どんな朝でも美しい3
純平が戦死したと聞いた花子は
心配して7年ぶりに蓮子を訪ねた。

出てきた蓮子は、白髪となり
恨みに満ちた目で花子を見た。

「純平が戦争へ行ったのは花子が
ラジオでお国のために命をささげ
ましょうといったからだ」と責めた。

驚く花子に、蓮子は「純平を返して」と
迫った。
「あなたのせいで純平が・・・
返して、純平を返して。」

あまりの騒動に家から龍一が出てきた。

「よさないか、純平が死んだのは
花子さんのせいじゃない。
戦争のせいだ。」
といった。
泣きじゃくる蓮子を抱えて
龍一は「今日の所はお帰り下さい」と
花子に言った。

呆然と立ち尽くす花子だった。


力なく家に帰ると吉太郎が来ていた。
しばらく会わなかったので
驚いた。
吉太郎は元気のない花子に
どうしたのかと聞く。

お茶の間で吉太郎が家族の
様子を聞いてくれた。
「みんな元気でよかった」という。

美里と直子は学校。
英治と旭とももは甲府へ
食料の調達である。

花子の住んでいる一角は焼けなかった
ので安心したらしい。

甲府でも顔を見せない吉太郎に
みんな心配していたというと
いろいろ忙しかったからと
言い訳した。

「醍醐さんは?」と彼が聞くので
花子はまだあえてないといった。
「これから日本はどうなるのかしら?」

「そうだな・・」

「兄やんは?
軍人がたくさん逮捕されていると
きいたから・・」

「俺たちは戦争に負けたんだ。
何があっても仕方がない・・」

花子は、ハッと気が付き
何も出してないと
言って
防空壕から
お菓子を取りに行った。

吉太郎はその間に帰ってしまった。

吉太郎が闇市を歩いていると
醍醐に会った。

醍醐のほうから声をかけた。

吉太郎は気が付かずに
とおりすぎようとしていたのだ。

「よかった、御無事で」と醍醐
がいった。

「あなたも無事でよかった。」

と、ふたりは会話をした。

吉太郎は「自分のことは
心配しないでください」と言った。

「あなたに会えてよかった・・・」と
つぶやくようにいう吉太郎だった。

醍醐は不安になって「どこかに
行ってしまうのですか」と聞く

「いいえ、自分はどこにも行くところが
ありません、これで失礼します。」

吉太郎をおって醍醐は
「待ってください」と
いった。

「また、お目にかかれますよね?」

吉太郎は、「どうか
幸せになってください」と
いった。
醍醐は、あまりの衝撃に呆然としたが
我に返って吉太郎を追いかけた。
が、闇市のひとごみのなか
吉太郎を見失った。

宮本家では落ち込んだ蓮子が
純平を思い続けていた。
純平が生まれたとき・・
「純平、よろしくね」
と蓮子は言った。

幼い時「僕がお母様を守るよ」
とかわいいしぐさを思った。
そして、出征の時。
「武運長久をお祈りします。」と
蓮子が声をかけると
「はい!!」と笑顔で答えた純平。

心の中は純平でいっぱいだった。

富士子は、そんな蓮子を心配して
「少しでもお食事を召し上がって
ください」と
いうが・・・

蓮子は、力を落としたままだった。
そして、玄関の音がすると
「純平が帰ってきた」といって
外へ出た。
だれもいない。蓮子は純平の名前を
叫んで泣き崩れた。
龍一が蓮子を抱きかかえた。
富士子はそんなふたりをじっとみて
いた。

ある晴れた日のこと。村岡家に客人が来た。
梶原と青年だった。
その青年は村岡花子の家を感無量で見て
いた。
「小鳩書房で児童文学の編集としている
小泉君だ」と梶原は紹介した。

小泉は「お時間を作っていただき
恐縮です」といった。
家に上がると本の山を見て
「すごい」と感動していた。

英治もやってきた。

「はじめまして」と小泉と
挨拶を交わした。

青凛社が焼けたことは残念だったと
梶原が言う。
英治はまたいつか本を作りたいと
いった。
梶原は妻の実家にいるという。
妻とはあの富山先生である。
妻は本を失ったことを悔やんでいるという。

「世の中が少し落ち着いてきたら出版
業界も動き出すだろう。」と梶原が
いった。
だから、小泉を連れてきたという。
本を出すための原稿を探して
いるというのだ。

小泉は実はニジイロのファン
だったという。
ニジイロをおこずかいを貯めて買っていた。
花子の王子と乞食が好きだった
という話に花子はニジイロのファン
のかたと一緒に仕事ができる
なんてと感慨深くいった。

小泉は出版できる原稿があれば
お預かりしたいという。

花子は、少し考えて、仕事部屋に行った。
たくさんの原稿の山があった。
そこからひとつ、ストー夫人を
もってきた。
「戦前に訳したものだけど出版を見合わせ
ることになったので、こちらで
よろしければ・・・。」

「ありがとうございます。」

「それから・・・
こちらは翻訳し終わったばかり
なんです。」

「ANNE OF GREEN GABLES」

小泉は目を見開いてその原稿の山を
みた。

★花子が空襲の中、命がけで守り
翻訳した物語がいよいよ出版される
のでしょうか。

花子と英治はじっと小泉を見た。

ごきげんよう

さようなら
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ごちそうさんで、めいこが
二男の活男を戦争で失った
とき、やはりめいこは
慟哭した。

それを和枝は一年や二年、
泣き暮らしたところで
子供を失った悲しみは
終わるものではないといった。
それほどつらいことだという話だった。
蓮子も純平の戦死から
一か月や二か月
泣き暮らしたところで悲しみは
癒えることはないという
ことであろう。
花子も歩を失った。
そこから、見事に立ち上がった。
わが子を産んで
わが子の死を受け入れるなんて
どう考えても、酷なことである。
それを軍国の母とかいって
悲しんではいけない、名誉なことだと
いう国家はおかしい。
女性に優しくない野蛮な国で
ある。
吉太郎はどうなるのか??
醍醐との会話は
これから吉太郎は
自殺でもするのかと思う
ものであるが・・・。

花子と英治は梶原も
白髪のまじったあたまと
なった。
それほどの年齢を重ねた
わけだが・・
花子が温めていた
アンのお話は・・・
いよいよ

日の目を見るのでしょうか?
わくわくします。