絵に描いた餅4
酒造りで櫂入れという作業は
かなり力がいる。
というより、酒造り事は、力
仕事である。
政春は俊夫の厳しい指摘を
うけていた。
「ああ、もうあかん、あかん、あかん」
と政春が言うので俊夫は
驚いて「旦那様の見込み違いでは」と
つぶやいた。
「なんのことや?」と聞くと
「察しの悪いお坊ちゃまじゃ」といって
向うへ行く。
政春は汗を拭いて
ふと・・気が付いたことが
あった。
ここで親父と相撲を取った、と。
「日本一の男になるんじゃろうが
世界一うまいウイスキーをつくtt
新しい時代を作ってみい。」
政志はそういった。
政春はウイスキーづくりはまだできない。
しかも、実家に呼び戻されて
日本酒造りをやっている。
思い通りにならないものだ。
エリーは嫁として認めてもらうため
女中仕事にいそしんでいた。
このプロセスはウイスキーづくりへ続く
のだろうか?
座敷で縫物をしている千加子。
政春は
「あかん・・・
限界じゃ・・・」と弱音を吐いた。
「あかんとか、限界とか
お坊ちゃまは気楽ですね。」
「お坊ちゃまはやめてくれ」というと
俊夫は「事実この家の息子だから」と
いう。
俊夫には政志と早苗は事実上の親同然だった。
しかも、亀山酒造の酒に惚れこんでいる。
なのに、本当の息子はどうなんだと
言う気持ちである。
政春は、俊夫にウイスキーは飲んだことない
のかと聞く。
飲んだことはないという、
俊夫は西洋どころかこの街から
でたこともない。
ウイスキーなど飲むチャンスはなかった
のだった。
あれはうまいと政春が言うが
俊夫は絵に描いた餅だという。
「そんな西洋の酒など日本で作れる
わけがない。
作ったところでだれが飲むのですか?」
政春は「今にみんながウイスキーがうまいと
言って飲む時代が来る」という。
俊夫は「甘ったれるのもええ加減にして
つかあさい」と怒った。
現実政春は仕事はしていない、
おやのすねかじりで、
西洋の酒など造れるわけがないと
いった。
エリーは階段を雑巾がけしていた。
ふとバケツにつまづき
バケツが階段から落ちていった。
早苗がエリーに言った。
「・・・どう言うじゃろね。
あんたのお母さんがこの姿を見たら。
遠い島国に来て、仕事の無くなった
旦那の実家で女中をさせられている。
うちだったら涙が出る。
首に縄つけて連れて帰る。
あんた、お母さんとこへ帰ったら
どうね?」
早苗は諭すように言った。
「帰りません・・
マッサンの夢信じます。」
「頑固者じゃね、ふたりとも
親の顔が見て見たい。。、」
早苗はそう言い残して去って行った。
エリーはため息が出た。
家に入ってきた政春は
早苗とすれ違い、なにもいわない
早苗の後姿をじっとみた。
一方、うつむきかげんで
雑巾がけの道具をなおすエリーに
「またお母ちゃんに何か言われ
たのか」と聞く。
エリーは「大丈夫」といった。
「すまんのう。」
「大丈夫・・・。」
「ああ・・・」
政春は
ため息をつきながら上り口に
座り込んだ。
「絵に描いた餅だと。
どんなに上手に書いても
食べることはできない。
それと同じでウイスキーづくりは
どうにもならない夢だという
意味だ」といった。
「金もない、夢もないわしに
ウヰスキーなんか作れんのかのう?
とし兄が言うように、わしは計画書を
かいただけで一歩も前に進んでない。
絵に描いた餅じゃ・・
ははは・・・。」
政春は力なく笑った。
エリーは、「ダメ」といった。
「私たちの夢きっと叶う。きっと!
いまはちょっとお昼寝しているだけ。
ね?」
「エリー・・・」
ちょっと元気になった政春に
味噌汁を味見してもらった。
すると、亀山家の味だと
いった。
喜ぶエリー。
さっそく千加子に報告しようと
座敷のほうへ行った。
「おねえさん、お味噌汁できました・・」
すると、千加子が苦しんでいる。
「マッサン、助けて!!」とエリーは
叫んだ。
どうやら、千加子は産気づいたらしい。
マッサン、すみれ、島じい、
早苗がやってきた。
「大変だ」とばかりに、政春は
産婆さんを呼びに行く。
すみれは布団をしく・・・
エリーは千加子を布団に寝かそうとした。
「さわらんでいい」、と早苗が言う。
エリーは自分の父親は医者で
お産も手伝ったことがあるといった。
政志のもとに島じいと俊夫が
集まり、千加子のお産を
酒蔵では不安そうにしていることを
告げた。
政志が大丈夫だといってくれれば
みんな安心するけどというので
政志は立ち上がった。
島じいは、「旦那様?」と
驚いた。政志が立っている
からだ。
島じいの顔を見て政志は
思い出したように
「あ、いたたた」といった。
苦しむ千加子にエリーは座布団を半分
におって「これを抱いて」と
渡した。
すると落ち着いたらしい。
「政春はどうしたのか」と早苗は言う。
まだ、産婆を呼びに行ったままだった。
そこに、酒造りの歌が
聞こえてきた。
エリーは千加子に「お母さんの歌が
聞こえますよ」といった。
「回れば、やれ、七里・・ヨーホイ・・
ああ、浦は・・・ヨーホイ」
「おねえさん、ゆっくり息を合わせてください。」
エリーは、息を吸って吐く、リズムを教えた。
千加子はおちついたらしい。
早苗はそれをじっと見ていた。
やっとの思いで政春が産婆をおぶって
到着した。
「すみれ、間に合ったか?」
といった。
産婆が千加子のそばに行った。
「力んで!!」
最後の意気込みを
千加子は全身を使って産む。
政志の部屋では子供はさかごだろうと
言われている話をした。
難産である。
政春が生まれるときも難産だったと
政志はいった。
それを母親は耐えて、たえて
コドモを産むのである。
じっと聞く政春。
「こがな時男は何もできんのう」
と、政志。
「そうじゃのう」と政春は言った。
そこへ元気な赤ん坊の声が
聞こえた。
政春は「生まれた!!
親父生まれたぞ。」という。
「千加子やったぞ。
ばんざーい」と政志。
政志は、ふとんのうえに立っていた。
政春は、「え?」と父の腰を見た。
「親父・・腰は?」
「え?」
といって、「わはははは」と政志は
笑った。」
元気な男の子だった。
家族が集まる。
「よくやった。」
「かわいい」と
みんなが嬉しそうに
千加子と
赤ん坊のそばによる。
エリーも嬉しそうだった。
****************
生まれました。
難産は大変ですよね。
でもエリーの呼吸法で千加子は
落ち着いてお産を乗り越え
ました。
究極の悩みを二人は
感じています。
政春は実家を継ぎたくない。
ウヰスキーを作りたい。
しかし、仕事もない、金もない。
そんなやつにどうしたら
ウヰスキーが作れるのかと
みんな疑心暗鬼だ。
そして、政春の夢は
千加子は間違った夢といった。
俊夫は絵に描いた餅だといった。
エリーは早苗に言われた。
遠い島国きたけど
旦那は仕事がない・・・
実家では女中扱い
あんたのお母さんが見たら
なんというだろう?」と。
辛い質問である。
母には見せたくない姿である。
エリーは、夢を追い続ける妖精のように
マッサンはウイスキーを作りますと
いった。
弱音を吐く政春にも大丈夫といった。
エリーが一番、つらいのでは?と
思う。
でも、笑うしかないと思ったのだろうか。
たしかに、ここで政春が挫折をして
家を継いだとしたら
ウイスキーづくりのために
日本に来たはずの自分はどこに
行ったのかとエリーは、わから
なくなるだろう。
たとえ、どうなっても政春が
ウヰスキーを作るまでエリーは
普通の幸せには背中を向けている
覚悟なのである。
早苗にとってエリーは、かわいそうな
女性に映ったのではと思う。
その元凶は自分の息子だ。
やりきれないだろうね、早苗さんは。
酒造りで櫂入れという作業は
かなり力がいる。
というより、酒造り事は、力
仕事である。
政春は俊夫の厳しい指摘を
うけていた。
「ああ、もうあかん、あかん、あかん」
と政春が言うので俊夫は
驚いて「旦那様の見込み違いでは」と
つぶやいた。
「なんのことや?」と聞くと
「察しの悪いお坊ちゃまじゃ」といって
向うへ行く。
政春は汗を拭いて
ふと・・気が付いたことが
あった。
ここで親父と相撲を取った、と。
「日本一の男になるんじゃろうが
世界一うまいウイスキーをつくtt
新しい時代を作ってみい。」
政志はそういった。
政春はウイスキーづくりはまだできない。
しかも、実家に呼び戻されて
日本酒造りをやっている。
思い通りにならないものだ。
エリーは嫁として認めてもらうため
女中仕事にいそしんでいた。
このプロセスはウイスキーづくりへ続く
のだろうか?
座敷で縫物をしている千加子。
政春は
「あかん・・・
限界じゃ・・・」と弱音を吐いた。
「あかんとか、限界とか
お坊ちゃまは気楽ですね。」
「お坊ちゃまはやめてくれ」というと
俊夫は「事実この家の息子だから」と
いう。
俊夫には政志と早苗は事実上の親同然だった。
しかも、亀山酒造の酒に惚れこんでいる。
なのに、本当の息子はどうなんだと
言う気持ちである。
政春は、俊夫にウイスキーは飲んだことない
のかと聞く。
飲んだことはないという、
俊夫は西洋どころかこの街から
でたこともない。
ウイスキーなど飲むチャンスはなかった
のだった。
あれはうまいと政春が言うが
俊夫は絵に描いた餅だという。
「そんな西洋の酒など日本で作れる
わけがない。
作ったところでだれが飲むのですか?」
政春は「今にみんながウイスキーがうまいと
言って飲む時代が来る」という。
俊夫は「甘ったれるのもええ加減にして
つかあさい」と怒った。
現実政春は仕事はしていない、
おやのすねかじりで、
西洋の酒など造れるわけがないと
いった。
エリーは階段を雑巾がけしていた。
ふとバケツにつまづき
バケツが階段から落ちていった。
早苗がエリーに言った。
「・・・どう言うじゃろね。
あんたのお母さんがこの姿を見たら。
遠い島国に来て、仕事の無くなった
旦那の実家で女中をさせられている。
うちだったら涙が出る。
首に縄つけて連れて帰る。
あんた、お母さんとこへ帰ったら
どうね?」
早苗は諭すように言った。
「帰りません・・
マッサンの夢信じます。」
「頑固者じゃね、ふたりとも
親の顔が見て見たい。。、」
早苗はそう言い残して去って行った。
エリーはため息が出た。
家に入ってきた政春は
早苗とすれ違い、なにもいわない
早苗の後姿をじっとみた。
一方、うつむきかげんで
雑巾がけの道具をなおすエリーに
「またお母ちゃんに何か言われ
たのか」と聞く。
エリーは「大丈夫」といった。
「すまんのう。」
「大丈夫・・・。」
「ああ・・・」
政春は
ため息をつきながら上り口に
座り込んだ。
「絵に描いた餅だと。
どんなに上手に書いても
食べることはできない。
それと同じでウイスキーづくりは
どうにもならない夢だという
意味だ」といった。
「金もない、夢もないわしに
ウヰスキーなんか作れんのかのう?
とし兄が言うように、わしは計画書を
かいただけで一歩も前に進んでない。
絵に描いた餅じゃ・・
ははは・・・。」
政春は力なく笑った。
エリーは、「ダメ」といった。
「私たちの夢きっと叶う。きっと!
いまはちょっとお昼寝しているだけ。
ね?」
「エリー・・・」
ちょっと元気になった政春に
味噌汁を味見してもらった。
すると、亀山家の味だと
いった。
喜ぶエリー。
さっそく千加子に報告しようと
座敷のほうへ行った。
「おねえさん、お味噌汁できました・・」
すると、千加子が苦しんでいる。
「マッサン、助けて!!」とエリーは
叫んだ。
どうやら、千加子は産気づいたらしい。
マッサン、すみれ、島じい、
早苗がやってきた。
「大変だ」とばかりに、政春は
産婆さんを呼びに行く。
すみれは布団をしく・・・
エリーは千加子を布団に寝かそうとした。
「さわらんでいい」、と早苗が言う。
エリーは自分の父親は医者で
お産も手伝ったことがあるといった。
政志のもとに島じいと俊夫が
集まり、千加子のお産を
酒蔵では不安そうにしていることを
告げた。
政志が大丈夫だといってくれれば
みんな安心するけどというので
政志は立ち上がった。
島じいは、「旦那様?」と
驚いた。政志が立っている
からだ。
島じいの顔を見て政志は
思い出したように
「あ、いたたた」といった。
苦しむ千加子にエリーは座布団を半分
におって「これを抱いて」と
渡した。
すると落ち着いたらしい。
「政春はどうしたのか」と早苗は言う。
まだ、産婆を呼びに行ったままだった。
そこに、酒造りの歌が
聞こえてきた。
エリーは千加子に「お母さんの歌が
聞こえますよ」といった。
「回れば、やれ、七里・・ヨーホイ・・
ああ、浦は・・・ヨーホイ」
「おねえさん、ゆっくり息を合わせてください。」
エリーは、息を吸って吐く、リズムを教えた。
千加子はおちついたらしい。
早苗はそれをじっと見ていた。
やっとの思いで政春が産婆をおぶって
到着した。
「すみれ、間に合ったか?」
といった。
産婆が千加子のそばに行った。
「力んで!!」
最後の意気込みを
千加子は全身を使って産む。
政志の部屋では子供はさかごだろうと
言われている話をした。
難産である。
政春が生まれるときも難産だったと
政志はいった。
それを母親は耐えて、たえて
コドモを産むのである。
じっと聞く政春。
「こがな時男は何もできんのう」
と、政志。
「そうじゃのう」と政春は言った。
そこへ元気な赤ん坊の声が
聞こえた。
政春は「生まれた!!
親父生まれたぞ。」という。
「千加子やったぞ。
ばんざーい」と政志。
政志は、ふとんのうえに立っていた。
政春は、「え?」と父の腰を見た。
「親父・・腰は?」
「え?」
といって、「わはははは」と政志は
笑った。」
元気な男の子だった。
家族が集まる。
「よくやった。」
「かわいい」と
みんなが嬉しそうに
千加子と
赤ん坊のそばによる。
エリーも嬉しそうだった。
****************
生まれました。
難産は大変ですよね。
でもエリーの呼吸法で千加子は
落ち着いてお産を乗り越え
ました。
究極の悩みを二人は
感じています。
政春は実家を継ぎたくない。
ウヰスキーを作りたい。
しかし、仕事もない、金もない。
そんなやつにどうしたら
ウヰスキーが作れるのかと
みんな疑心暗鬼だ。
そして、政春の夢は
千加子は間違った夢といった。
俊夫は絵に描いた餅だといった。
エリーは早苗に言われた。
遠い島国きたけど
旦那は仕事がない・・・
実家では女中扱い
あんたのお母さんが見たら
なんというだろう?」と。
辛い質問である。
母には見せたくない姿である。
エリーは、夢を追い続ける妖精のように
マッサンはウイスキーを作りますと
いった。
弱音を吐く政春にも大丈夫といった。
エリーが一番、つらいのでは?と
思う。
でも、笑うしかないと思ったのだろうか。
たしかに、ここで政春が挫折をして
家を継いだとしたら
ウイスキーづくりのために
日本に来たはずの自分はどこに
行ったのかとエリーは、わから
なくなるだろう。
たとえ、どうなっても政春が
ウヰスキーを作るまでエリーは
普通の幸せには背中を向けている
覚悟なのである。
早苗にとってエリーは、かわいそうな
女性に映ったのではと思う。
その元凶は自分の息子だ。
やりきれないだろうね、早苗さんは。
