遠くて近きは男女の仲6
英一郎の葬儀で大阪にいっていた
政春。
そのとき、出資者の渡と野々村を
尋ねた。

そして、リンゴブランデーの蒸溜のため
に、10万円の増資を彼らに願った。

渡は、ウイスキーを造るわけではないやろな?
という。自分はウイスキーづくりのために
出資したわけではないという。
政春は作りません、とはっきりいった。
渡はわかりました。10万円出資しましょうと
いった。
リンゴブランデーを作る蒸留器を
設置するために
10万円の増資をもらった政春は
ある賭けに出ようとしていました。


そして、今日は俊夫とハナの結婚式
です。

昨日は葬式、今日は結婚式。
生きているといろんなことがあります。
この結婚式の仲人は政春とエリーだった。

みうちでささやかにというが
それでも森野の親戚と
身近な人たちが
あつまった。
森野の囲炉裏端のある大部屋で
結婚式は行われた。

俊夫はそわそわしている。
そこに、ハナがエリーに手を取られて
現れた。
文金高島田のすばらしい花嫁だった。
エリーも黒留め袖をきている。
何の違和感もない。
拍手と歓声が沸いた。

俊夫はあっけにとられた顔をした。

進がみちがえたぞ、べっぴんさんと
声を上げた。
みんな笑った。
熊虎はしかめっ面をしている。
俊夫はじっとハナに見とれていた。

そして三々九度の盃の儀式があった。

お酒をつぐのはエマだった。

そしてにぎやかな酒宴と
なった。エマはよしえとチエと
遊んでいる。

そして政春は新婁新婦からのみなさんへの
挨拶をしてもらいますと
いった。
俊夫は何を言ったらいいのかわからない。
あわてる俊夫に思ったことをいったらいいと
政春はアドバイスをした。

俊は立ち上がってしばらくして
大声で

うれしいです!!!!

といった。

笑い声が聞こえた。

みなさん、ありがとうがんした!

涙声で俊夫が言って頭を下げた。

「うん!!」
という声と拍手がわいた。
「果報者じゃ、果報者じゃ」と
俊夫はたたえられた。
次はハナの番だった。

「つぎ、ハナちゃん!!」

「はい。
みなさん、本日はお忙しいなか
ありがとうございます。
これから二人で力を合わせ助け合って
幸せな家庭をきづいていきたいと
思います。
・・・
お父ちゃん??」

熊虎は、「うん?」と返事をした。

「今日まで育ててくれてありがとう。
今までずっと散々迷惑かけて
ごめんなさい・・・・って・・」

熊虎は「うんうん」と頭を縦に振っていたが

「と言いたいところだけど
正直、おらのほうが散々迷惑を
かけられっぱなしだった。」

「確かになぁ」と進の声に
わぁっと笑い声が沸いた。

「だけど、おら、お父ちゃんの
娘に生まれてよかった。

お父ちゃんはおらが幸せになるかどうか心配
していたけど、大丈夫、おらの幸せは
おらが決めるから。誰に何をいわれても
後悔しねぇ。」

熊虎の顔が涙で崩れ始めた。

「絶対幸せになってやっから、安心して。」

熊虎は「うんうん」と首を縦に振った。

ハナは涙で、「今まで本当に
ありがとうございました・・・。」

と結んだ。

拍手が沸いたが熊虎は泣き声を上げた。

そして「ハナ、心配すんな。
嫁に行ってもな。これからさきもっと
もっとめいわくをかけてやっから!」

大きな笑い声となった。
「お父ちゃん」、とハナはたしなめた。

俊夫が熊虎をゆびさして笑ったので
熊虎はそれを見て
「何を笑ってんだ!!!」
と怒った。
俊夫は、はっとした。
「おめえが笑うことねぇべ!!!」
一同「ああ~~~」と驚いた。
熊虎は立ち上がって新郎の俊夫の
そばに怒りながら近寄っていった。
ハナは、おどろいて 
「ちょっとお父ちゃん」
と、止めようとした。

明らかにぶん殴ろうとしている様子だった。
「ハナを不幸にしたらただじゃおこないからな!」
熊虎は俊夫を締め上げた。
俊夫は目を丸くした。
皆が熊虎を抑えようとした。
「熊さんやめて。」
「わかってんのかぁ!!」

「熊さん、熊さん・・・」
といっていたのはエリー
だった。

「熊さん今日はハッピーに行きましょう。」
そういうので熊虎ははっとして
「ああ」と答えた。
「ハッピーに行きましょう?」

「ほうじゃ、はっぴーじゃぁ~~と」
言いながらも

「わかってんのかぁ???」
とまた俊夫を怒鳴りつけた。

やっとのことで熊虎の怒りが
静まったところで
政春がみんなの前で宣言した。

「わしから今日というよき日に一つ
発表があります。

ウヰスキーを

造り始めることにしました。」

「おお!!」

と声が上がった。
「リンゴ汁は思うようには売れてない。
しかし、リンゴ汁やワインやゼリーの
開発をしながら
本来したかったウイスキーの開発
もしようと思う。
本場のスコットランドにも負けない
素晴らしいウイスキーを造るから

みなさん、力を貸してください
お願いします」と
頭を下げた。

俊夫は喜んだ。
皆も喜んだ。

鴨居さんと再会したことで
ウイスキーを造りたいという思いが
再び燃え上がったマッサンは
大阪の出資者を欺いて
ウイスキー造りを始めるという
賭けに出たのでした。

最後に熊虎に合わせて
ソーラン節をみんなで歌った。

そして秋が深まり
いよいよ、北海道でのウイスキー
造りが始まりました。

政春はあの英一郎から渡された
ウヰスキー研究所の看板を
仕事場に掲げた。
俊夫、一馬、エリー・・
みんな喜んだ。

そして、大阪から佐渡がホットスチルを
設置しに来てくれた。

「完成や!!」

「社長、ありがとうございます」。
政春は佐渡社長に感謝した。

これから事故や災いがなく
ウイスキーづくりができるように
お祓いもした。

政春は地元で採れる水
大麦そしてピート。
ハイランドケルトに負けない
メイドインジャパンの
ウイスキーづくりが始まったのです。
二日間水につけて目を出した大麦を
ピートを燃やした煙でいぶしながら
乾燥させていきます。

この時麦芽にしみこむ
スモーキーフレーバー
こそがマッサンがこだわる
ウイスキーです。

もう絶対失敗できないウイスキー造り。

エリーはその成功を祈り続けて
いました。
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政春が自分の気持ちを100%こめた
ウイスキーづくりを始めた。

山崎ではない。
願っていた北海道だった。
蒸溜もしっかり5年は寝かそうと
いうものだろう。
鴨居商店では3年か4年そこそこで
ウヰスキーを発売をすることになった。
意に沿わない誕生になった。
しかも、日本人の口には合わなかった。
全く売れなかった。
5年は最低寝かしていないと
コクも味も、うすっぺらいものに
なる・・・。
政春は経営のためにまだ成熟していない
原酒を使った。

ここではそんなことは
絶対にしないと決めたと思う。
こんどこそ、の思いを込めて
しかも、出資者を欺いてまで・・・。
リンゴブランデーではなく
ウイスキー造りである。
この、賭けの結果は・・・?