内助の功2
「作るん止めたんやろ、ウイスキーを。」
「誰がそんなことを。」
「あんたとこの専務やがな・・。」

佐渡にポットスチルの製造中止
を聞かされて、政春は驚いた。

急いで会社に帰って矢口専務にどういう
ことだと聞く。
専務は「昼寝の時間は終わり。
いつまで夢みたいなことをいうてんねん」と
いう。
しかも大株主の守谷が反対している。
会社の事情も考えると無茶はできないと
矢口は言った。
社長が来た。
「大きな声を出してなにしてんねん?
外までまる聞こえやがな」といった。
社長は鴨居商店に行って、話をつけてきた
という。
太陽ワインの製造再開である。
鴨居商店に行った社長は「工場を作る計画
があるそうですね?」と大将に聞いた。
「耳が早いなぁ・・土地を探しているだけ
ですがな」という。
社長は「太陽ワインだけはうちで作らせて
ください」といった。
がけっぷちの住吉酒造が頼りとするのは
鴨居商店だけである。なんと心細い。

鴨居はポスターを田中に見せた。
今回のポスターは鴨居にとってもかけ
になる。沈むか、生き返るか。
それはこのポスターにかかっていると
思っているという。
田中は斬新なポスターですなという。
しかしここで田中は自分より鴨居が上だ
と主張する。味覚や時代の読みは鴨居
がすぐれているといった。
そしてこれからもついていかせてくださいと
白旗を上げた。
頭を下げて訴える田中に鴨居は
「亀山を引き抜こうとした男や、そんな
男に頭下げて悔しくないのですか。」
「いまも、今までも悔しいです。」
「それでもなぜ頭を下げはるのですか?
会社のためですか?」
「ちがいます。鴨居欣次郎です。
大将より先にウイスキーを作らせてもらいます。
そのために裸になれというなら
服でも脱がせてもらいます。」

じっと聞いていた鴨居は「ようわかりました。
これからも太陽ワインはすべて住吉さんに
お願いします」といった。
「ただし、ウイスキーも負けまへんで。」


政春は家に飛んで帰ってきた。
「太陽ワインが製造再開になった」と
大声でいいながら喜んで帰ってきた。
エリーは、つんとして、「そう?」と
言っただけだった。
「何で一緒に喜んでくれないのか」と
政春は怪訝そうにエリーを見るが
エリーは、政春の夢はウイスキーづくり
だからという。
また明日も頑張ってといった。

★ウヰスキーが作れるその日まで油断は
禁物。内助の功を果たすためエリーは
自分にそう言い聞かせていました。

そして、爆発騒動から一か月ぶりに太陽ワインの
製造が始まりました。

「ほな、行ってくれで~」と社長が亀山を連れて
商談に出て行く。株主にウイスキーの製造の
話をするためである。

途中エリーと優子とすれ違ったが
エリーはにこりともしないで
すれ違った。
政春は、あっけにとられていた。

優子は「いいかげん許してあげたら?
政春さんは悪いと思っているよ」という。
「太陽ワインが作れるようになったから
ウヰスキーも作れるようになる。
政春さんにも気張ってもらわんと。」という。

しかし、社長と一緒に訪問した株主は
みんな、大株主の守谷の意見を聞くという。
どんなに訴えてもウイスキーづくりの話すら
聞いてもらえなかった。
浪華銀行の笹塚はまず株主総会を開いて
承認してもらわないという。

田中はそこをなんとか、融資してもらえないかと
頭を下げて頼んだ。
政春も頭を下げた。
特に大株主の守谷がいい顔をしていないので
銀行は何もできないという。

事務所に帰ると矢口がいた。
「誰か一人でも会議を開くといってくれたか」
と聞く。
政春は「偉い興味を示してくれました」と
やけでいった。
矢口は、「守谷さんは自分の味方だから
たとえ株主会議を開いたとしても
ウヰスキーは絶対つぶしてやるからな。」
といった。

政春はその日、まっすぐ家に帰らず
かえれずかな?こひのぼりで飲んでいた。

春も秋もエリーが待っているから
さっさと帰れというが・・・。
ついに酔いつぶれてしまった。

エリーは迎えに来た。
そして、つぶれた政春を肩にかけて
連れて帰った。

「いつもいつもウヰスキーの話ばっかり
じゃ、そこまで言うなら
早く飲ましてほしいものじゃな~~」と
春が言った。

やっとの思いで家についた。
縁側で伸びてしまった政春。
「お水をもってくるね」とエリーがいった。
「わしゃどうしたらええんじゃ?
ウヰスキーが作りたい、ただそれだけじゃ。
未来の酒を、日本で新しい酒をこの手で・・」

「大丈夫かんばればつくれるよ。」

「わしゃ、がんばっとるよ。みんな
わかってくれない。あほじゃ、あほ!!」

「だまれ、このよっぱらい」とエリーは英語で
いってもっていた水を
政春にかけた。
「頑張っているのはマッサンばかりでない。
社長もみんなもがんばっている。
はるちゃんもあきちゃんも頑張っている。
だから簡単にあきらめないで」と
エリーは優しくいった。

★エリーの叱咤激励でマッサンはある決意を
固めました。

翌日田中家では優子の婚礼の道具を
守谷がかってくれるというので
小間物をみていた。

華やかな雰囲気があった。

田中は守谷にいった。
「あの、お父さん、先日の臨時株主会議
のことですが・・・」と。

守谷は、あっさりと「それはもう済んだ話や」
といった。

そこへ亀山がやってきた。
エリーと一緒である。

驚く一同だった。

政春は、「ウイスキーを新事業として
認めてもらうためにぜひともお力添えを
お願いします。株主会議を開かせて
ください!!」と言って頭を下げた。

守谷は「わしは博打はせん」といった。

「ウイスキーづくりは博打ではありません。
計画を立てて作れば、必ず結果ついてきます」と
亀山は言う。

守谷は、怒って、「君はだれや、なんで一社員の
あんたにそないなこと言われないとあかんねん」と
いった。

社長は、「わしも亀山と同じ気持ちでございます」
といった。
優子まで「うちからもお願いします」といった。

佳代は優子に「おなごが口を出す場面ではない」
というが
優子は「ウイスキーづくりは
お父さんの昔からの夢なんや」という。
「せめて会議で話だけでも聞いてあげて」と
いった。
「お願いします。」

亀山は「お願いします、株主会議、開かせてください。」
といって土下座をした。

社長も頼みますといった。

この行方をエリーは見守った。
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ここまで来ると
人間模様。
だれが味方でだれが敵という
わけではないが
はっきりと別れてしまう。
あの優子はしっかりものに育った。
矢口の陰謀と守谷の反対にあった。
田中にとって鴨居商店は
頼みの綱なのであろう。
田中社長の悲しさは人の好さと
度量が普通サイズであることだ。
鴨居商店の鴨居のようにカリスマ的な
雰囲気を持っているわけではない。
金魚のお告げなどと言っているけど
金魚にかこつけて、本当は自分で
導き出しているこたえではないかと
思う。
その鴨居に頭を下げる情けなさ。
悔しさ、みっともなさ。
同じ社長でどうしてこうも違うのかと
愚痴っていたが、天性の才能だけは
真似をすることはできないと
思う・・・。