新しい家族2
益田のモデルになったもも。
絵が完成した。
益田は「僕と結婚してください」と
ももにいった。
ももは「できません」と答えた。

益田は話を続けた。

いままでずっと周りの人がびっくり
する絵をかいて有名になりたいと
思っていたこと
ももを描いていて周囲に才能を評価
されるよりももっと大事なことが
あると気が付いたこと。
「それは書く対象を
ちゃんと
愛することです。」

ももはじっと益田を見た

「芸術家気取りはもうやめにします
これからは地道な仕事について
働きます。
生活の苦労もさせません

それでも、だめですか??」

益田の必死の訴えである。

ももは、「違うんです」という。
「こんな素敵な絵をかいてくれて
うれしいです。
これは本当の私ではありません」、と。

少し前まで北海道でひどい暮らしを
していたこと
いろいろあって東京に来たことを
いった。

益田は、あの日、かよの店で
酔いつぶれて寝ていたけど
ももの話を聞いていたという。

『食べるものも着るものもなくて
本当に辛かった。
雪の中裸足で働いた。
だれも助けてくれなくて・・
夫が死んでから住む家もなくて
馬小屋で寝たこと・・・』

「僕なんか想像もできないような
苦労されたのですね。
僕はあなたのそんな強さに惹かれました。
その気持ちを僕はこの絵に込めました。

ももさん・・・

これからは僕にももさんを守らせて
下さい・・・。」

花子はももを見た。
「もも?」
ももは益田を見た。

ももは益田に
・・・・・微笑んでうなずいた。


しみじみと気持ちが伝わったのだ。

絵の中のももは純粋にきらきらして
いた。

★それから一年後の夏・・・旭とももは
結婚し、村岡家の近所に家を
かりました。
★あの時、旭が描いたももの絵は展覧会で
三位になりました。旭は英治に印刷の技術
を教わりながら青凛社で働いております。

★そんなある日のこと珍しいお客さんが
たずねてきました。

朝市です。

「今日は相談があってきた。
ももちゃん、ご結婚おめでとう
ごいっす。」
ももは「ありがとうございます」という。

もうすぐ赤ちゃんが生まれるもも
だった。
朝市はよかったという。

相談というのは長年生徒たちにつづり方
の指導をしたことだった。
ずっと文章指導をしていた朝市は生徒
たちがあるレベルまでに達したので
本にしたいというのだった。
青凛社で本にしてほしいと頼みに
来た。

話は成立した。

朝市は「この間」と
話を始めた。

「武と一緒に演芸会に
いったら、花のものまねをしている
芸人さんがいた」という。
花子は驚いた。

『会場の
大きい方々・・
ごきげんよう・・・

これから皆様方の
ラジオのおばさんの時間です。

また、お話しましょうね・・・。
それでは、みなさん
ごきげんよう

さようなら・・・。』

いちいちが
花子にそっくりで、それほど
人気があったのだった。
会場は爆笑の渦だったという。

「ごきげんようのおばさんて
花はすっかり有名人じゃね・・・」

「てっ・・・」

「花のごきげんようがみんなに広がって
おらは嬉しい。
花が東京の女学校へいて
初めてごきげんようの言葉を
聞いたときには
えらいびっくりしたけどな。
花がすっかり東京のお嬢様みたいに
なっちまってさみしかっただな・・・。
だけど
女学校でうんとこさ頑張って
いるのをみて
おらももう一度勉強しようと
おもっただ。
花には感謝している。
おらが教師になれたのも花のおかげだ。」

朝市は、花に感謝を伝えた。
花は笑った。

そしてもう一つ報告があるという。
ももも呼んで
朝市は言った。

「結婚することにした」と。

花子とももは驚いた。

あいては、同じ教師仲間の
妹さんだという。

「気さくでよく笑う人だという。
本の好きな女性だ。
たまに怒るとおっかないけどな。」

ももは「お姉やん似ているのでは」
というが、「顔は似ていない」という。

木場リンに、そのことをいうと
急に泣き出したらしい。
朝市の結婚はあきらめていた
のでなおさらだったという。
花子も泣きながら
「良かったね朝市、おめでとう」という。

「何で花が泣くだ?」と朝市。
「だって小さい時から知っている
朝市がお嫁さんもらうって・・
うれしい」と花はいった。

朝市は花子とももには
報告したいと思っていたと
いった。

★やがて、九月の半ばのことです。

急にももが産気づいた。

お産が始まったのだ。
益田と英治は
青凛社のまえで
立ったり座ったりと
いそがしい。

そして元気な産声が聞こえた。
女の子だった。

「ごきげんよう」
ももは、赤ちゃんにいった。

★ももと旭の赤ちゃんは歩と
同じ、9月13日に誕生したのでした。

花子も英治も
赤ん坊の顔をみながら

歩を思っていた。

ごきげんよう

さようなら・・。
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あのももの絵はすごく
インパクトがあった。
色彩もきれいだった。
で、益田は絵描きをやめたのだ
ろうか?
やはり食っていくには
厳しいのだろうと思う。
花子の家で生まれた赤ん坊は
女の子。
このこが「アンのゆりかご」をかいた
ひとなのかな?
最初のシーンで大田区での戦争
のシーンがあって、空襲で
花子が原書を持って逃げるとき、
おば様それは?
と聞く女の子がいるけど
その時のコドモなのかな??

朝市も誰かと結婚することになり
お話も佳境に入りました。
あと
もう
一か月と少しですね・・・。