破れ鍋にとじぶた3
「住吉酒造の作った太陽ワインは
安心安全。絶対爆発しません!!」

自信満々に言う政春に鴨居は
いった。
「ほな、いこか?」
「どこへですか?」
車に乗ったふたり。しばらくすると
前に座っていた
青山が「大将、もうすぐです」といった。
鴨居は「店の前まで行くな。
近くで止めろ」という。

鴨居はスーツの上着を脱いで
「半纏をくれ」と青山に言う。

「あの???」
と政春が聞くと「また太陽ワインを
置いてもらう
ためだ」といった。
「何で着替えるのですか?」
「頼みに来たやつが偉そうな格好して
いたらはらたつやろ?」

「わざわざ服を着替えなくても誠心誠意
頼んだらいいじゃないですか。」
「誠心誠意は当たり前。
その気持ちを伝えるためにも
向うさんの立場でものを考えなくては
いけない」という。
「大事なんは第一印象や。
ええからこい」と鴨居は言う。


鴨居は「太陽ワインを置いてください
考え直してください」と
頭を下げて酒屋の主人に頼む。

「大将、頭を上げてください」と
酒屋の主人はいった。
鴨居は政春に「説明をして差し上げろ」と
いう。
「なんでわしが・・・」といいつつ
政春は鴨居の睨みに負けたカエルの
ように、とうとうと説明した。
「太陽ワインはねんいりに濾過して
火入れをしていますので
残留酵母がありません。
ですから・・・」
「もう結構です。
あの爆発でうちの受けた損害は
大きい」と主人は言う。
政春は太「陽ワインは絶対安全です」と
いうが、主人は「お引き取り下さい」と
言って、店の奥にいってしまった。」
呆然とするふたり。
「つぎいこか」と鴨居は言う。
政春は「まだあるのか」と驚く。
辛「気くさい顔している暇ないで。」

「うまくて安心安全な太陽ワインを
置いてください」と
鴨居は頭を下げる。
そして青山がお詫びの品を渡そうと
したら、「いやいや」と主人は言う。
「受け取ることができません。
大将自ら出向いてくれてこんなこと
いうのはあれやけど・・どない説明しても
太陽ワインはあきまへん。」

三人は、店を出た。
鴨居からぱぁっとどこかへ行って
憂さ晴らしをしようと、話が出た。
政春はエリーが待っているからと
いった。「また今度。」
「『今度』と『お化け』は出たことないと
いうけどな」と鴨居。
「ま、ええわ。また明日うちに来てや。
社長にも言うとくし」と鴨居は
そういった。
鴨居は人力車に乗っていってしまった。

「なかなか大変ですね」と青山は言う。
鴨居のことを目的のためには手段を
選ばない人と評した。卒業したら
この会社に入る予定である。本人は
大学をやめていますぐ入りたいけど
鴨居が大学だけは出ておけといったという。

「何で鴨居商店に?」と政春が聞くと
「驚かせたいから」と青山は言う。
「大将がよく言うのはわてらの仕事は
世の中をあっと驚かせること
流行を生み出すことやって。」

政春は驚いた。
その夕餉のこと、エリーの話を聞く
政春。
エリーは優子が一人娘だから
家のために結婚するということにな
っているけど、本当は英文タイピスト
になりたかったという。
「どうしようマッサン?」とエリーが
聞くが政春には他人の家のことである。
とやかくいえないといった。
「だけど・・・」とエリーは言う。
「他人のわしらが口出ししたらいけんの。
ええの?」と政春は言う。
エリーはどうも納得がいかない。


翌日まかないの準備の時間となった。
優子が献立をたてる。
「やさいたっぷりのおつい、冬瓜と
かしわのうまに、ちょっと奮発して
あじの塩焼き・・」下働きの少女は
「はい」といって立ち上がった。

エリーがぼおっとしているので
「聞いてる?」と優子がいった。
エリーは、気になっていることを
言おうとしたが来客となった。

優子の祖父である。
母方の父親にあたる。
その祖父がこんどのお見合いの
話をまとめた。

藤岡の話になった。
見合いの相手である。
金も出してくれるとのことだ。
もちろん縁談がうまいこと言ったら
の話である。
ありがたい話やとみんながうれしそう
にいう。
「他人のわしらが口出ししたら
いけんの、ええの?」という
政春の声がきこえた。

「どう思う?」との両親たちの
といかけに、優子は「お父さん
お母さんはどう思う?」と優子が聞く。
最初からええ話じゃなかったら
断っている。ええ話だから
のっていることを告げた。

優子はどうなんやときかれて
優子は私もそう思うといった。

これで安泰やと祖父の守谷がいう。
佳代は優子おめでとうといった。

お茶を出しにきたエリーは
「ちょっと待ってください」という。
「優子さん本当にいいのですか?」

大作と佳代はどういうことやと聞く。
エリーは話をした。
優子が結婚したくないと思っている
こと。
タイピストになりたいと思っている
こと。
この家の事情でお見合いをしようと
思っていること。

「優子さんそうでしょ?」

佳代は、「ええかげんにして」という。
「娘の気持ちは私たちがよく知って
います。他人の、異人のあんたになにが
わかるの?」と怒った。
優子は何も言わない。
ただ、うつむくだけだった。
佳代は、「うちをどんだけかき回したら
気が済むの?あんたが来てからろくなこ
とがないわ、あんたは疫病神や。」

「エリーさんをせめんといて
悪いのはうちや。みんながうちのことを
考えてくれているのに決められない
うちがわるいんや。」

優子はそういって部屋を出て行った。
気まずい雰囲気となった。

食堂で、エリーがお昼の用意を
していた。

優子が来た。
「ごめんな、一人でさして」という。

今回のことは断ると父親が言っている
らしいが。
優子は「エリーさんが『どうして?』
と考える事を考えなくなったことに気
が付いた」という。
自分の心にふたをしてきたのでは
ないかと思っている。
「なんで?」「どうして?」と思わ
んようにいつしかなっていたと
きが付いた。
優子はエリーの前に座っていった。

エリーさんと出会えてよかったという。
エリーも出会えてよかったといった。
そして、優子に友達になってくださいと
いう。
「友だち?
・・・どうしようかなぁ?」
「どうしよう?」「どうして?」
と二人は交互に言って笑った。
そこへ、好子たちが来た。
「今日はアジの塩焼きや~~」
という。
エリーは、政春がいないのに気
が付いた。
好子は鴨居商店に言っているといった。
「どうして?」とエリーは聞く。
すると矢口が「しょっちゅうべたべた
している割には肝心なことは
何も聞いてへんねんな。」と
辛口を言った。

「そんな言い方せんでも・・・」と
優子がかばった。

エリーはさみしくなった。

一方そのマッサンは鴨居商店社長室にいた。
鴨居は金魚鉢の金魚を見ていた。
「あの~~~」と声をかけると黒沢が
「大将が金魚占いをしているときは
声を書けたらあきまへん」という。
鴨居は金魚占いを信じていることに
政春は驚いた。
鴨居は、じっと見ていてそして
いった。
「よっしゃぁ~~
ミーティングや。
メンバー召集してくれ!!!

あ、鶴山君も参加してくれ。」

「鶴やのうて亀山です。何でわしが・・」


「命短し恋せよ乙女よ
赤きくちびる・・あれ?
くちびる??
あれ・・」
音程がわからないらしい。

政春は、不思議そうに鴨居を見た。
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仕事が大変な政春。
鴨居という男がどんなものか
わかってきそうな雰囲気である。
大変な商売人だと思った。
エリーの心配事は
他人の家のことだからといって、
すきでもない人と結婚する優子が
気になっている。
結婚はラブだというが
エリーにとってはラブだけである。
お金とは違う。

しかし、家柄やお金で結婚を
決める日本の女性の生き方に
疑問を持っている。
しかも、その結婚は親が決める。
エリーの考え方は純粋であるから
それ故に、両親を捨てて
未知の国日本に来たのだろう。
わたしは、結婚は周囲の祝福が
あるかないか・・純粋に祝福される
ものかどうか・・・が大事であると
思う。
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マッサン22は
もうしばらくお待ちください。