親思う心にまさる親心1
一馬のもとに召集令状がきた。
一同が無言のなか
熊虎は「よかったな一馬
これでお国のために働けるぞ」
といって万歳をした。
エマはその場から逃げて
自分の部屋にはいった。
エリーはエマを追いかけた。
「大丈夫なの?」とエリー。
「大丈夫、こういう日が来るのを
わかっていたから、私は大丈夫。」
エマは笑って言った。
熊虎は機嫌よくいった。
「マッサン、出征の前の日でいいから
壮行会を開いてやってくれ。」
ハナは
「武運長久祈願ならいつもの神社で町の人たち
が」(するけど)といいかけた。
熊虎は「それとは別に身内だけで壮行会を
開いてやりたい」という。
「こんな目出度いことはないんだから
な?一馬。」
一馬は、短く「うん」と答えた。
出征して集合地は札幌である。
3日しかいれないと俊夫が言う。
すると
「心構えはできているから
後は頭を丸めて荷造りをすれば
すぐにでも出征できる!
な、一馬。」
どこまでも陽気な熊虎で
ある。
一馬は準備をしに部屋に入った。
はいったものの、一馬は思いつめた
顔をしていた。
エリーの家から聞こえてくるのは
蛍の光だった。
いや・・・・あれはスコットランド民謡。
Auld Lang Syne(Old long since)
エリーとエマが英語で歌を歌っているのだった。
「懐かしき日々をわすられようか。
二度と来ないこの日をわすられようか。」
昔を思い出し懐かしき日々に
出会った友人たちと別れる悲しみ
を歌った歌である。
一馬は自分の部屋からその歌を聞いて
何を思ったのだろうか。
政春が家に飛び込んできて
「おもてに聞こえているぞ」と
いった。
そして、戸を閉めてカーテンを閉めた。
「歌うんじゃったら日本語で歌え。」
「蛍の光ではなくて
Auld Lang Syne
を歌いたいの。」
エマが言ったが、エリーが政春に
謝った。
「マッサンごめんなさい。
私もエマと同じ気持ち。
一馬と笑顔で再会したい。」
政春は何も言えない。
出征の前の晩、みんなで壮行会を
することになったといった。
笑顔で見送ってやろう。
「私は出ない。
国のために立派に死んでくれなんて
いえない。勇ましい軍歌を歌って
一馬さんを送り出す気にはなれない。」
政春はエマを引き留めて言った。
「ええか、一馬は死ににいくわけではない。
今わしらにできるんは今まで通りに
笑顔で見送ることだ」と
いうと
エマは、「笑顔になんかなれるわけ
ないじゃない!!」
と叫んで部屋に入った。
「これが日本の現実だ」と
政春が言う。
思っていること
と
やっていることは別物だ
ということか
それとも・・・
みんなと同じようにしないと
国賊扱いされるということ
なのか・・・。
外では熊虎が剣道の
上段から下段へ竹刀を
振り下ろす練習をしていた。
熊虎のほんとうの気持ちとは?
ハナは「千人針を作ってやらないと」
という。
「寅年生まれのおなごをようけ探さないと」
と、俊夫が言う。
「エリーさんは何年かな?」
俊夫は「エリーさんに頼めるわけないじゃろ」
という。
エリーの祖国と戦争をしているのだ。
ハナは「そうだよね」といった。
一馬は出征までに
することを書きだした。
散髪、寫眞、挨拶、遺書・・・・
当時、出征する多くの若者が
遺書をしたためて出征していきました。
出征まであと三日。
進は「いよいよだ」という。
熊虎は「嬉しくて」
という。「おめでとう兄さん。」
「三郎も一緒に、宴会をしよう」と
熊虎は誘った。
そして、家に帰って「今夜は宴会だ」と
いった。
「壮行会は出征の前の晩だべ」と
ハナは言うが、「今日は宴会だ」と
熊虎は言った。
「進たちがよう、どうしても今夜
一馬を激励すると言ってきかないんだ」
と言い訳をした。
ちょっと、違うね・・。
飯、飯と言って朝飯を食べる熊虎と
一馬。
そこへ政春が来た。
一馬に「後で研究所へきてくれ。
ブレンドを教える」といった。
熊虎は「これから戦争へ行くの
なぜ、今からブレンドなのか」と
不思議だった。
「たとえ戦地へ行っても一馬がうちの社員
だということは変わらないから。帰って
来たらまたしっかり働いてもらわないと」
という。また後でと言って出て行った。
「ブレンドなど二日屋三日で覚えられる
ものではないだろうに。」
と熊虎はいいながら、宴会の前に用意
しておくものがあると言って立ち上がった。
研究所へ行った一馬。
政春は出征までに時間がないから
どこまで教えられるかといいながら
「まずは、ノージングからだ」
といった。
ブレンドの基本である。
サンプルの香りをかぎ分けることだ。
まずは色を見る。
透かしてみる・・・
ゆっくり香りをかぐ・・・。
一馬は政春のまねをした。
「どうじゃ?」
一方熊虎は何を探しているのか
と思えば
映写機だった。
工場のお昼休み、食事をしに工員たちが
やってくる。
「ご苦労様です」と言って
ハナは、千人針を頼んだ。
「一馬君いよいよだってね。」
「できたらエリーさんの目の届かない
ところでね?」
「私寅年だからまかせて。」
エリーは、「どうしたの?
一馬のことで私にできることなら
なんでもいって」といった。
「エマはどうしているの?」とハナが聞く。
エマは、自分の部屋で座り込んでいた。
「エマ?」
「教えて。
この戦争はだれのための何のための戦争
なの?」
エリーはエマのそばに座った。
「この戦争はどんな戦争か
教えてあげることはできない。
だけど一つだけ教えてあげることが
できる。
一馬のために
・・・・
今エマが一馬のためにできることを
一生懸命考えて。」
エマはじっとエリーを見た。
「おかしいな?」
映写の機械が動かないらしい。
熊虎は苦戦していた。
何の映写だろう?
「おかしいな・・・
おかしい!!!!」
それぞれが一馬との別れを忍んで
何かをしなくてはと
思っていた。
***************
わかっていると言っても
わかっていなかった。
エマにとって一馬は失いたく
無い人である。
たとえ、お国のためでも
目の前からいなくなることは
想像はできても現実には受け入れ
がたい。
特に熊虎は何を考えて
いるのだろうか?
三郎と進を誘ったのは
熊虎である。
なぜ、逆のことを言ったのか。
よくわからない親父である。
一馬のもとに召集令状がきた。
一同が無言のなか
熊虎は「よかったな一馬
これでお国のために働けるぞ」
といって万歳をした。
エマはその場から逃げて
自分の部屋にはいった。
エリーはエマを追いかけた。
「大丈夫なの?」とエリー。
「大丈夫、こういう日が来るのを
わかっていたから、私は大丈夫。」
エマは笑って言った。
熊虎は機嫌よくいった。
「マッサン、出征の前の日でいいから
壮行会を開いてやってくれ。」
ハナは
「武運長久祈願ならいつもの神社で町の人たち
が」(するけど)といいかけた。
熊虎は「それとは別に身内だけで壮行会を
開いてやりたい」という。
「こんな目出度いことはないんだから
な?一馬。」
一馬は、短く「うん」と答えた。
出征して集合地は札幌である。
3日しかいれないと俊夫が言う。
すると
「心構えはできているから
後は頭を丸めて荷造りをすれば
すぐにでも出征できる!
な、一馬。」
どこまでも陽気な熊虎で
ある。
一馬は準備をしに部屋に入った。
はいったものの、一馬は思いつめた
顔をしていた。
エリーの家から聞こえてくるのは
蛍の光だった。
いや・・・・あれはスコットランド民謡。
Auld Lang Syne(Old long since)
エリーとエマが英語で歌を歌っているのだった。
「懐かしき日々をわすられようか。
二度と来ないこの日をわすられようか。」
昔を思い出し懐かしき日々に
出会った友人たちと別れる悲しみ
を歌った歌である。
一馬は自分の部屋からその歌を聞いて
何を思ったのだろうか。
政春が家に飛び込んできて
「おもてに聞こえているぞ」と
いった。
そして、戸を閉めてカーテンを閉めた。
「歌うんじゃったら日本語で歌え。」
「蛍の光ではなくて
Auld Lang Syne
を歌いたいの。」
エマが言ったが、エリーが政春に
謝った。
「マッサンごめんなさい。
私もエマと同じ気持ち。
一馬と笑顔で再会したい。」
政春は何も言えない。
出征の前の晩、みんなで壮行会を
することになったといった。
笑顔で見送ってやろう。
「私は出ない。
国のために立派に死んでくれなんて
いえない。勇ましい軍歌を歌って
一馬さんを送り出す気にはなれない。」
政春はエマを引き留めて言った。
「ええか、一馬は死ににいくわけではない。
今わしらにできるんは今まで通りに
笑顔で見送ることだ」と
いうと
エマは、「笑顔になんかなれるわけ
ないじゃない!!」
と叫んで部屋に入った。
「これが日本の現実だ」と
政春が言う。
思っていること
と
やっていることは別物だ
ということか
それとも・・・
みんなと同じようにしないと
国賊扱いされるということ
なのか・・・。
外では熊虎が剣道の
上段から下段へ竹刀を
振り下ろす練習をしていた。
熊虎のほんとうの気持ちとは?
ハナは「千人針を作ってやらないと」
という。
「寅年生まれのおなごをようけ探さないと」
と、俊夫が言う。
「エリーさんは何年かな?」
俊夫は「エリーさんに頼めるわけないじゃろ」
という。
エリーの祖国と戦争をしているのだ。
ハナは「そうだよね」といった。
一馬は出征までに
することを書きだした。
散髪、寫眞、挨拶、遺書・・・・
当時、出征する多くの若者が
遺書をしたためて出征していきました。
出征まであと三日。
進は「いよいよだ」という。
熊虎は「嬉しくて」
という。「おめでとう兄さん。」
「三郎も一緒に、宴会をしよう」と
熊虎は誘った。
そして、家に帰って「今夜は宴会だ」と
いった。
「壮行会は出征の前の晩だべ」と
ハナは言うが、「今日は宴会だ」と
熊虎は言った。
「進たちがよう、どうしても今夜
一馬を激励すると言ってきかないんだ」
と言い訳をした。
ちょっと、違うね・・。
飯、飯と言って朝飯を食べる熊虎と
一馬。
そこへ政春が来た。
一馬に「後で研究所へきてくれ。
ブレンドを教える」といった。
熊虎は「これから戦争へ行くの
なぜ、今からブレンドなのか」と
不思議だった。
「たとえ戦地へ行っても一馬がうちの社員
だということは変わらないから。帰って
来たらまたしっかり働いてもらわないと」
という。また後でと言って出て行った。
「ブレンドなど二日屋三日で覚えられる
ものではないだろうに。」
と熊虎はいいながら、宴会の前に用意
しておくものがあると言って立ち上がった。
研究所へ行った一馬。
政春は出征までに時間がないから
どこまで教えられるかといいながら
「まずは、ノージングからだ」
といった。
ブレンドの基本である。
サンプルの香りをかぎ分けることだ。
まずは色を見る。
透かしてみる・・・
ゆっくり香りをかぐ・・・。
一馬は政春のまねをした。
「どうじゃ?」
一方熊虎は何を探しているのか
と思えば
映写機だった。
工場のお昼休み、食事をしに工員たちが
やってくる。
「ご苦労様です」と言って
ハナは、千人針を頼んだ。
「一馬君いよいよだってね。」
「できたらエリーさんの目の届かない
ところでね?」
「私寅年だからまかせて。」
エリーは、「どうしたの?
一馬のことで私にできることなら
なんでもいって」といった。
「エマはどうしているの?」とハナが聞く。
エマは、自分の部屋で座り込んでいた。
「エマ?」
「教えて。
この戦争はだれのための何のための戦争
なの?」
エリーはエマのそばに座った。
「この戦争はどんな戦争か
教えてあげることはできない。
だけど一つだけ教えてあげることが
できる。
一馬のために
・・・・
今エマが一馬のためにできることを
一生懸命考えて。」
エマはじっとエリーを見た。
「おかしいな?」
映写の機械が動かないらしい。
熊虎は苦戦していた。
何の映写だろう?
「おかしいな・・・
おかしい!!!!」
それぞれが一馬との別れを忍んで
何かをしなくてはと
思っていた。
***************
わかっていると言っても
わかっていなかった。
エマにとって一馬は失いたく
無い人である。
たとえ、お国のためでも
目の前からいなくなることは
想像はできても現実には受け入れ
がたい。
特に熊虎は何を考えて
いるのだろうか?
三郎と進を誘ったのは
熊虎である。
なぜ、逆のことを言ったのか。
よくわからない親父である。
