内助の功1

鴨居さんからのスカウトに
一度はこころがゆらぎながらも
断ってしまったマッサン。
けれども何の相談もなく大きな決断を
したマッサンにエリーは・・・・

鴨居さんと一緒に働いているマッサンが
楽しそうだったという理由で
鴨居商店に行ったほうがよかった
と思ったのだった。

「いまさら住吉酒造をやめるわけに
はいかない。
社長には恩義がある。
外国人のエリーには義理や人情など
わからないだろう・・・・」と
マッサンが言ったので
エリーは活火山のごとく噴火した。

「マッサンと一緒に考えたり悩んだり
することが
私の仕事。
マッサンは大将が私を馬鹿にしたと
いったけど
一番私のことをバカにしているのは
マッサン!」
エリーはふすまを閉めた。
そして、「マッサンのあほ・・・
ドアホ」とつぶやいた。

翌朝、テーブルには夕餉のままの状態で
マッサンが床に寝転がっていた。

「エリー・・・」と目を開けると
昨日のことを思い出した。
そして、寝室のふすまを開けて
エリーに言った。

「エリーちゃん、おはよう~~
ご飯たべよう?」

「ご飯作らない!私外国人だから
なにもわからない!」
といってエリーは布団をかぶった。

「そんなこどもみたいなことを・・・
そうか、もうええわ!」
そういって、マッサンはふすまを閉めて
でていった。

エリーは一人で怒った。

エリーは鴨居商店へ行った。

「話ってなんや?」と鴨居は聞く。
エリーはマッサンを鴨居の店で働か
せてほしいといった。
鴨居はそれは終わったことやという。
エリーは「マッサンはきっと大将の
力になれる。大将といっしょだと
マッサンはすごく楽しそうだ」という。
「家に帰ると大将の話たくさん、たくさん。
お願いします。
Give me just more chance」

「それは、できん。なんぼ
エリーちゃんの頼みでもな・・」と
鴨居は言った。
「あいつは猪突猛進のイノシシや。
まっすぐしかみえへん。
まがることも、引き返すことも
しない。夢に向かってまっすぐや。
あのイノシシは自分から険しい道を
選びよった。
住吉酒造に残ってもウイスキーを作れる
保証はない。そやけど住吉で走り続けると
きめたんや。だからエリーちゃんは
内助の功をはたさなあかん。
力いっぱい走るしか能のない夫を
陰で支えるのが内助の功や。」

「どうやってささえる?」

「あるはずや。エリーちゃんにしか
できないことがな?」

エリーは自分にしかできないことを
考えた。

政春は住吉酒造に現れた。
「自分は社長に鴨居商店に行かない」と
いった。「一緒にウイスキーを
作らせてください。」

「あほ、どあほ、おまえはどうしようもない
どあほやな。」
社長は泣きながらいった。
「亀山!一緒にウイスキーを造ろ。
絶対やぞ。おおきに!!」

政春は、「はい!」と答えた。

エリーはマカナイのために田中家に
やってきた。
優子が台所に座っていた。

優子はエリーを見て、「一緒に背負ってくれる
って・・・」といった。
「藤岡さんとデートした時、私の
背負っている家のことや会社の
こと、僕が半分もちますって
・・・そしたら
もやがすっと晴れて
気持ちが軽くなって・・・」
「よかったね、優子さん。」
「うち、幸せになれると思う?」
「なれるよ。」
二人は笑った。

会社へ守谷がやってきた。
「はいるで・・・
今日は蒸すなぁ~~~。」
社長はじめ社員は守谷を
てあつく、歓迎した。
「株主総会のことやけどな。
とりやめにしたで。」
と守谷がいう。
社長以下、社員は驚いた。
矢口はひとりで笑っているようだった。

「葡萄酒の爆発騒ぎでそれどころでは
ないやろ?」と守谷。

「あのワインはうちのワインが爆発した
わけではないし・・・うちらとしては・・」
と大作がいいかけたら守谷は
「新事業のウヰスキーのことか」と聞く。
何故知っているのかと大作は驚いた。
守谷は「あないなまずいもん、ほかの株主
かて承知せえへんで。」と笑いながら
いった。
矢口は「はい」と答えた。
「第一葡萄酒づくりも止まったままで。
そないな博打みたいな事業許されへん。」

大作は「確かにそうですが、
鴨居商店も太陽ワインの
新しい広告を作って・・世に問う」と
いいかけて、守谷はそれをさえぎった。
「その鴨居商店が築港に自分とこの
工場を作るという話や。」

そうなると、ワインは自分ところでつくるだ
ろうとみんな判断した。
★臨時の株主総会が中止されたことで
ウイスキーの製造計画も白紙になって
しまいました。

がっかりする政春だった。

やがてお昼ご飯となった。
社員たちはそれぞれにやってくる。
「ワインが作れなくなったらどうするの
ですか」と池田がいう。
「つぶれるしかないな」と好子が言う。
「そんな簡単な・・・」
松原は「ウイスキー計画はあきら
めるとしても太陽ワインだけは何
とか続けてもらえんとどないもなら
へんでござるよ」といった。
エリーはおつゆを注ぎながら
その話を聞いた。
「ボス、ウイスキーをあきらめるの
ですか」とエリーが聞く。

そこへ政春が「あ~~~~」と
ため息をつきながらやってきた。
しかし、エリーも政春もつんとしている。
好子は「新婚のお二人また夫婦喧嘩ですか」と
聞く。
エリーは怒っておつゆの鍋に
蓋をしてさっさと出て行った。

「わしのはぁ??」とおつゆのおわんを
もって政春がいうが・・
エリーはさっさと出て行った。

好子は、「もめ事の多い会社やで」
といった。

さて、こちらはご近所奥様の会。
キャサリン、梅子、桃子である。
エリーのお家でお茶の会をしている。

キャサリンは政春が「外国人やから」
といったことをさして
「それはいうたらあかんで」と
非難した。

「わたしが間違っているのかも
しれない。」とエリーは深刻な顔を
していった。

「夫婦喧嘩は先に謝ったほうが負けや」と
梅子。
キャサリンは、「この世で正しいことはない。
誰かが正しいと思っていても
逆さから見たら間違っている場合がある。」
(そら、逆さから見たら・・・正しいの逆
だから、間違っているのだろうよ)

「せやからこの間まで世界で戦争してたやん。」
と梅子。
「戦争と夫婦喧嘩は関係ない」と桃子。
「生きるか死ぬかやで。
うちらの夫婦喧嘩は・・タイガイ。」
と、梅子が逆襲する。
「昨夜もべろべろになって帰ってき
たからガツンというたったんや」と
いうとキャサリンが「おおこわ。
あんたんとこは毎日が戦場やね」と
言って笑い声が上がった。
「そうはいうても、全く違う二人が
一緒になったからと言って
意見がぴたりとあることなんてそうそう
ないで」、と桃子は言う。
「みんなそうなの?」とエリーは聞く。
「一緒になる前はなにがあってもおまえ
の味方やといいながら、うちが姑ともめたら
必ず姑のみかたや。」
「日本の男は母親の味方や。」
と口々に言う。

エリーは「隠し事をされたことは?」というと
「しょっちゅうや。」
「毎日や・・・」
「毎日かいな、あははは・・・。」
「そんな時はどうしているの?」とエリー。
桃子は「隠し事をしているとわかっていても
旦那をうまいこと操るんが
嫁さんの腕の見せ所や。」という。

「それが内助の功や・・。」とキャサリン。

「内助の功・・・・・・・
難しい!!」

「そうか・・・わからんか・・。」

ご婦人方は黙ってクッキーを
かじった。


政春は大忙しで走っている。
行先は佐渡製作所だった。
佐渡がポットスチルの図面を返してきたので
驚いて飛んできたマッサンだった。
佐渡は矢口がウイスキーを作るのをやめたと
言ったという。
だからポットスチルを作る必要もなくなり
図面を返してきたわけだ。
驚くマッサンだった。

エリーはご飯を炊きながら
かまどに息を吹きかけていた。

『力いっぱい走るしか能のない夫を
陰で支えるのが内助の功や。』と鴨居の言葉を
思い出していた。

マッサンのために自分しかできないことは
なに?エリーは必死に考えていました。
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内助の功・・・・
これは結果論なので難しいですね。
奥さんが、がんばって応援しても
それがかえってあだになってしまうこと
もあるのでは?
ただ、ただ、ひたすら、仕事をする夫
のために、笑顔でおいしいご飯を作って
愚痴も言わずに、にこにこしているのが
内助の功などというご意見もあります。
ほんまか?
などと思いますが、真実はどうなんでしょう
か?
エリーはそれは内助の功だとは
思ってないと思いますよ。