遠くて近きは男女の仲1
1934年昭和9年春。
北海道に遅い春がやってきました。
マッサンの工場の操業が
再開されて半年。
病院などあらたな販売先も見つかり
リンゴ汁の販売は軌道に乗りました。
エリーやエマもすっかり北海道の
暮らしに慣れました。
その中になって際立っていたのが
この二人の口げんかである。
ハナと俊夫。
俊夫が木箱を抱えて歩いて
いると、ハナが洗濯物を
干している場所に来た。
俊夫は洗濯物が入っている籠に
足を取られて転げてしまった。
「何でこんなところに置くんじゃ」と
俊夫、「ここで洗濯物を干している
事はわかっていることだ」と
ハナ。
俊夫は自分は仕事に忙しい
といい、ハナは、自分もこの仕事を
がんばっているという。
すぐに口答えするハナに俊夫は
おこり、ごめんも言えない俊夫に
ハナは怒った。
エリーはけんかを止めようと
中に入ったが、物を投げたりして
ますます厳しくなった。
喧嘩するほど仲がいいと言いますが
この二人はどうなんでしょう?
そこへ二人の紳士がやってきた。
みなれない人である。
しかめっつらをして森野家の囲炉裏端に
座っている二人。
政春と一馬がやってきて挨拶をした。
「これはどういうことですか?
果汁100%の汁だというのに
いったい何を混ぜているのか」と
怒って聞く。
瓶の中を見ると透明ではない。
なにか浮いている。
「ゴミみたいなのが浮いているでしょ」と
男は言った。
瓶をひっくり返してシェイクして
みるとその正体がわかった。
一馬は「ペクチンです」という。
天然の糖類である。
「ペクチンが凝固したものと
思われます」といった。
政春は
「白濁したのはむしろ天然の証拠で
品質にはなにも影響はない」といった。
「このかびは?」
と男が畳み掛けるようにきく。
瓶のシールにカビが生えている。
おそらく長旅の間に
温度管理も行き届かず
水分がシールについて
カビが発生したらしい。
「商品が東京についたとき
カビが生えていて
売り物にならない」と返品されたと
いう。
「東京行は八戸やら小名浜やら
いろんな港によるので船によれば
一か月以上かかる場合がある。
途中で雨に濡れてカビが生えてしまった
のかもしれません。」
おとこは、「そんなことを聞きに来た
わけではない」といった。
「とにもかくにも弁償してもらう」と
いって帰って行った。
政春、俊夫、一馬は「申し訳
ありません」と
深々と頭を下げた。
これはまた大変なことになって
しまいました。
次々と返品されてくるリンゴ汁。
中身には問題はないがカビやにごりで
評判を落としてしまいました。
東京や大阪に販路が拡大で来て
喜んだのもつかの間輸送に時間が
かかりすぎるという地の利のなさを
実感するマッサンでした。
工員たちはこのまま作り続けていいのかと
つぶやいている。エリーがやってきた。
マッサンに「紅茶いれたよ」といった。
政春は困ってしまっていた。
「元気を出してマッサン」とエリー。
そして「これでリンゴのゼリーを作って
いい?」と聞く。
「大丈夫」とキスをしながらエリーが言うと
「ああ、」と政春は言った。
中島の家で西田進と相変わらず
将棋をする熊虎。
返品されてきたリンゴ汁を飲むと
味に変わりはないというが、しばらく
リンゴ汁の製造は中止になったことを
熊虎は言った。
進は「リンゴの代金は払ってくれるんだ
ろうな?」と聞く。
熊虎は「マッサンは信用できる男だ」と
いった。
しかし、もともとリンゴ汁はウイスキーを
造るための資金稼ぎなのに
こんなになってしまっては
なかなかウイスキー製造に至らないと
いう。
「お給金はもらっているのか」とチエが
きく、熊虎は「明日は明日の風が
ふく」といって王手をとった。
進は待ってくれというが
まいったといった。
そして、一枚の写真を出した。
ハナのまわりで俊夫は大声で
独り言をいっていた。
「こんな状態だったらウイスキーなんか
永遠に作れない。
このままだと広島に帰るかも・・・
それもいいかものう。」
「さっきからだれに話しているのか」と
ハナが聞く。
「そんなに帰りたかったらさっさと広島に
かえったらいい。」
「いいのかわしが広島に帰っても?」
「どういうことだべ?」
「普通止めるだろう?
そんなこといわないでとか
俊夫さんがいなくなったらさみしいとか」
「引き留めてもらいたいの?」
「誰もそがなことは・・・。」
ハナは、俊夫のそばに行って
「俊夫さんおら俊夫さんがいなくなったら
すごく寂しい。
俊夫さんがいねえ生活なんて考えられ
ない。
お願いだからずっとずっとおらのそばに
いてくれ。」
その場面を見たエリーは、「ハナ?」と
声をかける。
ハナはあわてて、「違う違ういまのは
お芝居だよ」といった。
俊夫は「芝居?」というと
熊虎がハナを呼んだ。
「ちょっと来い!!」
ハナが家にはいって囲炉裏端に座った。
「おまえいくつになった?」
「誰がいい人いないのか?」
「男だ!!」
「進から預かってきた。」
「縁談だ。」
「青森のリンゴ農家の長男だ」と。
「酒も飲まねえ、まじめな青年で
はしごを使わなくてもリンゴのみが
取れるぐらい背が高いそうだ。」
エリーと俊夫は入り口でその話を
聞いていた。
エリーは俊夫をじっと見た。
俊夫は爪先立ちをして
鴨居に手をかけた。
彼は身長は高いうちに入らない。
「会うだけあってみるか?
嫌なら無理は言わない。
まだ嫁に行く気がないなら断って
もいい。
どうする?
よく考えておけ。」
俊夫はそこから去って行った。
その夜、一馬は「さすが進おじさんは
会津出身の男を選んだな」と
いった。
政春は、写真を見て「まじめそうな
青年だ」といった。
「どうするんだ?見合いするのか?」と
一馬が聞くと、答えないハナ。
エリーは「ゆっくり考えたらいいよ」と
いった。
「熊さんはどういっているのか」と政春が
聞く。
「断ってもいいって。」
「意外と理解があるんじのう」と政春が言うが
「じつは、自分の身の回りの世話を
してくれる人がいなくなるので
寂しく思っている」と
一馬は説明した。
「青森に嫁に行くと
簡単に帰れないから」と政春
はいった。
「ところで熊さんは?」
エリーは「釣りに行った」といった。
夜である。
一馬は笑った。
その熊虎は
二階の屋根で
座って酒を飲んでいた。
エリーはその様子を見て
何か感じた。
***************
先週はエマが元気に走り回る
ドラマとなったが
今週は、俊夫とハナ???
すきなら好きだと言えばいいのに
俊夫は頑固な日本男児だから
なかなか本心は言わないだろう。
ハナも気が強い女性だから
自分から好きだとは言わないだろう。
エリーには何気にわかるようだが
仲を取り持つことは簡単ではない。
簡単ではないから、終着点は
素晴らしいものになるはずだと
思うけど。
1934年昭和9年春。
北海道に遅い春がやってきました。
マッサンの工場の操業が
再開されて半年。
病院などあらたな販売先も見つかり
リンゴ汁の販売は軌道に乗りました。
エリーやエマもすっかり北海道の
暮らしに慣れました。
その中になって際立っていたのが
この二人の口げんかである。
ハナと俊夫。
俊夫が木箱を抱えて歩いて
いると、ハナが洗濯物を
干している場所に来た。
俊夫は洗濯物が入っている籠に
足を取られて転げてしまった。
「何でこんなところに置くんじゃ」と
俊夫、「ここで洗濯物を干している
事はわかっていることだ」と
ハナ。
俊夫は自分は仕事に忙しい
といい、ハナは、自分もこの仕事を
がんばっているという。
すぐに口答えするハナに俊夫は
おこり、ごめんも言えない俊夫に
ハナは怒った。
エリーはけんかを止めようと
中に入ったが、物を投げたりして
ますます厳しくなった。
喧嘩するほど仲がいいと言いますが
この二人はどうなんでしょう?
そこへ二人の紳士がやってきた。
みなれない人である。
しかめっつらをして森野家の囲炉裏端に
座っている二人。
政春と一馬がやってきて挨拶をした。
「これはどういうことですか?
果汁100%の汁だというのに
いったい何を混ぜているのか」と
怒って聞く。
瓶の中を見ると透明ではない。
なにか浮いている。
「ゴミみたいなのが浮いているでしょ」と
男は言った。
瓶をひっくり返してシェイクして
みるとその正体がわかった。
一馬は「ペクチンです」という。
天然の糖類である。
「ペクチンが凝固したものと
思われます」といった。
政春は
「白濁したのはむしろ天然の証拠で
品質にはなにも影響はない」といった。
「このかびは?」
と男が畳み掛けるようにきく。
瓶のシールにカビが生えている。
おそらく長旅の間に
温度管理も行き届かず
水分がシールについて
カビが発生したらしい。
「商品が東京についたとき
カビが生えていて
売り物にならない」と返品されたと
いう。
「東京行は八戸やら小名浜やら
いろんな港によるので船によれば
一か月以上かかる場合がある。
途中で雨に濡れてカビが生えてしまった
のかもしれません。」
おとこは、「そんなことを聞きに来た
わけではない」といった。
「とにもかくにも弁償してもらう」と
いって帰って行った。
政春、俊夫、一馬は「申し訳
ありません」と
深々と頭を下げた。
これはまた大変なことになって
しまいました。
次々と返品されてくるリンゴ汁。
中身には問題はないがカビやにごりで
評判を落としてしまいました。
東京や大阪に販路が拡大で来て
喜んだのもつかの間輸送に時間が
かかりすぎるという地の利のなさを
実感するマッサンでした。
工員たちはこのまま作り続けていいのかと
つぶやいている。エリーがやってきた。
マッサンに「紅茶いれたよ」といった。
政春は困ってしまっていた。
「元気を出してマッサン」とエリー。
そして「これでリンゴのゼリーを作って
いい?」と聞く。
「大丈夫」とキスをしながらエリーが言うと
「ああ、」と政春は言った。
中島の家で西田進と相変わらず
将棋をする熊虎。
返品されてきたリンゴ汁を飲むと
味に変わりはないというが、しばらく
リンゴ汁の製造は中止になったことを
熊虎は言った。
進は「リンゴの代金は払ってくれるんだ
ろうな?」と聞く。
熊虎は「マッサンは信用できる男だ」と
いった。
しかし、もともとリンゴ汁はウイスキーを
造るための資金稼ぎなのに
こんなになってしまっては
なかなかウイスキー製造に至らないと
いう。
「お給金はもらっているのか」とチエが
きく、熊虎は「明日は明日の風が
ふく」といって王手をとった。
進は待ってくれというが
まいったといった。
そして、一枚の写真を出した。
ハナのまわりで俊夫は大声で
独り言をいっていた。
「こんな状態だったらウイスキーなんか
永遠に作れない。
このままだと広島に帰るかも・・・
それもいいかものう。」
「さっきからだれに話しているのか」と
ハナが聞く。
「そんなに帰りたかったらさっさと広島に
かえったらいい。」
「いいのかわしが広島に帰っても?」
「どういうことだべ?」
「普通止めるだろう?
そんなこといわないでとか
俊夫さんがいなくなったらさみしいとか」
「引き留めてもらいたいの?」
「誰もそがなことは・・・。」
ハナは、俊夫のそばに行って
「俊夫さんおら俊夫さんがいなくなったら
すごく寂しい。
俊夫さんがいねえ生活なんて考えられ
ない。
お願いだからずっとずっとおらのそばに
いてくれ。」
その場面を見たエリーは、「ハナ?」と
声をかける。
ハナはあわてて、「違う違ういまのは
お芝居だよ」といった。
俊夫は「芝居?」というと
熊虎がハナを呼んだ。
「ちょっと来い!!」
ハナが家にはいって囲炉裏端に座った。
「おまえいくつになった?」
「誰がいい人いないのか?」
「男だ!!」
「進から預かってきた。」
「縁談だ。」
「青森のリンゴ農家の長男だ」と。
「酒も飲まねえ、まじめな青年で
はしごを使わなくてもリンゴのみが
取れるぐらい背が高いそうだ。」
エリーと俊夫は入り口でその話を
聞いていた。
エリーは俊夫をじっと見た。
俊夫は爪先立ちをして
鴨居に手をかけた。
彼は身長は高いうちに入らない。
「会うだけあってみるか?
嫌なら無理は言わない。
まだ嫁に行く気がないなら断って
もいい。
どうする?
よく考えておけ。」
俊夫はそこから去って行った。
その夜、一馬は「さすが進おじさんは
会津出身の男を選んだな」と
いった。
政春は、写真を見て「まじめそうな
青年だ」といった。
「どうするんだ?見合いするのか?」と
一馬が聞くと、答えないハナ。
エリーは「ゆっくり考えたらいいよ」と
いった。
「熊さんはどういっているのか」と政春が
聞く。
「断ってもいいって。」
「意外と理解があるんじのう」と政春が言うが
「じつは、自分の身の回りの世話を
してくれる人がいなくなるので
寂しく思っている」と
一馬は説明した。
「青森に嫁に行くと
簡単に帰れないから」と政春
はいった。
「ところで熊さんは?」
エリーは「釣りに行った」といった。
夜である。
一馬は笑った。
その熊虎は
二階の屋根で
座って酒を飲んでいた。
エリーはその様子を見て
何か感じた。
***************
先週はエマが元気に走り回る
ドラマとなったが
今週は、俊夫とハナ???
すきなら好きだと言えばいいのに
俊夫は頑固な日本男児だから
なかなか本心は言わないだろう。
ハナも気が強い女性だから
自分から好きだとは言わないだろう。
エリーには何気にわかるようだが
仲を取り持つことは簡単ではない。
簡単ではないから、終着点は
素晴らしいものになるはずだと
思うけど。
