涙はいつか笑顔になる6
大震災で郁弥をなくし、村岡家は
悲しみに暮れる。
「火災に巻き込まれて郁弥は逃げ
切れませんでした。」と父に報告する英治。
「この島から抜け出す道はただ一つ
笑うのです。」花子は被災した子供たちに
お話をした。
「笑えるかな?」と子供たちに聞く。
「笑えるわけないじゃん・・・」と
かよはいう。
かよは、あの日からずっとふさぎ込んで
いた。
★そんなかよに何も言えない花でした。

甲府から吉平、朝市、武が来る。
「みんな無事でよかった。
無事でよかった」と
吉平は泣きながら言った。
「おお、かよも・・・」
かよは、じっとその様子を見ていた。
「おじさんも、おばさんも本当に
心配していただよ」
と朝市が言う。
かよは無言でその場を去った、
吉平は唖然としたが
花子が郁弥がなくなったことを
話した。
吉平は心配した。

甲府から運んできた食材で
ホウトウを作った。
それをご近所に炊き出しを
した。
たくさんの人たちがやってきて
ホウトウをおいしいと喜んだ。
醍醐亜矢子も来た。
花子と醍醐はお互いの無事を確認して
喜び合った。
聡文堂は、全壊となったが
編集長以下、社員は無事だという。
「醍醐さんもいかが」と花子は
ホウトウを進める花。
それを武はかっこうつけておわんに
もって「どうぞ」と渡した。
「おいしい!!」
ホウトウは評判だった。

醍醐は、元気の出るものをもって
きたという。「女の子が好きなものは
きれいで、かわいいものなのよ」と
いって、おリボンがたくさん
はいったカバンを開けて、女の子たち
にあげた。
花子は正夫とフミにホウトウを
わたした。
「いただきます」といって
二人は食べた。
「かよも食べたら?」
という。
かよはずっと食事がとれていなかった。
みんなかよを心配した。
朝市は「郁弥さんというあかるくて
楽しい人がこんなことになるなんて。」
という。
かよは、自分のホウトウを正夫に食べる
ようにとわたした。
かよは、感情をなくしてしまったと
花子は思った。
そんな時、あの正夫とフミが
「涙さんの話をして」といって
花子の所へ来た。
花子はかよに気兼ねをしながらも
うなずいた。

「・・・よしてください。
よしてください、あまり泣くと
河があふれます。
涙さんはちょっと泣くのをやめてまわりを
みると水が一刻一刻に増しておりました。
私をこの島から出してちょうだいよ。
そうすれば泣かないわ。」

かよは、じっと廊下でそれを聞いていた。
「この島から抜け出す道はひとつしかあり
ません。
・・・・・・・・・・」

「わらうんだよぉ!!!!」
花子が言いよどんだ時
フミが明るく言った。

花子は話を続けた。
「カエルは言いました。
笑うんです。
笑うと池の水がだんだん引いてきて
私たちは逃げられるようになります。」


朝市はかよのそばにいっていった。

「笑えば・・涙の池が小さくなるなんて
花らしいじゃんね?
花だって、ふんとは泣きたい気持ちだ
ろうに・・」

かよは、無表情だった。

「かよちゃん、」と朝市は
続けた。

リンの話だった。
朝市の父親が死んだとき
リンはこのあたりが・・と胸を抑えた。
ぎゅーっと締め付けられるようで
苦しくてたまらなかったという。
あけても暮れてもつらくて、苦しくて
おなかもすかないし、もう二度と
笑えないと思ったという。
だけど、ひとというのは、やっぱり
腹はすくし、楽しいことがあると
笑うものだ。
けがが治るみたいに自然と
心のつらさもよくなる。そんな話をして
朝市はかよに言った。
「だから、かよちゃんも、きっと大丈夫だ。」

かよは、朝市を見た。

ホウトウの炊き出しの場で
「私にもホウトウをいただけるかしら」と
来た人がいた。

蓮子と龍一と純平だった。
蓮子は葉山邸を出たこと
龍一が連れて出てくれたこと
それまでは想像の翼を広げて
その人待っていたことを
花子にいった。
花子は喜んだ。

かよは、ふと空を見た。
★その日の夜のことでした。
玄関から声がするので
かよが出ると
一人の男がいた。

「あの、この家にうちの子がいるって
本当ですか?」
あの貼り紙を見てきたという。
お子さんを預かっていますという
貼り紙だった。

「はい」、とかよは返事した。

子どもたちが出てきた。

「とうちゃん、」
「とうちゃん!!」
「正夫、フミ!!さみしかったろ?」

「さみしくなかったよ。」
と正夫が言った。
「涙さんの話を聞いていたから・・。」

子どもたちはうれしそうに
父親と一緒に帰って行った。

「よかった・・・」とかよはいった。
花子はかよをみて安心した。

花子がかよのそばにいくと
「おねえやん・・・」という。
「なに?」

「もう一辺だけでいいから
郁弥さんにあいて・・・。

郁弥さん、あんな素敵な求婚を
してくれたのに、
おら、恥ずかしくて店を飛び出した
ださ・・・。
どうしても、郁弥さんに伝えたいことが
あるだ・・・。」

『かよさん、あなたは僕の女神です
僕と結婚してください・・・』

あの日の郁弥の言葉だ。
かよは目をつむっていった。
「はい・・・・・。

おら、お嫁さんにしてくれちゃ・・・。」
そういってかよは泣いた。
「あいてぇ郁弥さんにあいてぇ・・・
・・・・・え・・えええ・・・」

花子は泣きじゃくるかよを抱きしめた。

翌日、吉平たちは帰ることになった。
吉平は、「かよ、おらたちと甲府に
帰ろう」という。
「おまえをこの大八車に乗せて
甲府へ連れて帰ってやるぞ」という。
「かよちゃん、そうしよし」と武。
かよは、「もう少しみんなと
東京で頑張る」といった。

「ほうか、わかった。」と吉平。

「おとう・・・ありがとう。」
「それじゃ、また・・」と朝市

「本当にありがとうございました。」
と英治は言った。

「ほんじゃ、また来るからな」朝市たちは
元気よく出発した。

「ようし、帰りは武がひとりで
車を引け」と吉平は言う。
「え?そんなぁ~~」といいながら
吉平たちはにぎやかに
帰って行った。
★かよに少しだけ笑顔が
もどりました。

また来週
ごきげんよう
さようなら
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震災にあった人でなければ
わからない悲しみがあると思います。
かよの心の傷はこれからも
時折ちくちくと
痛むこともあると思います。
そんなとき、かよは、
もし・・・だったらと
想像の翼をひろげて、夢を見る
と思います。かよは、花子の妹だから。
黒木さん泣かせる演技でした。

涙さんの話は面白いです。
これはどうなって終わるのでしょうか。
何度聞いても面白いお話です。