あなたがいる限り4

『たらちねの母と呼ばれてこの家に
わが最愛は満ち溢れけり・・花子』

★花子と英治に元気な男の子が誕生しました。
名前はあゆむです。(歩)
「かわいい子供だね~~~」と吉平。
「あゆむ、おじいちゃんとおばあちゃんだよ。」
と花子。
「あゆむ、よーく生まれてきたね~~~」とふじ。

吉平、ふじは甲府からあゆむの顔を
見にきていた。

「あゆむ、
ぐっど もーんぐ
ぐっど あふたぬーん
ぐっど いぶにんぐ・・・じゃ~~」
吉平は歩に話しかけた。
「いまのが英語ちゅうことや・・・
あはははは・・・」

吉平とふじは、夢中になってあやして
いたその時だった。

「お父さん、その子は男の子だから
花と同じ女学校へは行けれませんよ。」

「うん?」

振り返ると吉太郎だった。
ふたりはびっくりした。
「おかあ、げんきそうじゃんけ・・
7年ぶりじゃね。」
吉太郎はいった。
その夜、吉平は息子と飲みかわしながら
談笑していた。
軍ではどんな仕事をしているのかと
吉平は聞く。
「軍の機密だから話せませんが、雑用です。」
「そうか、どんな仕事でもこぴっとして
偉くなれよ。」
「はい、そのつもりです。」
「あはははは・・・」
英治は、「打ち解けてよかった」と
いう。
★吉太郎の父への礼儀正しさが気になる
花子でした。

遅くまで翻訳をしている花。
そこへ吉太郎が入ってくる。
「しごとか?」
「うん、あゆむがおとなしくしている間に
すこしでもやっておこうと思って。」
「子育てに仕事。花も大変だな。」
花子は、ちっとも大変じゃないといった。
「子育ても仕事も楽しくやっていること
だから・・・。」
吉太郎は、花子の机の上に会った
王子と乞食の原書を見た。
「これが、王子と乞食の本か?」
「そうなの、英治さんの弟さんに
もらったの。」
吉太郎はぺらぺらとめくった。
「おらには、さっぱりわからん。
でも毎回楽しみにしているだよ。
がんばれっし。」

「あにやん、読んでくれたのけ?
憲兵さんも童話読むんだね。」

吉太郎は明日も早いからと
帰って行く。
「村岡さん、しばらく両親がお世話に
なります。よろしくおねがいします。」

「こちらこそ。」

「吉太郎、体に気を付けるだよ」
「大丈夫だよ、おかあ。」

「あにやん、また遊びに来てくりょ」
と花子。
「お店にも来てくりょ」、とかよ。
「ああ」、と答えて吉太郎は帰って行った。


「見違えるほど立派になったな」と
吉平はつぶやいた。

数日後、村岡家にまたもやめずらしい
お客様が来ました。

「醍醐さん、いらっしゃい。」
「花さん、ごきげんよう。」
「ごきげんよう・・」と花。

醍醐は、案内してきた客を
紹介した。
「どうぞ・・・。」
「グッドアフタヌーン!!」

入ってきたのは、ブラックバーン校長と
スコット先生だった。

花子は驚いた。

「お元気でしたか?花。」と
校長は言う。
スコット先生は、「坊やに贈り物を
もってきたわ」といった。
もちろん英語で。

「ありがとうございます」(英語)
ブラックバーン校長は、花が夢をかなえたこと
を大変喜び、ほめたたえた。
「修和女学校の小さい人たちはみんな
花さんの童話を読んでいるのですって。
花さんに会いたいというのでお連れしたの」
と醍醐はいった。

花子は喜んだ。
「どうぞ、中へ。」

「かわいいわ~~」と
校長とスコット先生はあゆむを
あやした。

花子は醍醐に原稿を渡した。
締め切りを守ってくれる花子に
醍醐は感謝した。

校長先生たちがあゆむをあやして
いたが、あゆむが急にぐずり
だした。
花子はあゆむを抱くと
「おっぱいでもないし
おしめでもないし」と
悩んだ。

すると校長は大きな声でいった。
「Go to bed!!!!」

あっけにとられる花子と醍醐。
あゆむは眠たかったのだ。
花子は校長先生に「ありがとうございます」と
お礼を言うと
校長先生は、「何でもお見とうしよ。」
といった。
帰る時間になって玄関まで見送った
花子だった。
空を大きな音を立てて
飛行機が飛んで行った。

校長は花子に言った。
「これからの飛行機の進歩は世界を平和に
みちびくか?戦争をもっと悲惨なものに
するか・・・どちらかです。
われわれ人類はこの飛行機をどのように使おうと
しているのか。平和か、戦争か
それは我々の上にかかっている課題だという
事をよく考えておきなさい。

花、神様から授かった命を大切になさい。」
「はい、校長先生。」
「さようなら、花、またお会いしましょう。」
とスコット先生。

「ごきげんよう」と醍醐さん

「ごきげんよう」と花
こうして、三人は帰って行った。

花はつぶやいた。
「神様からさずかった命を大切にします。」
(英語で)

そのころ、吉平とふじはかよの働く
カフェに来ていました。
ふじは、「ここはおらたち百姓のくるところ
ではないのは?」と聞く。
「いいに決まっているだろ?」と吉平。
そこに郁弥がきた。

「これはこれは、お父さん、お母さん
おそろいで。」

「郁弥君!」
「娘がお世話になっています。」

吉平とふじは挨拶をした。

郁弥は二人の前の椅子に座った。
そして、時計を見た。
「いい時計をしているね?」と
吉平は言う。
「さすがですね。ロンドンで買いました」と
郁弥がいった。
そして「、甲府での結婚式は感動的だった」と
いった。
「実は…・ぼくも甲府で結婚式を
上げたいと思っています。」

吉平は「そりゃいい、相手はどんな御嬢さんで?」
と聞いた。
郁弥は、じっと働いているかよをみた。
吉平とふじはその視線を追った。

そして、驚いていった。

「て!!!」
「かよ?????」

郁弥の顔を見ると
郁弥は笑っていた。

その店には龍一が来ていた。

友人たちも一緒だった。
「やるんだな?」と友人
「ああ、やる」。と龍一。
「計画はすでに練っている。
後は彼女が東京に来るとき
実行に移すだけだ。」

「持たない者が持つ者から奪う」
・・・・友人はうれしそうにいう。

「いつだ?」もう一人が聞いた。

「3日後だ」と龍一。

「だが、石炭王から訴えられたら?」と
先の友人が聞く。

「そんなことが怖くてあの人を愛せるか。」
と龍一。

さて、福岡の嘉納邸では。
「はなちゃんとこに祝いを買うたか?」と
伝助が聞く。

「ええ。」

「うれしそうだな?」

「だって三日後には花ちゃんと赤ちゃんに
あえるのですもの。」
蓮子はうれしそうに庭に面したガラス戸を
思いっきり開けた。

★花子の全く知らないところでついに蓮子と
龍一の駆け落ちが実行されようと
しているのでした。
ごきげんよう

さようなら

*******************
吉平とふじの
じいさんばあさんぶりが、普通で
かわいいです。
吉太郎は、なにかさぐっているので
しょうか?
花子の原書を見ていたとき、そんな
気がしましたが。
王子と乞食の話は、それほど政治的な
思想的な問題はなかったものと
思いますが。
そして、吉太郎の吉平に対する礼儀正しさ
は、いったいなに?でしょうか。

あゆむくんってかわいいです。
校長先生が、飛行機は平和をもたらすか
戦争を拡大させるか。その選択は
人間にかかっているといいました。
この時代はどうだったのかな。
すでに外国人ということで先生たちは
目をつけられていたのでしょうか。
授かった命を大切にしなさいという
言葉を花子はかみしめます。

花子の幸せはこのあたりが
絶頂だったのかもしれません。