生きている証2
醍醐は戦争の取材のためにシンガポールへ。
龍一は和平工作で長らく家を空けることに。
そして、
村岡家に石が投げ込まれ・・・

非国民と罵倒されることに・・・。

★それぞれが戦争の波に飲み込まれて
いきました。

カフェタイムでは花子は先ほどの
投石事件の話をかよとももにした。

犯人は美里と同じ年ぐらいの
少年たちというと
「きっと軍国少年だね」と
ももはいう。

かよは、投石は花子にも責任がある
といった。
かよは、花子に世間からどうみられているのか
知っているのかと聞く。

そしてももに「あの話をして」というと
ももは、話しにくそうにしていたが
話し始めた。

花子は美里にラジオのおばさんをやめた
のは、戦争のニュースを読みたく
ないからといったこと。
旭も近所の人になぜやめたのかと聞かれた
ので、美里に言ったことを
話したという。

花子がなぜ、日本軍の勝利を読みたくないと
いったのか、それについて、世間は
推測した。

花子が、外国語を読み書き、話し、
外国に友人がいるから・・・
洋楽を聞きダンスをし・・
ご近所はそれを知っているから。

日本が負けたらいいと思っている
からではないかと思われている
とかよはいう。
「こんな時だから気を付けないと
もっとひどいめにあうかもしれないよ。」

そこへお店のドアが開いた。
軍のお客さんだった。

花子が店を出ると
かよが、追いかけてきた。

これで「美里ちゃんに甘いものでも
作ってあげて」という。

茶色の袋を開けると
お砂糖だった。
当時としては貴重品である。

「どうしたの?」
と花子が驚いて聞くと
軍の関係者の客が多いので
特別に融通してもらったと
いう。

「甘いものを食べればおねえやんも
元気なるよ」とかよはいった。
村岡家では吉太郎が来ていた。

投石事件のことで「ご心配を
おかけしてすみませんでした」と
英治は言った。

吉太郎は、「もしまた何かあったら
言って下さい」という。

そして花子ではなく英治に
話があってきたとのこと。

青凛社の状況を聞かれた。
英治はかなり厳しいし
雑誌は休刊となったし
出版する本もないといった。

吉太郎は「さしでがましいですが」
といって、「軍関係の印刷の
お仕事をなさったらいかがで
しょうか」といった。

優先的に紙やインクを
回してもらえるからという。
英治は考え込んだ。
「それは花子がお願いしたのでしょうか」
と英治は聞いた。

花子は知らない。
吉太郎の一存だった。

花子が帰ってくると家には誰もいない。
そして、青凛社にいくと
英治がいた。

「お砂糖をもらったからひさしぶりに
美里が帰ってきたらお菓子を焼くわ」
といった。
そして翻訳の仕事をしているから
投石されたという話も英治にした。
英治は、ぎこちなく笑った。

その様子が変だったのでなにか
あったのかと聞いた。

英治は吉太郎の話をした。
「引き受けたの?」と聞くと
断ったという。

青凛社をしめて軍需工場で
働こうかと思うと
英治は言う。
花子は驚いた。

「たしかに軍の仕事を引き受けたら
青凛社は続けられるけど
・・・

ごめん花子さん」

と英治は謝った。

「断ってくれてよかった。

青凛社は女性と子供たちのために
作ったのですもの。」

「本当にいいんだね?」

花子は、笑った。

そして、英治に「踊ってくださらない?」
と聞く。

「レコードはかけられないけど
・・・
ほらこうすれば・・・」

花子は目を閉じて想像の翼を
ひろげた。

「いくらでも音楽は聞こえるわ。」

英治も笑った。

ふたりは、手を取り合って
踊った。

★あらゆることを禁止されたと
しても想像の翼までは
だれも奪うことはできません
ものね。

夫婦は無邪気に笑って踊った。


★やがて
1943年昭和18年、秋

戦況は坂を転げおちるように
悪化していきました。

ご近所では出征した人が
つぎつぎと白い箱に入って
帰ってきた。
それを無言で頭を下げて
見守る花子たちだった。

★家を出た龍一は時折
短い手紙をよこすだけで
一度も帰ってきませんでした。

宮本家ではラジオを聞いていた。
ラジオはニュースを流して
いた。
「本日、東条首相による・・・」
学徒出陣が行われるという。

純平は喜んだ。
「これで、国を守れる、
お母様たちを守れる」と。

純平は本を捨てて軍に入ること
にした。
「安心してください、必ず命を懸けて
日本を守りますから。」

1944年昭和19年夏。

★日本はマリアナ沖海戦で大敗。
サイパン島も陥落。
いよいよ、本土決戦が叫ばれるように
なりました。
食料をはじめあらゆるものが
日を追うごとになくなって
いました。

ある朝、花子は美里と英治の
お弁当を作った。
少ない食料である。
「はい、お弁当。
ま、いつもの日の丸弁当だけど。」

英治と美里はお弁当を
受け取った。

英治は「食べられるだけでもうれしい
よ」という。

「二人ともいってらっしゃい」
花子に見送られて
美里は学校へ
英治は軍需工場へと
でかけた。

するとご近所の奥様が
回覧板をもってきた。
そして10時からの防空演習の
件を話した。「夜は灯火管制の
見回りの件もあるので
光が漏れないようにね」と
いった。

花子は縁側で干し芋を作って
いた。
上空を大きな音を立てて
飛行機が飛んで行った。

それをみながらあの日ブラックバーン
校長が言ったことを
思い出した。

「これからの飛行機の進歩は
人々に何をもたらすのか・・
平和か・・・
戦争をもっと悲惨にするか・・・
どちらかです・・」

花子は「平和か・・・戦争か・・」
とつぶやいた。

夕方、花子は灯火管制にそなえて
電灯に布をかぶせようとしていた。

身長が低い花子にとっては
むつかしいことで
難儀していたところへ

来客だった。

「ごめんください。
醍醐です。」


花子は驚いた。

「醍醐さん!!」

花子は、あわてて、
玄関に迎えに行った。
すると
醍醐の様子がおかしい。

「花さん・・・」
「醍醐さん、どうしたの?」

その姿はくたびれ果て
あの生き生きとした醍醐では
なかった。

★南方から帰ってきた醍醐に
いったい何があったのでしょうか?

ごきげんよう

さようなら
******************
戦争は嫌ですね。
しかたない?
仕方ない戦争ってないでしょう?
仕方ないというのは、戦争を
止める勇気がなかったひとの
いう言い訳です。

平和をもっと深く考えて
大事にしなくては。
戦争は仕方ないと
逃げてはいけません。

なにしろ、まず食料がなくなります。
着るものもなくなります。
人によっては住むところもなくなります。
そして
大事な家族を失います。
自分の将来も失います。

純平は本当に大丈夫なので
しょうか?

純平が命を懸けるほどの
値打ちがこの戦争に
あると
いうのでしょうか???
蓮子はどうするのでしょうか。