春の贈り物5
いよいよ始動しはじめた
王子と乞食の出版兼印刷会社

青凛社・・・。


青凛社の看板を取り付ける花子と英治は
右だの
もう少し左だの・・

と朝からうるさい。

村岡父は、「看板一つとりつける
のに、いつまでかかっているのだ?」
とあきれてお小言を言う。

「お父様も相談役の会社ですから」と
花子が言うと
目の色がかわり
「もう少し左だ!」と指示をする。

★たくさんの友人たちの力を借りて
青凛社が誕生しました。

やっとの思いで看板が落ち着いた。
「完璧よ!!」

花子はうれしそうに、英治、
村岡父、歩にいった。
村岡家は笑顔で看板を見ていた。


電話が突然になる。

「きっと予約の電話よ」と花子は
走って電話をとった。

新聞に広告をだしたのだった。

「はい、青凛社でございます」

花子は緊張で声が裏返った「。

甲府からの電話だった。

「もしもし。はなたれ、け?」

「て、武!!」

「花、
会社の設立
おめでとう~~」

「朝市~~~~
ありがとう~^」

「それにしてもはなたれのくせに
新聞に広告だすとは
生意気じゃん?」

「たけし・・・・・」

「花~~王子と乞食生徒たちにも
読ませたいから一冊予約頼むじゃん」
「朝市、ありがとう」

「朝市、電話代がもったいないからな」
といって武は電話を切った

★というわけで王子と乞食の予約
第一号は
朝市でした

また電話が鳴る

「はい、青凛社でございます。」

花が電話を取る。

村岡家の庭に建てられた印刷所では
父と息子が印刷機を回していた。

久しぶりの印刷の仕事である。
そして

王子と乞食の単行本が
ついに完成しました。

翻訳は村岡花子
出版は村岡英治と
あった。

「郁弥、これからも美しい本をたくさん
作るからな・・・。」

英治は郁弥の遺影に前に本を置いた。

かよも、ひとりでじっと本を見ていた。

「できただね」

頁をめくると
そのおくづけに「郁弥の思いに捧ぐ」とあった。

それをかよは指でなぞった。

花子は単行本が出たからとほっと
している暇もなく、
梶原から依頼されている
翻訳も続けて行かなければいけない。

そんな時、ブラックバーン校長と
富山先生がやってきた。

「大変久しぶりですね。卒業以来かしら」と
富山は言う。

「ええ・・・本当にご無沙汰しております。
富山先生、ちっともおわりありませんね」

ミスブラックバーンと花子は校長にいった。
大変お元気そうでうれしく思いますと
英語で伝える。

校長は修和女学校でも震災の犠牲者が
出たこと富山先生もふさぎ込んでいたこと
などを話した。

「この本のおかげで生徒も私も
ずいぶん、心が明るくなりました。
いまのは褒めました。」

「はい・・・。」

校長先生は「花!人生は進歩です。
最上の物は過去にない。
将来にあります。」という。

花子はうなずいて「その言葉は
いつも私のここにあります」と
胸をさした。
「私はいつまでも先生の生徒です」と
いった。
そこは梶原がやってきた。

富山がいるのを見て、一瞬驚いた様子
だった。

花子は梶原から原稿を依頼されて
いることをつげた。
富山はお忙しいようなのでこれで失礼しますと
いって校長とともに立ち上がった。
花子はいらしたばかりなのにと
止めようとしたが、富山は帰りますと言って
帰って行った。

その二人の後を梶原がおった。

「富山先生!!」と
勢いはいいものの
「あの・・・その・・」と言葉が出ない。

「ニジイロ、読んでいました。
新しい号は出さないのですか?」

「震災で会社が焼けてしまって、ぼくは
前の会社に戻っています。」

「そうでしたか・・・。
実は震災の時、まさか一番最初
にうかんだのはどういうわけか
梶原さんのお顔でした。
御無事でよろしゅうございました。」

梶原も真っ先に富山のことを考えた
という。
「あなたも御無事でよかった。」
さめざめと泣く富山だったが
富山が向うへ向いて
帰ろうとしたので梶原は精いっぱいの
勇気をだして
「また会って下さいますか」と聞いた。

富山は微笑んだ。

「ご連絡します!!!」と梶原は言った。

雨が降ってきた。
郁弥の遺影の前でしばらく座っていた
かよは、雨がやんであかるくなった
空を見に庭に出た。

忘れな草が・・・たくさん咲いていた。

花子は、「て・・・きれい」と
かよに声をかけた。
そして忘れな草の美しさに
驚いた。
「時間はとまってはいないんだね」
かよは、そういった。

あの日、忘れな草を髪にさしてくれて
「よく似合います」と笑っていった郁弥。

「あの、子供は何人ぐらいほしいですか?
僕はたくさんほしいな」といった郁弥。

「あなたは僕の女神です。結婚してください」
といった郁弥・・・・・・。

「郁弥さん・・・・ありがとう・・・・。」

かよは泣きながら忘れな草に言った。

郁弥が好きだった花だ。
家の中から村岡父と英治は
それを見ていた。
「あんなにたくさん咲くとはな?」
「父さん?種をまいたのですか?」

「よく似合うよ」、と花子はかよの髪に
忘れな草をさしていった。

「おねえやん、ありがとう」


★止まっていたかよの時間が
また動き出しました。
ごきげんよう

さようなら・・・。

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ついに会社ができました。
よかったですね。
最初の予約者は朝市。
幼馴染にいいですね。
朝市はだれと結婚するので
しょうか。
ついでながら武は?
かよはどうなるのでしょうか。
忘れな草の思い出が強いから
なかなかいい人と出会わないかも
しれませんけど。

ブラックバーン校長の
最上のものは過去にはない。
それは未来にある
との言葉は
今の私にとっても
前に進む大きな教えになって
います。