物言えば唇寒し秋の風4
「私一馬さんに恋をしているの・・」
エマの初恋にえーとマッサンは驚いた。
まだ子供だとばかり思っている
からだった。
しかも、一馬も・・・同じ思いだった。
工場のお昼がすんだ。
俊夫と熊虎、政春は
話をしていた。
俊夫は「これで工場の跡取りが
できてよかったよかった」と喜ぶ。
まだ、二人が結婚をとは決まって
いない。
熊虎は「結婚も考えないで付き合いを
させるのか?」と政春に聞く。
それを言われると、この時代、
全く不道徳になる。
エリーは、いつもの発言力がない。
ハナはまだエマは子供だといった。
同じ年の娘たちと違って
エマはまだ幼いし、純粋だ
という。
エリーはその言葉に救われた。
エリーもそう思っている。
家に帰った二人。
エリーは政春に一生懸命伝えた。
「ハナのいうとおり、エマは学業半ばで
戦争がはじまり
中途半端、世間で働いたことも
なく、何も知らない子供だ」と言い切った。
「恋に恋をしているだけだ」という。
「跡継ぎの話は別にしても
好きになったことは、なにも
言えない。」と政春。
「エマは本当の愛も知らない。
憧れているだけだ」とエリーはいった。
「私は認めません。
エマが帰って来たらよく話し合います。」
政春は驚いた。
エリーは、何か決意をもって
テーブルのアザミを見た。
その夜、エリーはこの恋は許さないと
いった。
「エマはまだ、本当のラブを知らない
しわからないでしょ。
まだ恋愛するのは早すぎる。もっと
社会を見ていろいろ勉強して。」
エリーはそういったが
エマの反論はその上を行った。
エリーが常々自分の思うがままに
やってみろといっていた。
そのとおりやっている
のに、なぜ突然そんなことを
いうのかという。
エマはエリーが嘘をついた
としか思えない。この期に及んで
矛盾している。
エリーは「エマの幸せを思って
話をしている」といったが
エマは「何もわかっていない」といった。
「自分がどんな悩みを抱えて
いるのか、何に苦しんでいるのか
何をやっても完ぺきなお母さんに
わかるはずなんかない。」
「世界中で一番エマの幸せを願って
いるのはお母さんよ」とエリーが言うが
「問題をすり替えないで」と
エマは反論した。
親子の修羅場となった。
政春は熊虎や俊夫と
森野家の囲炉裏端で飲んでいた。
俊夫は、こまかい女の子の
恋に恋する気持ちなどわからない。
これで俊夫と政春が親戚になること
に、いらぬ心配をしていた。
一馬は義理の弟でその一馬がエマと
結婚したら、政春は義理の父親になる
と面喰っていたが。
しかしながら、俊夫とハナが結婚しても
なお、一馬は俊夫を工場長と
呼び、熊虎をお父さんと言わないで
そのまま熊さんと呼んでいるので
おそらくエマと一馬が結婚しても
そのまま政春をお坊ちゃまと呼ぶだろう
という結論を自分で出した。
政春も熊虎もそれどころではない。
エリーとエマの話し合いはどうなった
のかと、心配だった。
エリーは、エマの恋愛を認めないのだ。
そこへエマが泣きながら入ってきた。
どうしてもエリーに認めてもらえないので
泣いている。
「お母さんが、お母さんが・・
大嫌い!!!!」
と言って大泣きになった。
皆がしーんとなったとき
一馬がエマに駆け寄ったが
ハナはエマを連れて自分の部屋に
いった。
「どうしたのですか?」
一馬が聞く。
「ああ・・・」政春は
答えられず・・エリーの部屋のほうを見た。
エリーはエマの幼いころの
思い出をたどっていた。
好き嫌いがひどいときに
「Ok everything ok!
ほな、なにも食べへん!!!」
とストライキを起こした時。
自分がもらわれてきた子だと知って
高熱を出して、お母さんを呼んでいた
時。
参観日に私の家族という題で作文を
書いて発表したとき。
『私の夢はいつかお母さんみたいな、大人に
なることです。』
そして
はじめてあったとき
小さなエマを抱いたときの喜び。
「パパとママをよろしく。」
思い出はとても優しいのに
現実は厳しい。
政春が帰ってきた。
ため息をついて
リビングに腰を掛けた。
「エリー、エマはハナちゃんとこにいる。
エリー、どうしたじゃ?」
政春は、「自分も手放しで喜ぶこと
はできないけど・・・恋をすることは
成長のあかしじゃ」といった。
「誰もが通る道だし、それを止めることは
できない。」
「やりたいことをやって
自由に自分らしくやって欲しいと
いつも思っている。
しかし、恋愛はまだ早い。」
「それを決めるのは自分たちではない」と
政春が言うと
エリーは大声で言った。
「私はエマのお母さん。
エマのことは私が一番よく知って
いる!!!
何でも知っている。」
「・・もう寝よう・・・
政春はエリーの異常さに驚いた。
一晩寝たらエリーも冷静に考えられる
ようになるけん。」
エリーは、「私は冷静よ」、といった。
世の中は戦争一色だった。
千人針を縫う女性たち。
中島の床屋で
熊虎と進はひげをそって
もらいながら、中島夫婦と
エマと一馬の話をしていた。
今エリーは、家から一歩も出ていない
し、エマは工場を手伝って
いるという。
親子は断絶したままだった。
「エリーさんはもっと進歩的で
自由を尊重する女だと
思っていたけど」と進が言った。
「娘のことになると別なんでしょ。」
とチエはいう。
「母親にとってはいくつになっても
子供は子供だからね。」
男親と女親では感じ方が違う
というが
三郎は「エリーさんはあの特高事件
以来、病んでしまっているのでは?」
といった。
「そのうえ特高にまだ見張られて
いるし、町にでたら
石をぶつけられるし」と
進が言うと三郎は
「なにしろ、鬼畜ですから」と
口を滑らせた。
熊虎はぎろっと三郎をにらんだ。
「俺が言っているわけではなくて
です」と三郎は言い訳をした。
「今度エリーのことを俺の前でそんなに
いったらただでは済まないからな!」
「わかってますって。」
三郎はおどおどしながらいった。
「困ったね・・・」
とチエは現実の話をした。
「若い二人の心にはもう火が
ついているのでしょ?」
三郎は「俺にもそんな時代があった
なぁ」というが相手はチエではないと
いったのでチエは驚いた。
「しかしこの問題は、さほど長引かないよ」
と進は言う。
「そろそろ来るから・・・・。」
熊虎は、はたと気が付いて
黙ってしまった。
「だから長引くことはねえべ」と
進は言った。
特高がエリーの家を見ている。
エリーは和室に座っていた。
そして、テーブルにいけてある
アザミの花をみていた。
********************
エリーの反対の仕方はなにかわけがある
と思います。
何かわけがあるからこのような
反対をするのです。
エマの戦争への憎しみは大きくて
いくら愛国心教育をしても
おかしいと思っている。
しかし、そのことを口に出して言えば
まわりにめいわくがかかる。
それでなくてもエマの母親は
鬼畜米英といわれる英国のスコット
ランド人である。
政春のおかげで、エリーもエマも
着るものには不自由
をしているふうではなく、
食べ物にも不自由をしている
ふうではない。
着ているものが人よりちょっと
いいものである。
食べ物もいいものを食べている
と思われる。
勤労奉仕への苦痛と
先輩のいじめでいっぱいになって
いるエマだったが、これをなぜ
エリーと政春に言わなかったのか。
結局は母親が外人だからと
いうことでいじめられていると
エリーを悲しませたくなかった
のだろう。
じゃ、勤労奉仕などしないで
最初から工場で働いたら
よかったのにと思った。
ほんとうにエマはエリーの
いうとおり、恋に恋をしている
だけなのかな???
「私一馬さんに恋をしているの・・」
エマの初恋にえーとマッサンは驚いた。
まだ子供だとばかり思っている
からだった。
しかも、一馬も・・・同じ思いだった。
工場のお昼がすんだ。
俊夫と熊虎、政春は
話をしていた。
俊夫は「これで工場の跡取りが
できてよかったよかった」と喜ぶ。
まだ、二人が結婚をとは決まって
いない。
熊虎は「結婚も考えないで付き合いを
させるのか?」と政春に聞く。
それを言われると、この時代、
全く不道徳になる。
エリーは、いつもの発言力がない。
ハナはまだエマは子供だといった。
同じ年の娘たちと違って
エマはまだ幼いし、純粋だ
という。
エリーはその言葉に救われた。
エリーもそう思っている。
家に帰った二人。
エリーは政春に一生懸命伝えた。
「ハナのいうとおり、エマは学業半ばで
戦争がはじまり
中途半端、世間で働いたことも
なく、何も知らない子供だ」と言い切った。
「恋に恋をしているだけだ」という。
「跡継ぎの話は別にしても
好きになったことは、なにも
言えない。」と政春。
「エマは本当の愛も知らない。
憧れているだけだ」とエリーはいった。
「私は認めません。
エマが帰って来たらよく話し合います。」
政春は驚いた。
エリーは、何か決意をもって
テーブルのアザミを見た。
その夜、エリーはこの恋は許さないと
いった。
「エマはまだ、本当のラブを知らない
しわからないでしょ。
まだ恋愛するのは早すぎる。もっと
社会を見ていろいろ勉強して。」
エリーはそういったが
エマの反論はその上を行った。
エリーが常々自分の思うがままに
やってみろといっていた。
そのとおりやっている
のに、なぜ突然そんなことを
いうのかという。
エマはエリーが嘘をついた
としか思えない。この期に及んで
矛盾している。
エリーは「エマの幸せを思って
話をしている」といったが
エマは「何もわかっていない」といった。
「自分がどんな悩みを抱えて
いるのか、何に苦しんでいるのか
何をやっても完ぺきなお母さんに
わかるはずなんかない。」
「世界中で一番エマの幸せを願って
いるのはお母さんよ」とエリーが言うが
「問題をすり替えないで」と
エマは反論した。
親子の修羅場となった。
政春は熊虎や俊夫と
森野家の囲炉裏端で飲んでいた。
俊夫は、こまかい女の子の
恋に恋する気持ちなどわからない。
これで俊夫と政春が親戚になること
に、いらぬ心配をしていた。
一馬は義理の弟でその一馬がエマと
結婚したら、政春は義理の父親になる
と面喰っていたが。
しかしながら、俊夫とハナが結婚しても
なお、一馬は俊夫を工場長と
呼び、熊虎をお父さんと言わないで
そのまま熊さんと呼んでいるので
おそらくエマと一馬が結婚しても
そのまま政春をお坊ちゃまと呼ぶだろう
という結論を自分で出した。
政春も熊虎もそれどころではない。
エリーとエマの話し合いはどうなった
のかと、心配だった。
エリーは、エマの恋愛を認めないのだ。
そこへエマが泣きながら入ってきた。
どうしてもエリーに認めてもらえないので
泣いている。
「お母さんが、お母さんが・・
大嫌い!!!!」
と言って大泣きになった。
皆がしーんとなったとき
一馬がエマに駆け寄ったが
ハナはエマを連れて自分の部屋に
いった。
「どうしたのですか?」
一馬が聞く。
「ああ・・・」政春は
答えられず・・エリーの部屋のほうを見た。
エリーはエマの幼いころの
思い出をたどっていた。
好き嫌いがひどいときに
「Ok everything ok!
ほな、なにも食べへん!!!」
とストライキを起こした時。
自分がもらわれてきた子だと知って
高熱を出して、お母さんを呼んでいた
時。
参観日に私の家族という題で作文を
書いて発表したとき。
『私の夢はいつかお母さんみたいな、大人に
なることです。』
そして
はじめてあったとき
小さなエマを抱いたときの喜び。
「パパとママをよろしく。」
思い出はとても優しいのに
現実は厳しい。
政春が帰ってきた。
ため息をついて
リビングに腰を掛けた。
「エリー、エマはハナちゃんとこにいる。
エリー、どうしたじゃ?」
政春は、「自分も手放しで喜ぶこと
はできないけど・・・恋をすることは
成長のあかしじゃ」といった。
「誰もが通る道だし、それを止めることは
できない。」
「やりたいことをやって
自由に自分らしくやって欲しいと
いつも思っている。
しかし、恋愛はまだ早い。」
「それを決めるのは自分たちではない」と
政春が言うと
エリーは大声で言った。
「私はエマのお母さん。
エマのことは私が一番よく知って
いる!!!
何でも知っている。」
「・・もう寝よう・・・
政春はエリーの異常さに驚いた。
一晩寝たらエリーも冷静に考えられる
ようになるけん。」
エリーは、「私は冷静よ」、といった。
世の中は戦争一色だった。
千人針を縫う女性たち。
中島の床屋で
熊虎と進はひげをそって
もらいながら、中島夫婦と
エマと一馬の話をしていた。
今エリーは、家から一歩も出ていない
し、エマは工場を手伝って
いるという。
親子は断絶したままだった。
「エリーさんはもっと進歩的で
自由を尊重する女だと
思っていたけど」と進が言った。
「娘のことになると別なんでしょ。」
とチエはいう。
「母親にとってはいくつになっても
子供は子供だからね。」
男親と女親では感じ方が違う
というが
三郎は「エリーさんはあの特高事件
以来、病んでしまっているのでは?」
といった。
「そのうえ特高にまだ見張られて
いるし、町にでたら
石をぶつけられるし」と
進が言うと三郎は
「なにしろ、鬼畜ですから」と
口を滑らせた。
熊虎はぎろっと三郎をにらんだ。
「俺が言っているわけではなくて
です」と三郎は言い訳をした。
「今度エリーのことを俺の前でそんなに
いったらただでは済まないからな!」
「わかってますって。」
三郎はおどおどしながらいった。
「困ったね・・・」
とチエは現実の話をした。
「若い二人の心にはもう火が
ついているのでしょ?」
三郎は「俺にもそんな時代があった
なぁ」というが相手はチエではないと
いったのでチエは驚いた。
「しかしこの問題は、さほど長引かないよ」
と進は言う。
「そろそろ来るから・・・・。」
熊虎は、はたと気が付いて
黙ってしまった。
「だから長引くことはねえべ」と
進は言った。
特高がエリーの家を見ている。
エリーは和室に座っていた。
そして、テーブルにいけてある
アザミの花をみていた。
********************
エリーの反対の仕方はなにかわけがある
と思います。
何かわけがあるからこのような
反対をするのです。
エマの戦争への憎しみは大きくて
いくら愛国心教育をしても
おかしいと思っている。
しかし、そのことを口に出して言えば
まわりにめいわくがかかる。
それでなくてもエマの母親は
鬼畜米英といわれる英国のスコット
ランド人である。
政春のおかげで、エリーもエマも
着るものには不自由
をしているふうではなく、
食べ物にも不自由をしている
ふうではない。
着ているものが人よりちょっと
いいものである。
食べ物もいいものを食べている
と思われる。
勤労奉仕への苦痛と
先輩のいじめでいっぱいになって
いるエマだったが、これをなぜ
エリーと政春に言わなかったのか。
結局は母親が外人だからと
いうことでいじめられていると
エリーを悲しませたくなかった
のだろう。
じゃ、勤労奉仕などしないで
最初から工場で働いたら
よかったのにと思った。
ほんとうにエマはエリーの
いうとおり、恋に恋をしている
だけなのかな???
