腹心の友再び2
蓮子の駆け落ちは新聞に大きく
載ったため花子は心配をした。
吉太郎に居場所を聞いても
わからないという。
伝助は新聞記者を呼んで絶縁状への
反論を載せようとした。
★蓮子と龍一のかけおちはさらなる
騒ぎへと発展していくのでした。

東西日報の黒沢がやってきた。
そのまえに、別の社員が来ていて
伝助は口頭で記事を書かしていた。
黒沢が横に座ってその内容を
聞いた。

『蓮子、おまえには何不自由ない生活を
させた。勉強もさせたし
こずかいも、ほしいだけくれてやった。
俺は田舎もんの無教養もので文学の
世界はわからないから歌集のことも
なにひとつわからず金を出した。
おまえみたいなわがままなお姫様を
受け入れようと努力したのは
嘉納家の人間たい。』

「嘉納さん、この反論を手記として
連載しましょうか?」
山元という記者が言ったが
黒沢は「このような反論文は
新聞に公開するべきことではない」
と、反対した。
「伝助の名前を貶めるものだ。
絶縁状も蓮子が載せたものではない」と
黒沢は言う。
反論文は載せるべきではないと
主張した。
伝助は考え直して反論文は書かないと
いった。そして出て行った。

これは最高のネタなのにと言う山元に
黒沢は僕たちにはほかに記事にすべき
ことがあるでしょうといって
出て行った。
タミは山元にそっといった。
「反論を書いてください。言われっぱ
なしでは筑豊の男たちの気がおさまらない。
あのお姫様にいいたいことがある。
取材に応じます」と。

その反論記事は新聞に載った。
花子はそれをみて驚いた。
お金のことばっかりだった。

龍一は、それを読んだ。
『おまえに人の妻としての資格が
ないことは紛れもない事実だ』と
「自分は一切悪くないとでも
いうのか・・・。」

蓮子は、「そんなに怒ることでは
ないわ」と笑った。
「すべてこうなることは承知の上よ」
という。
「そして朝食にしましょう」という。
「このお芋を焼いた料理が気に入った
わ。」
焼き芋である。
「いまお茶を入れるわね。」

「結納金だのおこずかいだの
出版費用だの・・お金事ばかり。」
と醍醐は花子の家で新聞を読んで
怒っていた。
花子は、「伝助の愛情表現は
うまくなく、お金でしか表現できない
ひとではないのか」と、いった。

醍醐は蓮子はぜいたくな暮らしがしたくて
石炭王と結婚したのではと
おもっていたという。
それは誤解だと記事を読んでわかったらしい。
「蓮子様はお家の犠牲になっていたのね。

きっとこの十年帰るところがなくて
遠い福岡でさみしい思いをしていた
のでしょう」と醍醐。

花子は、蓮子と東京で再開を
したときの話をした。
「修和にいた半年間だけが宝物の
ような時間だったと蓮子がいっていた」
と。
醍醐はその話を聞いてよけい蓮子を
不憫に思った。
「私ももっとあの方にやさしくして
上げればよかった」という。
あのころ、蓮子を理解できず、かえって
蓮子に花子を取られたと思ったと
いう。
「花さんはは蓮子様の孤独や寂しさをほっておけ
れなかったから優しくされたのね」と
いった。
「花さんと蓮子様はやっぱり腹心の友よ。」
花子は、「醍醐のことも友達だと
思っている」という。「最初から助けてもらった」
と・・。醍醐も花子からいつも勇気と元気を
もらっていたのよと言って笑った。
その様子を歩をあやしながらみていた
村岡父は、「女学校の友達と
いうのは謎だな~~:といった。
「最初は怒っていて
つぎは、泣いていて
今見たら笑っているからな・・」
という。

村岡父の横には吉太郎がたっていた。
いくら呼んでもでてくれないので
村岡父が出てきてくれたと。
また新聞記者が押しかけているのではと
思ったので気になったという。

醍醐は、「頼もしいお兄様ですね」と
いって帰ろうと玄関へ行った。

そして、立ち止まってつぶやいた。
「蓮子様は今幸せなのかしら?」
花子は昔聞いたことがあると
いった。
一度でいいから本気で誰かを
愛したいといっていたことを。
醍醐は驚いた。
とにかく早く蓮子を探そうといって
帰って行った。
吉太郎はそれを影で聞いていた。

そして、帰ると言って花子に気を付けて
といってでていった。
帰りながらも振り返り
そっと玄関にメモを残した。

嘉納家では黒沢は伝助に、新聞社を去ること
にしたという話をした。
その原因は絶縁状と反論のことだった。

話題性ばかりを集める新聞社のやり方
にほとほと愛想が尽きたという。
反論の掲載を抑えられなかった
ことをわびた。
「これで、逆上した連中は気が済んだ
だろう」と伝助は言った。
「これでよかったんだ」と。

そこに葉山伯爵が来た。
伝助は立って迎えた。

「嘉納さん、このたびは妹の不埒な
行為であなたの名誉までも傷つけて
しまってなんとも、申し訳ありません
でした・・」
そういって、いきなり土下座をして
「申し訳ありませんでした」と
大声でわびた。

「なぜ死んでくれぬのか
なぜ、尼寺へ入れなかったのかと
悔やまれて悔やまれて
必ず蓮子を連れ戻しますのでどうか
今しばらくご容赦ください」

といった。

黒沢も
伝助もタミも
声がなかった。

その夜のことだった。
花子のもとに帰ってきた
英治が玄関にあった吉太郎
のメモを渡した。
それは、蓮子の住所だった。
花子は、驚いた。


★ごきげんよう

さようなら・・・。

****************
反論記事はあほらしくて
書くほどの内容でもないし
書けば書くほど、レベルが低い
どこの家にでもある夫婦喧嘩
だとわかる。
が・・・
それをしないと伝助側の人間が
収まらないからと伝助はいう。
伝助の悲しさが伝わってきた。
それとともに、醍醐には理解できなかった
蓮子の悲しみや孤独がこの新聞掲載で
わかったという。
思うがままに生きてきた醍醐にとって
蓮子はもっとわがままに生きているものと
思っていたのに、こんな悲しい人だとは
知らなかったと、反論記事のよさを
たたえた。
吉太郎が明かした蓮子の住所。
これで花子が蓮子とあうことが
できるのでしょうか。
葉山伯爵の部下も蓮子を探して
いるけど・・。花子が動いて
かえって蓮子が危険になるのではと
思ったりしますが・・・。
葉山伯爵の様子から探し出したら
蓮子は連れ戻されて、とんでもない
事になりそうですが。