一念岩をも通す6
ついに念願の思い通りの三級ウヰスキーが
できあがった。
政春は北海道の目利きの問屋さん
を招待して試飲会を開いた。
味にうるさい人たちばかりである。

その頃、エマは通訳になってアメリカにわたる
ために面接試験を受けていた。
彼女は英語で両親を語った。
「私の父は日本で初めてウイスキーを造った
ひとです。母は父と出会ってスコットランド
から日本に嫁いできました。
我が家の家訓は『人生は冒険だ』です。
そんな両親を誇りに思います・・。
世界はそれぞれ違う文化を
もっていますが、どの国の人間であっても
気持ちは同じです。
わたしは違った国と国文化と文化を
結ぶための懸け橋になりたいと
おもいます。」

政春は・・・。
「みなさん、本日はありがとうございます。
わが社が自信をもって作った三級ウヰスキーです。
どうぞご賞味ください。」

招待者たちは、グラスについだ三級ウヰスキーを
飲んだ。
あるいは香りをかぎながら・・・。

すると
「これは本当に三級ウヰスキーですか?」
「原酒が5%以下の?」
「香料は何を?」
「香料も着色料も一切
つかっていません。
味も香りもうちの原酒そのままです。」

「うまい・・」
「のどごしもいい」
「うちで仕入れよう」
「うちも仕入れる!!」
「雑味がなくてすっと飲める!」
「うちも売るぞ、よろしく頼む!!」

評判だった。
「ありがとうございます!!」
政春と俊夫は嬉しそうに答えた。


そこへ 「お邪魔しますでぇ~~」と
やってきた人がいた。

長越百貨店の澤田社長だった。
秘書を連れてやってきた。

いつぞや、政春をみそかすに評した
男だった。
なんとしても、澤田さんに試飲して
欲しいと思った政春は
大阪の出資者を通じて
招待していたのだった。

「しっかり味見させてもらって
言いたいこと言わせてもらうで!」

「よろしくお願いします。」

澤田は
グラスをまわして香りを嗅いだ
「ふふふ
お得意のスモーキーフレーバーが
きいとるな。
希釈のアルコールは
何を使いはったんや?」
「大麦で作った醸造アルコールです。」

「大麦か・・・」
澤田は興味深げにいった。

政春は「ほかに廃蜜糖や
サツマイモを試したけど
三年物の若い原酒をキーモルト
にした場合大麦で作ったほうが
もっとも甘味もあり香りも
よくなりました。」と答える。

「なるほど・・・・」
一口飲む澤田。

「・・・あんた・・・
かわったなぁ~~~。
前にあんたの作った酒を飲んだ
ときにはこの酒を作ったやつは
独りよがりやなと思った。
日本で初めてウイスキーを造った
事に酔うとるなと思った」といった。

「だけどこの酒は違うな。
この酒は伝える酒や。

あんた作るとき、お客さんの顔を
みようとしたやろ。伝えたい思いを
こめたやろ?」

「はい」

「うまいわ!!
はっきりいうって今の日本にこれだけ
うまい三級ウヰスキーはない。
このウイスキーうちの百貨店で預からせて
もろてええか?
このウイスキーはきっと日本を変える。
あんた新しい時代を作ってしもた
やんか。」

「はは・・
ありがとうございます。
でもわしはこれで、おわりません
わしにとってもこのウイスキーにとっても
一つの通過点にしかすぎません。
わしはいつかこの日本に本物のウヰスキー
の時代を作って見せます。
その日が来るまで
わしは絶対あきらめません。」

澤田はうなずいて
「たのしみにしているで」といった。
そしてまたウイスキーを飲み
「うん!」といった。
拍手が沸いた。

みんな笑顔だった。

政春は立ち上がって
一礼を深くした。

政志が北海道を立つことに
なった。
「明日明日というといつまでも
帰れないから」と政志が言う。

政春の取引成立に
千加子は「よかったね、
エリーさんも一安心じゃ」と
いった。
「ありがとうございます。」
「悟は何をぼさっとしているの?
もう荷造りはしたの?」と千加子が
いった。

悟は立ち上がり、「ここに残りたい」と
いった。「ウイスキーづくりを学びたい」と
いった。
「ウイスキー造りだけでなく信じてやり続ける
しかないといってその通りになった。
それを学びたい」といった。
政春は
「わしの言葉ではない。
わしはのう、親父とお母ちゃんから
おしえてもらった。
信じてやり通す。
これが亀山家の伝統じゃ。」という。

「その伝統わしにも受け継がせて
ください。
わしはわしが生き残った意味を
見つけたいんじゃ・・」と悟。

千加子は「あんたが広島に帰って
こなかったら
お父ちゃんの蔵はどうなるん?」
悟はうつむいた。

「そんなことはどうにかなる。」
政志はいった。
「悟にやりたいことをやらせてやれ」

千加子は反対した。
「長男の勝が教師になったから
二男の悟が家を継がなくては」
という。
「そんな約束は・・・」
「約束せんでもそういうことじゃ」
と千加子は怒った。
政志は「ワハハハ」と笑って
千加子が早苗によく似てきたと
いった。
そして、悟に「家のことは気にしないで
やりたいことをやれ」といった。

悟は笑顔になった。
許してもらったのだった。

時間も迫り、政志たちは
出発をすることになった。

政春は政志に聞いた。
「どうじゃった?
わしのウヰスキーを飲んだ感想じゃ」

「ウヰスキーはよくわからない
ただ、うれしかった
おまえの作ったウイスキーを飲んでみんな
笑っていた。うれしかった
ええ仕事をしたのう?
でもこれがおしまいじゃないのう
これから少しづつ
うまいウイスキーを造り続けような?」

政春はうれしくて、「ハイ」と短く
返事をした。

外へ出るとエマが帰ってきた。

政志が面接はどうだったかと聞くと
結果はまだだけどちゃんとできたと
いった。
「アメリカへ行くときはじいちゃんも
一緒に行くからな、覚悟しとけよ。」
そういうとみんなが笑った。

出てきた熊虎とハナに
政志は挨拶をした。
「バカ息子がこれからも迷惑をかけると
思いますが、よろしくお願いします。」

「マッサンはこの街をウイスキーの里に
してくれるといった。
迷惑なんてこれっぽッチも
思ったことなんかない。」

「ありがとうがんす」

「千加子さんいつでも遊びに来て
くださいね」とハナ。

「ありがとうございます」


「ほいじゃのう
みなさん、御達者で」

政志がいうと千加子と悟は
門へ向かって歩き始めた。

エリーは「お父さんありがとう
ございました」と声をかけた。

「ありがとう」
「ありがとう・・・」

感謝の声に政志たちは
見送られて北海道を旅立った。
*****************
いいお話でした。
笑顔になりますね・・・
朝ドラはこうでないと・・。
いつも笑ってばかりでは
おかしいですけど。

悟の服・・・・いまだに国民服。
それもしみのついた服・・・
千加子もいるのになぜ、この服を着せる?
食品製造なんだから、清潔にしてほしかった
けど・・・。
かなり気になったけど
来週はきっと違う服と思う。

澤田さんとは鴨居商店で政春がウイスキーを
作ったとき、ぼろかすに評した男
でした。イミテーションの鴨居・・とか。
その男がいい仕事をしたと
いったのは政春にとって最高の
リベンジだったのではないかと思います。
政志の年齢は?
80歳を超えていたと思いますが
お元気そうで。
この家を出るときは、これが
元気で会える最後かなと思ったり
しました。
悟の家督相続の問題は
政春の家督相続の問題によく似て
いると思いました。
二男のあんたが継ぐのが筋だと
千加子が言うが
政春は男一人だった。
その政春が大阪で大学を出て
大阪の酒造会社で就職をして
いつのひか亀山酒造を継ぐものと
みんな思っていたはずです。
ところが、ウイスキーへ方向転換を
した。
悟も生きて帰ってきたのだから
亀山酒造を継ぐものと
千加子は思っていたが
こっちもリタイア・・・。

歴史は繰り返すのだろうか。

来週はいよいよ
最終週となる。
気になるのは
エリーがなくなること。
俊夫とハナは広島へ帰るのか
ということ。
鴨居の社長はどうなっているのか
ということ。

半年・・・
見続けて、これは予想を超えて
面白かったです。
ウヰスキー作りの云々はよくわかり
ませんが・・・
エリーも日本に溶けこんでしまって
何の違和感もありませんし・・・。