虎穴にいらずんば虎児を得ず4
料亭で政春と鴨居の話し合いが
はじまった。
エリーは隣の部屋でそっと聞いていた。
政春は、まず
一緒にウイスキーを作らせてください
と・・・
言えばいいのに・・
なぜか
「何故ウイッキーを作ったのか」と
聞いた。
ウヰスキーが世に出たとき
わかるようにするためにウイスキー
がこの世にあることをわからせるため
であり、飲みやすいように今から
なれてもらうためだと鴨居はいう。
そして資金をためるためやという。
これを売って売って資金をためるので
ある。ウイスキーづくりはお金だ。
太陽ワインだけではだめである。
もっと売れる新商品を開発しなくは
いけない。それを資金にウイスキーを
作るんだと鴨居が言う。
政春は、大将は本気でウイスキーを作る
気があるんですねと聞く。
世界中をあっと驚かせたい。
鴨居は昔から洋酒に興味を持って
いたという。
子供のころ実家は米屋と両替商を
やっていた。
できのいい兄貴は上の学校へ
いかせてもらったが、自分は
14歳で道修町の薬問屋に
丁稚奉公に出された。
そこが洋酒を取り扱って
いてそれがとても夢のある
物のように見えた。
いつかこんな商品を扱いたい
と、思ったという。
二十歳で独立するとき親父も
店の主人も反対した。
しかし、母親はやってみなはれと
いって、背中を押してくれた。
あんたの夢はきっと叶う。
思い切りやってみなはれ・・・
それがいまも力の源で
あの世で応援してくれている
という。それをエリーはじっときいて
いた。
「大将はどんなウイスキーを作りたい
と思っていますか?」
「本場よりうまいウイスキーを作って
やりたい。メイドインジャパンで
この日本を元気にしたいんや。」
「メイドインジャパンか・・・」
政春は感動した。
「大将すごい」とエリーは言う。
そこへキャサリンたちが来た。
「大将、乾杯しましょう。
これからわしらがつくるウイスキーに
乾杯!!」
そういって、政春は
スコッチウイスキーを出した。
ふたりはそれを機嫌よく飲んだ。
鴨居は、「ちょっとピートがきついな。
わしらが作るウイスキーはピートを
加減せなあかん。」といった。
政春は「ピートの臭みが強いからこそ
本物のウヰスキーだ」と言い切る。
鴨居はピートを使わないとは
いってないというが。
この点が政春と鴨居の意見の食い違う
ところとなった。
鴨居は日本人の口に合うウヰスキーを
といい、政春はピートがなければウヰスキー
ではないと言い切る。
鴨居は本場のウヰスキーとは違うウイスキーを
作って売りだすという。
政春はあくまでスコッチが基準だった。
しかし、鴨居は目的は
同じだというが。
「やっぱりわかっとらん。」と
政春は怒った。
「おまえ、ここに何しに来たんや?
エリーちゃんに苦労を掛けて。」
「エリーは関係ない。
わしゃ、あんたの言いなりになる気はありません。
あんたとウイスキーを作る
気はありません。
本場のウヰスキーを作る気が
ないひとと一緒にできません.」
キャサリンたちは聞こえないと
いってエリーを押す。
エリーたちはふすまごと倒れて
しまった。
「エリーちゃん、残念やな。
わしらは水と油や。」
頑固者の二人は、そのせいで
決裂となった。
「それなに?」
「オイルアンドウォーターや!!」
車に乗る鴨居。
鴨居は黒沢に嶋田物産から連絡はあった
かときく。
あくまで政春を抜きにウイスキーの
技術者を探そうとするつもりだ。
黒沢がまだ連絡はないというと
「催促せい」と命令した。
こひのぼりで
料亭から持ち帰った
ごちそうの弁当を
たべるキャサリン。
「マッサンの就職は不意になったのか」
と秋に言われる。
「あんたと一緒にできません。さっさと
帰ってつかあさいとたんか切りよったんや。」
とキャサリン。
「よかった、よかった、あんな
破廉恥なポスターをつくる
会社はあかん」と春さんは
店に貼った、太陽ワインの
ポスターをみて、言う。
「あの目つきが男にこびて
いる」という。
巡査は、「わし、やっぱり好みやわ」と
いう。
彼の目つきが
あやしい。
そこに、さっきまでご飯を食べて
いた女性のお客が「御馳走様」と
いって立ち上がった。
こっちをみると
春さんは、その客がモデルの
みどりとわかった。
「ああ!!」
と声が出た。
みどりは笑って
「さいなら」といってかえった。
春さんは、「上品な娘さんや」といって
「やっぱり太陽ワインを置くことに
した」といった。
巡査は「あくしゅしてもろてこよ」と
いって、店を出た。
「わしも・・・」といって春さんも
追いかけて店を出た。
亀山家も料亭で食べる予定だった
弁当が夕餉になった。
「スコットランドに負けないウイスキーを
大将と作るんでしょ?」
「勝つとか負けるとかではない。
わしとあのひとは水と油。」
「二人は絶対うまくいく。」
「あのひとはわかってない」
「わかってないのはマッサンでしょ?
どんなものを作るのか、鴨居商店に
はいってから考えたらよかった
のに・・・」
「これ食べよう、もったいない。」
「誰のためにここまでやったのか
わかっているの?」
「これなんぼしたんや?
どうやって払った?」
「そんな話はしてない。」
政春は、「すまん」といって
「これは仕方がないことだ」という。
そこへよしさんが来た。
家賃の催促である。
隠れようとしたが、もう遅い。
エリーは「すみません」といった。
「マッサン、おるんやろ?」
「よしさん、すみません。
もう少しこらえてください」
というと
「その辛気臭い演技、みあきた。
家主さんがお呼びや。」
「まさか、この家を出て行けと?」
「さあな?」
野々村家に行くと
住吉学院の先生の口があると
野々村が言った。
まだ、就職ができてないらしい
からどうだろう?と聞く。
化学の先生である。
亀山は大阪高等工業卒
なので、由紀子の推薦である。
月給100円という。
驚く政春。
大卒の初任給が50円。
帝大を出た役人の初任給が70円。
そうなると破格の待遇である。
「ちょっと考えてみませんか?」
と言われた。
**************
鴨居とは水と油か?
もう少し賢くなれないのか?
と政春に聞きたい。
自分の理想どうりにやりたいと
思っているらしいが
どこの酒造にいっても
人間関係はそう簡単ではない。
まず、鴨居に政春が聞くこの
質問は、いい答えだったら
一緒にやってやろうという
政春の気持ちが丸見えである。
本気でウイスキーを作ろうと思って
いますか?
鴨居を確かめている。
鴨居は、自分の生い立ちも話して
どうして洋酒に興味を持った
のか、語ったぐらいだ。
しかし、ピートの臭みは
趣味の問題である。
臭いのと臭みが軽いのを
作ればいい。
まだまだ、日本人が本場の
スコッチウイスキーに慣れて
ないのであれば、政春はみんな
がその味に慣れるまで、
軽いウイスキーを
つくればいいという柔軟
な考え方ができない。
あくまで本場にこだわる。
経営者としたら、こまるのだ。
売れないと経営ができない。
政春は経営者ではない。
技術者である。
だから、売れる、売れない
関係なく
本場の雑味の無いウイスキーを
目指すのである。
住吉酒造であれほど、株主
たちに反対されたのに、なぜ
学習ができないのか???
エリーがかわいそうである。
せっかく、お金をつぎ込んで
お膳だてをしたのに
政春は、エリーは関係ないと
いった。
エリーの内助の功は日の目を見ない
のかと思う。
ウヰスキーを作るとあれほど、政春は
泣きながらも、決意したのに
なんなんだ???
あの涙は嘘か?
で、究極的には
自分の思い通りにいかないと
ウヰスキーは作らないという。
あほか・・・とがっかりである。
我慢をすることを知らない男
なのかもしれない。
で、この破格の待遇の教師の職。
これで、政春は
安泰の人生を送るのが
いいのかもしれない・・・。
エリーは、スコットランドへ
帰るべしである。
料亭で政春と鴨居の話し合いが
はじまった。
エリーは隣の部屋でそっと聞いていた。
政春は、まず
一緒にウイスキーを作らせてください
と・・・
言えばいいのに・・
なぜか
「何故ウイッキーを作ったのか」と
聞いた。
ウヰスキーが世に出たとき
わかるようにするためにウイスキー
がこの世にあることをわからせるため
であり、飲みやすいように今から
なれてもらうためだと鴨居はいう。
そして資金をためるためやという。
これを売って売って資金をためるので
ある。ウイスキーづくりはお金だ。
太陽ワインだけではだめである。
もっと売れる新商品を開発しなくは
いけない。それを資金にウイスキーを
作るんだと鴨居が言う。
政春は、大将は本気でウイスキーを作る
気があるんですねと聞く。
世界中をあっと驚かせたい。
鴨居は昔から洋酒に興味を持って
いたという。
子供のころ実家は米屋と両替商を
やっていた。
できのいい兄貴は上の学校へ
いかせてもらったが、自分は
14歳で道修町の薬問屋に
丁稚奉公に出された。
そこが洋酒を取り扱って
いてそれがとても夢のある
物のように見えた。
いつかこんな商品を扱いたい
と、思ったという。
二十歳で独立するとき親父も
店の主人も反対した。
しかし、母親はやってみなはれと
いって、背中を押してくれた。
あんたの夢はきっと叶う。
思い切りやってみなはれ・・・
それがいまも力の源で
あの世で応援してくれている
という。それをエリーはじっときいて
いた。
「大将はどんなウイスキーを作りたい
と思っていますか?」
「本場よりうまいウイスキーを作って
やりたい。メイドインジャパンで
この日本を元気にしたいんや。」
「メイドインジャパンか・・・」
政春は感動した。
「大将すごい」とエリーは言う。
そこへキャサリンたちが来た。
「大将、乾杯しましょう。
これからわしらがつくるウイスキーに
乾杯!!」
そういって、政春は
スコッチウイスキーを出した。
ふたりはそれを機嫌よく飲んだ。
鴨居は、「ちょっとピートがきついな。
わしらが作るウイスキーはピートを
加減せなあかん。」といった。
政春は「ピートの臭みが強いからこそ
本物のウヰスキーだ」と言い切る。
鴨居はピートを使わないとは
いってないというが。
この点が政春と鴨居の意見の食い違う
ところとなった。
鴨居は日本人の口に合うウヰスキーを
といい、政春はピートがなければウヰスキー
ではないと言い切る。
鴨居は本場のウヰスキーとは違うウイスキーを
作って売りだすという。
政春はあくまでスコッチが基準だった。
しかし、鴨居は目的は
同じだというが。
「やっぱりわかっとらん。」と
政春は怒った。
「おまえ、ここに何しに来たんや?
エリーちゃんに苦労を掛けて。」
「エリーは関係ない。
わしゃ、あんたの言いなりになる気はありません。
あんたとウイスキーを作る
気はありません。
本場のウヰスキーを作る気が
ないひとと一緒にできません.」
キャサリンたちは聞こえないと
いってエリーを押す。
エリーたちはふすまごと倒れて
しまった。
「エリーちゃん、残念やな。
わしらは水と油や。」
頑固者の二人は、そのせいで
決裂となった。
「それなに?」
「オイルアンドウォーターや!!」
車に乗る鴨居。
鴨居は黒沢に嶋田物産から連絡はあった
かときく。
あくまで政春を抜きにウイスキーの
技術者を探そうとするつもりだ。
黒沢がまだ連絡はないというと
「催促せい」と命令した。
こひのぼりで
料亭から持ち帰った
ごちそうの弁当を
たべるキャサリン。
「マッサンの就職は不意になったのか」
と秋に言われる。
「あんたと一緒にできません。さっさと
帰ってつかあさいとたんか切りよったんや。」
とキャサリン。
「よかった、よかった、あんな
破廉恥なポスターをつくる
会社はあかん」と春さんは
店に貼った、太陽ワインの
ポスターをみて、言う。
「あの目つきが男にこびて
いる」という。
巡査は、「わし、やっぱり好みやわ」と
いう。
彼の目つきが
あやしい。
そこに、さっきまでご飯を食べて
いた女性のお客が「御馳走様」と
いって立ち上がった。
こっちをみると
春さんは、その客がモデルの
みどりとわかった。
「ああ!!」
と声が出た。
みどりは笑って
「さいなら」といってかえった。
春さんは、「上品な娘さんや」といって
「やっぱり太陽ワインを置くことに
した」といった。
巡査は「あくしゅしてもろてこよ」と
いって、店を出た。
「わしも・・・」といって春さんも
追いかけて店を出た。
亀山家も料亭で食べる予定だった
弁当が夕餉になった。
「スコットランドに負けないウイスキーを
大将と作るんでしょ?」
「勝つとか負けるとかではない。
わしとあのひとは水と油。」
「二人は絶対うまくいく。」
「あのひとはわかってない」
「わかってないのはマッサンでしょ?
どんなものを作るのか、鴨居商店に
はいってから考えたらよかった
のに・・・」
「これ食べよう、もったいない。」
「誰のためにここまでやったのか
わかっているの?」
「これなんぼしたんや?
どうやって払った?」
「そんな話はしてない。」
政春は、「すまん」といって
「これは仕方がないことだ」という。
そこへよしさんが来た。
家賃の催促である。
隠れようとしたが、もう遅い。
エリーは「すみません」といった。
「マッサン、おるんやろ?」
「よしさん、すみません。
もう少しこらえてください」
というと
「その辛気臭い演技、みあきた。
家主さんがお呼びや。」
「まさか、この家を出て行けと?」
「さあな?」
野々村家に行くと
住吉学院の先生の口があると
野々村が言った。
まだ、就職ができてないらしい
からどうだろう?と聞く。
化学の先生である。
亀山は大阪高等工業卒
なので、由紀子の推薦である。
月給100円という。
驚く政春。
大卒の初任給が50円。
帝大を出た役人の初任給が70円。
そうなると破格の待遇である。
「ちょっと考えてみませんか?」
と言われた。
**************
鴨居とは水と油か?
もう少し賢くなれないのか?
と政春に聞きたい。
自分の理想どうりにやりたいと
思っているらしいが
どこの酒造にいっても
人間関係はそう簡単ではない。
まず、鴨居に政春が聞くこの
質問は、いい答えだったら
一緒にやってやろうという
政春の気持ちが丸見えである。
本気でウイスキーを作ろうと思って
いますか?
鴨居を確かめている。
鴨居は、自分の生い立ちも話して
どうして洋酒に興味を持った
のか、語ったぐらいだ。
しかし、ピートの臭みは
趣味の問題である。
臭いのと臭みが軽いのを
作ればいい。
まだまだ、日本人が本場の
スコッチウイスキーに慣れて
ないのであれば、政春はみんな
がその味に慣れるまで、
軽いウイスキーを
つくればいいという柔軟
な考え方ができない。
あくまで本場にこだわる。
経営者としたら、こまるのだ。
売れないと経営ができない。
政春は経営者ではない。
技術者である。
だから、売れる、売れない
関係なく
本場の雑味の無いウイスキーを
目指すのである。
住吉酒造であれほど、株主
たちに反対されたのに、なぜ
学習ができないのか???
エリーがかわいそうである。
せっかく、お金をつぎ込んで
お膳だてをしたのに
政春は、エリーは関係ないと
いった。
エリーの内助の功は日の目を見ない
のかと思う。
ウヰスキーを作るとあれほど、政春は
泣きながらも、決意したのに
なんなんだ???
あの涙は嘘か?
で、究極的には
自分の思い通りにいかないと
ウヰスキーは作らないという。
あほか・・・とがっかりである。
我慢をすることを知らない男
なのかもしれない。
で、この破格の待遇の教師の職。
これで、政春は
安泰の人生を送るのが
いいのかもしれない・・・。
エリーは、スコットランドへ
帰るべしである。
