春の贈り物3
村岡家に突如嘉納伝助がやってきた。
目的は・・・
やはり、蓮子のことだった。
「あいつはなにしちょるか?」

「震災の後、龍一さんと坊やと一緒に
すごすことになって。
蓮様もひとなみに、お姑さんのことで
苦労されているようですよ。」

伝助は
「そうか・・・」

といって

「じゃましたな」と
帰って行った。

★その夜のことです。
醍醐がスーツケースをもって
やってきた。

「ごきげんよう、こんな遅くごめんなさい。」
今夜、泊めてほしいと醍醐は言った。
「私、行くところがないの。」
出版社をやめて蓮子の駆け落ち事件で
その取材をしていることで父親と
衝突したらしい。
「もう、あんな家には帰らないわ!!」

そういって、ずかずかと家に上がった。
「ごめいわくなのは重々承知していますが
他に行く当てがないのです。」
と醍醐は村岡にいった。
英治は、「どうぞ、お好きなだけいら
してください。」といった。
村岡父は、あれから元気がないのだが
「私も居候だから」、と自分に遠慮しなくていいとの
ことだった。
こうして醍醐は村岡家に居候しながら
ますます取材に追われていました。

蓮子にあいにいった醍醐。

蓮子は「自分の記事を?」といって
驚いた。
「これまで散々書かれてきたから
お好きに書かれたらいいのでは?」という。
醍醐はそれは違うのではないかと
いった。
「調べるとあの駆け落ち事件はただの恋愛沙汰と
は思えない」と醍醐は言った。
「蓮子様は家や身分を捨てて自分の人生を
生きようとしたのではありませんか
私はあなたの声を聴き真実を書きたい
のです。」

すると
姑が走ってきた。
「蓮子さん、大変よ雨よ、雨!!!」

「あ、ほんとうですわね。」

「洗濯物をとりいれなくては。
早くして!早く早く!」

「あなたも見ていないで手伝ったら
どうなの?」と醍醐にも言う。

姑は口は早いが、身のこなしは
遅いらしい。
醍醐も手伝って雨の中洗濯物を
取り入れた。

村岡家では、花子は一大決心を
した。
嘉納伝助から言われたこんな時だからこそ
このような本をみんな待っているのでは
ないかとの言葉が忘れられない。

それで、王子と乞食の本を出そうと
英治にいった。
「この本が出ることで少しでも元気になる人が
増えればいいと思う」と花子は言う。
「これは僕たちがやらないといけない仕事だ」と
英治は言った
その様子を村岡父はじっと見ていた。
「歩、お母様は頑張りますよ」と
子どもに話しかける花子だった。

居候をしている醍醐に
夕食後、その話をすると
「素敵だわ、郁弥さんの夢を実現なさる
のね。ぜひ私にもお手伝いさせて。」

花子はまだ資金のこともあるからと
困難な道のりをいった。

「そうなの・・・」

といった醍醐はいい考えがあると
いった。
「クッキーをたくさんやきましょう。」

花子はクッキー?と
不思議に思った。

★さて、醍醐さんのひらめいた
いいアイディアとは?

「お待ちしていましたわ。」
玄関が開いてごきげんようと
いって入ってきたのは
修和女学校時代の同窓生のみなさん
たちだった。
畠山さんとか・・・

で、お茶会をする花子と醍醐。
お茶を入れて、クッキーをだした。
スコット先生直伝のクッキーねと
大評判。
オーブンがなくて、かまどで焼いた
のよと花子は言った。

畠山は教会のボランティアをやっているが
みなさん、家族を亡くし、仕事を亡くし
本当に絶望されていますと
話をした。
「震災さえなければ」という。
「修和の建物は残って幸いでした。」と醍醐。

花子は、「やっぱり女学校のころが
一番楽しかったわね・・・」という。
シーンとした。

すると、畠山が
「そんなこというとブラックバーン校長に
叱られますわよ」といった。
卒業式の時、校長は
「The best things are never in the past.
but in the future.」

と話をされた。

「最上のものは過去にあるものではなく
将来にあります
旅路の最後まで
希望と理想を持ち続け進んで
いくものでありますように。」

声をそろえてみんなで唱和した。
そして、顔を見合わせて微笑み合った。

醍醐は「招待状にあったとおり
ご協力をおねがいします」
という。

乞食と王子の単行本を出してほしいと
みんな、少しづつではあっても
お金を出してくれた。

花子は驚いた。
「お金はいただけません。
お気持ちは嬉しいです。
でも甘えるわけには・・・」

「それじゃ、これは未来の本への投資
というのはいかがでしょうか?」

「投資?」

「会社がうまくいったらどんどん本を
出すでしょ?その時割引価格で
売ってくださらない?」

「こういう時こそ、楽しく元気になる
本が必要なのよ」という。

「みなさん・・・」花子は感動した。

その夜、英治に話をした。
「未来の本への投資?」
「みんなはやく、本を作ってくれって。」
と花子はいった。
醍醐は、お茶会を開いてよかったという。
畠山の家に離れが開いているからと
いって、そっちへ行くことになった
と醍醐は言った。

かよがそっと聞いていたのを花子は
気が付いた。

しかし、かよは何も言わずに部屋に
いった。

★かよの心の時計はまだ止まったまま
なのでしょうか?
数日後再び、嘉納伝助がやって
まいりました。

「この間翻訳してくれたお礼たい」と
いって、ずいぶんな荷物を村岡家
の玄関いっぱいにおいていった。

伝助が帰る道であったひとは
蓮子だった。

伝助は驚いた。
蓮子も、伝助をじっと見た。

★あれほど世間を騒がせて離婚
した二人がばったりと
出くわしてしまいました。
ごきげんよう
さようなら
*****************
震災で失ったものが多すぎて
思い通りにいかない人の心と
現実。

そんな時こそ夢のある本が必要だと
伝助に言われて花子は
王子と乞食の本を出そうと
考えた。
しかし、財政的にも苦しい。
売れる見込みがわからない本など
出そうという出版社もない。

醍醐が家出をして花子の家に来て
それを聞いたとき
お茶会を計画した。
醍醐はやることが鮮やかである。

未来への投資・・・なんと
夢のある、合理的な
方法でしょうか。

女学校時代のお友達って
いいですね。

わたしにもいます。

高校時代の、ですけどね。
いいですよ。友人って。
その頃のその土地の
お話ができますから。

で、蓮様と伝助・・・
さて、であって何の話をするの
かな???