どんな朝でも美しい1

花子は生きている証として
アンの本を翻訳しようと
思った・・。
夜、花子がペンを走らせていた。

『曲がり角をまがった先に
なにがあるかは、わからないの
でもそれはきっと

きっと

一番よいものに違いないと

思うの・・・』

突然

空襲警報が鳴った。

★平和になるときを待っているのではなく
いま、これが私のすべきことなのだ

その思いに突き動かされて翻訳を始めた
花子でした。

たくさんの敵機が東京の上空に
あらわれ、花子たちの町を
焼き尽くした。

花子の家も爆弾の影響を受けて
本や辞書や原稿がに火がついた。

花子はそれをたたいて火をけし

大事な辞書や原書をもって

防空頭巾をかぶって美里と
ともに逃げた。

★空襲の町を逃げながら
花子は祈りました。

生きたあかしとしてこの本だけは
訳したい!

夜を徹してにげた花子、美里、
ももと直子は翌朝
焼け野原になった町で家を目指して
あるいていた。

子供たちはあまりの火の勢いに
目がやられて目がかゆいと
いう。

「大丈夫?」
「もう少しだから」と
励ましながら歩いた。

★甲府に疎開させていた直子が
東京に帰ってきたやさき
の空襲でした。

花子は、自宅についた。

そして、青凛社がもえてしまった
のをみた。呆然とした。

そこへ旭と英治が帰ってきた。
親子たちはお互いの無事を
確認して喜び合った。

「原稿は、またかけばいいわ。
燃え広がらなくてよかった」と
花子が言う。
英治は「大事な本を防空壕にかくして
いてよかった」という。

そこへ、かよがきた。

無事を喜び合ったが
かよの店は燃えてしまった。
それが悲しいとかよは
力を落とした。

花子はかよを抱きしめた。

宮本家では富士子が「また配給は
おいも・・・」とさつまいもを
みていった。
蓮子は、「お芋が好きだ」という。
龍一と一緒になったころ
龍一が焼き芋を買ってきて
くれた思い出があるといった。

しかし、若い富士子はおなか一杯
食べたいという。

「お兄様はちゃんと食べていらっしゃる
かしら?」

その時、玄関の戸が開いた。
龍一だった。
東京の空襲がひどいと聞いて
心配して帰ってきたという。
蓮子はお帰りなさいと言った。
龍一はやっとただいまといった。
挨拶よりお互いの無事の確認が
先だった。

龍一は、純平が出征したことを
しった。
自分がいてもあいつを喜ばせる
ことは何も言えなかったと
いった。

「私もです・・・」蓮子は言った。
送り出す前の晩、純平に言われた
ことをいった。
「笑顔で送り出してくれと・・・。」


村岡家では英治がやけた原稿をみていた。
花子は「この原書と辞書があれば
原稿は焼けてもいい」という。

「何十回爆弾を落とされようと
なんどでも書く」と花子は言う。

「自分のできることはこれだけだから」と。

花子は机に向かった。

★蓮子や醍醐は

みんなは

無事だろうか・・・

花子は祈るような気持ちで
翻訳をつづけました。

夜、美里は今夜も空襲が
くるのではと心配していた。

かよもいつになったらゆっくり
寝られるのかなと
愚痴を言った。

花子は、「どんなに不安で暗い夜でも
かならず朝がやってくる。
アンも言っているわ」という。

「朝はどんな朝でも美しいって・・・」

「お母様、アンの話をして。」

美里がいった。
「いいわよ」と花子は答えた。
『ゆうべはまるでこの世界が
荒野のような気がしましたが
今朝はこんなに日が照っていて
本当にうれしいわ・・・。
でも雨降りの朝も大好きなの。
朝はどんな朝でも
よかないこと?
その日にどんなことが起こるか
わからないんですもの・・・。』

美里はまくらをあたまにじっと
横になって聞いていた。

『想像の余地があるからいいわ・・』

英治も・・
かよも・・・じっと聞いていた。


★生と死が紙一重の中で花子は
翻訳をつづけました。

『「What’s your name?

名前はなんていうの?」
コドモはちょっとためらってから
「あたしをコーデリアと呼んで下さらない?」
と熱心に頼んだ。

「それがあんたの名前なのかい?」

「いいえ、私の名前ってわけでは
ないのですけど・・・
コーデリアと呼ばれたいのです。
素晴らしく優美な名前ですもの。」

「何を言っているのかさっぱりわからない
ね・・・
コーデリアという名前でないのなら
なんていう名前なの?」

「アン・シャーリー・・・・・・・」』

花子に鐘の音が聞こえた。
鐘の音・・・??
そこにだれかがいた。

「アンて、私によく似ている・・・」花子は
翻訳をしながらそういった。

すると


「て?なにをいってるで?
おらに似ているずら・・・」

花子は驚いて声のするほうを見た。

「グッドイブニング・・花子」。
花子は驚いた。

「て・・・」

そこにいたのは、小さい時の花子だった。

「あなた、私?はな??」

「花じゃねぇ~
おらのことは花子とよんでくりょ。」

「て、やっぱり私だ。」
「その本おもしろそうじゃんけ」

「ええ、すごく面白いわよ」

「おらもよみてぇ。
ちょっとくら読ましてくりょ。」

ちび花子は本を見て
驚いた。

「て!!英語じゃ
全部英語ジャンけ
花子はこれ、全部読めるだけ?」

「ええ、読めるわ
あなたが修和女学校にいるとき
こぴっとがんばって
英語の勉強してくれたおかげで
私、今翻訳の勉強をしているの。
村岡花子という名前で。」

ちび花子はうれしそうに
「村岡花子・・・
おらも頑張ったけんど
花子もがんばったじゃん。」
といった。

花子は笑って
「ありがとうごいっす」と
いった。
「この本、どんな話か
おしえてくれちゃ。」

「ええ・・・。」花子は笑顔で言った。

「物語の舞台は
カナダのプリンスエドワード島。
主人公は赤毛でそばかすだらけの
女の子。
アン、シャーリー。
生まれて間もなく両親を亡くして
孤児院へ預けられたアンは
ふとした間違いで
男の子を欲しがっているマシューと
マリラという兄妹のおうちへ
やってくるの。
マシューは働き者で無口な
おじいさんだけどアンのことが
とっても気に入ってしまって
マリラにこういわれるの。
マシュー、きっとあの子に
魔法でもかけられたんだね。
あんたがこのうちに起きたがって
いることがちゃんと顔に書いて
ありますよ

そうさな・・・
あのこは本に面白い子供だよって」

「へえ
おじいやんみたい・・・」

「そうなの、マシューはwell nowというのが
口癖なんだけど

おじいやんが口癖だったあの言葉
がぴったりなの。」
花子は笑った。

二人は周造を思い出した。

「そうさなぁ~~」・・・と。
「あなたとアンは似ているところが
たくさんあるの。
アンは11歳の時にひとりで
プリンスエドワード島にやってくるんだ
けど」

「おらが修和女学校にはいったとき
みてーに?」

「そう、その日からアンの運命は大きく
変わっていくの。」

「て~~。
アンって本当におらに
そっくりじゃん。」

花子も笑って「本当に私たちに
そっくりなの」といった。

「花子、このお話はいつ本になるだ?」

「それはわからないの
本にできるかどうかも分からないわ」

ちび花子は「だったらなぜ翻訳
をしているのか」
と聞く。

「それはね・・・私の中にアンが住み着いて
いて絶えず私を励ましてくれるから。

さきが見えない不安な時でもアンは決して
希望を失わずにこういうの・・・

曲がり角をまがった先に何があるかは
わからないの。
でもきっと
一番良いものに違いないと思うのって。」


「曲がり角の先?」

ちび花子は笑って言った。

鐘が美しく鳴った。
ふたりはその音の方向を見た。

ごきげんよう

さようなら
****************
空襲の恐ろしさが
語られた前半でした。
かよは、軍国銃後の
婦人として婦人会で頑張って
いたのに。結局日本軍は
自分の大事な店をまもって
くれなかったとわかった
はずです。
あれほど、敵性語と
英語を批判したけど
美里といっしょになって
アンのお話を花子から聞くのでした。
どんな心境なのでしょうか。
美里も頭の上から爆弾を落とされても
アンのお話が好きで
敵性語などと思ってもないのですね。

後半は花子の自問自答
だと思いました。
アンを翻訳していて
自分に似ていると思ったとき
想像のつばさにのって
ちび花子がやってきた
のでは?
ちび花子と花子のやりとりは
自問自答だと思いました。
お話も終わり近くになって
あの懐かしい
ちび花子に会えるとは・・・
感動!!!
そしてあの鐘は修和女学校の鐘では
ないのでしょうか。
脚本家中園さんのにくいばかりの
演出に、感動しました。