物言えば唇寒し秋の風6
「私は一馬さんが好きなの。
何で何もいってくれないの?」
告白しても一馬は答えてくれない。

エマは情けなくなって飛び出した。
「意気地なし!!!」と叫んで・・。

ところが家に帰るとエリーが
エマの部屋でエマの日記を読んで
いた。
これはやりすぎである。
「何で、ひとの日記を読むのか」と
エマが抗議をすると
「読まれてまずいことでもあるのか」と
エリーは言った。
エマは「いい加減にして」と
怒った。

エリーはエマと話をすること
になった。
なぜ、恋愛に反対するかという
理由があるという。
エマは「自分が子供だからでしょ」と
いうが、「それだけではない」という。
「一馬は戦争に行かなければ
ならないから」とエリーは言った。

エマは「わかっていることだ」というが
エリーは、「わかっていない」といった。

「エマには自分と同じ思いをさせたく
ないから」という。
エリーには初恋の人がいて
その人はジョージといった。
ジョージとは結婚の約束をしていた。
1914年スコットランドのことだった。
「必ず生きて帰ってきて」とエリーは
いった。
「クリスマスまでには帰る」とジョージは
約束した。
「そのとき、パーティをやろう」
そういってアザミをくれた。
「愛しているよエリー。」
「わたしもよ、ジョージ。」

でもジョージは死んだ。
クリスマスの日にエリーはそのことを
知った。
エリーは泣き暮らした。
「エマ・・・
お母さんの気持ちわかってくれた?」
「ありがとう、話してくれて。」
「日記のことは謝るわ。
いけないことだわ。ごめんなさい。」

「お母さんが私を心から愛して心配して
くれていることはよくわかったわ。
だけどね、私は一馬さんのことが
すきなの。一馬さんが戦争にいったと
しても死ぬとは限らない。
もしお父さんがもうすぐ死ぬという
病気だったら、別れられるの?
死に別れることを恐れるよりも
今を精一杯自由に
自分の気持ちに従って生きるべき
でしょ。
人生は冒険だ。
冒険に危険はつきものだ。
その危険を恐れては前には
進めない。
それを教えてくれたのは
お母さんでしょ。」

エリーは、
「お母さんが間違っていたわ」と
いう。
エマは「お母さんは間違っていないわ。
だって教えてくれたのはお母さんだもの。」

エリーは、「本当にそうだわ。
なぜ忘れていたのかしら。
ああ、エマごめんなさいね。」
エリーはエマを抱いて泣いた。


エマは二人のことを許してくれたと
一馬に話した。
エマのアドベンチャーを楽しみなさいと
エリーが言った。
「我が家の家訓なのよ。
Life is an adventure」
二人は笑った。

政春にその話をしたエリー。
政春はジョージのことを知らなかった。
ほんとうは秘密にしておきたかったと
いう。
「黙っていてごめんなさい。
ジョージがいなくなってずっと
恋愛をすることが怖かった。
そんなとき、マッサンに出会った。

マッサンのことは神様からの
プレゼントだと思った。
ジョージがいなくなって
パパがなくなって
マッサンがいなかったら私はどう
なっていたのか・・・
だから、私は神様に感謝した。
マッサンにも感謝した。
いまでも感謝している。
ずっと変わらない。

あのとき、いってくれたこと
覚えてる?」

エリーにプロポーズをした
政春にエリーは
「一つ約束して」といった。

「私より先に死なないで。」

政春はうなずいた。

政春は
思い出して「そういう意味だったのか」と
納得した。

「マッサン・・・
私と出会ってくれて
ありがとう。
妻にしてくれて母にもしてくれて
ほんとうにありがとう。」

政春とエリーは抱きあった。
その時
無粋なことに
いきなり
俊夫がガラス戸をあけて
「お坊ちゃま!!!
エリーさん!!!」
と大声で言いながら入って来た。

そして二人を見て
「申し訳ありません。出直します」と言って
帰ろうとした。

「どうしたんじゃ???」
政春が聞いた。

俊夫は、「そういうわけには
いかんのじゃ。」
といった。

森野の家にいくと熊虎がたっていた。
ハナが来た。
一馬が来た。

郵便屋らしき人が
「森野一馬さんですか?」と聞く。

「はい・・・。」

「おめでとうございます。
召集令状です。」

封筒の中から
赤い紙がでてきた。
それは森野一馬を戦争へいくことを
命令する文書だった。

確かに森野一馬と書いてあった。

みんな無言だった。

一馬はじっとみた。

エマも・・・・・
恐れていた
事態を知った・・・。
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サブタイトルの物言えば唇寒し
秋の風とあるけど
これは、エリーの気持ちなのかと
思った。
なにをいっても聞いてくれない。
エマも、政春も・・みんなも・・。
エリーは、エマがそれほど精神的に
強いわけではなく
戦争で初恋のジョージを失った
悲しみを乗り越えた辛さを
分かって欲しいと思っても
エマは、前向きに死を恐れては
いけないという。
確かにそのとおりであるが・・・。
悲しみは悲しみなのである。

また、エマと和解しても
ジョージのことで政春に嫉妬された
ことは、エリーにとっては計算外。

それほど、エリーを愛しているってこと
かもしれないけど、
ジョージとの別れがあってこそ
政春との出会いがあったことを
深く理解するべきなのに。

それを説明するエリーの一生懸命
のラブが
またまた、悲しいと思った。