子に過ぎたる宝なし4
こひのぼりでエリーのおめでた
お祝いパーティがあった。
そこで英一郎が
混血の子は日本ではいじめられる
だろうといった。

エリーはそのことは政春とふたりで
しっかりと話し合って守って行こうと
きめたという。

英一郎がわが子のことを
心配してくれたことに
エリーは感謝した。

かたくなな英一郎の心が
ほどけはじめた。

翌日、台所を手伝う英一郎は
エリーに、昨夜の件を謝った。

「お恥ずかしいところをお見せして
すみませんでした」というが
エリーは「恥ずかしくない
泣きたいときは泣けばいい
言いたいことは言えばいい」といった。
そして、お互いわらったけど
エリーは英一郎が
なぜ泣いたのかわからない。
「なぜ?」

「全部です。
みんながエリーさんのコドモのことを
心配して守ろうとしていること。
エリーさんが僕のことを褒めてくれた
こと・・・。

強いんですね。
エリーさんは強くて、温かくて
すてきです。」

エリーは「あははは」と笑った。

「なぜ、エリーさんは工場長と?
僕は苦手です。
まっすぐなところが。」

「そうです。マッサンいっつも
熱くなると止まらない。
猪みたいでしょ?
でもやさしい猪。
一生懸命頑張る猪。」

「趣味悪いです。」

「おお、私の旦那様よ。」

二人は笑った。


鴨居商店の社長室に黒沢が来た。
「そろそろ奥様の命日です。
皆さんと一緒に墓参りしたらどうですか?
本当のことも話す頃です。
もう、ぼんも二十歳です。
大将がこの店を立ち上げた年齢です。」

鴨居は、そうだなといいながら
遠くを見た。
こどもは知らないうちに大きくなる
ものだと思った。

「それからちょっと小耳にはさみ
ましたが・・・」
と黒沢に言葉に鴨居は、じっと
聞いた。

そのころ、エリーは英一郎とリビングで
ダイニングかな?お茶をしていた。
エリーは、鴨居の大将が好きだという。
それはエリーのパパと同じことを
いったからだった。
「人生は冒険」。と。

ところが英一郎はそんなことは父から
聞いたことがないという。
夜はいつ帰ったかわからない。
朝は早くから出て行くという父だった
から、一緒に食事をしたり
話したりもなかったらしい。
父に褒められたことが一度もない。
彼は心がないという。
太陽ワインができてないころ
母は胸を患って入院した。
ところが父はお見舞いにもいってない。
英一郎は母の好きなお芋の煮っ転がし
を作って持って行った。

母はおいしいと言ってくれた。

そのご、入退院を繰り返して
悪くなるばかりだった。
父は、見舞いにも来なかったという。
だから、父のような人間になりたく
ないと英一郎は言った。

そこへ政春が帰ってきた。

そして、「始めるぞ~~」と
英一郎を誘った。

何かを造ろうをしているらしい。
木材を切り始めた。
英一郎も手伝った。
政春は英一郎が何も夢をもって
いないことに質問をした。

「なにもしたいものがないのか」と。

自分もなにもなかったが、
いつかおやじを超えて見たいと
思っていた。

おやじは怖かったり、わけがわからな
かったり・・・嫌いなぐらいが
ちょうどいいのではという。
もっともっと嫌いになって
そんな親父を超えたらいいのだと
いった。もっと自分に自信を持て。

世の中には英一郎を求めている人が
必ずおるから。

そういわれると英一郎は
なんとなく、考え始めた。

「おお、ええぐあいや」、と
政春は作業を見て言った。
エリーはそんなやりとりを
じっとみていた。

父としての自覚がそうさせたのか。
マッサンがとても頼もしく思えた
エリーでした。

エリーは、「紅茶を入れたよ。すこし
休みませんか」と声をかけた。

すると二人はさっと作っているものを
かくした。

そして、政春は隠したものを見せるために
英一郎と体を移動してエリーに見せた。

それは、木材で作ったゆりかごだった。

エリーは嬉しそうに顔がほころんだ。

「こうしてよしよしといって
こうして寝かして
揺らすんじゃ~~~~」
といって政春はゆりかごを揺らした。

エリーは感動して
「マッサンすごい」と喜んだ。

政春は「英一郎のおかげじゃ」と
いってゆりかごを揺らした。
英一郎は、エリーに「僕が間違って
いました」といった。

「猪にはフランクでフレンドリーな一面が
ありました。」

エリーは「その通り」と言って笑った。

そのとき
「じゃまするで~~」といって
鴨居が来た。

「おめでたのこと、なんで
いうてくれなんだんや。」
といった。

ゆりかごをみて
鴨居も驚いた。
英一郎が手伝ってくれたと
政春が言った。

「そうか・・・」
と、きまずそうな雰囲気だったが
話を変えた。
鴨居は、「お祝いや」と言って
子供のおもちゃをもって
きた。でんでん太鼓である。

政春は、「大将は気が早い。
そのおもちゃで遊ぶにはまだまだ
さきです」というと

鴨居は、政春も気が早い。
まだ、エリーのおなかも大きくなって
ないのにゆりかごを作ったと
いって笑った。

鴨居は「エリーがおめでたなら英一郎を
このままここに置いておくわけには
いかない」といった。
エリーは「英一郎は掃除も洗濯も自分でするし
料理は上手だ」といった。

英一郎は、「話ってなんですか?」と
父に聞いた。

「まあまて。」

「話がないなら二階へ行きます。」

「まあ待てというてる
やないか」と鴨居は言う。

「相変わらず自分勝手ですね。」

空気が険悪になった。
エリーは心配そうに見た。
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この親子にはなにかありますが・・。
英一郎がすこしづつ、優しくなって
いくのでドキドキしていましたが
どうみても
「すてきです・・」は
ご主人のいないときに
いうと・・・あれやね・・・。

なんだか怪しい雰囲気だと思うのは
私だけ?

しかし、父と息子というのは
ライバルというが
英一郎にとっては
超えることのできない大きな
ハードルだと思った。
この大将を父に持つと
かなり高いハードルである。
さて・・・
この親子は和解できるのかな?