人間いたるところ青山あり1

政春一家はついに北海道へ
やってきた。

「あれが羊蹄山じゃ
大きいじゃろ?」
「すごい。」とエマ。

「エリーに見せたいものがある。」

政春は山を駆け上って
いく。
そこは以前、政春が昇って確かめた
余市がみえる場所であった。

「どうじゃ、スコットランドに帰ってきた
みたいじゃろ?
あそこには水も空気もきれいで
霧も立ち込める。
大麦もピートもとれる。」

「きもちいい・・・。」とエリー。

「まさにウイスキーの理想郷じゃ。」

さぁ、あらたなる冒険の始まりです。

エリーたちが北海道へ旅立つ一週間
まえ、キャサリンたちが送別会を
開いてくれました。

場所はこひのぼり。

春さんの先導で乾杯をした。

「それでは亀山政春くん
エリーちゃん、
エマちゃんの前途を祝して乾杯!」

「乾杯~~!!」

「エマちゃん、元気でな」と梅子。

「うん、みなさん、お世話になりました。」

「ああ、三丁目べっぴん同盟の解散
かぁ~~」と桃子が言う。

「うちがおるやん、あんた最初
から入ってへんやろ」とキャサリン。

どっちもどっちである。

政春は「北海道へ骨をうずめる覚悟
でいってきます」と挨拶をした。

「よっ!!」
春さんは拍手をした。

そしてみんなそれぞれ座った。

「ええか、マッサンこれだけは忘れるな。
北海道へ行ったらのう
冬は、かに、春はニシン、秋はリンゴ。
遠慮せんでええ、どんどん送ってくれ。」

「それでもちょいちょい帰って来るんやろ?」
と梅子が言う。

「なにいうてんの、北海道は遠いんやで。」

キャサリンは、
まだエリーたちの北海道いきは
反対だった。

「北海道のウインターは
吐く息が白くて
アイスになる。
鼻水がつららになって息ができんと
ジエンドや。。
人間の数より熊が多い。。。
あるいとったらビッグベアが出てきて
ガオ~~って。

それに・・・それに・・・・・。」
キャサリンはネタに詰まった。
「そんな遠いところへ行ったら
もう会われへんやん。」

これが本音である。

「ウヰスキーなんかどこでも作れる。
大阪におったらええ
エリーに合われへんようになるのが
つらい。
マッサンどうでもええけど・・・。

なぁ?あかん?」

「ホンマにおおきに。
おおきに。

私大阪大好き。

皆と別れる。
たくさん寂しい。

私たちの夢をかなえるために
北海道へ行きます。」

皆さんのことずっと
ずっと、愛しています。

ありがとうございました。」


「エリー・・・
元気でな。」

エリーはみんなとハグをした。

「エリーまた大阪へきてな。」

「ありがとう・・・」

「アイラブユー」
と巡査が言いながらハグをする。
「逮捕したるか。」と外野。
「わしも行きたいわ。」

「皆で行こうか?」
しかし遠いので
ここは
歌でも歌おう。
ということになった。
蛍の光をみんなで歌った。

その夜、もう一人とても懐かしい
人が見送りに来て
くれました。

田中酒造の田中大作だった。

長い間連絡もせんと
社長にどがな顔をして
会いに行ったらいいか。。。
ほんまにすみませんでした。」

ふたりでウイスキーを飲む。

「ああ、まずい。
これがわしの選別の言葉や。
このまま終わろうとは
おもてないやろ?
おまえの夢はお前だけのものではない。」

「北海道でこれというウヰスキーができたら
送ります」と政春。
「それまで生きていてください。」

「ひとをとし寄り扱いするなよ。」
田中が言った。

エリーは今までたくさんの人に支え
られてきたことを実感しました。
そしてみんなの思いに報いるためにも
北海道で必ず夢を実現させなくてはと
決意を新たにしました。


こうして北海道へ来た親子。

河で遊びながら
ひと時をすごした。

北海道の川にはさけが泳いでいる。
その雄大さにエマは感動したが
何かを書いているエリー。
ラブレターというが
なんのことだろう?

やがてめざす
森野の家についた。
エリーは大きな家にびっくりした。

「リンゴを送ってくれた
おじちゃんの家?」

「景気のいいおやじがいるんじゃと
いったが・・・。

中に入ってみるとなにか雰囲気が
わるい。

いきなり、男が森野に叩き出された。
「この恩知らずが!
一人前の口をたたくでねぇ」

「わかった、かえる・・・
帰るから・・・」と
あわてて逃げていた。

それを見ていたエリーは
恐ろしくなった。

「熊さん?」と政春が声をかけた。


森野はじっとみて
やがて

「亀か?」と聞く。

「はい」といって帽子を脱いだ。

「おお、亀!
ウイスケの亀でないか。」

「はははは・・・ハイ!」

「そこの異人さんは?」

「あ、わしの嫁さんです。」

「ヨメッコ?」

「はい、嫁のエリーと
娘のエマです。」

「嫁っこぉ?????」

森野が大きな声を出した
のでエリーは

「近寄らないで。
暴力は許しません。
娘に乱暴したらただじゃすまないわよ。」

と英語で言った。
エリーは先ほどからの森野の様子に
何か不安を感じていた。

政春は「大丈夫だから」といった。
「なんていったんだ?」と森野が聞く。

「ああ、あの北海道はいいところですね。
特に空気が素晴らしい。
私は北海道が、好きになりました・・・って。」

「ほんとうか?」

「そんなこと言ってない。
このひと本当に大丈夫なの?」

とまた、英語で言った。

森野は耳を澄ました。

「なんて?」

「熊さんは男前ですねって。」

「もうちょっと長くしゃべってなかった
か?」
「特に目元がりりしいわって・・・。
あはは・・・」と政春は
だましとおした。

「ええ嫁っこだ。」
森野はやっと笑顔になった。

「まぁ、あがってくんなしょ・・」と
いった。
政春はエリーに大丈夫だと
小声で言って
「いきなりスミマセン」と森野に
いった。

急に訪問したのかな?
前もって手紙書かなくては・・・。
この日につくとか。

この人本当に大丈夫なの?
エリーは思った。
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さっき、追い出されたのは
きっと元仲間でいまは借金取りだと思います。
ニシン漁は当たりはずれがあるとかで
森野の家もきっと
さびれてしまったのでは
ないでしょうか。

大阪を去ることはつらいことです。
北海道に比べると
はるかに(この時代ですよ)大都市
ですから人の往来もあり
敵も味方も大勢いて
その中ではぐくんできた人間関係が
エリーの心の支えだったと
思います。

が、

前を向くエリー。

エマをつれて

厳しい自然の北海道へ・・・。

画面の北海道の景色が
たのしみだと
思いました。