情けは人のためならず1
1920年大正9年11月。
★政春が住吉酒造を退職してから
二か月がたちました。
ある日、エリーが大変大変と
いう。
米櫃にお米がない。
「やっぱり夢だけでは食べていけれ
まへんな。」
と、エリーは言った。
政春は力が抜けた。
★政春はいまだに定職について
いませんでした。
★そればかりか、ウイスキーづくりへの道が
何一つ見いだせないままでした。
就職しても長続がしない。
転々と職を変わっていくので
生活費は苦しい。
今日も新たな仕事の面接に
行く予定だった。
エリーはわずかのたくわえを切り崩して
なんとかしのいできた。
今度は翻訳の会社だという。
(ん?このころ村岡花子先生は
なにをしていたのだろう?
1919年大正8年の12月には
最高のクリスマスという副題で
英治と結婚することに
なった。
で、この年には村岡花子となって
いて翻訳の仕事をやっていたわけだ。)
では、マッサンのお話に戻る。
エリーは自分も仕事を探そうと
言うが、政春は男は外で働き
女は家を守るものだといって
きかない。
エリーは庭の柿をみて
「これは食べられないの?」と聞いた。
食糧事情が悪いので
食べられないかなと思ったのだ
ろう。「これは渋柿だ」と
政春は言う。「これは渋柿だから
食べられない」と説明したが
柿はスコットランドにないので
その意味が分からず、エリーは
食べてしまう。
大変、まずい思いをした。
キャサリン、梅子、桃子が来た。
大家のおよしさんが亀山家が家賃を
ためているといっているらしい。
それを聞いてキャサリンたちが
やってきたのだった。
エリーは私にできる仕事はないかなと
いうが、桃子はおなごは雇ってもらえないと
いう。
ましてやエリーは読み書きがまだできない。
そこへ政春が帰ってきた。
「おかえり、どうだった?」
とエリーが聞く。
キャサリンも聞くと
どうやら落ちたらしい。
「せっかく紹介してもらったけど。」
「不採用かいな。
そないな辛気くさい顔をしていたら
誰も仕事なんか任せられへん。」
キャサリンは言う。政春は、他人の
家のことに口出しするなといった。
梅子も桃子もキャサリンと一緒に
帰って行った。
政春はエリーに余計なことを話すなと
いう。政春が職がないとか金に困って
いるとかである。
エリーは、「何も話してないけどみんな
知っている」といった。
世間というものはそういうものだ。
「どうして翻訳の仕事ダメだったの?」
理由は自分が断ったという。
文学の翻訳は眠たくなるし。
論文だと何か胸くそわるい。
「あがな仕事は性に合わん!!!」
情けない男だ・・・。
この二か月、こんな話ばかりだった。
「心配するな。貯えもあるじゃろ?」
「もうすぐなくなる!!!」
政春は困り果てた。
鴨居商店は相変わらず、元気である。
鴨居は、世界のウヰスキーを集めると
いう。
ウイスキーづくりを考えているのだ。
「ジャパニーズウヰスキーの
夜明けは、近いで。」
うらやましい限りだ。
しかし、この男、いつどこで
どういういきさつでウイスキーを作ろう
と思ったのだろうか?
あの日、政春が帰ってきた日、
政春からウイスキーづくりを聞いて
自分もと思ったのかもしれない。
あくまで私の推理である。
真相は後々にわかると思うけど。
★鴨居の大将はウイスキー事業にいよいよ
本腰を入れ始めたようです。
「おかずは?」
亀山家の食卓はさみしい。
ご飯とおついと、おつけもの
だけである。
「これだけ。」
「なんでじゃ?」
「お金ない。
節約・・・」
「この間植木屋で働いた分渡した
だろう?」
「三日間だけでしょ?」
そこへキャサリン、桃子がやってきた。
「こんにちは~~」
「またきやがった。ここはおばはんらの
寮か?」
「なにがおばはんやねん。」
キャサリンは、ふかしいもと
卵を持ってきてくれた。
喜ぶエリー。
「おおきに。」
「なにいうてんの。
情けは人のためならず!」
そういってキャサリンはわかり
難そうな顔をするエリーに、
情けをかけるのはひと
のためばかりではない。
まわりまわっていつか自分に
帰ってくるということや。
と説明した。
「困ったときはお互い様!!
な?マッサン?」
とキャサリンが聞く。
すると政春は、こんなことしてくれなくて
いいという。「人から食べ物を
もらうほど落ちぶれてない」、というのだ。
「ご近所のよしみやし。」
「遠くの親戚より近くのべっぴんさん!やし」。
政春は、よけいなことをするなと
いった。
二人は帰って行った。
エリーは「どうしてそんなこと言うの?」
と聞く。
「武士は、くわねど、高楊枝じゃ。」
と政春は答えた。
(ばんばんでてきますね~~~
ことわざ!!!)
「なに?」とエリーは聞く。
「どんなに貧乏していても
腹が減っても
侍としての誇りを捨てたら
男はしまいじゃ。」
そこで政春のおなかが
ぐう~~~~~~
となった。
「無理しないで、ほら
おいもさん、おいしそう?」
「いらん!!」
「わかりました。
私が働く。」
「おなごは家のことばかりをしていたら
ええんじゃ。」
「困ったときは女も男と一緒に働くよ。」
「ここは日本。
外国人のエリーにできる仕事などない。」
「探してみないと分からない。」
それでもだめだと政春は言う。
エリーは納得できない。
「食べるものがない、
どうやって生きていくの?」
「武士は、くわねど、高楊枝・・じゃ。」
「わたしは侍ではないっ!!!」
「おなごは黙って男の言うことを
聞くもんじゃ!!」
これでエリーは怒りが爆発した。
すると英語になる。
「Excuse me?
わたしはもう、マッサンの考えについて
いけない。」
「ほうか、なら出て行け!!」
「What?」
「出て行けというたんじゃ。」
「じゃどこへいけというの?」
「どこでもええじゃろが。」
「またいった。
さよなら!!!
それからマッサンは
アホ!!ドアホ!!
ど、あ。ほ!!!」
エリーは捨て台詞を言って
出て行った。
政春の本当の気持ちは外国人のエリーが
外で働いてつらい思いをするのが心配
なのである。
★素直に言えばいいのに・・
これが日本の侍なの?
外は雷が鳴り
雨が降っている。
政春はエリーを探しに庭に出た。
「エリー!!
エリー!!」
「マッサン・・・。」
エリーは玄関口にいた。
「なにやっとんじゃ?」
政春はエリーに走り寄った。
「いくところなんかない。
わかっているでしょ?」
とエリーはさみしそうに言った。
「すまん・・・。」
エリーを抱きしめようとして
突き飛ばされた。
「マッサン、ドアホ。
許さないから・・。」
「すまん。」
すると突然、政春はあわてて
隠れようとした。
エリーと家の中に隠れた。
大家さんだ。
「マッサン、いるんやろ?
居留守、つこうたらあかんで。」
エリーがでた。
「すみません、あの・・主人は
体の調子が悪くて・・・その・・」
「エリーちゃん、嘘が下手すぎる。
マッサン出てきなはれ!!」
政春は戸棚の影から、わざとせき込みながら
でてきた。
「あ、誰かと思うたら。近頃評判の
べっぴんさんではないですか?」
と、おべんちゃらをいった。
それに動ずることなく、よしさんは
「今日はな、耳揃えて、家賃、はろうって
もらうで!!」
と、いう。
政春は土下座をした。
「せめてあと10日、
せめてあと一週間・・・」
お願いします。
あきれるよしさんだった。
「あんたな、ホンマに払うきあるの?」
「武士に二言はない。」
「武士が土下座とはあきれるわ!!」
エリーもお願いしますといった。
「あと三日、それ以上は
あきまへんで。」
「お願いします。」とエリー。
「エリーちゃん、こんな甲斐性のない
男とは早よ、わかれ!!」
「すみません、ご迷惑をおかけします。」
「あと三日やで。ほなさいなら!」
エリーは「私が働く」という。
「え?」
頭を抱える政春だった。
************************
「武士はくわねど高楊枝」で、家賃は
払えません。
わがままなんだなぁ~~~政春は。
就職しても長続きしないなんて
わがままとしか言いようがない。
甲斐性がないと大家さんに言われて
確かにそうだ。
返す言葉もない。
この苦境をどう、脱出するのか?
つらいけど、どこまでもまじめに
働かないといまどきのニートではない
のだから。しっかりしなくては!!
政春!!!
男だろ!!!
といいたい。
1920年大正9年11月。
★政春が住吉酒造を退職してから
二か月がたちました。
ある日、エリーが大変大変と
いう。
米櫃にお米がない。
「やっぱり夢だけでは食べていけれ
まへんな。」
と、エリーは言った。
政春は力が抜けた。
★政春はいまだに定職について
いませんでした。
★そればかりか、ウイスキーづくりへの道が
何一つ見いだせないままでした。
就職しても長続がしない。
転々と職を変わっていくので
生活費は苦しい。
今日も新たな仕事の面接に
行く予定だった。
エリーはわずかのたくわえを切り崩して
なんとかしのいできた。
今度は翻訳の会社だという。
(ん?このころ村岡花子先生は
なにをしていたのだろう?
1919年大正8年の12月には
最高のクリスマスという副題で
英治と結婚することに
なった。
で、この年には村岡花子となって
いて翻訳の仕事をやっていたわけだ。)
では、マッサンのお話に戻る。
エリーは自分も仕事を探そうと
言うが、政春は男は外で働き
女は家を守るものだといって
きかない。
エリーは庭の柿をみて
「これは食べられないの?」と聞いた。
食糧事情が悪いので
食べられないかなと思ったのだ
ろう。「これは渋柿だ」と
政春は言う。「これは渋柿だから
食べられない」と説明したが
柿はスコットランドにないので
その意味が分からず、エリーは
食べてしまう。
大変、まずい思いをした。
キャサリン、梅子、桃子が来た。
大家のおよしさんが亀山家が家賃を
ためているといっているらしい。
それを聞いてキャサリンたちが
やってきたのだった。
エリーは私にできる仕事はないかなと
いうが、桃子はおなごは雇ってもらえないと
いう。
ましてやエリーは読み書きがまだできない。
そこへ政春が帰ってきた。
「おかえり、どうだった?」
とエリーが聞く。
キャサリンも聞くと
どうやら落ちたらしい。
「せっかく紹介してもらったけど。」
「不採用かいな。
そないな辛気くさい顔をしていたら
誰も仕事なんか任せられへん。」
キャサリンは言う。政春は、他人の
家のことに口出しするなといった。
梅子も桃子もキャサリンと一緒に
帰って行った。
政春はエリーに余計なことを話すなと
いう。政春が職がないとか金に困って
いるとかである。
エリーは、「何も話してないけどみんな
知っている」といった。
世間というものはそういうものだ。
「どうして翻訳の仕事ダメだったの?」
理由は自分が断ったという。
文学の翻訳は眠たくなるし。
論文だと何か胸くそわるい。
「あがな仕事は性に合わん!!!」
情けない男だ・・・。
この二か月、こんな話ばかりだった。
「心配するな。貯えもあるじゃろ?」
「もうすぐなくなる!!!」
政春は困り果てた。
鴨居商店は相変わらず、元気である。
鴨居は、世界のウヰスキーを集めると
いう。
ウイスキーづくりを考えているのだ。
「ジャパニーズウヰスキーの
夜明けは、近いで。」
うらやましい限りだ。
しかし、この男、いつどこで
どういういきさつでウイスキーを作ろう
と思ったのだろうか?
あの日、政春が帰ってきた日、
政春からウイスキーづくりを聞いて
自分もと思ったのかもしれない。
あくまで私の推理である。
真相は後々にわかると思うけど。
★鴨居の大将はウイスキー事業にいよいよ
本腰を入れ始めたようです。
「おかずは?」
亀山家の食卓はさみしい。
ご飯とおついと、おつけもの
だけである。
「これだけ。」
「なんでじゃ?」
「お金ない。
節約・・・」
「この間植木屋で働いた分渡した
だろう?」
「三日間だけでしょ?」
そこへキャサリン、桃子がやってきた。
「こんにちは~~」
「またきやがった。ここはおばはんらの
寮か?」
「なにがおばはんやねん。」
キャサリンは、ふかしいもと
卵を持ってきてくれた。
喜ぶエリー。
「おおきに。」
「なにいうてんの。
情けは人のためならず!」
そういってキャサリンはわかり
難そうな顔をするエリーに、
情けをかけるのはひと
のためばかりではない。
まわりまわっていつか自分に
帰ってくるということや。
と説明した。
「困ったときはお互い様!!
な?マッサン?」
とキャサリンが聞く。
すると政春は、こんなことしてくれなくて
いいという。「人から食べ物を
もらうほど落ちぶれてない」、というのだ。
「ご近所のよしみやし。」
「遠くの親戚より近くのべっぴんさん!やし」。
政春は、よけいなことをするなと
いった。
二人は帰って行った。
エリーは「どうしてそんなこと言うの?」
と聞く。
「武士は、くわねど、高楊枝じゃ。」
と政春は答えた。
(ばんばんでてきますね~~~
ことわざ!!!)
「なに?」とエリーは聞く。
「どんなに貧乏していても
腹が減っても
侍としての誇りを捨てたら
男はしまいじゃ。」
そこで政春のおなかが
ぐう~~~~~~
となった。
「無理しないで、ほら
おいもさん、おいしそう?」
「いらん!!」
「わかりました。
私が働く。」
「おなごは家のことばかりをしていたら
ええんじゃ。」
「困ったときは女も男と一緒に働くよ。」
「ここは日本。
外国人のエリーにできる仕事などない。」
「探してみないと分からない。」
それでもだめだと政春は言う。
エリーは納得できない。
「食べるものがない、
どうやって生きていくの?」
「武士は、くわねど、高楊枝・・じゃ。」
「わたしは侍ではないっ!!!」
「おなごは黙って男の言うことを
聞くもんじゃ!!」
これでエリーは怒りが爆発した。
すると英語になる。
「Excuse me?
わたしはもう、マッサンの考えについて
いけない。」
「ほうか、なら出て行け!!」
「What?」
「出て行けというたんじゃ。」
「じゃどこへいけというの?」
「どこでもええじゃろが。」
「またいった。
さよなら!!!
それからマッサンは
アホ!!ドアホ!!
ど、あ。ほ!!!」
エリーは捨て台詞を言って
出て行った。
政春の本当の気持ちは外国人のエリーが
外で働いてつらい思いをするのが心配
なのである。
★素直に言えばいいのに・・
これが日本の侍なの?
外は雷が鳴り
雨が降っている。
政春はエリーを探しに庭に出た。
「エリー!!
エリー!!」
「マッサン・・・。」
エリーは玄関口にいた。
「なにやっとんじゃ?」
政春はエリーに走り寄った。
「いくところなんかない。
わかっているでしょ?」
とエリーはさみしそうに言った。
「すまん・・・。」
エリーを抱きしめようとして
突き飛ばされた。
「マッサン、ドアホ。
許さないから・・。」
「すまん。」
すると突然、政春はあわてて
隠れようとした。
エリーと家の中に隠れた。
大家さんだ。
「マッサン、いるんやろ?
居留守、つこうたらあかんで。」
エリーがでた。
「すみません、あの・・主人は
体の調子が悪くて・・・その・・」
「エリーちゃん、嘘が下手すぎる。
マッサン出てきなはれ!!」
政春は戸棚の影から、わざとせき込みながら
でてきた。
「あ、誰かと思うたら。近頃評判の
べっぴんさんではないですか?」
と、おべんちゃらをいった。
それに動ずることなく、よしさんは
「今日はな、耳揃えて、家賃、はろうって
もらうで!!」
と、いう。
政春は土下座をした。
「せめてあと10日、
せめてあと一週間・・・」
お願いします。
あきれるよしさんだった。
「あんたな、ホンマに払うきあるの?」
「武士に二言はない。」
「武士が土下座とはあきれるわ!!」
エリーもお願いしますといった。
「あと三日、それ以上は
あきまへんで。」
「お願いします。」とエリー。
「エリーちゃん、こんな甲斐性のない
男とは早よ、わかれ!!」
「すみません、ご迷惑をおかけします。」
「あと三日やで。ほなさいなら!」
エリーは「私が働く」という。
「え?」
頭を抱える政春だった。
************************
「武士はくわねど高楊枝」で、家賃は
払えません。
わがままなんだなぁ~~~政春は。
就職しても長続きしないなんて
わがままとしか言いようがない。
甲斐性がないと大家さんに言われて
確かにそうだ。
返す言葉もない。
この苦境をどう、脱出するのか?
つらいけど、どこまでもまじめに
働かないといまどきのニートではない
のだから。しっかりしなくては!!
政春!!!
男だろ!!!
といいたい。
