物言えば唇寒し秋の風1
1943年昭和18年秋。
日本がエリーの国スコットランドなど
連合国と戦争に突入して二年。
女学校を卒業したエマは
勤労奉仕で兵隊さんが着る軍服を
作っていた。
一斉にミシンを動かす女性たち。
一言も何も言わずにただひたすらミシンを
動かしている・・・。
中島の床屋ではラジオが軍歌を
流していた。「北海の御盾とたちて二千余士・・」
中島は客の
少年の頭をくるくるにかりあげ
「さぁ、できたよ」といった。
少年は「ありがとうございます」といった。
「しっかり頼むよ」と中島。
「体に気を付けてね」とチエが言った。
「お国のために力いっぱい頑張って
きます。」
いつものように将棋をしていた
熊虎と進は少年が店を出る
とき、 万歳を三唱した。
ラジオは勇ましい軍歌を流し続けている。
「五月十二日暁こむる霧・・・」
少年は敬礼をした。
熊虎たちは頭を下げた。
少年は出て行った。
「また、男が出て行ったな。」
中島は美容室に変えようかと
いった。
チエは「欲しがりません、勝つまでは」
と厳しい口調で言う。
もう一人客がいた。
一馬だった。
厳しい顔をして考え事を
していた。
工場では政春がブレンドをしていた。
お昼の鐘が鳴った。
俊夫が入って来た。
お昼食べに行こうといった。
政春は「もう少しやるから
先に行っててくれ」といった。
俊夫は「品質は問わない
と海軍に言われているのに
熱心に何をブレンドして
いるのか」と聞く。
政春は、「未来のためにブレンドをして
いる」といった。
「遠い10年、20年の後の未来に
世に出る原酒をブレンドして
置く」という。
「その時わしらは生きているかな」と
俊夫が言う。
政春は「俊兄は生きている」といった。
「憎まれっ子世にはばかると
いうから・・・」と軽口を言った。
俊夫は「うーんなるほど」と
納得して、「それじゃわしは
永遠に死ぬことはできんような気が・・・。
何でじゃ!!!たまげるわぁ。」
と自分でぼけて自分で突っ込んだ。
あははははと二人は
笑った。
俊夫は「それはいいけど
その時だれがブレンドをしているのか」
と聞いた。
政春は、はたと答えに困った。
「お坊ちゃまだって年を取る。
鼻も舌もききにくくなる。
その時はどうするのか」と聞く。
政春は「まだそんなことは考えて
いない」といった。
俊夫は「エマお嬢様に婿を取って
この工場を継がせるおつもりでしょうが。」
と当然のように言う。
政春ははっとした。
「エマに婿?そがなことはまだまだ」
と言ってあわてたのか
ブレンドしている原酒をぐいっと
やってしまった。
こほこほと咳き込むので
「ああ~~」と俊夫は顔をしかめた。
「ブレンダ―は一朝一夕になれるもんじゃ
ありません。
婿探しをそろそろ考えたほうが
ええんじゃないですか?」
政春は、大きな目をきょろきょろと
して、困った顔をした。
そんな時に海軍の将校が来た。
「ごくろうさんでがんす」と
俊夫は立ち上がった。
政春も立ち上がった。
将校の用事は葡萄酒を作って
もらいたいということだった。
ウヰスキーも男手がないなか
大変なのに、この上ワインとは?
と政春は怪訝そうに将校
にたずねた。
将校は「葡萄酒を飲みたいという
わけではない」という。
必要なのは酒石酸だといった。
ワインを作る過程でできる
物質である。
それを取り除いてワインが
出来上がるということだが。
それを冬を迎える前に納品して
欲しいといった。
森野の囲炉裏端で遅い昼を食べる
エリー、政春、俊夫、一馬だった。
その話を政春がした。
「艦船や潜水艦の音波探知機に使うらしい」
と政春が理由を言った。
一馬はそれを理解して俊夫に説明
した。
「粗酒石に加里ソーダを化合させると
ロッシェル塩という少し大きな結晶が
精製されます。
このロッシェル塩が音波をすばやく
とらえる特性があるんです。」
つまりワインよりその過程にできる
酒石酸がほしいということを
いうていると政春はいう。
「なるほどのう~~~」と俊夫はいった。
ハナは「俊夫さんは意味わかっているの?」と聞く。
「さっぱりわからん。」
政春は「気が乗らないな」という。
「ウヰスキー増産で人手がたりない
なか、冬を迎える前に納品は
できない」といった。
しかし、海軍指定工場だから
断るわけにはいかない。
「俺に任せてくれませんか?」
と一馬が言う。
「余市の近くでは山葡萄が取れるし
葡萄酒を作る方法は
前に本で読んだことがあるから」と
いった。
俊夫は「それだったらわしだってリンゴ
ワインを作っていた」と反論。
しかし冬になる前に酒石酸をとるとなると
リンゴでは間に合わない。
政春は「よっしゃ。一馬に任せてみよう」と
いった。「うまいこと行くかどうかは
二の次じゃ。
何より一馬が自分からやってみたいと
言うてくれたことが
わしはうれしいんじゃ。」
と笑いながら政春は言う。
「いうだけじゃったら誰でもいれる
けどのう。」と俊夫。
「ありがとうございます。
だったらすぐに山葡萄を仕入れに
行ってきます。」と立ち上がった。
エリーは、笑って「一馬がんばって」と
いった、
さて
こちらは
エマは・・・
みんなが
終わってもなおまだミシンを
踏んでいた。
それゆえ、エマの班は帰れない。
エマが終わるのを待っている。
すると班長らしき娘がやって
きて、エマに嫌ごとを言う。
「亀山さんまだできてないの?」
「すみません・・・」
エマが言ったのでよしえが
「今日はミシンの調子が悪くて」と
いって助け舟を出した。
「精神がたるんでいるからじゃない?」
と責めた。
もう一人の女性がいった。
「あなた学生の頃戦争は愚かな行為だと
いったことがあるそうね。
まさか、今でもそう思っているの?」
「そんなことは思って・・・」
とよしえが助け舟を出そうとした。
「よしえさんは黙っていて!」と
先の娘が言う。
「どうなの?」と二番目の娘が
意地悪そうに聞いた。
「思っていません。」
エマは小さな声で答えた。
先の娘が
「じゃ鬼畜米英を一日も早く撃滅
することを
・・
心から
願ってる???」
と、また意地悪そうに聞く。
「はい、願っています・・・」
これも小さな声でエマは答えた。
自転車で家に帰るエマ。
ふりむくと後ろに特高が
ついてきている。
そこへ「お帰り」と一馬が山葡萄を
もって現れた。
「どうしたんだ?」
と一馬はエマの様子がおかしいので
聞いた。特高がつけているのも
しっている。
工場に入ってエマは一馬に
思いを話した。
勤労奉仕に行きたくないこと。
戦争に使うふくなんて作りたく
ないこと。
今はエリーのスパイ事件もあって
はっきりと戦争は嫌だと思うと
エマは言った。
「言いたいことも言えない。
やりたいこともやれない。
じゃ、私はなんなの?
私もお父さんのように大きな
夢を持ちたい。
お母さんのように行動的で
強い勇気を持った人になりたい。」
一馬は山葡萄を洗いながら聞いていた。
「でも、何も見つけられない。
夢も希望ももてない自分が情けなくて。」
「驚いたな。
エマはまだまだ子供だと
思っていたのに。」
「ひどい、一馬さんまでそんなことを。」
「どういうこと?」
エマは座っていた椅子を椅子ごと
あるいて
一馬のそばまで移動した。
「勤労奉仕が嫌ならうちの工場を
手伝えばいいってお父さんが言った」
ということ。
「お母さんは戦争を言い訳にしては
だめ。英語を勉強したかったら
家の中で教えてあげるって・・
まるで子ども扱い。」
「あははは、そんなことはない。
エマはずいぶん成長した。
それにエマだけではないよ。
今の時代に悩みを抱えて生きているのは。」
「一馬さんも??」
一馬は
何も言わずに白衣を着た。
エマは、「何を作るの?」と聞いた。
「葡萄酒を作るんだ」と一馬は
答えた。
そのことがうれしいのか、その責任者
だといった。
エマは「一馬さん出世したのね」と
いった。
「生意気言って・・・」と一馬は
エマに笑って言った。
エマも笑顔になった。
一馬は「困ったことがあったら何でも
相談しろよ」といった。
「相談料は一回一円だ。安いか?」
エマはあきれて、笑った。
「エマには笑顔が似合うね」と一馬が言う。
「じゃ、笑顔の見物代、一回10円」と
いってエマは手を出した。
「おいおい。」と一馬がいうと
「安すぎるかしら」と笑った。
そのころ、エリーはエマの部屋に洗濯物を
持ってはいった。
エンピツがころがっていたり
机の上が汚かったりするので
つい、引出しをあけると
ごちゃごちゃになっている。
エリーは驚いて整理整頓を始めた。
「ただいまぁ~~~」とエマが
帰ってきた。
明るくリビングに入ると政春が
「おお、えろう元気じゃのう。なんか
ええことあったんか?」と聞く。
「ふふふ・・・」と笑って部屋に行った。
「ええ?エマ?」と政春は
エマの後姿にいった。
部屋に入るとエリーが机の前にいる。
「なにしているの?」と
エマが言う。
「今机のなか、片付けてあげてる」と
いった。
エマは先ほどの笑顔はどこへやら。
「大丈夫自分でやるから」といった。
エリーが持っていたものを
とりあげて
「勝手に引き出しあけないで」と
いった。
エリーは、「なにもみてない、片付けて
いただけ」というが。
「わたしもう子供じゃないんだよ」
というと「そんなことわかっている」と
エリーは答えた。
「もう出て行って、自分のことは自分で
やります!!」
といってエリーを部屋から追い出し
ドアを閉めた。
エリーはなにがなにやら?
ただ片づけていただけなのに。
政春に言うと、エマにはエマの
気持ちがあるという。
「勤労奉仕で嫌なことがあった
のかな」とエリーはいうが
「帰ってきたときはご機嫌だった」と
政春は言った。
エリーは「できることなら一緒に
行きたい」といった。
政春は「表には特高がいるし
一日家の中にいるからイライラするのは
わかるけど」というと
エリーはイライラしているので
「そういう意味ではない」と声を荒げた。
「私は平気、ただエマのことを心配して
いるだけ。」といった。
エマは部屋のドアを少し開けて
その話を聞いていた。
仲のいい母と娘の間に
何やら不穏な空気が漂って
きた。
********************
はい、ただの反抗期です。
ちょっと距離を置く必要が
あります。
子ども扱いはエマのプライドを
傷つけます。
子供が大人になる過程で
親子の葛藤はどこにでもある
ことです。
しかし・・・・
一馬とエマは年の差
いくつだろう????
10歳位かな???
これが初恋?
エマの婿取りの話が合ったけど
一馬は条件にあうかもしれない。
が、
彼は何やら、悩んでいます・・・・。
1943年昭和18年秋。
日本がエリーの国スコットランドなど
連合国と戦争に突入して二年。
女学校を卒業したエマは
勤労奉仕で兵隊さんが着る軍服を
作っていた。
一斉にミシンを動かす女性たち。
一言も何も言わずにただひたすらミシンを
動かしている・・・。
中島の床屋ではラジオが軍歌を
流していた。「北海の御盾とたちて二千余士・・」
中島は客の
少年の頭をくるくるにかりあげ
「さぁ、できたよ」といった。
少年は「ありがとうございます」といった。
「しっかり頼むよ」と中島。
「体に気を付けてね」とチエが言った。
「お国のために力いっぱい頑張って
きます。」
いつものように将棋をしていた
熊虎と進は少年が店を出る
とき、 万歳を三唱した。
ラジオは勇ましい軍歌を流し続けている。
「五月十二日暁こむる霧・・・」
少年は敬礼をした。
熊虎たちは頭を下げた。
少年は出て行った。
「また、男が出て行ったな。」
中島は美容室に変えようかと
いった。
チエは「欲しがりません、勝つまでは」
と厳しい口調で言う。
もう一人客がいた。
一馬だった。
厳しい顔をして考え事を
していた。
工場では政春がブレンドをしていた。
お昼の鐘が鳴った。
俊夫が入って来た。
お昼食べに行こうといった。
政春は「もう少しやるから
先に行っててくれ」といった。
俊夫は「品質は問わない
と海軍に言われているのに
熱心に何をブレンドして
いるのか」と聞く。
政春は、「未来のためにブレンドをして
いる」といった。
「遠い10年、20年の後の未来に
世に出る原酒をブレンドして
置く」という。
「その時わしらは生きているかな」と
俊夫が言う。
政春は「俊兄は生きている」といった。
「憎まれっ子世にはばかると
いうから・・・」と軽口を言った。
俊夫は「うーんなるほど」と
納得して、「それじゃわしは
永遠に死ぬことはできんような気が・・・。
何でじゃ!!!たまげるわぁ。」
と自分でぼけて自分で突っ込んだ。
あははははと二人は
笑った。
俊夫は「それはいいけど
その時だれがブレンドをしているのか」
と聞いた。
政春は、はたと答えに困った。
「お坊ちゃまだって年を取る。
鼻も舌もききにくくなる。
その時はどうするのか」と聞く。
政春は「まだそんなことは考えて
いない」といった。
俊夫は「エマお嬢様に婿を取って
この工場を継がせるおつもりでしょうが。」
と当然のように言う。
政春ははっとした。
「エマに婿?そがなことはまだまだ」
と言ってあわてたのか
ブレンドしている原酒をぐいっと
やってしまった。
こほこほと咳き込むので
「ああ~~」と俊夫は顔をしかめた。
「ブレンダ―は一朝一夕になれるもんじゃ
ありません。
婿探しをそろそろ考えたほうが
ええんじゃないですか?」
政春は、大きな目をきょろきょろと
して、困った顔をした。
そんな時に海軍の将校が来た。
「ごくろうさんでがんす」と
俊夫は立ち上がった。
政春も立ち上がった。
将校の用事は葡萄酒を作って
もらいたいということだった。
ウヰスキーも男手がないなか
大変なのに、この上ワインとは?
と政春は怪訝そうに将校
にたずねた。
将校は「葡萄酒を飲みたいという
わけではない」という。
必要なのは酒石酸だといった。
ワインを作る過程でできる
物質である。
それを取り除いてワインが
出来上がるということだが。
それを冬を迎える前に納品して
欲しいといった。
森野の囲炉裏端で遅い昼を食べる
エリー、政春、俊夫、一馬だった。
その話を政春がした。
「艦船や潜水艦の音波探知機に使うらしい」
と政春が理由を言った。
一馬はそれを理解して俊夫に説明
した。
「粗酒石に加里ソーダを化合させると
ロッシェル塩という少し大きな結晶が
精製されます。
このロッシェル塩が音波をすばやく
とらえる特性があるんです。」
つまりワインよりその過程にできる
酒石酸がほしいということを
いうていると政春はいう。
「なるほどのう~~~」と俊夫はいった。
ハナは「俊夫さんは意味わかっているの?」と聞く。
「さっぱりわからん。」
政春は「気が乗らないな」という。
「ウヰスキー増産で人手がたりない
なか、冬を迎える前に納品は
できない」といった。
しかし、海軍指定工場だから
断るわけにはいかない。
「俺に任せてくれませんか?」
と一馬が言う。
「余市の近くでは山葡萄が取れるし
葡萄酒を作る方法は
前に本で読んだことがあるから」と
いった。
俊夫は「それだったらわしだってリンゴ
ワインを作っていた」と反論。
しかし冬になる前に酒石酸をとるとなると
リンゴでは間に合わない。
政春は「よっしゃ。一馬に任せてみよう」と
いった。「うまいこと行くかどうかは
二の次じゃ。
何より一馬が自分からやってみたいと
言うてくれたことが
わしはうれしいんじゃ。」
と笑いながら政春は言う。
「いうだけじゃったら誰でもいれる
けどのう。」と俊夫。
「ありがとうございます。
だったらすぐに山葡萄を仕入れに
行ってきます。」と立ち上がった。
エリーは、笑って「一馬がんばって」と
いった、
さて
こちらは
エマは・・・
みんなが
終わってもなおまだミシンを
踏んでいた。
それゆえ、エマの班は帰れない。
エマが終わるのを待っている。
すると班長らしき娘がやって
きて、エマに嫌ごとを言う。
「亀山さんまだできてないの?」
「すみません・・・」
エマが言ったのでよしえが
「今日はミシンの調子が悪くて」と
いって助け舟を出した。
「精神がたるんでいるからじゃない?」
と責めた。
もう一人の女性がいった。
「あなた学生の頃戦争は愚かな行為だと
いったことがあるそうね。
まさか、今でもそう思っているの?」
「そんなことは思って・・・」
とよしえが助け舟を出そうとした。
「よしえさんは黙っていて!」と
先の娘が言う。
「どうなの?」と二番目の娘が
意地悪そうに聞いた。
「思っていません。」
エマは小さな声で答えた。
先の娘が
「じゃ鬼畜米英を一日も早く撃滅
することを
・・
心から
願ってる???」
と、また意地悪そうに聞く。
「はい、願っています・・・」
これも小さな声でエマは答えた。
自転車で家に帰るエマ。
ふりむくと後ろに特高が
ついてきている。
そこへ「お帰り」と一馬が山葡萄を
もって現れた。
「どうしたんだ?」
と一馬はエマの様子がおかしいので
聞いた。特高がつけているのも
しっている。
工場に入ってエマは一馬に
思いを話した。
勤労奉仕に行きたくないこと。
戦争に使うふくなんて作りたく
ないこと。
今はエリーのスパイ事件もあって
はっきりと戦争は嫌だと思うと
エマは言った。
「言いたいことも言えない。
やりたいこともやれない。
じゃ、私はなんなの?
私もお父さんのように大きな
夢を持ちたい。
お母さんのように行動的で
強い勇気を持った人になりたい。」
一馬は山葡萄を洗いながら聞いていた。
「でも、何も見つけられない。
夢も希望ももてない自分が情けなくて。」
「驚いたな。
エマはまだまだ子供だと
思っていたのに。」
「ひどい、一馬さんまでそんなことを。」
「どういうこと?」
エマは座っていた椅子を椅子ごと
あるいて
一馬のそばまで移動した。
「勤労奉仕が嫌ならうちの工場を
手伝えばいいってお父さんが言った」
ということ。
「お母さんは戦争を言い訳にしては
だめ。英語を勉強したかったら
家の中で教えてあげるって・・
まるで子ども扱い。」
「あははは、そんなことはない。
エマはずいぶん成長した。
それにエマだけではないよ。
今の時代に悩みを抱えて生きているのは。」
「一馬さんも??」
一馬は
何も言わずに白衣を着た。
エマは、「何を作るの?」と聞いた。
「葡萄酒を作るんだ」と一馬は
答えた。
そのことがうれしいのか、その責任者
だといった。
エマは「一馬さん出世したのね」と
いった。
「生意気言って・・・」と一馬は
エマに笑って言った。
エマも笑顔になった。
一馬は「困ったことがあったら何でも
相談しろよ」といった。
「相談料は一回一円だ。安いか?」
エマはあきれて、笑った。
「エマには笑顔が似合うね」と一馬が言う。
「じゃ、笑顔の見物代、一回10円」と
いってエマは手を出した。
「おいおい。」と一馬がいうと
「安すぎるかしら」と笑った。
そのころ、エリーはエマの部屋に洗濯物を
持ってはいった。
エンピツがころがっていたり
机の上が汚かったりするので
つい、引出しをあけると
ごちゃごちゃになっている。
エリーは驚いて整理整頓を始めた。
「ただいまぁ~~~」とエマが
帰ってきた。
明るくリビングに入ると政春が
「おお、えろう元気じゃのう。なんか
ええことあったんか?」と聞く。
「ふふふ・・・」と笑って部屋に行った。
「ええ?エマ?」と政春は
エマの後姿にいった。
部屋に入るとエリーが机の前にいる。
「なにしているの?」と
エマが言う。
「今机のなか、片付けてあげてる」と
いった。
エマは先ほどの笑顔はどこへやら。
「大丈夫自分でやるから」といった。
エリーが持っていたものを
とりあげて
「勝手に引き出しあけないで」と
いった。
エリーは、「なにもみてない、片付けて
いただけ」というが。
「わたしもう子供じゃないんだよ」
というと「そんなことわかっている」と
エリーは答えた。
「もう出て行って、自分のことは自分で
やります!!」
といってエリーを部屋から追い出し
ドアを閉めた。
エリーはなにがなにやら?
ただ片づけていただけなのに。
政春に言うと、エマにはエマの
気持ちがあるという。
「勤労奉仕で嫌なことがあった
のかな」とエリーはいうが
「帰ってきたときはご機嫌だった」と
政春は言った。
エリーは「できることなら一緒に
行きたい」といった。
政春は「表には特高がいるし
一日家の中にいるからイライラするのは
わかるけど」というと
エリーはイライラしているので
「そういう意味ではない」と声を荒げた。
「私は平気、ただエマのことを心配して
いるだけ。」といった。
エマは部屋のドアを少し開けて
その話を聞いていた。
仲のいい母と娘の間に
何やら不穏な空気が漂って
きた。
********************
はい、ただの反抗期です。
ちょっと距離を置く必要が
あります。
子ども扱いはエマのプライドを
傷つけます。
子供が大人になる過程で
親子の葛藤はどこにでもある
ことです。
しかし・・・・
一馬とエマは年の差
いくつだろう????
10歳位かな???
これが初恋?
エマの婿取りの話が合ったけど
一馬は条件にあうかもしれない。
が、
彼は何やら、悩んでいます・・・・。
