人生は冒険1
1949年昭和24年
お酒が自由販売となって半年。
ドウカの三級ウヰスキー余市の唄は
安くてうまいと大評判となった。
今日はマッサンのラジオ出演の日。
マッサンは余市の町を有名にした
功労者としてインタビューを
うけるのです。
森野の家に森野家と
エリー、エマ
悟、中島夫婦、進が集まった。

そしてラジオを一緒に聞く
ことにした。

スタジオでは政春は緊張して
いた。
「本日お話を伺うのは
ウヰスキー余市の唄で余市の町を
有名にしたドウカウイスキーの社長
亀山政春さんです。」

とアナウンサーがいった。
みんなやんやとにぎやかに待った。

エリーはドキドキしていた。

エリーがドキドキしてたらマッサンは
どうなっていることかとみんな
笑った。
「この街にマッサンがきたとき」
と進が言った。「この街をウイスキーの里にする
なんていってとんでもない大風呂敷を
広げると思った」という。
「でも本当にウイスキーの里に
してしまった」と進はいった。
「リンゴ汁から初めて16年
よくここまできたな。」とハナ。
「マッサンはやる男だ」と熊虎は言う。
そんなにぎやかな中でも
ハナが気になっていたのは
俊夫のことだった。元気がない。

俊夫は途中で森野家を出た。

ハナは俊夫を追いかけた。

「いい加減、話をしてよ」というと
「なにがじゃ?」という。
「隠してもだめだ、なにか悩んでいる」と
ハナは言う。
俊夫はなぜ、元気ないのか。

政春とエリーを前にハナと俊夫は
座った。

この間、千加子が来たとき
杜氏も年だから、引退かというと
話があったが、それを聞いて
俊夫は蔵を守りに広島に帰ろうと
思ったという。

ハナを連れて広島に帰る・・・
蔵を守るために。
政春は驚いた。
俊夫は、「お世話になった蔵を旦那様の代
で潰すわけにはいかない。
働き手として最後の御奉公さして
もらいたいのです」
と俊夫はリビングの床に手をついて
政春に頼み込んだ。
「認めてもらいますか?」

「じゃが、俊にい」と政春。

「ハナ?ハナはいいの?
熊さんは?
広島はとても遠いから・・」
とエリー。
ハナは
「おらエリーさんと同じだ。
俊夫さんが行くというのなら
どこまでもついていくから」
という。

熊虎にはちゃんと話すと俊夫。
わかってくれるとハナ。
「自分も家を飛び出して
青森やら秋田やら・・あっちこっちへ
いったから・・。」

ところが、
熊虎は反対した。

この余市の町に骨を埋めるという
から、ハナを俊夫の嫁にしたのに
約束が違うと
大騒動となった。

俊夫は「親代わりの旦那様が守って
きた蔵を見捨てるわけには
いかんのです!」
という。
「親代わりだと?」
熊虎は俊夫の胸ぐらをつかんだ。
「だったらおらはどうなる?
おらはハナのおやじだ!
おめえにとっても義理の
親父だ!!!」
「わかってるって、」とハナは熊虎を
俊夫から離した。
「二人でしっかり話し合ったんだ」というが

「広島は外国みてえに遠い!!!」

と熊虎は理解しない。
「ハナが苦労するに決まっている!!」

ハナは父親の気持ちはわかるけど
嫁として俊夫についていくことを
はっきりといった。
「苦労も幸せも二人で分け合う
それが夫婦というものだべ!!」

「ダメだ
絶対に許さん
どうしても行くなら親子と縁を
切る!!
どこへでも行ってしまえ。」

熊虎は背中を向けた。

「わかった・・・」とハナは言う。

熊虎は「わかってくれたか?」と
喜んだ。

「親子の縁を切ってくんせい。
長いことお世話になりました。」

出て行こうとするハナを追いかけて
熊虎は「冗談だ!
冗談に決まっている、な?俊夫。」
「え?は、はい・・・。」
俊夫はとまどった。
しかし、熊虎は
「わかった。
広島でもどこへでも行ってしまえ!!

おら、酒飲んでくる!!」
熊虎は出て行った。
俊夫はハナに「ありがとう」といった。
ハナは「頑張ろうね」といった。

そして俊夫が出て行く日が近づいて
きた。

研究所で俊夫は棚を磨きながら
「ああ、せいせいした。
広島に帰れる!
日本酒造りが楽しみだ。」
と大声で言った。

政春はそんな俊夫に近づいた。

「俊にい
親父のこと蔵のことよろしく頼むぞ。」
と頭を下げた。

俊夫は政春の顔を見ないで
バケツをもってつぎの棚へ
いった。

「ほんとうにいろいろ世話になったのう。

この余市にきてドウカがここまで
来られたのは俊にいのおかげじゃ。」
雑巾で机をふきながら
「何言うとりんさる・・・」
と俊夫が言う。
「余市に来るずっと前から
お坊ちゃまはわしの世話に
なりっぱなしでしょうが!」

「あははは・・・」政春は笑った。

「広島の蔵で初めて一緒に試験醸造した
ときも
大阪でも
余市に来てからも
わしはずっとお坊ちゃまの
世話をしっぱなしじゃ。」
政春は、広島の蔵でのこと
大阪のウイスキー蒸留所でのこと
「信念曲げたら男はしまいじゃ」と
いったこと
そして余市に俊夫が来た日。
「わしは、エリーさんに手紙をもらった
からきただけだ・・・。」

「わしの人生、おぼっちゃなのせいで
わやくちゃじゃ。」
そういってバケツのまえに
しゃがみこんでいた。
政春は
「じゃけど余市に来たおかげで
俊にいはハナちゃんと・・」

そう俊夫に言うと
俊夫は
うつむいて泣いていた。

いきなり立ち上がり
「これでもうお坊ちゃまの
面倒見んでいいと思うたら
うれしくてなけてくるんでがんす」
といって
「ハハハハ」と笑って
部屋から出て行った。

やがて出発の時間となった。
悟は俊夫に
「お世話になりました。
おじいちゃんをよろしくお願いします」
と挨拶をした。
俊夫は悟に
「悟お坊ちゃまもしっかり修行を
積んでください」と
いってドウカの法被を
悟に着せた。
悟は法被の袖に腕を通した。
「ハナさん
元気でね」とエマ。

「アメリカへ行く日が決まったら教えてね。」

「はい」

エリーは、お弁当をハナに渡した。
「ハナに教えてもらった北海道の
料理がたくさん入っているよ」

といった。

ハナは「やめてよ、こういうの
弱いんだ・・・。」

という。

「エリーありがとうね。」
二人はハグをした。

そして俊夫にもエリーはハグを
した。
俊夫は「ありがとうがんした
ありがとうがんした」
といってエリーのハグから
離れない。

政春は「長い、ええかげん
離れろ」と言った。

そこへ進が来た。

「ああ、まにあった。
はははは・・・

いよいよ行くのか。
兄さんは?」

「いくべ、行くべ」と言って
なんと
熊虎も旅行の格好をして
きた。
皆唖然とした。

「こいつらに会津の町を見せてやろうと
思ってな。
広島へ行く途中だ。」

「初めて聞く」とハナが言うと
「そうだろうな。
今はじめて言ったから」と熊虎。
政春は「熊さん
本気で言うとるんですか」という。
熊虎は
「おら生まれてこの方
冗談なんか行ったことないぞ」
という。
「ハハハハハ」と笑って
出かけようとする。

振り向いて熊虎は言った。
「命があったらまた会おう!!!」

政春はその言葉にハッとしたが
嬉しそうな熊虎に別れを告げた。
「さようなら」
「気を付けて」
「元気でね」
「兄さん、あんまり酒飲みすぎるな」

こうしてエリーと政春たちは
彼らを見送った。
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今週いよいよ
最終回です。
人生は冒険というお題です。

まず、俊夫夫婦と
熊虎が余市から去っていきます。
別れが惜しいほど
家族同然のように暮らした
人たちです。
辛い時も
悲しいときも
支えてくれた人たちです。
彼らがいたからこそ
ここまで頑張れたと
思います。

次は・・・誰でしょうか?
エマでしょうか?
こうして、政春のもとから
つぎつぎと
人が旅立っていく
週だと思います・・・。