔を見たくなって
帰ってきてしまって。
結婚した時の約束も
果たせないで・・。」
痛いといいながらも
徹は部屋から出て行った。
約束とは何かと希が聞くと
結婚したら苦労はさせない。
いつも笑顔でおらせるってという。
「ほんとうに普通だ。」と一徹。
「さっきまで忘れていた。」と藍子。
若いとき藍子は事情があって
一人暮らしでお金もなくて。
1980年のことだった。
人とかかわることが嫌だった藍子は
引越し屋さんの仕事なんかをしていた。
仕事仲間から終わったらディスコへ
行こうと言われても返答もしない
女だった。
かけもちでヒーローショーの
ぬいぐるみを着たり。
「想像もつかんわ」と一徹。
藍子は
ストレスがたまったらボクシングジムで
発散させていた。
「ボクシング?ボクサーになりたかった
の?」と希。
「強くなりたかったのね。」
そのころにお父さんと会った。
徹は小さいスポーツ用品店で働いて
いた。
「珍しいですね女性でボクシングなんて。
そのグローブ重そうですね。」
と徹が話しかける。
「買いませんよ。」
「いえ、営業ではなくて。つかいづらくないかな
と思いまして。」
「受けて見ますか?わたしのパンチ。
使いづらいかどうか。受けて見ますか?」
むしゃくしゃしていた藍子は
徹とボクシングをして勝った。
「弱い癖にと思ったけど
すっきりしましたか?」と聞く徹。
それがきっかけでお父さんと
デートを始めた。
早くに両親を亡くしたけどいつも明るくて。
そのうちにでかい夢を実現するという。
それが何なのかわからないけどという。
すると藍子はそんな話を聞いて
楽しくなったという。
そして、徹は言った。
「結婚してください。
絶対苦労はさせません。
いつも笑顔にします。
お願いします。」
藍子はうなずいた。
「あの言葉、まだこだわっていたのね。
お父さんはバカでためな人で
根性なしで
だけど、お父さんが好きなんだ。
お父さんのバカな話を聞いて一緒に
笑っているほうだし
強くなれたし。
希も本気で決めたことだったらいい。
いつでもお母さんがついているから」と
いった、
翌日のこと
希は・・・
徹にいった。
「もう一遍だけ家族にしてくださいと
謝ったらどう?」
「許してはくれないよ。」
「ゆるすわいね。お母さんは。
いままでだってずっとうちらを守って
くれたんやさかい。」
といったが。
「ただ今~~~」家に帰った希。
「郵便来とったよ、机に置いている。」
と文。
郵便は市役所からだった。
一次試験合格。
希はロールケーキを作った。
「皆で食べよう」というと
みんな笑顔になった・
おいしいという。
「本当にうまいけ?
どんな風に?」
「希の作ったケーキはいつも
おいしいよ。」
「このケーキ、幸せ貧乏家族と
いうのよ。」
「うちにぴったりだね。」
みんな笑った。
その日、希はあることを決めた。
*******************
そう、かわいい娘が作ったケーキなら
みんなおいしいという。
笑顔になる。
あの審査員のいうとおり
自分の作るケーキは
ほんとうにおいしいケーキではなく
それは、家族の間のことだけ
なんだ。
希はそれを強く感じたのか。
きっとケーキ職人になりたいと
いう夢をすてるだろう。
藍子と徹のこんがらがった
状況を聞くにつけ
地道にコツコツと
お金を貯める人生を
選んだほうがいいと
希は、思ったのではないだろうか。
藍子は、はるが一子のオーディション
雑誌を隠していたことを
みつけて藍子につげたらしい。
藍子は、希が一子と一緒に
オーディションへ行ったと
思ったらしい。
文は真ん中で聞いていて
「一子は脇が甘い」といった。
「え?」誤解されていた。
希は金沢にいったのに
一子は金沢から東京へ。
何と一緒にオーディションをうけた
と勘違いしている。
「ほんとうのことをなぜいわないの。
反対されたらこそこそ行くの?
ほんとうに行きたいなら正々堂々と
親を説得するぐらいではなくては
何をしてもダメだ」と藍子は言った。
「うん、ダメだった。」
希が言うとそこにいた家族が
驚いた。
藍子は「だれの反対にあっても
やりとおすという根性が
必要だ」という。
徹はいたたまれずにいった。
「俺は出て行くから。」
「なにもわかってないよ」
「六年も留守にしたことだろ」
「六年も留守にしたら今度こそと
思った。だから六年も我慢して
きたのに。
私たちのことを嫌いになったのか
もう、家を捨てたのかという不安を
抱えてずっと待っていたのに。」
と藍子。
「なのに、やっぱり駄目でしたと
いってのこのこ帰って来るなんて
どういうこと?
地道にやると言っても続かないで逃げ出す。
夢も中途半端。
ほんとうに心底ダメ人間でいいの?
負け犬でいいの?」
そこに元冶が徹に「立て」と言った。
徹が立った。
腰に手を当てている。
この間から腰を痛めていた。
いきなり塩水をたくさん
くむからこうなると
元冶と文は言う。
「腰を痛めては塩づくりはできない。
だから東京で稼ごうと
思ったのか」と聞く。
「元はと言えばこうなったのはおれの
せいだ。
ここまで逃げてきて役に立たないことを
思い知らされて東京へ行った」という。
「塩田では働けないし
何とかしなくてはと思った」という。
「家に帰れないぞ」と思ったという。
「で?」と藍子。
「結局帰ってきたけど、かってに思いつめて
家族に心配かけて。」
と一徹。
「悲劇の主人公か?」と文。
「ほんとうにダメなんだね。
お父さんは。」
と、希。
徹は「どうせ俺はダメ人間ですよ。
がんばってもダメで
おまえたちの顔を見たくなって
帰ってきてしまって。
結婚した時の約束も
果たせないで・・。」
痛いといいながらも
徹は部屋から出て行った。
約束とは何かと希が聞くと
結婚したら苦労はさせない。
いつも笑顔でおらせるってという。
「ほんとうに普通だ。」と一徹。
「さっきまで忘れていた。」と藍子。
若いとき藍子は事情があって
一人暮らしでお金もなくて。
1980年のことだった。
人とかかわることが嫌だった藍子は
引越し屋さんの仕事なんかをしていた。
仕事仲間から終わったらディスコへ
行こうと言われても返答もしない
女だった。
かけもちでヒーローショーの
ぬいぐるみを着たり。
「想像もつかんわ」と一徹。
藍子は
ストレスがたまったらボクシングジムで
発散させていた。
「ボクシング?ボクサーになりたかった
の?」と希。
「強くなりたかったのね。」
そのころにお父さんと会った。
徹は小さいスポーツ用品店で働いて
いた。
「珍しいですね女性でボクシングなんて。
そのグローブ重そうですね。」
と徹が話しかける。
「買いませんよ。」
「いえ、営業ではなくて。つかいづらくないかな
と思いまして。」
「受けて見ますか?わたしのパンチ。
使いづらいかどうか。受けて見ますか?」
むしゃくしゃしていた藍子は
徹とボクシングをして勝った。
「弱い癖にと思ったけど
すっきりしましたか?」と聞く徹。
それがきっかけでお父さんと
デートを始めた。
早くに両親を亡くしたけどいつも明るくて。
そのうちにでかい夢を実現するという。
それが何なのかわからないけどという。
すると藍子はそんな話を聞いて
楽しくなったという。
そして、徹は言った。
「結婚してください。
絶対苦労はさせません。
いつも笑顔にします。
お願いします。」
藍子はうなずいた。
「あの言葉、まだこだわっていたのね。
お父さんはバカでためな人で
根性なしで
だけど、お父さんが好きなんだ。
お父さんのバカな話を聞いて一緒に
笑っているほうだし
強くなれたし。
希も本気で決めたことだったらいい。
いつでもお母さんがついているから」と
いった、
翌日のこと
希は・・・
徹にいった。
「もう一遍だけ家族にしてくださいと
謝ったらどう?」
「許してはくれないよ。」
「ゆるすわいね。お母さんは。
いままでだってずっとうちらを守って
くれたんやさかい。」
といったが。
「ただ今~~~」家に帰った希。
「郵便来とったよ、机に置いている。」
と文。
郵便は市役所からだった。
一次試験合格。
希はロールケーキを作った。
「皆で食べよう」というと
みんな笑顔になった・
おいしいという。
「本当にうまいけ?
どんな風に?」
「希の作ったケーキはいつも
おいしいよ。」
「このケーキ、幸せ貧乏家族と
いうのよ。」
「うちにぴったりだね。」
みんな笑った。
その日、希はあることを決めた。
*******************
そう、かわいい娘が作ったケーキなら
みんなおいしいという。
笑顔になる。
あの審査員のいうとおり
自分の作るケーキは
ほんとうにおいしいケーキではなく
それは、家族の間のことだけ
なんだ。
希はそれを強く感じたのか。
きっとケーキ職人になりたいと
いう夢をすてるだろう。
藍子と徹のこんがらがった
状況を聞くにつけ
地道にコツコツと
お金を貯める人生を
選んだほうがいいと
希は、思ったのではないだろうか。
