子に過ぎたる宝なし2
鴨居が長男英一郎を政春に紹介した。
そして、英一郎は政春宅に
下宿することになった。
「いや、まいったのう~」
「大将らしいね」
「うん・・・」
「一度言い出したら聞かない父の
性格はよく御存じと思います。
お二人にはなるべくご迷惑に
ならないようにします。
掃除や洗濯は自分でやります。
食事はお二人とは別に一人で
食べさせてもらいます。」
一気にここまで英一郎が話したので
政春は「ようしゃべるやないか」と
いった。
「お二人の生活にはなるべく立ち入らない
ように気を付けますので
お二人も僕のことに必要以上に
干渉しないでください。
お部屋はどちらを?」と英一郎が
聞いた。
ぽかんとしていた政春は
「え?」と言って「とりあえず二階じゃ」と
答えた。
エリーは、「どうぞ」といった。
(二階あったんだ・・・あ、俊夫も
そうだったかな?)
政春は二階へ案内した。
「ここに布団があるから」と押入れをあけた。
英一郎は、「ありがとうございます」といった。
「あの、亀山さんのことはなんとおよび
したらいいですか」と聞く。
政春は、「亀山さんでも工場長でも・・」
エリーは笑った。
「マッサンでいいよ」といった。
明日から政春と一緒に出勤すること
にした。
エリーは、「困ったことがあったら
なんでもいって」といった。
英一郎は
「日本語が本当のお上手ですね」と
いった。
エリーは、ふふふと笑って
「英語はあしたからでいいの?」と聞いた。
すると英一郎は
以下英語で・・・
「ある程度の日常英語は話せます。
毎日教えていただく必要は
ありません」といった。
エリーも政春も驚いた。
独学らしいが・・・。
「自分で勉強できるんやったら
なんでここに?」と政春は聞く。
「エリーさん、明日から英語とは別に
西洋の自由主義について教えて
下さい。」
「自由主義って?」とエリーは
政春に聞いた。
う・・・う・・・と言っている
間に英一郎が
「リベラリズム」といった。
「うん、リベラリズム。」とエリーは相槌を打った。
「日本では家長である父親があまりにも強い
力をもっています。僕は個人の自由を
尊重し男女同権が叫ばれる
西洋の考え方について勉強したいと思って
います。」
エリーは、「う・・・ん」と考えて
「難しい日本語がいっぱい。
もうすこしゆっくりと・・」といった。
バーダンミーと英一郎は英語で言って
すみませんということーー
「おそいのでまた明日」と断った。
エリーは、オフコースと
答える暇に
英一郎は、あっけにとられる二人の横
をすたすたと歩いて
布団を出しに押入れをあけた。
「では、おやすみなさい。」
「もう寝るんか?」と政春。
「おやすみ・・・」
「オヤスミ・・・。」
二人は階下へおりた。
「あれだけ英語ができるのなら
何もここに来る必要ないのに」と
政春は言う。
そして、エリーにあんな理屈っぽい
のは苦手だといった。
言葉の端々にとげがある気がした。
そして大将に言ってかよいにしてもら
おうといった。
「ダメ・・・大将のおねがいだから。」というと
「エリーがいま大変な時だから
断ろう」といった。
エリーは「大丈夫」といった。
「本当に大丈夫。家もにぎやかになるし楽しい」
といった。
「エリーはいつも前向きだ」と政春は言う。
英一郎はなにを考えているのか?
翌朝、英一郎は、そっと起きて台所へ
いった。
そして、戸棚をあけた。
エリーはそっとおきて
声をかけた。
英一郎はびっくりしたが、「お米は
どこに?」と聞く。
「手伝ってくれるの?」
「いいえ、自分の弁当の分です」といった。
お米をとぐ手つきがいいのでエリーは
「上手だ」とほめた。
母を手伝っていたという。
しかし、十年前になくなったと。
「英一郎、ごめんね」と
エリーは言った。
昨日のこひのぼりでのエリーと政春
のラブラブぶりはキャサリン桃子梅子
の話題となった。
亀山家前にある井戸端ではその話題で
持ちきりだった。
なにがあったのだろうか?と
原因を話し合っていた。
そこへ亀山と英一郎がでてきた。
「おはようさん!!」と
奥様方。
朝の挨拶のあと政春は
「エリー、行ってくるわ」と
いう。
「行ってお帰り。」
政春は英一郎と一緒に出勤した。
エリーは見送った。
三人の奥さんはあっけにとられてたが
二人の姿が見えなくなると
エリーに「どこのこ?」
と聞いた。
エリーは英一郎をスマートで
ジェントルマンだといった。
「ところで何の乾杯やったん?」と
桃子。
「また、あとで・・・
というか・・・。
落ち着いたほうがいいからと
マッサンが言った」という。
しかし、エリーは急に気持ち悪く
なった。
その様子を見てキャサリンと梅子は
ははーーーんと納得した。
つわりである。
政春は、工場の朝礼で
鴨居英一郎を紹介した。
みんな元気よく迎えてくれた。
政春は昨日の続きで樽を一号倉庫に移す
作業を指示した。
みんな勢いよくでていった。
「大将の御子息をどうおよび
したらいいでしょうか?」
と俊夫が言う。
「英一郎君でも鴨居君でも・・・」
と、政春が言うと
「次期社長になられる方だし」と
俊夫は言うが
英一郎は「やめてください。
僕は社長にはなりません」と
いった。
「英一郎で結構です。
鴨居と呼ばれるのは不愉快です」と
おかしなことを言った。
そしてでていった。
「不愉快?」
俊夫はことばをなぞった。
みんなが作業をしている。
英一郎に「手伝え」と政春は言う。
「あの人たちのミステークでしょ?」
「誰にでも失敗はある。みんなでおぎなえ
あえばいいだろう?」と
政春は言う。
「わしらはここで日本初のウイスキー
を造るんじゃ。一致団結しなくては
いけない。
できないようなら社長の息子でも
やめてくれ。」
「わかりました。手伝います。」
政春は納得して去って行った。
俊夫は、「まっすぐなんじゃ、お坊ちゃまは。
ええ意味でも悪い意味でも。」
といった。
英一郎は
「がっかりです。
欧州に留学されたのなら
もっと知的で合理的な考え方
の方だと思っていたのに。
封建的で古間香椎全体主義で。」
そういって、作業の中に入って
いった。
俊夫はそれをみて、
「これはいろいろありそうじゃのう。」
と言って笑った。
昼ご飯を食べる英一郎のもとに
政春が来た。
ポットスチルのそばである。
「夢はなに?」と聞く。
「無駄ですよ。僕の将来を
決めるのは僕ではなく
父です。」
「鴨居商店を継ぎたくないのか?」
「きっと弟に継がせます。」
「息子に期待せん親がおるか?
俺におまえを預けたんはそういうことや。」
「弱音はかせておまえはあかんとどっかに
追いやる口実を探して
いるのかもしれません・・・。」
政春は、「そんなに大将が嫌いか」と聞いた。
「大嫌いです」と答えた。
*****************
なんと、難しいお子様!!
男親と息子はこんなものかも
しれません。
エリーは前向きで、どんなことでも
大丈夫と言います。
本当に大丈夫なのでしょうか?
そして英一郎との出会いは
なにを二人にもたらしていくのでしょうか。
鴨居が長男英一郎を政春に紹介した。
そして、英一郎は政春宅に
下宿することになった。
「いや、まいったのう~」
「大将らしいね」
「うん・・・」
「一度言い出したら聞かない父の
性格はよく御存じと思います。
お二人にはなるべくご迷惑に
ならないようにします。
掃除や洗濯は自分でやります。
食事はお二人とは別に一人で
食べさせてもらいます。」
一気にここまで英一郎が話したので
政春は「ようしゃべるやないか」と
いった。
「お二人の生活にはなるべく立ち入らない
ように気を付けますので
お二人も僕のことに必要以上に
干渉しないでください。
お部屋はどちらを?」と英一郎が
聞いた。
ぽかんとしていた政春は
「え?」と言って「とりあえず二階じゃ」と
答えた。
エリーは、「どうぞ」といった。
(二階あったんだ・・・あ、俊夫も
そうだったかな?)
政春は二階へ案内した。
「ここに布団があるから」と押入れをあけた。
英一郎は、「ありがとうございます」といった。
「あの、亀山さんのことはなんとおよび
したらいいですか」と聞く。
政春は、「亀山さんでも工場長でも・・」
エリーは笑った。
「マッサンでいいよ」といった。
明日から政春と一緒に出勤すること
にした。
エリーは、「困ったことがあったら
なんでもいって」といった。
英一郎は
「日本語が本当のお上手ですね」と
いった。
エリーは、ふふふと笑って
「英語はあしたからでいいの?」と聞いた。
すると英一郎は
以下英語で・・・
「ある程度の日常英語は話せます。
毎日教えていただく必要は
ありません」といった。
エリーも政春も驚いた。
独学らしいが・・・。
「自分で勉強できるんやったら
なんでここに?」と政春は聞く。
「エリーさん、明日から英語とは別に
西洋の自由主義について教えて
下さい。」
「自由主義って?」とエリーは
政春に聞いた。
う・・・う・・・と言っている
間に英一郎が
「リベラリズム」といった。
「うん、リベラリズム。」とエリーは相槌を打った。
「日本では家長である父親があまりにも強い
力をもっています。僕は個人の自由を
尊重し男女同権が叫ばれる
西洋の考え方について勉強したいと思って
います。」
エリーは、「う・・・ん」と考えて
「難しい日本語がいっぱい。
もうすこしゆっくりと・・」といった。
バーダンミーと英一郎は英語で言って
すみませんということーー
「おそいのでまた明日」と断った。
エリーは、オフコースと
答える暇に
英一郎は、あっけにとられる二人の横
をすたすたと歩いて
布団を出しに押入れをあけた。
「では、おやすみなさい。」
「もう寝るんか?」と政春。
「おやすみ・・・」
「オヤスミ・・・。」
二人は階下へおりた。
「あれだけ英語ができるのなら
何もここに来る必要ないのに」と
政春は言う。
そして、エリーにあんな理屈っぽい
のは苦手だといった。
言葉の端々にとげがある気がした。
そして大将に言ってかよいにしてもら
おうといった。
「ダメ・・・大将のおねがいだから。」というと
「エリーがいま大変な時だから
断ろう」といった。
エリーは「大丈夫」といった。
「本当に大丈夫。家もにぎやかになるし楽しい」
といった。
「エリーはいつも前向きだ」と政春は言う。
英一郎はなにを考えているのか?
翌朝、英一郎は、そっと起きて台所へ
いった。
そして、戸棚をあけた。
エリーはそっとおきて
声をかけた。
英一郎はびっくりしたが、「お米は
どこに?」と聞く。
「手伝ってくれるの?」
「いいえ、自分の弁当の分です」といった。
お米をとぐ手つきがいいのでエリーは
「上手だ」とほめた。
母を手伝っていたという。
しかし、十年前になくなったと。
「英一郎、ごめんね」と
エリーは言った。
昨日のこひのぼりでのエリーと政春
のラブラブぶりはキャサリン桃子梅子
の話題となった。
亀山家前にある井戸端ではその話題で
持ちきりだった。
なにがあったのだろうか?と
原因を話し合っていた。
そこへ亀山と英一郎がでてきた。
「おはようさん!!」と
奥様方。
朝の挨拶のあと政春は
「エリー、行ってくるわ」と
いう。
「行ってお帰り。」
政春は英一郎と一緒に出勤した。
エリーは見送った。
三人の奥さんはあっけにとられてたが
二人の姿が見えなくなると
エリーに「どこのこ?」
と聞いた。
エリーは英一郎をスマートで
ジェントルマンだといった。
「ところで何の乾杯やったん?」と
桃子。
「また、あとで・・・
というか・・・。
落ち着いたほうがいいからと
マッサンが言った」という。
しかし、エリーは急に気持ち悪く
なった。
その様子を見てキャサリンと梅子は
ははーーーんと納得した。
つわりである。
政春は、工場の朝礼で
鴨居英一郎を紹介した。
みんな元気よく迎えてくれた。
政春は昨日の続きで樽を一号倉庫に移す
作業を指示した。
みんな勢いよくでていった。
「大将の御子息をどうおよび
したらいいでしょうか?」
と俊夫が言う。
「英一郎君でも鴨居君でも・・・」
と、政春が言うと
「次期社長になられる方だし」と
俊夫は言うが
英一郎は「やめてください。
僕は社長にはなりません」と
いった。
「英一郎で結構です。
鴨居と呼ばれるのは不愉快です」と
おかしなことを言った。
そしてでていった。
「不愉快?」
俊夫はことばをなぞった。
みんなが作業をしている。
英一郎に「手伝え」と政春は言う。
「あの人たちのミステークでしょ?」
「誰にでも失敗はある。みんなでおぎなえ
あえばいいだろう?」と
政春は言う。
「わしらはここで日本初のウイスキー
を造るんじゃ。一致団結しなくては
いけない。
できないようなら社長の息子でも
やめてくれ。」
「わかりました。手伝います。」
政春は納得して去って行った。
俊夫は、「まっすぐなんじゃ、お坊ちゃまは。
ええ意味でも悪い意味でも。」
といった。
英一郎は
「がっかりです。
欧州に留学されたのなら
もっと知的で合理的な考え方
の方だと思っていたのに。
封建的で古間香椎全体主義で。」
そういって、作業の中に入って
いった。
俊夫はそれをみて、
「これはいろいろありそうじゃのう。」
と言って笑った。
昼ご飯を食べる英一郎のもとに
政春が来た。
ポットスチルのそばである。
「夢はなに?」と聞く。
「無駄ですよ。僕の将来を
決めるのは僕ではなく
父です。」
「鴨居商店を継ぎたくないのか?」
「きっと弟に継がせます。」
「息子に期待せん親がおるか?
俺におまえを預けたんはそういうことや。」
「弱音はかせておまえはあかんとどっかに
追いやる口実を探して
いるのかもしれません・・・。」
政春は、「そんなに大将が嫌いか」と聞いた。
「大嫌いです」と答えた。
*****************
なんと、難しいお子様!!
男親と息子はこんなものかも
しれません。
エリーは前向きで、どんなことでも
大丈夫と言います。
本当に大丈夫なのでしょうか?
そして英一郎との出会いは
なにを二人にもたらしていくのでしょうか。
