どんな朝でも美しい2
★度重なる大空襲で東京はほとんど
焼け野原になりました
8月6日広島に原子爆弾投下。
ついで9日長崎に原子爆弾投下。
1945年昭和20年8月15日。
村岡家では花子たち親子
益田家、かよ
が正座をして
ラジオ放送を聞いた。
それは難しい言葉で語られた
天皇陛下の放送だった。
ポツダム宣言を受諾するという
内容である。
旭は、泣きながら
「負けた・・・」といった。
ももは直子を抱きよせた。
英治は「戦争は終わったんだ
日本は負けた。」
といった。
宮本家でもラジオ放送を聞いていた。
富士子は「日本は負けたの?」といった。
龍一は「そうだ、明日から戦争は
ないんだ、空襲もない
火の中を逃げ回る必要もない。」という。
蓮子は
「何度も夢見たわ
戦争が終わって
純平が帰ってくる日を・・」
と言う。
「いつ純平が帰ってきてもいいように
支度をしなくては。
戦争が終わったのですもの。
戦争で死ぬこともないのですもの。」
蓮子は嬉しそうに言った。
村岡家では防空壕にかくしていた
英語の本を出してきた。
「ちょっとかび臭いけど
古い友達に会ったようだ」
と英治が言った。
「郁也さんがかってきた
王子と乞食の本よ」と
花子はかよにみせた。
かよは、「持っていてもいいか」と
聞く。
「ええ」、と花子は言った。
しかし、食べ物の状況は
相変わらず厳しい。
子供たちだけでも食べさせた
やりたいと
花子が言うので
ももは、甲府へ行こうといった。
買い出しの汽車の旅である。
満員の汽車にのって英治と
ももは甲府へついた。
安東家では花子たちのために
食べ物をそろえてくれていた。
「吉太郎はどうしている」と吉平が
きく。
英治ももももあっていない。
連絡もない。
「世の中がこうなってしまったら
軍人はとりわけ憲兵は
ひどいことになるかも」と
吉平は言う。
東京では自室で
翻訳をつづける花子。
『アンの地平線は
クイーンから帰ってきた夜を境として
狭められた。
しかし、道が狭められたとはいえ
アンは静かな幸福の花が
その道にずっと咲き乱れていることを
知っていた。
真剣な仕事と立派な抱負と
厚い友情は
アンのものだった。
何物も
アンが生まれつき持っている空想と
夢の国を
奪うことはできないのだった。
そして、道には常に曲がり角があるのだ。
「神は天にあり、世はすべてよし」と
アンはそっとささやいた。
―――完―――』
★ついに、ANNE OF GREEN GABLES
の翻訳が完成したのです。
花子はメガネをはずして
すがすがしい顔をした。
★一方、蓮子は出征した純平の帰りを
今か今かと
待ちわびておりました。
そこへ玄関をたたく音がした。
蓮子は「はい」といって
玄関へ飛んで行った。
そこには、みしらぬ青年がいた。
そして
「公報です」といって
一通の封筒を蓮子に渡した。
深々と頭を下げてかれは
帰って行った。
封筒を開けるとそこには・・・
蓮子がじっとしているので
純平は声をかけた。
そしてその公報を見る。
富士子がやってきた。
「どうしたの?」と聞く。
「富士子、落ち着いて聞きなさい。
純平は8月11日
鹿児島で爆撃を受けて
戦死したそうだ・・。」
「お兄様が?」と富士子は言葉に
ならない。
蓮子はいった。
「いいえ、何かの間違いです。
純平は死んだりしません。
誰かがだまそうとしているのよ。
純平は帰ってきます。
もうすぐ
帰ってきます。
もう戦争は終わったのですもの・・。」
蓮子は、自分に言い聞かせるように
いった。
蓮子はじっと純平の名前をつぶやき
ながら一晩、起きたまま過ごした。
龍一はその様子を心配げに見ていた。
が、
★一晩にして蓮子の黒髪は真っ白に
なりました。
村岡家ではかよが息を切って
走って帰ってきた。
そして花子を呼んだ。
闇市で昔のお客さんに会ったという。
そして、純平君が死んだことを
聞かされたという。
驚く花子だった。
花子は宮本家に向かった。
★蓮子に会うのは7年前に決別して
以来のことでした。
花子は玄関をたたいた。
「ごめんください
蓮様!!」
返事がない。
花子は帰ろうとした。
すると玄関が開く音がした。
中から
白髪の女性が出てきた。
にわかに蓮子だとは
わからなかったが、蓮子だった。
「わたし、純平君が戦死なさった
と伺って信じられない思いで
ここに・・・」
「はなちゃん、あなたが純平を
戦地に送ったのよ。
あなた、ラジオで日本中のコドモ
たちに語りかけていたじゃない。
お国のために命をささげなさいと。」
花子は、凍りついた。
蓮子の射るような
咎めるような
視線だった。
「あの子を返して!
純平を返してちょうだい」
「そんな・・」
★これほど悲しい友との再会が
あるのでしょうか。
ごきげんよう
さようなら
*************
ごちそうさんは、結構戦争時代の
苦しさを細かくやっていましたが
花子とアンは、あっさりと
戦後になってうれしかったです。
が、純平は死んでしまいました。
終戦、数日前です。
もうすこし、トップの終戦の
決断が早かったらと思います。
決して、花子のせいではないのです
が、母親としては誰かのせいに
して、理不尽な死に方をした息子の
死を受け入れようとしたのでしょうか。
あのころ、軍国主義を声高らかに
日本中に鳴り響かせていたのは
花子ではなく、多くの戦争賛美者
ではないですか。
それは龍一がよく知るところでは
ないかと思います。
花子も、戦争に心を傷つけられた
わけです。
大事な蔵書を焼かれようとしたこと
とか・・・
非国民と
よばれたことや
石を投げられたこと
とか・・
苦労をしました。
その末に生きたあかしとして
アンの原書を翻訳
しました。
蓮子にはそれを理解できるだけの
余裕などないと思いますが。
戦争は、なにも益を産まないものです。
★度重なる大空襲で東京はほとんど
焼け野原になりました
8月6日広島に原子爆弾投下。
ついで9日長崎に原子爆弾投下。
1945年昭和20年8月15日。
村岡家では花子たち親子
益田家、かよ
が正座をして
ラジオ放送を聞いた。
それは難しい言葉で語られた
天皇陛下の放送だった。
ポツダム宣言を受諾するという
内容である。
旭は、泣きながら
「負けた・・・」といった。
ももは直子を抱きよせた。
英治は「戦争は終わったんだ
日本は負けた。」
といった。
宮本家でもラジオ放送を聞いていた。
富士子は「日本は負けたの?」といった。
龍一は「そうだ、明日から戦争は
ないんだ、空襲もない
火の中を逃げ回る必要もない。」という。
蓮子は
「何度も夢見たわ
戦争が終わって
純平が帰ってくる日を・・」
と言う。
「いつ純平が帰ってきてもいいように
支度をしなくては。
戦争が終わったのですもの。
戦争で死ぬこともないのですもの。」
蓮子は嬉しそうに言った。
村岡家では防空壕にかくしていた
英語の本を出してきた。
「ちょっとかび臭いけど
古い友達に会ったようだ」
と英治が言った。
「郁也さんがかってきた
王子と乞食の本よ」と
花子はかよにみせた。
かよは、「持っていてもいいか」と
聞く。
「ええ」、と花子は言った。
しかし、食べ物の状況は
相変わらず厳しい。
子供たちだけでも食べさせた
やりたいと
花子が言うので
ももは、甲府へ行こうといった。
買い出しの汽車の旅である。
満員の汽車にのって英治と
ももは甲府へついた。
安東家では花子たちのために
食べ物をそろえてくれていた。
「吉太郎はどうしている」と吉平が
きく。
英治ももももあっていない。
連絡もない。
「世の中がこうなってしまったら
軍人はとりわけ憲兵は
ひどいことになるかも」と
吉平は言う。
東京では自室で
翻訳をつづける花子。
『アンの地平線は
クイーンから帰ってきた夜を境として
狭められた。
しかし、道が狭められたとはいえ
アンは静かな幸福の花が
その道にずっと咲き乱れていることを
知っていた。
真剣な仕事と立派な抱負と
厚い友情は
アンのものだった。
何物も
アンが生まれつき持っている空想と
夢の国を
奪うことはできないのだった。
そして、道には常に曲がり角があるのだ。
「神は天にあり、世はすべてよし」と
アンはそっとささやいた。
―――完―――』
★ついに、ANNE OF GREEN GABLES
の翻訳が完成したのです。
花子はメガネをはずして
すがすがしい顔をした。
★一方、蓮子は出征した純平の帰りを
今か今かと
待ちわびておりました。
そこへ玄関をたたく音がした。
蓮子は「はい」といって
玄関へ飛んで行った。
そこには、みしらぬ青年がいた。
そして
「公報です」といって
一通の封筒を蓮子に渡した。
深々と頭を下げてかれは
帰って行った。
封筒を開けるとそこには・・・
蓮子がじっとしているので
純平は声をかけた。
そしてその公報を見る。
富士子がやってきた。
「どうしたの?」と聞く。
「富士子、落ち着いて聞きなさい。
純平は8月11日
鹿児島で爆撃を受けて
戦死したそうだ・・。」
「お兄様が?」と富士子は言葉に
ならない。
蓮子はいった。
「いいえ、何かの間違いです。
純平は死んだりしません。
誰かがだまそうとしているのよ。
純平は帰ってきます。
もうすぐ
帰ってきます。
もう戦争は終わったのですもの・・。」
蓮子は、自分に言い聞かせるように
いった。
蓮子はじっと純平の名前をつぶやき
ながら一晩、起きたまま過ごした。
龍一はその様子を心配げに見ていた。
が、
★一晩にして蓮子の黒髪は真っ白に
なりました。
村岡家ではかよが息を切って
走って帰ってきた。
そして花子を呼んだ。
闇市で昔のお客さんに会ったという。
そして、純平君が死んだことを
聞かされたという。
驚く花子だった。
花子は宮本家に向かった。
★蓮子に会うのは7年前に決別して
以来のことでした。
花子は玄関をたたいた。
「ごめんください
蓮様!!」
返事がない。
花子は帰ろうとした。
すると玄関が開く音がした。
中から
白髪の女性が出てきた。
にわかに蓮子だとは
わからなかったが、蓮子だった。
「わたし、純平君が戦死なさった
と伺って信じられない思いで
ここに・・・」
「はなちゃん、あなたが純平を
戦地に送ったのよ。
あなた、ラジオで日本中のコドモ
たちに語りかけていたじゃない。
お国のために命をささげなさいと。」
花子は、凍りついた。
蓮子の射るような
咎めるような
視線だった。
「あの子を返して!
純平を返してちょうだい」
「そんな・・」
★これほど悲しい友との再会が
あるのでしょうか。
ごきげんよう
さようなら
*************
ごちそうさんは、結構戦争時代の
苦しさを細かくやっていましたが
花子とアンは、あっさりと
戦後になってうれしかったです。
が、純平は死んでしまいました。
終戦、数日前です。
もうすこし、トップの終戦の
決断が早かったらと思います。
決して、花子のせいではないのです
が、母親としては誰かのせいに
して、理不尽な死に方をした息子の
死を受け入れようとしたのでしょうか。
あのころ、軍国主義を声高らかに
日本中に鳴り響かせていたのは
花子ではなく、多くの戦争賛美者
ではないですか。
それは龍一がよく知るところでは
ないかと思います。
花子も、戦争に心を傷つけられた
わけです。
大事な蔵書を焼かれようとしたこと
とか・・・
非国民と
よばれたことや
石を投げられたこと
とか・・
苦労をしました。
その末に生きたあかしとして
アンの原書を翻訳
しました。
蓮子にはそれを理解できるだけの
余裕などないと思いますが。
戦争は、なにも益を産まないものです。
