涙はいつか笑顔になる3
花子は過酷な幽閉生活の蓮子に言った。
「もし希望を失いそうになったとき
想像の翼を広げて見て・・
親子三人で幸せに暮らすことを思い
うかべるのよ・・・。」

郁弥はかよと急接近か??
「かよさんはBabyの世話も手慣れたものですね。
料理もうまいし理想の嫁さんだ。」

「かよさんと郁弥さん、いい雰囲気ね。」
「そうね・・・。」

1922年大正12年夏・・
それから一年たったある日。
花子は王子と乞食の翻訳の
最終原稿を仕上げた。

★花子と王子と乞食の翻訳が観月
したことを祝って
ささやかなパーティが開催されて
いました。

聡文堂の編集部に、関係者が集まって
いた。
梶原は翻訳をした村岡花子を紹介して
たたえた。花子は感謝をした。
「みなさん、本当にありがとうございました。」
「その挿絵を描いてくれてその縁で結婚した
村岡英治君、
その原書を提供した村岡郁弥君にも
感謝をしたい」と梶原は言った。

「ニジイロがここまで続いたことを
感謝します。
これからもお力を貸してください。
乾杯、」
「乾杯」
拍手がなった。

大きくなった歩が花子の膝にいた。
醍醐からの報告があった。

醍醐は退職をするという。
須藤も三田もびっくりした。
「ようやく結婚相手がみつかったとか?」
と三田が言うとそれは違うと醍醐は言った。

「挑戦したい新しい道を見つけました。
世間が知らない本当の嘉納蓮子の人生を
書いてみたいのです。」

「それを書いたらどうするの?」

「まだわかりません。
でも書きたいというときめきを
大切にしたいのです。」

「引継ぎが完了するまで残ってもらう」。
と梶原。

村岡印刷も報告があった。
社長の平祐は前に出た。
「これからは社長は英治、
専務は郁弥が取りしまりますので
よろしく」との挨拶だった。

英治はあいさつに立った。
「若輩ですが・・・」がなかなかいえずに
かみっぱなしだった。
でも、「素晴らしい本を印刷したい」と
の希望を述べて拍手が沸いた。
「あ、I’ve a good idea!!」
と、郁弥がいった。

花子は「郁弥さん、どんなアイディアなの?」
と聞く。
「王子と乞食を一冊の本にしませんか?」
その意見に編集部は湧いた。
梶原もオッケーだッた。
「すごいじゃん」、とかよはよろこんだ。
花子は頬をつねって「いたい」といった。
「花子さん、夢じゃないよ」と英治は言う。
「兄さん、装丁に工夫を凝らして
今までの日本にない美しい本にしようよ」
と郁弥はいう。
「これからも、どんどんいい本を紹介します。
よろしくお願いします・・社長」と
花子は英治に言う。
まだ慣れていない英治は社長はやめてくれ
よ、といったら
歩が「社長」と言ったので、爆笑となった。

平祐は花子はいつまで仕事を続けるのかと
愚痴る。
郁弥は、いつまでいうのかと父に言う。
平祐は、郁弥の嫁は家に入る人にしてほしいと
いった。
郁弥は、自分の嫁は直感で決めているという。
そして、英治と花子を呼んで
かよと結婚したいといった。
花子たちは賛成した。
「あしたはかよの誕生日なので求婚するつもり
だ」と、いった。

平祐は、かよと聞いて喜んだ。
「しかし、結婚式は東京でしろよ。
また甲府ですると異議ありと言って
騒ぐぞ」と笑った。

そのよる、英治は、
花子に母の形見のカメオを
わたした。
香澄さんが持っていたものだ。
郁弥があずかって
花子に渡すようにと言われたという。
そのおかげで背中を押されて
こんなに幸せな家庭を持つことができた
という。
これを花子に持っていてほしいという。
花子は「ありがとう。大切にします」と
いった。

翌日、郁弥は、ドミンゴへ行った。

「いらっしゃいませ、珈琲でいいですか?」
とかよいった。
若干、どきどきしている郁弥は、案内されて
椅子に座った。
時計を見てなぜか時間を確かめ、
手のひらを見た。
手のひらにセリフが書いてあった。
「あなたは僕の女神だ・・・・・。」
郁弥はそれを読んだ。
「あなたは僕の女神だ・・・女神・・。」

すると窓の外を音楽の楽士たちが
通って店に入ってくるのが
わかった。

「え???」

つまり、サプライズを狙ったのである。
「はや!!!」
とあわてて、店の入り口に行った。
楽士たちは外で待っていて、
郁弥は、珈琲を持ってきた
かよに、いった。

「かよさん、Happy Birthday!
お誕生日おめでとう。」
かよはびっくりした。
そのタイミングで楽士たちがはいってきて
演奏を始めた。

かよは
「て????」と驚く。
郁弥はひざまずいて、かよを見上げた。

そして、右手を掲げていった。
「かよさん、あなたは僕の
女神です。」

「て・・・・」

「僕と結婚してください!!!」
「・・・・」
「かよさん??」

店の中は「おめでとう!!」
「いいぞ~~!!」
と拍手があがった。

しかしかよは黙っていた。

「かよさん??・」

かよは・・
やっといった。

「郁弥さんの


ばかっちょ!!」

と怒鳴って

店を出て行った。

「かよさん???」

音楽は鳴りやまない・・・
なぜ、こうなるのかわからないが
楽士たちは
必死で奏でている。

★郁弥さん、やってしまいましたね。

ごきげんよう

さようなら・・

****************
花子の翻訳家として
母として
友として
妻として
その生き方が
今回のお話で
いちおうの区切りがついたと
思います。

一人の翻訳家と
してすばらしい物語を
紹介したいと意欲をもったし。
歩を立派に育てながら
英治は、花子との生活に
しあわせを感じることができたし。
また、社長という新しい立場で
仕事をしようと決意に立ったし。
醍醐は編集者としてのキャリアに
見切りをつけて、温めていた
本当の嘉納蓮子を世に出そうと
執筆家を目指すこととなったし。

郁弥・・・・
かれは、翻訳家村岡花子の
生みの親のような存在で
花子に王子と乞食の本を
わたしたことや、
英治の背中を押して結婚に
踏み切らせたことや
また、今回王子と乞食の
単行本の話を持ち出したことなど
から、彼の功績は大きい。

そして、かよとの思いを
ぶれずにあたためて、今回
プロポーズしたこと・・・。

ちょっと派手でしたけどね。甲府
からでてきた素朴な田舎娘には
ちょっと刺激がきつかったかも
しれません。

でもかよにも郁弥の気持ちが伝わって
いると思います。

腹心の友とは花子と蓮子ではありますが
醍醐も花子と親友のような関係ですね。
その蓮子にも幸せになって欲しいとの
花子の思いは通じたものだし。

だから、今日のお話は
テンポがゆったりと
していました・・・・。

気持ち悪いぐらいに・・・・。
こんな日もあります。

その理由は・・・
大きな運命の展開の予感です。