あなたがいる限り3
「生涯愛することを誓いますか」
「はい、誓います」
「誓います・・」
★甲府で祝言を挙げてから一年半たち
ました。
1921年大正10年夏。
★安東花あらため、村岡花子です。

「いい天気だね。」
花子は突き出たおなかをさすりながら
いった。
赤ちゃんに話しかけているらしい。
★あら、もうおめでたですか?

そして、花子は村岡英治・花子と書かれて
いる表札をみて、うれしそうになぞった。

「花子・・・ふふふ・・・」

台所を英治がやっている。
花子も仕事をしているし、妊娠中なので
気を使っているのか、もともと
まめなのかわからないけど・・。

花はふじからの手紙を読んでいた。
赤ちゃんの誕生を心から待っている
という内容だった。
そのうえ吉平は生まれてくる子供の
名前まで書いてよこしてきた。
うめ、つゆ、えつ、きみ、ちよ
よし、しづ、さくら・・・。

花は首をかしげた。
「手紙なんだって?」
「おとうが子供の名前考えたって。」
英治は、手紙を見た。
「女の子の名前ばっかりだね。」
という。

「孫も修和女学校にいれたいのですって。
どっちが生まれてくるのかわからないのに
こまったおじいやんですね~~~」と
花子はおなかに向かって話した。

「でも、あなたが女の子だったら名前には
子をつけるわ・・。」
英治は笑った。

その時、「邪魔するよ」と言って玄関が開いた。
村岡父だった。
二人は玄関に出迎えた。
「父さん、何か急ぎの用でも?」
「いやぁ、天気が良かったから散歩の
ついでだよ。」
「そういって毎週日曜日に来ますね。」
「たまたまだよ、たまたま。」

居間にあがった父は「体の調子はどうかね?」
と聞く。
花子は赤ん坊がよく動きますといった。
夜でもよく動くので起こされますという。
村岡父は「まず、あと取りとして男の子を生んで
ほしい」といった。
「どっちでもいいからね~~
元気で生まれておいで~~」
と英治は子供に話しかけた。
「生まれておいで~~」と花子も言った。

父は、咳払いをした。

花子は「お茶もお出ししなくてすみません。
いますぐ、いれます。」といって立ちあが
ろうとしたけど、英治は、自分がすると
いった。
「君は原稿を書かなくては。
醍醐さんが取りに来るから、締切厳守だ」
という。
花子は、仕事を思い出し、父に「せっかくいら
してくださったのに、すみません。ゆっくりして
下さいね」という。

父は、「仕事をやめればすべて解決する」と
いった。
王子と乞食の翻訳は花子にしかできないと
英治は言った。
★英治の協力もあり、花子は臨月まで翻訳を
続けておりました。

ドミンゴでは、その村岡父はコーヒーを注文
した。
かよは、「今日なお疲れのようですね」という。
「ちょっと、あてられてしまってね。
いつまでも新婚気分でこまるよ。
きみのおねえやんは、きっと出産の最中でも
翻訳をしているのではないかな」という。
かよは笑った。
「英治も英治だ。村岡印刷の次期社長とも
あろう男がしりに敷かれて!!!」
と怒っている。
「そんなこといってもまた遊びに行くのですよね」
とかよ。
「もう行かないさ」というが
かよは「すぐにおいしいコーヒーをお入れします」と
いった。

その店の隅っこに龍一がいて、蓮子からの手紙を
読んできた。
「龍一と一緒に居れないのは、つらい。生きている
気がしない。あなたにこのまま
会えないのでは生きていけません。
そんな私を早く救い出してください」とある。
龍一は、考え込んだ。

それから数日が立ち・・・

蓮子の部屋に女中のすずがきた。
すずは蓮子によくしてくれる若い女中
だった。
蓮子は、あわてて部屋のドアを開けた。
「あの人から手紙が来たのか」と
聞く。
ところが、手紙ではなく、本人が来ていた。
「久しぶりですね・・・・。」
と龍一。
「どうぞ・・・・」と蓮子は言った。

蓮子は自分のことなど忘れたのかと
思ったというが龍一は残念ながら
忘れられなかったという。
そして手紙をとりだして、読みましたと
いった。
龍一は「暇つぶしに僕をからかって
いるのですか」
といった。
「そんなことを聞きにわざわざいら
したの?」
部屋の外ではすずがたっていたので
タミが声をかけた。

「なーんばしよっと??」
「なんも・・・」とすずが答えると
部屋の中から大きな音楽が聞こえてきた。
スズとタミは驚いた。
タミは去って行った。

龍一は、「今日ここに来たのはあなた
を連れ出すつもりです」という。
「あなたの本当の気持ちは」と聞いた。
「その手紙の通りです。あなたのそばで
生きられるなら私はすべてを捨てます」。
「それはどういうことかわかっていますか?」
「わかっています。」
蓮子は指輪をはずして
「宝石も着物をいらない家も名前も捨てます
あなたのそばで生きられるなら・・
だから今すぐ私をここから連れ出して」
といった。
龍一は蓮子を抱きしめ、「あなたを試すような
ことを言ってスミマセン」と謝った。
「ここから逃げましょう。
そして二人で暮らしましょう。
けど、いますぐではありません。
今逃げたところですぐに捕まるからです。
あなたはここに連れ戻され僕は牢屋に
入れられる。そんなことにならないためにも
準備が必要だ・・・」といった。

「僕たちは必ず一緒になれる・・だから
もう少しだけ我慢してください。」
蓮子は、じっと龍一を見てわかったわと
いった。

ある日のこと、玄関を出た花子は
蓮子がやってくるのを見た。

蓮子は、傘をさして、伝助と一緒だった。
蓮子は、結婚式の写真を見て
「はなちゃんとってもきれい」といった。
「村岡さんはやっぱりはなちゃんがであう
べき人だったのね」といった。

そして、出産まぢかの花のおなかを見て
大きなおなかだといった。
花子は無事にうめるかどうか
ちゃんと育てられるかどうか
自信がないという。

蓮子は、小さい妹さんをこぴっと
育てた花だから大丈夫だといった。

「でも、産むときは覚悟してね。
ものすごく痛いから。」

「ええ?」と花は言うが

「よし、安産祈願だ」と伝助は
花子のおなかに手を当てて
奇声を上げた。

「ええ??」と驚く花子に「大丈夫だ」と
伝助はいった。
「これで安産だからな」という。
いままで安産祈願をして安産だったと
伝助が言うので花子はそんなにも
たくさん安産祈願をしたのですかと不思議
そうにいった。
蓮子は外にたくさん女性がいるからと
妾がいることを話した。
そして、赤ちゃんが生まれたらまた会いに
来たいという。
伝助も納得した。
「生まれたら、すぐに連絡してね」と蓮子は言った。
「花子はぜひいらしてください」と
いった。
「わたし、元気な赤ちゃんを産むわ。」
★このとき、蓮子が
駆け落ちの計画を立てていたことなど
知る由のない花子でした。

ごきげんよう

さようなら。
*************
英治さんはまめなんですね・・・。
花子に代わって台所をするとは。
しかも、あの洋装でぴしっと
きめていた英治が和服です。
やはり、家では和服なのかもしれ
ません。

それにしても龍一と蓮子。
本気なの?
伝助の優しさは蓮子にとっていらないもの
なのでしょうか?

龍一は帝大を卒業したので
しょうか???
まだ学生??
蓮子はきっと花子が子供を産んだと
しって、東京へ逃げるのではないかと
思いますが。

この事件・・有名だったらしいですね。
どうなるのでしょうか。