腹心の友再び4
花子の蓮子宅通いは通常のことに
なったらしい。
お弁当をもって今日も歩と
蓮子宅へ行く。
いつもすみませんと龍一は言う。
そして蓮子は歩君ってかわいいと
いい、実は新しい命を授かったと
妊娠をしたことを花子に言った。

どんなことがあってもこの子を守ると
龍一が言ったという。
花子は「おめでとう」と、嬉しそうに言った。
蓮子は「ありがとう、元気な赤ちゃんを
産むわ」と言った。
1922年大正11年初夏。
★蓮子の駆け落ち騒動から八か月
がすぎました。
歩もすくすくと成長しています。

家族三人でお出かけの様子。
「きんつばは?」と花子が聞くと
「持ったよ」と英治が言う。
「忘れ物はない」と英治。
早くいこうといって三人が家を出た。

「さ、蓮様の所へ行きましょうね。」
花子は歩に話しかけた。

★蓮子と龍一は龍一の父の古い友人である
山川弁護士の家に身を寄せておりました。

「たびたび、家族で押しかけて
申し訳ありません」と
英治が言う。
「にぎやかで楽しいです」と山川弁護士。
「外へ出られない蓮子さんのためにも
来てくださいね」といった。

そんな時、蓮子が「おなかの子が動いた」
といった。
花子は名前がたくさん書かれたメモを
みつけた。
生まれてくる赤ん坊の名前らしい。
二人ともどんどんいろんな名前が
出てくるので決まらないと蓮子は言う。

花子もうちもそうだったといった。
なかなか名前にこだわりがあって
決まらなかった。名前は難しいと
いう。

蓮子は「バラがあざみとかキャベツ
という名前なら同じように香らない
のではありませんか」という。

花子ははっとした。
そのセリフ、たしか大文学会で
ロミオが名前がなんだというのだという
言ったことに対してジュリエットが
返した言葉だった。

「名前は大事です。
もしバラがあざみやキャベツという
名前だったらあのようには香らない
のではないでしょうか。」

ジュリエットである蓮子がそういった。

「やっぱり名前は大事よね、花ちゃん。」
花子は満面の笑みで「そのとおり」と
答えて笑った。
英治は、「ママたちは本当に仲がいいなぁ」と
歩に言った。
ふと顔の表情が、曇る蓮子に
「大丈夫ですか」と花子は言う。
この子を本当にちゃんと育てられるのかと
蓮子は不安だという。
いまでも葉山家、嘉納家は蓮子を血眼で
探し回っているからである。
★蓮子の事件はまだ終わっていない
のです。
「安ずるより産むがやすしですね。
私が歩を生む前に
蓮様がそうおっしゃったのですよ。」
蓮子はうなずいた。
ところが、そこへ龍一が帰ってきたが
様子がおかしい。
あわてて窓のカーテンを閉めて
障子もしめた。
「龍一さんどうしたの?」
蓮子が聞くと、「つけられていたようだ」
という。
「めちゃくちゃ走り回ったから大丈夫だと
思うけど」と言った。
「ここも危なくなった」と龍一たちは不安
そうな顔をした。
花子は、「甲府の実家に身を寄せたら
どうですか」と提案した。
英治も賛成した。
蓮子は喜んだ。
山川弁護士は龍一も隠れ家を
変えたほうがいいという。
もし見つかったらどんな目にあわされる
かわからないからだ。
英治は「我が家にいらっしゃったらどうですか」と
提案した。
龍一は村岡宅へ身を寄
せることになった。

★こうして蓮子は花子の実家へ
行くことになりました。

カフェドミンゴでは
醍醐は宇田川に訴えていた。
嘉納蓮子について書いてほしいと
いうが、宇田川は蓮子が大嫌い
なのである。
醍醐にとって蓮子は今の不自由な
女性たちの生き方そのままだと
いう。
家名にしばられ、自由がなく
家のために生きていく・・
その生き方を書いて本当の
女性の自由とは何かと世に訴えて
ほしいと醍醐は説得するが。
「おねがいします。」

「私は白蓮のことなど書きません
共感するものがないからよ。
それほどご執心ならあなたが書けば
いいのよ。だれも共感しないと
思うけど・・・。」
「そうでしょうか?」
「まさかあなた本当に書く気?」
醍醐は思いつめていた。

さて、甲府に帰った花子は歩と
一緒だった。
そこへ蓮子も一緒に帰ったのだ。
「お父様、はじめまして・・。
このたびはお世話になります。」
「自分の家だと思ってくつろいでください」
と吉平は言った。
「お母様、大変ご無沙汰いたして
おります。」
「おかあでいいだよ。
よく来たね、蓮子さん。」
「このたびはお世話になります。」
「さ、あがって」というが、
花子は両親に絶対蓮子さんが
いることは
内緒だからねといった。
「こぴっと秘密にするだよ」
「リンさんだけには秘密にしないと。」
と花子が言った。

「おらがどうしたって?」
「いつのまに湧いて出たか?」
と吉平がいう。
リンは歩を見てごきげんだったが
家族は一同、蓮子を隠すために
塀をつくって
リンから蓮子を見えないようにしたが

「なにしているだ?」
とリンが家の中を見たので
蓮子がいることがばれてしまった。

「あんたは、石炭王に嫁いだ
伯爵家の御令嬢では
ないのけ?で、かけおちで
相手の帝大生というのは
どこにいるだ?」

と、機関銃のように質問をあびせた。

「て!!!!
子が生まれるのけ???」

リンにとって話題性があれもこれも
と多かった。
本当にリンは内緒にできるのか。


「あ、ご無沙汰しております
朝市さんのお母様。」

花子は「このことは絶対秘密だよ」
と、リンの口を封じようとした。
見つかったら
どうなるかわからないからと
花子は真剣に訴えた。

「そんなに危ない目に合っているのけ
わかった、蓮子さんのことは
だれにも言わん。」
「絶対にけ?」と吉平。

「絶対、絶対・・・絶対言わん!!!」

さて、村岡家では
龍一が紙に名前を書いていた。
英治は、「悩みますね」という。
龍一も「悩みます」といった。

「お風呂湧いていますけど」と
英治が言うとお先にどうぞと
龍一が言う。

雨の中、村岡家に近づく
二人の影があった。

龍一は玄関の戸をたたく音で
はっとした。
しかし村岡は風呂だった。

龍一は、玄関を開けた。
「ごめん下さい・・・。」

そのひとは、

伝助だった。
伝助は龍一を見て思い出した。
あのクリスマスの時だった。

「これはこれは石炭王の
嘉納伝助様ではありませんか?」
「知り合いか?」とあの時伝助は
蓮子に聞いた。
「いいえ」と蓮子は答えた。

伝助はここに龍一がいることで
すべてを察した。
「おまえが相手だったのか。
おまえだったのか・・・。

蓮子はどこにいるんだ!!」

大きな声で龍一に詰め寄った。
「ここ。。。にはいません・・・」

龍一は胸ぐらをつかまれて
押し倒された。

「うそをつけ、どこにいるんじゃぁあぁあ」
と、伝助は我を忘れて
龍一にいう。
「いわんかぁ~~~」と
龍一を吊し上げるが
そこへ村岡がやってきて
「嘉納さん、暴力はいけません」
と止めに入った。

が、英治も突き飛ばされた。
伝助は龍一を責めて蓮子が
どこにいるのかと
聞こうとした。
村岡は伝助を抑えようとした。
が、突き飛ばされた。
伝助は力が強い。

そんな大騒動になっているとは
いざ知らず、甲府では
おかあのほうとうをみんなで食べていた。
「おかあのほうとうは天下一品です」
と蓮子が言う。

ふじは、「子供の名前は決まったのか」と
聞いた。
「まだ、ですと」いうと
「早くしないと生まれてしまう」と吉平。
「まだ生まれませんよ」、と蓮子は
笑いながら言った。

「パパたちはどうしているかしらね?」
花子は歩に聞いた。

★パパたちがくんずほぐれずの大格闘を
しているとは夢にも思わないママたち
でした。

ごきげんよう

さようなら
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蓮子さん着物が地味になりました。
普通の着物になりました。
だんだん庶民的になって
くるのですが隠れ家生活は
大変だと思います。
醍醐さんは相変わらずおしゃれです。
それに負けない宇田川先生も
髪留めが何とも豪華で素敵です。
で、白蓮の半生を醍醐は書く気なので
しょうか。
それもいいと思いました。
花子と違って少し離れて
蓮子を見ている醍醐ならではのこと
かもしれません。
木場リンに秘密という言葉はあるので
しょうか?
内緒という言葉はあるのでしょうか。
なんだか不安です。
で、村岡家の格闘はどうなるので
しょうか・・・・???
村岡家にいると絶対バレバレだと
思いますけどね。
吉太郎はくるし
こうして伝助も来るからです。
かなり、やばいですね。