告白シュウクリーム3
紺谷圭太の祖父の家で
卒業後の話をしていた。
まれ、圭太、みのり、洋一郎、高志。
そこに、一子が息せき切って
入って来た。
なんと、金沢でモデルのスカウトにあった
という。
一子にとっては絶妙のタイミングだった。

驚く一同。

話し合いの場所を希のバイト先の食堂に
変えてた。
浮足立つ一子と違ってみんなの
顔は暗い。深刻だ。
一子は「高校を卒業したらモデルになる
ことになった」という。
「最初は仕事がないやろうけど
寮があるから家賃もかからない。」
うきうきしているが
みんな黙っている。
「なんなの?」
一子が聞く。

みのりは圭太に言ってと
合図をした。
圭太は、言えと
洋一郎に合図をした。
洋一郎は
おまえがいえと
高志に合図をした。
高志はじーーーーっと
希を見た。」
「うち?」

最後に残ったのは希だ。

一子はシュークリームを食べた。
「話がうますぎるやろ」と希が言うと
「うまい!!」という。
シュークリームのことだ。
「ほんとけ?」
「うん、うちの好みじゃないけど。」
「そんなうまい話詐欺かもしれない」と
洋一郎がはっきりといった。

「はぁ?うちがだまされるわけ
ないじゃないの。」
一子は呆れて言った。
「一番危ないやろ?東京に目がない
のだから」と洋一郎は、むきになっていう。
一子はモデルの写真を出して
「この子も、この子も
よう、東京の雑誌に載っている
売れっ子モデルやネン。
名前の電話もちゃんとつながった
し、所属もレッスンも別に
お金を請求されることはないし。」

洋一郎は「とにかくやめとけば」という。
「高志もそう思うやろ?」

高志は
ごそごそといった。

みのりが通訳をする。
「意見は保留や」って。

希は「東京ってそんなにいいところでは
ないと思うけど。能登のほうがよっぽど
いいよ」という。

一子は、「どこがいいの?
プライバシーはないし
うわさは早いし
隣のうちの晩御飯まで
しっとる
なんて、おかしいやろ。」

「東京砂漠は隣で人が死んでいても
気づかないのよ。」
と希が言う。

「人は少ないし、遊ぶところはないし。」

「なんでね。きれいな海がそこにあるがね。
東京にこんな海があったらみんな
お金を払ってでも集まって来るよ。」

どん詰まりになった一子は
ついに希を非難する。

「希にはわからない。風の人やし。
希は東京に住んでいたからそんなこと
言えるげ。
うちら土のものの気持ちは希たち
風のもんにはわからない。」

嫌な空気になった。

一子は、「東京へ行くから、親にばれたら
邪魔されるから、だまっていてよ」と
いった。

洋一郎は頭を抱えた。

圭太はそんな彼をじっと
みていた。

またまた神様にお願いしに
きた藍子。
賽銭も出さないでと文に言われた
ので、今日はいくら賽銭を
はずもうかと悩む。
10円か
五円か・・・
一円か・・・・


百円・・・・か・・

「お母さん!!!」
希が声をかけた。

その反動で藍子は
思いもよらず
100円玉を
賽銭箱に入れてしまった。

ふたりで100円の賽銭を
取り出す作戦に出た。
なかなか取り出すことができない。

「うちら、
やっぱり
風のひとかな?」

希はいう。

「土の人はこの土地に生まれて
どこにもいかない人。
風の人はよそから来て
また去っていく人。

もう七年も住んでいるし
言葉もすっかりこっちやけど
先祖代々ここにおる人から見たら
うちらっちゃ、風の人なんかね。」

希は脱力感で言う。
「土の人にあこがれるのか」と
藍子に聞かれて、「風のひとって
ふわふわしているみたいに聞こえる」
と希は言う。

「お互い憧れあっているのかも
しれないね・・。土も風も。」

そういわれてみればそうなのかも
しれないと希は思った。

「とりあえず明日は市役所に願書を取りにいく
から」と希は言う。
藍子は、「昔から希が公務員になりたいと
いっていたことで
希は偉い。言った通りになっている」と
ほめた。

しかし、希にはほかに夢があった。
ケーキ職人になる夢だった。

その話をしたら、圭太が「保険ばっかりの
人生だ」と、けなした。

すると藍子が「お父さんのこと」
といったとたん
一徹が通りかかり
「賽銭泥棒しとるんけ?」と
声をかけたので
驚いた二人は
取り出しかけた100円玉を
落としてしまった。


さて、こちらは蔵本一子。
家ではるから
東京へ行くことは許さないと
杭を打たれた。

「東京へ行くことは諦めた。
理容学校へ行くから」と
いった。

娘の変貌ぶりに驚く
はる。
「何たくらんでいるの?
おかしい。」とはる。
ところが
一子だけではなく
どうも、浩一の様子がおかしい。
こそこそしている。
慎一郎の家へ行くといって
でていった。
ある離れに徹が隠れている。
そこへ、慎一郎は
食べ物をもっていったの
だった。

慎一郎は
徹に「正直に話をしたら
いい」という。
「ここにいても仕方がない。」

しかし、「それができるものなら
とっくにやっている」と
徹は言う。

徹はこんなところに隠れていたの
だった。
そこへ人影がやってきた。
浩一だと思った徹は
「こうちゃん、おそいよ。
ビール持ってきた?」と
声をかけた。

しかし、そこには
浩一だけではなく
はるがいた。
そして、藍子がいた。

おどろく徹だった。
ばれたのだった。

家に帰ったが、徹は
何も話さない。
藍子たちも何も話さない。
元冶とふみは「どうなるかな?」
とわくわくして、見物にやってくる。

「はい、はじめて」
と文が言う。

「いや~~~藍子久しぶりだよね。
希も一徹も大きくなって。
こんなに小さかったのにね・・・。」

無言の家族。

「もう一度やり直していいですか」と
文に聞く徹。
「どうぞ・・。」

徹はテーブルから遠ざかって
座って、
「スミマセンでした!!!!!!

六年近くも留守にしてしまって!!!

本当に悪かったです!!!!」

と頭を下げた。

「早く帰りたかったけど
事情があって帰れなくなった。
でもお前たちのことを
一日たりとも
いや、一秒だりとお
忘れたことはなかった・・。」
ふみは徹の手紙のはいった
入れ物を持ってきた。

「手紙ってこれかい?」とふみ。
「ああ、これこれ
大事にとっておいてくれてたんだ」


「場所とってかなわないから
持って帰ってくれ」と文。

希は「こんなところにあったの
か。捨てたかと思っていた」
という。

一徹が
「邪魔だから入れさせてもらって
いたんだ」という。


文は手紙を読む。
「藍子、希、一徹・・元気か?
お父さんは、今かんづめ工場で働いて
います。」

「朝から晩まで
かんづめ工場で働いて
いたんだ」と
徹は言うが
文は手紙の続きを読む。
「もっと条件のいい仕事をみつけました。
夏までには必ず帰ります。」
「昔の友達がいい仕事をくれてな。

アイティーって知ってるか?
無限の可能性を秘めたインターネット
で、でかい仕事を・・」

「この辺から一気に怪しくなって
きてん、」と、希。

一徹は、「東京ではITバブルが、はじけたね。」
といった。
希は「わかった。
調子乗って会社を作って
倒産して、借金を作ったのね。
ほんで逃げて帰ってきたのね。」

「違うよ。事情は最後の手紙に書いたろ?」

希たちは知らんふり。

「これ?」と文が言う。

開封がしてない。

徹は自分の手紙が読んでもらって
いないので、どういうことかと聞く。
「仕方ない」と希は言う。
「春までに帰る
夏までに帰る
冬までに帰ると
いっても
帰らなかったから
うそばっかり書いているから。
もう飽きたの。」

「で、仕事はうまくいったのか?」
と一徹が聞く。
「友だちの経営してた会社が倒産
してな。お父さん連帯保証人
だったから・・・」
希は、「やっぱり
借金を抱えていたんだ」と
呆れた。

徹は、「返したよ。
だから帰ってこれたんだよ」と
むきになった。」
藍子は、「ああ、面白くない映画。
これってあれ?
家族が許して
元通りになるパターン?」
一徹は
「ありきたりだね~~。
これ、王道やろ?」

藍子は
「みたいね~~。
子供はどうなん?
お父さん、会いたかったとかいう
わけ?」
希は、
「いや、それは正直
六年もたつと
お父さんってなんやったっけ?」

「もうやめてくれ。
わかっているよ、
怒ってくれよ
態度はっきりしてくれよ
そんな嫌味言われるより
100倍ましだよ。
ていうか
君たち言葉完璧だね。
びっくりしちゃった。」

元冶は
徹に、藍子が必死で子供を育てた
事を話した。
「その甲斐あって二人は立派に育った。
一徹は野球部を甲子園へといって
頑張っているし
希は高校でたら公務員になって
家計を助けるというし。」

「公務員?」徹は言った。

「おまえ公務員になるのか?」

希は輪「島市役所に就職する」と
いう。

「市役所?
俺の娘が市役所?
そんなちまちました・・・
もっとでっかり夢を持とうぜ。」

「なんなの???」
希は怒ると藍子は「相手にするな
他人にそんなこと言われる筋合いは
ない」という。

「他人?」
「態度をはっきりさせというたね?
あんたと私らは今後
赤の他人ということで
お願いします!!!

ほんなら私たちは帰るから。
いくよ、希、一徹!!」

藍子は立ち上がって去っていく。

それにならって希と一徹も
ついていった。

「希??
一徹??

赤の他人?」

文は、「別に部屋をお貸ししますけ?」
という。

「お願いします。」

「光熱費、混みで一か月
13000円。敷金礼金込みで
前払いでお願いします。」

そういうことで
徹は
家の隅っこの廊下に寝た。
いびきをかいて・・・

やけである。

希はそれをみて
ため息をついた。
******************
今回は一子の就職は
本物かどうかということと
東京へ行った徹が
夢破れて山河ありといって
帰ってきたことである。

つまり

連動している!!!

ついでに、何のための就職か
という問題もある。

希はやりたいと思う仕事は
ケーキ職人だけど
地道にコツコツと
かせいで、小さいけど
安全な人生を歩きたいと
願っていた。

しかし、

一子はどうかというと

やりたい仕事はこれってこと
ないけど、東京へいけるなら
何でもと思っている。

東京という場所に夢ないと
希はおもうけど
一子はあると思っている。

昔の子供も
やはり、都会へのあこがれがあった。
それかもしれない。

それだったら・・・
東京に住みたいのなら
・・
東京の学校へ行けばいいが

はるは

許さないだろう。

そして、

徹は希の公務員の夢をけなした。
でっかい夢を持とうぜ!!
徹の生き方に反発して
希は公務員を選んだ
のに・・・・。
人のことは見えるけど
自分のことは見えないという
結論である。