会うは別れの始め6
政春とエリーは鴨居商店の社長室の
鴨居を訪ねた。
そして、退職届をだした。
「長い間お世話になりました」
「いつかは言いだすやろうと思っていたが
一番厳しいときに
おまえは鴨居を捨てるんか?
北海道か?
金のさんだんはついたか?」
「・・・」
「独立するんやったら資金がいるやろ。」
「いや、まだ、10万円足りません」。
「どないするつもりや?」
「わかりません・・・
じゃけど必ず何とかします。」
「やめとけ。
おまえの理想はようわかる。
けど理想と現実は違う。
おまえの理想はいつか
うちの山崎工場で実現する。
わてが必ず実現させる。
もう一遍よう考えてみい。」
政春は、自分なりによう考えた
結果がこれですという。
「自分の信じるウイスキーを造るため
です。
そのためには大将のもとを離れることが
一番やと思いました。
やる以上、負けません。
大将より先に日本人がうまいというてくれる
ウイスキーを造ります。」
「わてより先に?」
「わしゃ絶対負けません。
大将にもハイランドケルトにも負けない
ウヰスキーをこの日本でちゃんと
酒と向き合って作って見せます。」
鴨居はうなずいた。
「無理や。
おまえは経営者にはなれん。
社長になったらみんなが不幸になる。
エリーちゃんも従業員もその家族も・・
みんなや。」
政春はよくわからない。
「なんでです?」と聞く。
「どの道おまえは科学者や。
ウヰスキーに対する情熱は認める。
そやけどお前にはそれしかない。
造ることだけに執着があって
売ること宣伝をすることには
全く関心がない。
経営者いうんは、商品を開発して
宣伝してうらなあかん。
石にかじりついてでも利益を上げて
皆に分配をせなあかん。
おまえにはできへんやろ?
わてはやるで。
たとえイミテーションの鴨居と言われた
かて、従業員を食わしていくために
にメイドインジャパンのウヰスキーを広める
ためやったら、何でもやったる。
おまえにはできへんやろ。」
「できます。」
「いやできへん。」
政春は一段と大きな声で
「できます!!!」といった。
鴨居は、しばらく目をつむり
額にしわを寄せて言った。
「ほな、何で頭下げへんねん。」
「・・・・」
「わてに頭下げて土下座してでも
10万円貸してくださいと
いうたらええやないか。」
政春にとっては核心である。
「いや、それは・・・」
政春は鴨居に借りるのは筋が違うと
思った。
「エリーちゃんの前で頭下げるのは
かっこ悪いか?
それともわてに遠慮しとるんか?」
「そうじゃのうて
大将に借りるのは筋が違うと・・・」
「そんなこと言うとる場合か?」
鴨居は椅子から立ち上がって
政春の前に立った。
「この際筋なんかどうでもええやろ?
どんなけぶざまでも
はずかしくても
はらわた煮えくり返っていても
なんとか10万円都合つけたろうと
思わんのか!!」
テーブルをたたいていった。
「会社のために頭一つ下げられん男が
経営者になれるかっ!」
鴨居は、机からまわって
政春の横にやってきた。
エリーはじっと見ていた。
「経営者は従業員とその家族を
食わしていかなあかん。
しあわせにしたらなあかん。
おまえはホンマにそこが
わかってんのか。」
鴨居は力を込めて言った。
政春は口をへの字に曲げて
決心をした。
そして
鴨居のほうに体を向けて土下座をした。
エリーはそれをじっと見ていた。
鴨居も政春をみていた。
鴨居はすすっと机の前に座り
小切手を切った。
そして、政春をおこして、
差し出した。
「持って行け。
10万円や。」
政春は立ちあがって受け取
った。
「大将・・・
ありがとうございます。
この10万円は必ず・・・」
「返す必要はない。
おまえの退職金や。」
おおお
ふとっぱら・・・・!!!!
うれしいね。
にくいね・・・・。
「大将・・・。」
「日本人がウイスキーを飲むにはまだ
まだ時間がかかる。
日本人の味覚に合わせなら
ウヰスキーを広め、お客の舌を育てな
あかん。
そのためには2社、3社とウイスキーを造る
会社が出てきて
お互いしのぎを削りあってウイスキー事業を
もりあげていかんとな。」
「大将・・・
大将に雇ってもらえんかったら
わしはこの国でウイスキーを
造ることができません
でした。
この御恩は一生忘れません。
そのためにも北海道で日本一の
ウヰスキーを造って新しいウイスキー
の時代をつくってみせます」
「負けへんで。
おまえがどんだけうまいウイスキーを造った
かてわては負けへん。」
鴨居は、笑いながら言った。
エリーも笑った。
「ありがとうございます。」
「大将、」とエリーが言うと
鴨居はエリーに「なにもいわんでええ」
といった。
そしてエリーのそばに行って
「エリーちゃんの気持ちは全部わかっている。
ただしこれだけは忘れたらあかん。
たとえこの先何があっても
どこへ行こうとも
わてはエリーちゃんの味方や。
困ったことがあったら
いつでもおいで。」
エリーは「ありがとうございます」と
いって、ハグをした。
その夜、エマを寝かせたエリー。
政春は言った。
「北海道へ行ったらまた苦労を
かけるかもしれんけど
ついてきてくれるか?」
「うん・・。」
笑顔でエリーが言った。
そこへ英一郎が来た。
「こんばんは~~~」
「どうしたの?」
「この家に下宿させてもらっていた頃の
僕は迷子でした。
僕が自分が進む劇道をみつけたのも
新しい一歩を踏み出せれたのも
工場長とエリーさんのおかげです。
今度は僕がお二人の背中を
押す番だと思いました。」
英一郎は工場にかかっていた
『ウヰスキー研究室』の看板をもって
来た。
「英一郎・・・
わしが教えられることは全部お前に
教えてから、北海道へ行くけん。」
「ほな僕がいつまでも一人前に
なれなかったら・・・」
(行くことができませんね)
英一郎は笑った。
「何を言うんじゃバカたれが。」
政春も笑ってそういった。
そして一緒に飲もうと言って
英一郎を家に招き入れた。
「エマ寝てる。」とエリー。
「静かに飲むけん・・・
おい、静かに飲めよ。」
「はい!!」
英一郎は亀山家に入って
いった。
マッサンとエリー、エマは
いよいよ北海道へ旅立ちます。
******************
経営者とは何かということを
鴨居が政春に教えた日でした。
鴨居にとっていつかは・・・と思って
いたといいますが、
それがこの一番厳しい時だったとは。
いくら、御恩を忘れませんと
いっても、恩知らずと思うべきシーン
ですね。
でも鴨居はもっと大きなスケールを
持っていました。
ウヰスキー事業をする会社が
2社、3社と増えることが
さらなる発展につながると。
そしてイミテーションの鴨居といわれ
ても、売って、利益を上げなくてはいけない
経営者の厳しさを教えてた。
経営のためには
頭一つ下げるぐらい、せなあかん。
恥ずかしくても腹が立っても・・・
究極の経営学です。
百の理論より、その場の実践。
土下座をさせました。
政春もその理論を呑み込み
土下座をしました。
経営者としての一歩です。
厳しいですね・・・。
で、北海道へ行きますが
最後の英一郎が玄関を入って行く
シーンがロングで移ります。
この家とも、お別れなんだなと
思いました。
キャサリンとも
梅子、桃子とも
こひのぼりとも・・・
あのにぎやかなおばちゃん文化
人情あふれるオッチャン文化と
お別れです。
政春とエリーは鴨居商店の社長室の
鴨居を訪ねた。
そして、退職届をだした。
「長い間お世話になりました」
「いつかは言いだすやろうと思っていたが
一番厳しいときに
おまえは鴨居を捨てるんか?
北海道か?
金のさんだんはついたか?」
「・・・」
「独立するんやったら資金がいるやろ。」
「いや、まだ、10万円足りません」。
「どないするつもりや?」
「わかりません・・・
じゃけど必ず何とかします。」
「やめとけ。
おまえの理想はようわかる。
けど理想と現実は違う。
おまえの理想はいつか
うちの山崎工場で実現する。
わてが必ず実現させる。
もう一遍よう考えてみい。」
政春は、自分なりによう考えた
結果がこれですという。
「自分の信じるウイスキーを造るため
です。
そのためには大将のもとを離れることが
一番やと思いました。
やる以上、負けません。
大将より先に日本人がうまいというてくれる
ウイスキーを造ります。」
「わてより先に?」
「わしゃ絶対負けません。
大将にもハイランドケルトにも負けない
ウヰスキーをこの日本でちゃんと
酒と向き合って作って見せます。」
鴨居はうなずいた。
「無理や。
おまえは経営者にはなれん。
社長になったらみんなが不幸になる。
エリーちゃんも従業員もその家族も・・
みんなや。」
政春はよくわからない。
「なんでです?」と聞く。
「どの道おまえは科学者や。
ウヰスキーに対する情熱は認める。
そやけどお前にはそれしかない。
造ることだけに執着があって
売ること宣伝をすることには
全く関心がない。
経営者いうんは、商品を開発して
宣伝してうらなあかん。
石にかじりついてでも利益を上げて
皆に分配をせなあかん。
おまえにはできへんやろ?
わてはやるで。
たとえイミテーションの鴨居と言われた
かて、従業員を食わしていくために
にメイドインジャパンのウヰスキーを広める
ためやったら、何でもやったる。
おまえにはできへんやろ。」
「できます。」
「いやできへん。」
政春は一段と大きな声で
「できます!!!」といった。
鴨居は、しばらく目をつむり
額にしわを寄せて言った。
「ほな、何で頭下げへんねん。」
「・・・・」
「わてに頭下げて土下座してでも
10万円貸してくださいと
いうたらええやないか。」
政春にとっては核心である。
「いや、それは・・・」
政春は鴨居に借りるのは筋が違うと
思った。
「エリーちゃんの前で頭下げるのは
かっこ悪いか?
それともわてに遠慮しとるんか?」
「そうじゃのうて
大将に借りるのは筋が違うと・・・」
「そんなこと言うとる場合か?」
鴨居は椅子から立ち上がって
政春の前に立った。
「この際筋なんかどうでもええやろ?
どんなけぶざまでも
はずかしくても
はらわた煮えくり返っていても
なんとか10万円都合つけたろうと
思わんのか!!」
テーブルをたたいていった。
「会社のために頭一つ下げられん男が
経営者になれるかっ!」
鴨居は、机からまわって
政春の横にやってきた。
エリーはじっと見ていた。
「経営者は従業員とその家族を
食わしていかなあかん。
しあわせにしたらなあかん。
おまえはホンマにそこが
わかってんのか。」
鴨居は力を込めて言った。
政春は口をへの字に曲げて
決心をした。
そして
鴨居のほうに体を向けて土下座をした。
エリーはそれをじっと見ていた。
鴨居も政春をみていた。
鴨居はすすっと机の前に座り
小切手を切った。
そして、政春をおこして、
差し出した。
「持って行け。
10万円や。」
政春は立ちあがって受け取
った。
「大将・・・
ありがとうございます。
この10万円は必ず・・・」
「返す必要はない。
おまえの退職金や。」
おおお
ふとっぱら・・・・!!!!
うれしいね。
にくいね・・・・。
「大将・・・。」
「日本人がウイスキーを飲むにはまだ
まだ時間がかかる。
日本人の味覚に合わせなら
ウヰスキーを広め、お客の舌を育てな
あかん。
そのためには2社、3社とウイスキーを造る
会社が出てきて
お互いしのぎを削りあってウイスキー事業を
もりあげていかんとな。」
「大将・・・
大将に雇ってもらえんかったら
わしはこの国でウイスキーを
造ることができません
でした。
この御恩は一生忘れません。
そのためにも北海道で日本一の
ウヰスキーを造って新しいウイスキー
の時代をつくってみせます」
「負けへんで。
おまえがどんだけうまいウイスキーを造った
かてわては負けへん。」
鴨居は、笑いながら言った。
エリーも笑った。
「ありがとうございます。」
「大将、」とエリーが言うと
鴨居はエリーに「なにもいわんでええ」
といった。
そしてエリーのそばに行って
「エリーちゃんの気持ちは全部わかっている。
ただしこれだけは忘れたらあかん。
たとえこの先何があっても
どこへ行こうとも
わてはエリーちゃんの味方や。
困ったことがあったら
いつでもおいで。」
エリーは「ありがとうございます」と
いって、ハグをした。
その夜、エマを寝かせたエリー。
政春は言った。
「北海道へ行ったらまた苦労を
かけるかもしれんけど
ついてきてくれるか?」
「うん・・。」
笑顔でエリーが言った。
そこへ英一郎が来た。
「こんばんは~~~」
「どうしたの?」
「この家に下宿させてもらっていた頃の
僕は迷子でした。
僕が自分が進む劇道をみつけたのも
新しい一歩を踏み出せれたのも
工場長とエリーさんのおかげです。
今度は僕がお二人の背中を
押す番だと思いました。」
英一郎は工場にかかっていた
『ウヰスキー研究室』の看板をもって
来た。
「英一郎・・・
わしが教えられることは全部お前に
教えてから、北海道へ行くけん。」
「ほな僕がいつまでも一人前に
なれなかったら・・・」
(行くことができませんね)
英一郎は笑った。
「何を言うんじゃバカたれが。」
政春も笑ってそういった。
そして一緒に飲もうと言って
英一郎を家に招き入れた。
「エマ寝てる。」とエリー。
「静かに飲むけん・・・
おい、静かに飲めよ。」
「はい!!」
英一郎は亀山家に入って
いった。
マッサンとエリー、エマは
いよいよ北海道へ旅立ちます。
******************
経営者とは何かということを
鴨居が政春に教えた日でした。
鴨居にとっていつかは・・・と思って
いたといいますが、
それがこの一番厳しい時だったとは。
いくら、御恩を忘れませんと
いっても、恩知らずと思うべきシーン
ですね。
でも鴨居はもっと大きなスケールを
持っていました。
ウヰスキー事業をする会社が
2社、3社と増えることが
さらなる発展につながると。
そしてイミテーションの鴨居といわれ
ても、売って、利益を上げなくてはいけない
経営者の厳しさを教えてた。
経営のためには
頭一つ下げるぐらい、せなあかん。
恥ずかしくても腹が立っても・・・
究極の経営学です。
百の理論より、その場の実践。
土下座をさせました。
政春もその理論を呑み込み
土下座をしました。
経営者としての一歩です。
厳しいですね・・・。
で、北海道へ行きますが
最後の英一郎が玄関を入って行く
シーンがロングで移ります。
この家とも、お別れなんだなと
思いました。
キャサリンとも
梅子、桃子とも
こひのぼりとも・・・
あのにぎやかなおばちゃん文化
人情あふれるオッチャン文化と
お別れです。
