急いては事をし損じる6
工場の授業員である小野の弟は
ダックスモーカーで働いていた。
が、売却されたので首になった。
この分だと次はだれが首になるのかと
戦々恐々としている山崎の工場
だった。
従業員たちは
鴨居が職人のことなど考えていないと
疑心暗鬼にもなっている。
無理してウイスキーを造るからこうなった
という声も上がっている。
鴨居への非難が英一郎への無言の
抗議になった。
不穏な空気が流れる。
英一郎は驚いた。
政春はお客へ歩み寄るウイスキーを
造ることを考えた。
本物を知らない日本人の口に
合わせた味を作ることは政春の意志に反する
ことだった。
俊夫は「好きにすればいい」と
政春に言った。
「あの大将に何を言われようが。
わしはお坊ちゃまのウイスキーづくりを
手伝うために広島から出てきたのです。
それができないようなら、ここにいる
意味がありません。
旦那様は信念の人です。
広島のやわい水でも伏見、灘に
負けない酒を造ろうと
旦那様はがんばりました。
だからみんな旦那様について
来たのです。
お坊ちゃまもモノづくりをしんさる
んなら自分の信念、貫いてつかあさい。」
俊夫は大将がなんとかしろといったとき
即答、できませんと政春が答えたこと
を話してあれは胸がすっとしたと
いった。
「その信念を絶対に曲げないでほしい」と
俊夫は言う。
政春はじっと聞いていたが
立ち上がった。
「わしは何があってもお坊ちゃまの味方
ですから。」
そのとき、従業員たちが
「わしもです」と次々と
名乗り出た。
「だから工場長の作りたい
ウイスキーを造ってください」と
いう。
政春は嬉しかった。
本社の社長室で鴨居と話をした。
「なぜ売れなかったのかを考えました。」
「で?」
「わかりません。」
鴨居は、期待が外れた顔をした。
政春は精いっぱいうまいウイスキーを造った
という。
今もそう思っているという。
だが売れなかった。
「理由は、熟成が足りなかった。
そして、自分の感覚、技術が未熟だった。
それと…大将が言うように・・」
「そやない。
スモーキーフレーバーや。
それを取り除いて日本人の味覚に
あったウイスキーを造ってくれないか」
という。
「わしは信念をまげたくないです。」
政春はハイランドケルトで学んだことを
捨てるわけにはいかなかった。
あのウイスキーが自分の目指すウイスキーである
かぎり、それを捨てるわけにはいかないと
いいきった。
鴨居は、「誰のためにウイスキーを造って
いるのか」と聞く。
「お客に喜んでもらうためではないのか」と
いった。
「なんぼ自分がうまいと思っても
お客がまずいというものは売れない。」
政春は
「ウヰスキーの味もわからない人に
飲んでもらいたいとは思いません」と
いった。
鴨居は、怒った。
「何?」
「本物の味を知っている人にだけ
飲んでもらったらいい」と
政春はいった。
「ほな作った商品が売れんでもいい
のか」と鴨居は聞く。
技術者と経営者の考え方の違いである。
「客にこびてまで売れる商品を
造ることは賛成できません。」
英一郎は、横から政春を
制したが・・・。
鴨居は明らかに怒りを含んだ
顔をしていた。
鴨居は立ち上がり
「もうええ、おまえには頼まん」といって
部屋を出て行った。
英一郎は父をおったが
どうにもならない。
政春は、どうしようもない状況
になってしまった。
工場の事務所で。
「私の青空」がラジオから流れる。
鴨居が客を連れて山崎にやってきた。
事務所では何人かがラジオに合わせて歌を
歌っていた。
♪せまいながらも、楽しい我が家
愛の灯影~~~♪
すると俊夫がやってきた。
「何を歌っているんや!!」
そこへ、鴨居が客を連れて
入ってきた。
「工場長はまだ・・・」というと
「ほな、またしてもらうわ・・」と
鴨居は言う。
俊夫はほかの従業員たちと
一緒に「行くぞ」と声をかけて
事務所を出ようとした。
「そや、君らにも紹介しておこう。
今日からブレンドを手伝ってくれる
京都帝大の久我山先生や。」
なんと、政春ではどうにもならない
ので、外から人を連れてきたのだった。
俊夫は苦い顔をした。
そこへ、政春がやってきた。
鴨居が京都帝大の久我山を連れてきた
としって、とまどっていた。
「先生に知恵を貸してもらうんや」と
鴨居は言う。
「外の人の新しい感覚でブレンド
してもらうのも手や」と思う。
政春は「わしのウヰスキーをその人に
ブレンドしてもらうというのですか」と
厳しい顔をして鴨居に言った。
鴨居は「どこにお前のウヰスキーが
あるんや」と聞く。
「ここにあるのはみな鴨居商店のウヰスキー
や。」
政春は不安になった。
そこへ工場では俊夫たちが
工場をロックアウトしたと
紺野が報告に来た。
俊夫は「ここにある樽はみんな
お坊ちゃまとわしらのもんや。
出て行け。」と騒いだ。
「大将や大学教授に一滴たりとも
わたしはせんぞ。」
「あほなことはやめろ」と紺野は言った。
「アホはどっちじゃ。
大将、あんたは卑怯だ。ウイスキーづくりは
全部お坊ちゃまに任せたんじゃ
ないのか!
何でわけのわからない先生など連れて
くるんじゃ。」
一同は「そうじゃ」と声を上げた。
「どうにかせい」と鴨居は政春に
いう。
政春は俊夫に近づき
「俊兄!!!」と大声でいって、
静かに、「落ち着いてつかあさい」と
いった。
俊夫はじっと政春を見て
「これが落ち着いていられますか」
と、静かに言った。
紺野は「ええかげんにせい。
警察呼ぶぞ」と脅した。
「これは犯罪や!!!
豚箱に放り込まれたいんか。」
「放り込めるものならやってみい」
といって俊夫はみんなに水をぶっかけた。
鴨居は、「わかった」といった。
「おまえら
全員
解雇!!!
くびや!!!
一辺は許したる。
明日から職なしになりたくなかったら
出て来い。
工場長、後は任せた。」
そういって鴨居は去って行った。
その夜、縁側で月の光の中
エリーと話をした。
くびにならないようにしてやらな
ければいけないと
政春は鴨居に掛け合うといった。
が、政春自身、どうしたらいいのか
わからない。
エリーは政春に、「なにがあったのか
どうしたいのか」と聞く。
「マッサン、どうしたい?」
「どうしたい、どうしたいというても
わし自信わからんというてるやろ!
もうええ!!」
エリーは驚いた。
その声にエマが起きてきて
ないた。両親がけんかをしている
と思ったからだ。
「泣きながらええ子になるから喧嘩を
やめて」といった。
「人参も食べるし
食事の前のおかしもやめる」と
いう。
「だから、けんかやめて」と
いう。
エリーと政春は大丈夫だからとエマを
なだめた。
翌日、本社の社長室に俊夫が
やってきて昨日の一件は自分がやった
ことだから、自分一人で責任を
とるので、ほかの人は解雇しないで
くれと言いに来たのだった。
俊夫は出て行こうとした。
政春がやってきて
「どういうことだ」と
俊夫を止めた。
俊夫は政春にこのまま大阪に残って
下さいという。
「何があっても信念だけは曲げたら
いけん・・。
信念曲げたら男はしまいじゃ。
それが旦那様の教えでガンす。」
俊夫はじっと政春を見て言った。
一礼して出て行く俊夫だった。
「おまえはどうするんや?
鴨居商店に残るんか?」
鴨居が政春に声をかけた。
「もしうちに残るなら営業に
まわれ。工場は英一郎に任せる
から、これから、おまえは
鴨居ウヰスキーの営業にまわれ。」
突然の人事だった。
いよいよ、ウイスキーづくりから
離れることになった。
********************
技術者と経営者の立場の違いは
明らかである。
政春は、万人に飲んでもらえるような
ウヰスキーを作るつもりはない。
わかる人だけが飲んでくれたらいいと
いう。
ウヰスキーは、好きな人は好きなんだろうけど
嫌いな人は嫌いと別れる酒である。
わたしは、最初は、水割りで飲んで
いた。
おいしいわけがない。
コークハイと言ってコーラで
割ったものを飲んだこともある。
しかし
一番おいしいのは
ロックである。
これも、のど越しがかぁっとする
ので、好き嫌いがあると思う。
でも、なんだか楽しくなるので
ある。
酔っぱらうと楽しくなる。
ビールでも日本酒でもそうだ。
ウヰスキーは味というより
雰囲気を味わうという。
そんなことを聞いたことが
ある。
そうかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
2015年、あけましておめでとう
ございます。
の時間となった。
やっとのことで昨年放送分をすべて
アップできる。
先ほどの紅白にはマッサンとエリーが
出場していた。
中島みゆきがテーマソングの
麦の唄を歌うというのだ。
フルで聞くと
素晴らしい迫力がある。
中島、渾身の力を込めて
歌い上げた。
歌った後すたすたとまっすぐ歩いて
マッサンとエリーのそばに行って
二人と握手をした。
その様子は、すごく感動的
だった・・・。
さすが中島・・・すごい!!!!
かっこいい。
工場の授業員である小野の弟は
ダックスモーカーで働いていた。
が、売却されたので首になった。
この分だと次はだれが首になるのかと
戦々恐々としている山崎の工場
だった。
従業員たちは
鴨居が職人のことなど考えていないと
疑心暗鬼にもなっている。
無理してウイスキーを造るからこうなった
という声も上がっている。
鴨居への非難が英一郎への無言の
抗議になった。
不穏な空気が流れる。
英一郎は驚いた。
政春はお客へ歩み寄るウイスキーを
造ることを考えた。
本物を知らない日本人の口に
合わせた味を作ることは政春の意志に反する
ことだった。
俊夫は「好きにすればいい」と
政春に言った。
「あの大将に何を言われようが。
わしはお坊ちゃまのウイスキーづくりを
手伝うために広島から出てきたのです。
それができないようなら、ここにいる
意味がありません。
旦那様は信念の人です。
広島のやわい水でも伏見、灘に
負けない酒を造ろうと
旦那様はがんばりました。
だからみんな旦那様について
来たのです。
お坊ちゃまもモノづくりをしんさる
んなら自分の信念、貫いてつかあさい。」
俊夫は大将がなんとかしろといったとき
即答、できませんと政春が答えたこと
を話してあれは胸がすっとしたと
いった。
「その信念を絶対に曲げないでほしい」と
俊夫は言う。
政春はじっと聞いていたが
立ち上がった。
「わしは何があってもお坊ちゃまの味方
ですから。」
そのとき、従業員たちが
「わしもです」と次々と
名乗り出た。
「だから工場長の作りたい
ウイスキーを造ってください」と
いう。
政春は嬉しかった。
本社の社長室で鴨居と話をした。
「なぜ売れなかったのかを考えました。」
「で?」
「わかりません。」
鴨居は、期待が外れた顔をした。
政春は精いっぱいうまいウイスキーを造った
という。
今もそう思っているという。
だが売れなかった。
「理由は、熟成が足りなかった。
そして、自分の感覚、技術が未熟だった。
それと…大将が言うように・・」
「そやない。
スモーキーフレーバーや。
それを取り除いて日本人の味覚に
あったウイスキーを造ってくれないか」
という。
「わしは信念をまげたくないです。」
政春はハイランドケルトで学んだことを
捨てるわけにはいかなかった。
あのウイスキーが自分の目指すウイスキーである
かぎり、それを捨てるわけにはいかないと
いいきった。
鴨居は、「誰のためにウイスキーを造って
いるのか」と聞く。
「お客に喜んでもらうためではないのか」と
いった。
「なんぼ自分がうまいと思っても
お客がまずいというものは売れない。」
政春は
「ウヰスキーの味もわからない人に
飲んでもらいたいとは思いません」と
いった。
鴨居は、怒った。
「何?」
「本物の味を知っている人にだけ
飲んでもらったらいい」と
政春はいった。
「ほな作った商品が売れんでもいい
のか」と鴨居は聞く。
技術者と経営者の考え方の違いである。
「客にこびてまで売れる商品を
造ることは賛成できません。」
英一郎は、横から政春を
制したが・・・。
鴨居は明らかに怒りを含んだ
顔をしていた。
鴨居は立ち上がり
「もうええ、おまえには頼まん」といって
部屋を出て行った。
英一郎は父をおったが
どうにもならない。
政春は、どうしようもない状況
になってしまった。
工場の事務所で。
「私の青空」がラジオから流れる。
鴨居が客を連れて山崎にやってきた。
事務所では何人かがラジオに合わせて歌を
歌っていた。
♪せまいながらも、楽しい我が家
愛の灯影~~~♪
すると俊夫がやってきた。
「何を歌っているんや!!」
そこへ、鴨居が客を連れて
入ってきた。
「工場長はまだ・・・」というと
「ほな、またしてもらうわ・・」と
鴨居は言う。
俊夫はほかの従業員たちと
一緒に「行くぞ」と声をかけて
事務所を出ようとした。
「そや、君らにも紹介しておこう。
今日からブレンドを手伝ってくれる
京都帝大の久我山先生や。」
なんと、政春ではどうにもならない
ので、外から人を連れてきたのだった。
俊夫は苦い顔をした。
そこへ、政春がやってきた。
鴨居が京都帝大の久我山を連れてきた
としって、とまどっていた。
「先生に知恵を貸してもらうんや」と
鴨居は言う。
「外の人の新しい感覚でブレンド
してもらうのも手や」と思う。
政春は「わしのウヰスキーをその人に
ブレンドしてもらうというのですか」と
厳しい顔をして鴨居に言った。
鴨居は「どこにお前のウヰスキーが
あるんや」と聞く。
「ここにあるのはみな鴨居商店のウヰスキー
や。」
政春は不安になった。
そこへ工場では俊夫たちが
工場をロックアウトしたと
紺野が報告に来た。
俊夫は「ここにある樽はみんな
お坊ちゃまとわしらのもんや。
出て行け。」と騒いだ。
「大将や大学教授に一滴たりとも
わたしはせんぞ。」
「あほなことはやめろ」と紺野は言った。
「アホはどっちじゃ。
大将、あんたは卑怯だ。ウイスキーづくりは
全部お坊ちゃまに任せたんじゃ
ないのか!
何でわけのわからない先生など連れて
くるんじゃ。」
一同は「そうじゃ」と声を上げた。
「どうにかせい」と鴨居は政春に
いう。
政春は俊夫に近づき
「俊兄!!!」と大声でいって、
静かに、「落ち着いてつかあさい」と
いった。
俊夫はじっと政春を見て
「これが落ち着いていられますか」
と、静かに言った。
紺野は「ええかげんにせい。
警察呼ぶぞ」と脅した。
「これは犯罪や!!!
豚箱に放り込まれたいんか。」
「放り込めるものならやってみい」
といって俊夫はみんなに水をぶっかけた。
鴨居は、「わかった」といった。
「おまえら
全員
解雇!!!
くびや!!!
一辺は許したる。
明日から職なしになりたくなかったら
出て来い。
工場長、後は任せた。」
そういって鴨居は去って行った。
その夜、縁側で月の光の中
エリーと話をした。
くびにならないようにしてやらな
ければいけないと
政春は鴨居に掛け合うといった。
が、政春自身、どうしたらいいのか
わからない。
エリーは政春に、「なにがあったのか
どうしたいのか」と聞く。
「マッサン、どうしたい?」
「どうしたい、どうしたいというても
わし自信わからんというてるやろ!
もうええ!!」
エリーは驚いた。
その声にエマが起きてきて
ないた。両親がけんかをしている
と思ったからだ。
「泣きながらええ子になるから喧嘩を
やめて」といった。
「人参も食べるし
食事の前のおかしもやめる」と
いう。
「だから、けんかやめて」と
いう。
エリーと政春は大丈夫だからとエマを
なだめた。
翌日、本社の社長室に俊夫が
やってきて昨日の一件は自分がやった
ことだから、自分一人で責任を
とるので、ほかの人は解雇しないで
くれと言いに来たのだった。
俊夫は出て行こうとした。
政春がやってきて
「どういうことだ」と
俊夫を止めた。
俊夫は政春にこのまま大阪に残って
下さいという。
「何があっても信念だけは曲げたら
いけん・・。
信念曲げたら男はしまいじゃ。
それが旦那様の教えでガンす。」
俊夫はじっと政春を見て言った。
一礼して出て行く俊夫だった。
「おまえはどうするんや?
鴨居商店に残るんか?」
鴨居が政春に声をかけた。
「もしうちに残るなら営業に
まわれ。工場は英一郎に任せる
から、これから、おまえは
鴨居ウヰスキーの営業にまわれ。」
突然の人事だった。
いよいよ、ウイスキーづくりから
離れることになった。
********************
技術者と経営者の立場の違いは
明らかである。
政春は、万人に飲んでもらえるような
ウヰスキーを作るつもりはない。
わかる人だけが飲んでくれたらいいと
いう。
ウヰスキーは、好きな人は好きなんだろうけど
嫌いな人は嫌いと別れる酒である。
わたしは、最初は、水割りで飲んで
いた。
おいしいわけがない。
コークハイと言ってコーラで
割ったものを飲んだこともある。
しかし
一番おいしいのは
ロックである。
これも、のど越しがかぁっとする
ので、好き嫌いがあると思う。
でも、なんだか楽しくなるので
ある。
酔っぱらうと楽しくなる。
ビールでも日本酒でもそうだ。
ウヰスキーは味というより
雰囲気を味わうという。
そんなことを聞いたことが
ある。
そうかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
2015年、あけましておめでとう
ございます。
の時間となった。
やっとのことで昨年放送分をすべて
アップできる。
先ほどの紅白にはマッサンとエリーが
出場していた。
中島みゆきがテーマソングの
麦の唄を歌うというのだ。
フルで聞くと
素晴らしい迫力がある。
中島、渾身の力を込めて
歌い上げた。
歌った後すたすたとまっすぐ歩いて
マッサンとエリーのそばに行って
二人と握手をした。
その様子は、すごく感動的
だった・・・。
さすが中島・・・すごい!!!!
かっこいい。
