海にかかる虹4
「歩・・・・」
★9月1日の明け方
歩が疫痢で息を引き取りました。
英治が挨拶をした。
「本日は歩の葬儀にお集まりくださいまして
ありがとうございました。
歩の死はあまりにも突然でした
いまでも信じられません
歩のいない時間をどうやってすごして
いったらいのか、情けないですが
僕たちにもまだ、
考えられません・・・。
自宅での葬儀に親戚、友人、たちが参加
して行われた。
「みなさん、どうか花子を支えてやってください・・
よろしくお願いします・・。」
花子はうつむいていた。
じっと見る朝市。
蓮子が花子のそばにいた。
歩がいた部屋には鉱石ラジオがあった。
吉太郎はそれをみて
手に取った。
そして、泣いた。
ラジオを
あんなにも喜んでいた歩だった。
その様子を醍醐が見ていた。
そっとハンカチを差し出した。
「吉太郎さんは、歩ちゃんの親友でいらした
ですものね・・・。」
吉太郎は、なにもいわずに泣いていた。
家に帰った蓮子。
留守番をしていた純平がおかえりなさい
といった。
そして蓮子に
「お母様は僕が死んだら悲しいの?」
「純平?」
「歩君は天国へ行ったのでしょ?」
蓮子は、驚いた。
純平には歩が死んだことを話していない。
話をしたのは姑だった。
「歩君と遊ぶんだと言って
聞かなかったので
死んだことを話した」という。
「蓮子は純平がいなくなったら
生きていけないわ」と
いった。
花子は、ふっと立ち上がって部屋に行った。
翻訳の仕事はあれから止まったままだった。
「鳥の声」という原書。
鉱石ラジオ
歩お気に入りの吉太郎手製の船・・
吉平は花子にいった。
「大丈夫か?」と。
花子はうつろに返事をした。
翌日、蓮子は再び花子のもとを
訪れました。
袱紗に包まれた小さなものを
花子に差し出す、蓮子。
花子は袱紗を開けると
短冊だった。
短歌が書かれてある。
「はなちゃん、こんなことしかできなくて
ごめんね・・・」
『明日よりの
淋しき胸を思いやる
心にかなし
夜の雨の音』
『母と子が
並びし 床の空しきを
おもいやるなり、我も人の親』
『われにさえ
今朝は冷たき秋の風
子を失いし
君がふところ・・・』
花子は、蓮子の短歌を読んである
決意をした。
止まっていた翻訳の仕事を再開
した。
★蓮子から送られた歌の数々が
花子を仕事へと向かわせました。
焼香にきた吉太郎が
「花は?」と英治に聞くと
英治は、「書斎で、仕事をしています」と
答えた。
驚く吉太郎。
書斎へ行くと
花は、仕事をしている。
吉太郎は、「こんな時にも仕事なのかよ」と
と怒った。
そして、歩に上げた鉱石ラジオをもって
帰った。
花子は、吉太郎の怒りにこたえることが
できず、ため息をつき
そしてまたペンを走らせた。
吉太郎は、かよの店に行った。
「花の奴こんな時にも仕事をしている。
母親が仕事をしているおかげで
歩がどれほどさみしかったか
ちっともわかっていない。」と
かよに言った。
かよはいった
「おねえやんは、今はそれしかできない
のではないか」と。
「私は体を動かしていないと
苦しくてさみしくて
生きているのが嫌になった
だから、がむしゃらに働いた。」
かよは、郁弥の時計をみた。
「おねえやんにとってきっと
物語を作ったり
翻訳をしたりすること
なんだよ・・。」
吉太郎は、じっと聞いていた。
その夜、雨だった。
花子の翻訳の仕事が終わった。
明け方だった。
「徹夜したの?」
英治がお茶を持ってきた。
「ええ・・・
ありがとう」
「梶原さんには僕が電話をして
渡しておくから
君はゆっくり休めよ・・」
「まだ、眠くならないからもう少し・・。
そういって、原稿に何かを書いて
いた。」
原稿は梶原に収められた。
そして、一枚だけ原稿を梶原は
英治に返した。
「申し訳ないことをしたかもしれない。」
それは、歩へあてた思いだった。
『歩ちゃん、
あなたと一緒にこのご本を
読みたかったのですよ。
でも、もうあなたは、天のおうちね。
おかあちゃまはバカでしたね。
こんなに早く天国に行ってしまうなら
仕事なんかしていないで
あなたのそばに、ずっといてたら
よかった。
雨が降ってきました。
おかあちゃまの心にも
雨が降っています。
かわいい、お宝の 歩ちゃん。
おかあちゃまの命は、あなたの命と
一緒にこの世から離れてしまったような
気がします。』
英治はその原稿を読んで泣いた。
すると父が
花子さんはどこへ行ったのかと聞く。
部屋に寝ているのではと
いうと
どこにもいないという。
英治は、驚いて
家を飛びだした。
★花子は、姿を消してしまいました。
ごきげんよう
さようなら
****************
子どもを失った花親の演技とは?
難しいですよね。
吉高さんはどのように演技を
するのかと思いましたが
感情をほとんど表情から
消すようにして
うれしいときは、頬の緊張を
解いたりと、さまざまな
工夫をされていました。
子どもの葬式を親が出すという
ことほど、悲しいことは
ありません。
子の誕生を祝った親が
子の葬儀を行うなど
考えられないほど
悲しいことです。
花子は、蓮子に影響されて
仕事にうちこみ
ました。
でも、思いはあの原稿にかかれて
いました。
それを読んだ梶原は、どれほど
後悔したでしょうか。
そうそう、この花子とアンの
時間が終わってから
とくだねを見ました。
飲酒運転による
交通事故で
高校生だった飼い主の
寛太君を
なくした柴犬こゆきが
ずっと
寛太君の帰りを待っていると
いうのです。
小さい時から寛太君が
こゆきを世話してかわいがって
小雪も寛太君になついて
寝るときも、
遊ぶ時も
いつだって一緒だったと
いいます。
部活で寛太君が留守になると
帰ってくるのを
待ちわびていました。
お仏壇のそばには祭壇が
あって、そこに寛太君の
写真があります。
こゆきは
その前においてある座布団が
自分の居場所と決めている
そうです。
そしていまでも
寛太君と一緒に歩いた
散歩道や
学校・・・
一緒に行った海辺を
歩いては
寛太君を探しているのです。
そして、じっとご主人の
帰ってくるのを待っています。
その様子が
人々の胸を打って
飲酒運転撲滅キャンペーンの
CMに起用されたそうです。
突然大切な人を失くすという
悲劇を
犬もわかります。
突然大切な人を失くす
悲劇に花子はどう立ち上がる
のでしょうか。
「歩・・・・」
★9月1日の明け方
歩が疫痢で息を引き取りました。
英治が挨拶をした。
「本日は歩の葬儀にお集まりくださいまして
ありがとうございました。
歩の死はあまりにも突然でした
いまでも信じられません
歩のいない時間をどうやってすごして
いったらいのか、情けないですが
僕たちにもまだ、
考えられません・・・。
自宅での葬儀に親戚、友人、たちが参加
して行われた。
「みなさん、どうか花子を支えてやってください・・
よろしくお願いします・・。」
花子はうつむいていた。
じっと見る朝市。
蓮子が花子のそばにいた。
歩がいた部屋には鉱石ラジオがあった。
吉太郎はそれをみて
手に取った。
そして、泣いた。
ラジオを
あんなにも喜んでいた歩だった。
その様子を醍醐が見ていた。
そっとハンカチを差し出した。
「吉太郎さんは、歩ちゃんの親友でいらした
ですものね・・・。」
吉太郎は、なにもいわずに泣いていた。
家に帰った蓮子。
留守番をしていた純平がおかえりなさい
といった。
そして蓮子に
「お母様は僕が死んだら悲しいの?」
「純平?」
「歩君は天国へ行ったのでしょ?」
蓮子は、驚いた。
純平には歩が死んだことを話していない。
話をしたのは姑だった。
「歩君と遊ぶんだと言って
聞かなかったので
死んだことを話した」という。
「蓮子は純平がいなくなったら
生きていけないわ」と
いった。
花子は、ふっと立ち上がって部屋に行った。
翻訳の仕事はあれから止まったままだった。
「鳥の声」という原書。
鉱石ラジオ
歩お気に入りの吉太郎手製の船・・
吉平は花子にいった。
「大丈夫か?」と。
花子はうつろに返事をした。
翌日、蓮子は再び花子のもとを
訪れました。
袱紗に包まれた小さなものを
花子に差し出す、蓮子。
花子は袱紗を開けると
短冊だった。
短歌が書かれてある。
「はなちゃん、こんなことしかできなくて
ごめんね・・・」
『明日よりの
淋しき胸を思いやる
心にかなし
夜の雨の音』
『母と子が
並びし 床の空しきを
おもいやるなり、我も人の親』
『われにさえ
今朝は冷たき秋の風
子を失いし
君がふところ・・・』
花子は、蓮子の短歌を読んである
決意をした。
止まっていた翻訳の仕事を再開
した。
★蓮子から送られた歌の数々が
花子を仕事へと向かわせました。
焼香にきた吉太郎が
「花は?」と英治に聞くと
英治は、「書斎で、仕事をしています」と
答えた。
驚く吉太郎。
書斎へ行くと
花は、仕事をしている。
吉太郎は、「こんな時にも仕事なのかよ」と
と怒った。
そして、歩に上げた鉱石ラジオをもって
帰った。
花子は、吉太郎の怒りにこたえることが
できず、ため息をつき
そしてまたペンを走らせた。
吉太郎は、かよの店に行った。
「花の奴こんな時にも仕事をしている。
母親が仕事をしているおかげで
歩がどれほどさみしかったか
ちっともわかっていない。」と
かよに言った。
かよはいった
「おねえやんは、今はそれしかできない
のではないか」と。
「私は体を動かしていないと
苦しくてさみしくて
生きているのが嫌になった
だから、がむしゃらに働いた。」
かよは、郁弥の時計をみた。
「おねえやんにとってきっと
物語を作ったり
翻訳をしたりすること
なんだよ・・。」
吉太郎は、じっと聞いていた。
その夜、雨だった。
花子の翻訳の仕事が終わった。
明け方だった。
「徹夜したの?」
英治がお茶を持ってきた。
「ええ・・・
ありがとう」
「梶原さんには僕が電話をして
渡しておくから
君はゆっくり休めよ・・」
「まだ、眠くならないからもう少し・・。
そういって、原稿に何かを書いて
いた。」
原稿は梶原に収められた。
そして、一枚だけ原稿を梶原は
英治に返した。
「申し訳ないことをしたかもしれない。」
それは、歩へあてた思いだった。
『歩ちゃん、
あなたと一緒にこのご本を
読みたかったのですよ。
でも、もうあなたは、天のおうちね。
おかあちゃまはバカでしたね。
こんなに早く天国に行ってしまうなら
仕事なんかしていないで
あなたのそばに、ずっといてたら
よかった。
雨が降ってきました。
おかあちゃまの心にも
雨が降っています。
かわいい、お宝の 歩ちゃん。
おかあちゃまの命は、あなたの命と
一緒にこの世から離れてしまったような
気がします。』
英治はその原稿を読んで泣いた。
すると父が
花子さんはどこへ行ったのかと聞く。
部屋に寝ているのではと
いうと
どこにもいないという。
英治は、驚いて
家を飛びだした。
★花子は、姿を消してしまいました。
ごきげんよう
さようなら
****************
子どもを失った花親の演技とは?
難しいですよね。
吉高さんはどのように演技を
するのかと思いましたが
感情をほとんど表情から
消すようにして
うれしいときは、頬の緊張を
解いたりと、さまざまな
工夫をされていました。
子どもの葬式を親が出すという
ことほど、悲しいことは
ありません。
子の誕生を祝った親が
子の葬儀を行うなど
考えられないほど
悲しいことです。
花子は、蓮子に影響されて
仕事にうちこみ
ました。
でも、思いはあの原稿にかかれて
いました。
それを読んだ梶原は、どれほど
後悔したでしょうか。
そうそう、この花子とアンの
時間が終わってから
とくだねを見ました。
飲酒運転による
交通事故で
高校生だった飼い主の
寛太君を
なくした柴犬こゆきが
ずっと
寛太君の帰りを待っていると
いうのです。
小さい時から寛太君が
こゆきを世話してかわいがって
小雪も寛太君になついて
寝るときも、
遊ぶ時も
いつだって一緒だったと
いいます。
部活で寛太君が留守になると
帰ってくるのを
待ちわびていました。
お仏壇のそばには祭壇が
あって、そこに寛太君の
写真があります。
こゆきは
その前においてある座布団が
自分の居場所と決めている
そうです。
そしていまでも
寛太君と一緒に歩いた
散歩道や
学校・・・
一緒に行った海辺を
歩いては
寛太君を探しているのです。
そして、じっとご主人の
帰ってくるのを待っています。
その様子が
人々の胸を打って
飲酒運転撲滅キャンペーンの
CMに起用されたそうです。
突然大切な人を失くすという
悲劇を
犬もわかります。
突然大切な人を失くす
悲劇に花子はどう立ち上がる
のでしょうか。
