待てば海路の日和あり1
戦争の影響が大きく庶民の生活を
むしばむ日々となった。
1945年7月
エリーは母ローズマリーへの手紙を
書いている。
『・・ママ
着く当てのない手紙を書いています。
戦争は続き
私が工場の外へ出られない生活も
既に三年が過ぎようとしています。
私は覚悟をもってここで生きていくことを
選びました。』

エリーは立ち上がり
部屋の隅に行って
ラジオを切った。
その時軽いめまいがした。
『でも時々ここにいる意味を見失いそう
になります。』


その時「ただいま~~~」 と
ハナとエマが帰ってきた。

配給の受け取りに行ったのだった。

「ご苦労さん、どうだった?」
エリーが聞くと
エマが「朝から並んでかぼちゃと
油とおしょうゆをほんの少しだけ。」
という。ハナは「今日も米は手
に入らなかった。」といった。

エリーは「私も一緒に行ってあげられ
たら・・・」という。
ハナは「気にしなくていいから」と
いった。

「おかあさん、これ外でつんできたの。」

とかわいい花をエリーに渡した。

そしてエリーの顔色が悪いことを
心配した。

ハナは、「夏風邪かな?
ゆっくりしてて」、といった。

エリーは「ありがとう」と
いった。

一馬の出征から二年が
たった。

またひとり、出征する様子を
まどからみた中島夫婦は
ためいきをついた。

「また一人連れて行かれた・・・・」。
と、チエ。
戦況は悪化の一途をたどり
東京、大阪などの大都市は
空襲を受けて大打撃を受けた。

チエは進に余市にも空襲があるのか
と聞く。
「三郎はこんな町はりんごしかないし・・」
というと進は「りんごしかないとは何を
いうんだ」と怒った。
「しかし、小樽や函館は陸軍の基地があるけど攻める
なら石炭だ。
進は日本に打撃をうらわせるには石炭
の輸送経路を立つということだ」という。
「じゃ余市は大丈夫なのね」とチエは
いうと進は「自分のことしか
考えられないのか」という。
「一馬は今お国のために戦って
いるのだぞ。」
「じゃ、マッサンの工場は?
海軍の指定工場でしょ?」
「そうだ、余市も危ない」と
三郎はあわてた。
そこへ噂をすれば、政春が来た。

進に相談があるという。

工場に帰るとハナに熊さんに
事務所に来てほしいといってくれ
といった。

ハナはエリーが具合がわるいみたいだというが
政春は後で見に行くといった。

事務所に俊夫と熊虎が政春にいわれて
やってきた。

「実は海軍さんにきいたのだが」という。
自分たちはお国のために海軍に酒を
おさめている。
それでこの工場に何があったと
してもそれは覚悟の上だが・・
すると海軍の士官はいった。
「備えることだ。
今何が起きてもおかしくない
ところまで来てしまっている。
覚悟をしておくように。」

といったという。

敵の爆撃目標になったとしても
おかしくないということだと
政春が言う。
そこで、俊夫は「防空壕をつくりましょう?」
というが、土地が柔らかくて
洞穴はすぐにつぶれてしまうらしい。

政春は地図を出した。
一番危ないのは貯蔵庫と
ポットスチルの蒸溜所である。
爆撃されたらアルコールに火がつくと
爆発する。
そこから一番離れたところにある
乾燥棟をわしらの待機場所にするんじゃ
といった。
そこは政春ご自慢のスコットランド式
石造りの要塞である。安全である。

政春はそれと原酒の樽の避難を指示した。
「進さんに頼んでリンゴ園の山裾にある
倉庫を借りることにした」といった。
そこに大事な原酒が眠っている
樽を避難させるという。
原酒は手塩にかけて育てて
やっと10歳になった。
「余市をウイスキーの里にするため
だな」と熊虎はいった。
「貯蔵庫に眠る樽も入れ替えて
あらゆる年代のもんと混ぜる。
どの貯蔵庫がやられても
いろんな原酒がちゃんと残るように
じゃ・・。」

政春は俊夫にその指示を書いた書類を
わたした。
その作業をこれから始めるが空襲の話は
ここだけの秘密にしようと
政春が言う。
万に一つの備えじゃとみんなに言う
といいといったがハナが聞いていた。
エリーのことが心配なはずの政春が
事務所にこもるというのは
おそらく、戦争の対策ではないかと
思ったからだった。

政春は「できたら女子供は進さんの家に
避難させたい」といった。
「こんな危ないところにはいたら
いけない」という。

ハナは自分は行かないといった。
「死ぬときは俊夫さんと一緒だ」という。
「エリーさんも同じだよ。エリーさんが
マッサンと離れることはないよ」と
ハナは言う。

夕餉にその話をするとエリーもエマも
マッサンと一緒だといった。

「なにかあったらとにかく逃げるんだ」と
政春は確かめ合った。

翌日から樽の移動と
倉庫の補強工事が始まった。
エリーは防空頭巾をぬっていた。

そこへ進たちの組合の男衆が
やってきた。
政春が与一をウイスキーの里にするといった
ので、手伝いに来たという。
ウイスキーの原酒を守るためだ。
まだまだ、若い者には負けられないと
元気に言った。

エリーは喜んだ。
進はエリーが具合が悪いと聞いて
「少しだけどイノシシの肉だ。」
といって、イノシシの肉をくれた。
「早く元気になってくれ」という。
「そんな貴重なものはいただけません」という
と進は「遠慮するな、情けは人の・・・」
といって、止まった。

エリーが「為ならず」といってつづけた。

「それだべ」と進が言ったので
笑い声がわいた。
さっそく作業が始まった。

エリーのママへの手紙は続いた。

『日本には素晴らしい言葉があります。
情けは人のためならず・・・
人生は不思議です。』

エマがハナの炊き出しの手伝いを
している。
そこへエリーがやってきた。

『こんな恐ろしい状況の中で私は
この国に出会えたことを誇りに
思っています。』

エマはエリーが来たのでびっくりした。
そしてエリーはハナに言った。
「これ、みんなでいただこう。」
そういってイノシシの肉をだした。

「今夜はしし鍋だ」とハナはうれしそうに
いう。


樽の移動が始まった。
大きな樽をみんなが一生懸命
運んだ。

『マッサンが描く未来のために
故郷のために
皆一丸となっています。』

そして、ハナはエマと一緒に
わずかな材料で作った
おやつをもって、「ご苦労様です。
一息入れてください」と声を
かけた。

みんな喜んだ。


『この国の人たちはつらいときには
お互い励まし合い
わずかなものをわけあい
助け合い奥ゆかしく慈愛に満ちて
います。

ママ、怖くないと言えばうそになるけど
私はこの国に来たことは後悔していません。』

エリーはそのとき初めて
空襲警報を聞いた。

倉庫にいた政春は避難指示を出した。
政春は樽がある倉庫にいるという。
「焼かれてたまるか。
爆撃されたらすぐに火を消す」と
政春は言った。

俊夫はそんな危ないことを政春
一人にさせるわけにいかない。
「死んだらしまいじゃ」と大声を出した。

エリーは、驚いてエマを捜しに
いった。
米軍の爆撃機がついに北海道にも
来襲した。
ママへの書きかけの手紙がリビングに
残った。
************
ついに北海道にも空襲が?
いままで
「ごちそうさん」と「花子とアン」
では東京だの大阪だのと大都市に
住む主人公たちの
戦争との戦いが
えがかれていました。
なんだか悲惨と思いました。
でもここ北海道は
ひろいのか、エリーたちは
庭に花を植え、野菜を植え
なんとか食物は確保し
しかも、着ている服も
この間はエマはチェックのワンピ
だったように思いました。
エマのお洋服はかわいくて
ほんとうにお嬢様です。
でも、戦争時はモンペなのですね。
なんだか
悲しいです。
そして食べ物に困るというレベルが
大都市と違っている感じが
しました。
やはり、工場をやっていると
特に海軍指定なのでいろいろと
守ってもらえたこともあったので
しょうか。
俊夫も熊虎も
戦争にとられることもなく
なぜ一馬が???
と思いましたが。
なぜ一馬が戦争にとられたので
しょうか?
わかいから?
政春が戦争に行かなかったのは
海軍指定工場のオーナーだから?

ですよね。

エリーのママへの手紙
ほんとうにスコットランドに
つくのでしょうか???