あなたがいる限り1
英治は、花にプロポーズをした。
花は英治と結婚することを受け入れ
甲府に一緒に帰ることにした。
大晦日、吉平とふじのもとへ花から
電報が届く。
「会わせたい人がいます」
その文面にふじは緊張した面持ちを
した。
やがて、二人が帰ってきた。
花は緊張して、ただいまという。
そして、英治を招き入れた。
「どうぞ。」
「お邪魔します。」英治が入ってきた。
「父と母です。」
「はじめまして、村岡英治です。」
「花の母です。」とふじは明るくいう。
「花の父です。」と、ちょっと重々しく
いった。
「お隣の木場リンです。」リンは
目を見開いて英治を見ながら言った。
「朝市のおかあさんだよ」と花は説明した。
「そうですか・・・。」知っている朝市の母と
いうことで英治は微笑んだ。
英治は家をみまわして、「花子さんはこの家で
そだったんですね」、といった。
社長令息の英治にとって農家は
珍しかったのかもしれない。
吉平は、「花子?」
ふじは「花子・・・」
リンは、「花ずら」という。
英治は、手に持っていたおみやげの
風呂敷を開けた。
「これ、つまらないものですが・・・」
出してきたのはウイスキーだった。
その夜、ごきげんにお酒を飲みかわす
吉平と英治だった。
「ほうけ、お宅は印刷会社をやっているのけ?」
吉平は、いろいろと聞く。
だったら、花の所の本も印刷している
のかとか、花の翻訳した王子と乞食の
挿絵は英治が書いたというと
驚きながらも大いに喜んだ。
「村岡さん飲めっし!!!」と吉平は
ごきげんだった。
英治は、「今日は大事なお話が合って
きました。その・・・実はですね・・」
英治がまどろっこしそうに
しているので、吉平は「村岡さん・・
もう、英治君でいいか?」という。
「はい・・。」
「俺は君のことが気に入ったぞ。
子どものころから本が大好きな
花にぴったりだ。花を嫁にもらって
くりょ、この通り」と頭を下げた。
ふじは、あわてて、「おとうが先に
いったらだめじゃんか」という。
「村岡さん困ってるじゃん」、と花。
英治のほうが先に、花子さんを下さい
というべきなのにね。
「花から電報をもらったときには
いったいどんな男が来るのかと
思ったけど英治君みたいな青年で
よかった。あはははは・・・」
なごやかな雰囲気だったが
吉平が「全く東京にはひでー男が
いるからな」、といったので
ちょっと空気が固くなった。
ふじは、吉平をだまらそうとして
「あんた。そのぐらいにしておいたら。」
という。
吉平は無視して、「花は英語の辞書をもらった
男からひでー目にあったらしい。」
といった。
「すまんね、このひとよっぱらっちまって。」
とふじは謝った。
英治は、いたたまれなくなった・・・。
外は雷と雨だった。
夜も更けて吉平と英治はよいつぶれて
寝てしまった。
ふたりに布団をかけながら
ふじは花に言った。
「村岡さん、花を花子と言ってくれるん
だね・・よかったね。いいひとにめぐり
あって・・ふふふ。」
ふじは、花に改めに聞いた。
「花、辞書の人は忘れたね?
村岡さんとこぴっと幸せになれっし。」
花は「うん」、といった。
ただ、花はここに至るまでの
村岡とのことを話をしていなかった
ことに不安を持った。
寝ていると思った英治はその話を
聞いていた。
よく晴れた翌朝だった。
朝餉の前に英治は、「もう一度
実は、お話があります」という。
吉平は「昨夜は飲んで酔っ払ったけど
花を嫁にくりょという話は
こぴっと覚えているだ」といった。
「あははは・・・・」と笑う吉平に
英治は、緊張していった。
「実はお二人に黙っていたことが
あります。」という。
花は、「その話は・・・」と止めようと
したが、英治は「正直にいったほうが
いい」という。
花はじっと英治を見たがうなずいた。
「花子さんに英語の辞書を送った男は
僕なんです。」
「て!!!」
「て!!!!」
吉平とふじは、いっせいに驚いた。
「いってぇどういうことだ?」と吉平は
聞く。
「そのひとは、結婚してるって。」
とふじはいう。
英治は、すべてを話し始めた。
「僕には妻がいました。半年前に
病気で亡くなりましたが・・・
花子さんと初めて会ったのは花子さんが
まだ、女学校に通っていたころです。
それから妻に出会い結婚しました。
花子さんと再会したのは去年の春。
花子さんが上京して聡文堂で働き始めた
ときです。
僕は、妻がいる身でありながら
花子さんのことを好きになってしまい
ました・・・・。」
「ちがう、おらが悪いの。」花は言った。
「英治さんが結婚してるとは知らないで
好きですって言ったから・・。」
ふじは、息を詰めて聞き吉平は
「それで?」とイラついて聞いた。
英治は、「僕はなんとか花子さんへの思いを
忘れようとしました。
でも妻にはわかったようで離婚したいと
いわれました。
離婚してすぐに妻はなくなりました。」
「ええ???」ふじは驚いた。
「ダメだ!!この結婚は認められん。
離婚しただけならいいだけど
奥さんを亡くしている男とは
一緒になっても幸せになれん!!!」
花は、「どうして?」と聞く。
「亡くなった奥さんへの思いはこの人の
中に生き続ける。
こんな男と一緒になっても花は幸せに
なれん・・。」
花は英治を見た。
英治はどう反論もできない。
花はいった。
「おとう、おらはそれでもいい。」
そのことばにふじは、「花!!」と
泣きそうな声で叫んだ。
「亡くなった奥さんのことを全部含めて
おら今の村岡さんを好きになったから。
おら、自分はもっと強い人間だと
おもっていた。子供のころからちっと
ぐらい辛いことがあっても心を強く
もって人前では笑っていた。
んだけど、村岡さんと会ってから自分は
なんて弱い人間だろうと思った。
泣くほどのつらい思いも
飛び上がるほどの楽しい思いも
どうしようもないほどのときめきも
全部村岡さんから教えてもらった。
村岡さん好きにならなかったら
こんな自分に出会えなかっただ。
おとう!
おかあ!
おら、村岡さんと一緒に生きていきたい。
結婚させてくださいっ!!!」
黙って静かに聞いていた英治は、花が
頭を下げたので
一緒に、「お願いします!」と大きな声で
いった。
「必ず!花子さんを幸せにします!!!!」
ふじは、頭を下げる二人を見て
思い出した。
そして笑いながら、いった。
「自分たちもそうだった」と・・・。
若かりしとき父、周造にふたりしてお願いをした
時のことがあった。
「おとうやん、おねがいします、この人と
結婚させてくりょ!」
「お願いします!!」
「おとうやんは本当に頑固で・・・」とふじは
いう。
「本当に許してくれたのはおじいやんが
亡くなる前だった。」と吉平。
「そんなに待っていたら
花はおばあやんになってしまう。
英治さん?
今のうちにもらってやってくりょ・・・・。
花のことしあわせにしてやってくりょ。」
吉平は
改めて言った。
「英治君、頼む・・・。」
英治は「はいっ」と答えた。
花は、
「ありがとう、ありがとうごいっす」
といった。
二人は、教会の本の部屋に行った。
「ここが、花子さんの一番好きな場所
ですか?」
「はい・・・。」
英治はぐるっと見回した。
「そうだ、花子さん、ここで結婚式を
やりましょう?」
「結婚式?」
「はい、この甲府で。」
★甲府で結婚式?
さて、どんな結婚式になるでしょう。
ごきげんよう
さようなら・・・。
*************
あの・・・
英治君って
村岡印刷の会社の
ちょっと西洋っぽい
おしゃれな事務所が似合う
と思っていたので
花の農家の雰囲気は
浮いていましたね・・・・。
あの小さな農家にこのような
大きな男性がスーツを着て座っているのは
なんとも・・間違って書いた絵を
見ているようでした。
ふじも吉平も花が失恋した相手と
まさか結婚するとは思っても
みなかったことです。
そりゃそうです。
英語の辞書の人は結婚していて
花は失恋したのですから・・・。
その相手がこうして花を嫁に欲しい
なんて・・・ね???
まさか・・・そんな展開に
なるはずは
ないのだけどね・・・。
で、さっきの話だけど、最後のシーンが
教会の本部屋だったけど。
明かりを取り入れる
ステンドグラスが村岡の雰囲気とあって
いるので、またほっとしました。
花は蓮子と言い
英治と言い
いつぞやは梶原と言い・・
恐ろしく、安東家の日常と掛けはなれた
雰囲気の人とお付き合いがあります。
それは花の才能のなせる業ではないかと
思いました。
英治は、花にプロポーズをした。
花は英治と結婚することを受け入れ
甲府に一緒に帰ることにした。
大晦日、吉平とふじのもとへ花から
電報が届く。
「会わせたい人がいます」
その文面にふじは緊張した面持ちを
した。
やがて、二人が帰ってきた。
花は緊張して、ただいまという。
そして、英治を招き入れた。
「どうぞ。」
「お邪魔します。」英治が入ってきた。
「父と母です。」
「はじめまして、村岡英治です。」
「花の母です。」とふじは明るくいう。
「花の父です。」と、ちょっと重々しく
いった。
「お隣の木場リンです。」リンは
目を見開いて英治を見ながら言った。
「朝市のおかあさんだよ」と花は説明した。
「そうですか・・・。」知っている朝市の母と
いうことで英治は微笑んだ。
英治は家をみまわして、「花子さんはこの家で
そだったんですね」、といった。
社長令息の英治にとって農家は
珍しかったのかもしれない。
吉平は、「花子?」
ふじは「花子・・・」
リンは、「花ずら」という。
英治は、手に持っていたおみやげの
風呂敷を開けた。
「これ、つまらないものですが・・・」
出してきたのはウイスキーだった。
その夜、ごきげんにお酒を飲みかわす
吉平と英治だった。
「ほうけ、お宅は印刷会社をやっているのけ?」
吉平は、いろいろと聞く。
だったら、花の所の本も印刷している
のかとか、花の翻訳した王子と乞食の
挿絵は英治が書いたというと
驚きながらも大いに喜んだ。
「村岡さん飲めっし!!!」と吉平は
ごきげんだった。
英治は、「今日は大事なお話が合って
きました。その・・・実はですね・・」
英治がまどろっこしそうに
しているので、吉平は「村岡さん・・
もう、英治君でいいか?」という。
「はい・・。」
「俺は君のことが気に入ったぞ。
子どものころから本が大好きな
花にぴったりだ。花を嫁にもらって
くりょ、この通り」と頭を下げた。
ふじは、あわてて、「おとうが先に
いったらだめじゃんか」という。
「村岡さん困ってるじゃん」、と花。
英治のほうが先に、花子さんを下さい
というべきなのにね。
「花から電報をもらったときには
いったいどんな男が来るのかと
思ったけど英治君みたいな青年で
よかった。あはははは・・・」
なごやかな雰囲気だったが
吉平が「全く東京にはひでー男が
いるからな」、といったので
ちょっと空気が固くなった。
ふじは、吉平をだまらそうとして
「あんた。そのぐらいにしておいたら。」
という。
吉平は無視して、「花は英語の辞書をもらった
男からひでー目にあったらしい。」
といった。
「すまんね、このひとよっぱらっちまって。」
とふじは謝った。
英治は、いたたまれなくなった・・・。
外は雷と雨だった。
夜も更けて吉平と英治はよいつぶれて
寝てしまった。
ふたりに布団をかけながら
ふじは花に言った。
「村岡さん、花を花子と言ってくれるん
だね・・よかったね。いいひとにめぐり
あって・・ふふふ。」
ふじは、花に改めに聞いた。
「花、辞書の人は忘れたね?
村岡さんとこぴっと幸せになれっし。」
花は「うん」、といった。
ただ、花はここに至るまでの
村岡とのことを話をしていなかった
ことに不安を持った。
寝ていると思った英治はその話を
聞いていた。
よく晴れた翌朝だった。
朝餉の前に英治は、「もう一度
実は、お話があります」という。
吉平は「昨夜は飲んで酔っ払ったけど
花を嫁にくりょという話は
こぴっと覚えているだ」といった。
「あははは・・・・」と笑う吉平に
英治は、緊張していった。
「実はお二人に黙っていたことが
あります。」という。
花は、「その話は・・・」と止めようと
したが、英治は「正直にいったほうが
いい」という。
花はじっと英治を見たがうなずいた。
「花子さんに英語の辞書を送った男は
僕なんです。」
「て!!!」
「て!!!!」
吉平とふじは、いっせいに驚いた。
「いってぇどういうことだ?」と吉平は
聞く。
「そのひとは、結婚してるって。」
とふじはいう。
英治は、すべてを話し始めた。
「僕には妻がいました。半年前に
病気で亡くなりましたが・・・
花子さんと初めて会ったのは花子さんが
まだ、女学校に通っていたころです。
それから妻に出会い結婚しました。
花子さんと再会したのは去年の春。
花子さんが上京して聡文堂で働き始めた
ときです。
僕は、妻がいる身でありながら
花子さんのことを好きになってしまい
ました・・・・。」
「ちがう、おらが悪いの。」花は言った。
「英治さんが結婚してるとは知らないで
好きですって言ったから・・。」
ふじは、息を詰めて聞き吉平は
「それで?」とイラついて聞いた。
英治は、「僕はなんとか花子さんへの思いを
忘れようとしました。
でも妻にはわかったようで離婚したいと
いわれました。
離婚してすぐに妻はなくなりました。」
「ええ???」ふじは驚いた。
「ダメだ!!この結婚は認められん。
離婚しただけならいいだけど
奥さんを亡くしている男とは
一緒になっても幸せになれん!!!」
花は、「どうして?」と聞く。
「亡くなった奥さんへの思いはこの人の
中に生き続ける。
こんな男と一緒になっても花は幸せに
なれん・・。」
花は英治を見た。
英治はどう反論もできない。
花はいった。
「おとう、おらはそれでもいい。」
そのことばにふじは、「花!!」と
泣きそうな声で叫んだ。
「亡くなった奥さんのことを全部含めて
おら今の村岡さんを好きになったから。
おら、自分はもっと強い人間だと
おもっていた。子供のころからちっと
ぐらい辛いことがあっても心を強く
もって人前では笑っていた。
んだけど、村岡さんと会ってから自分は
なんて弱い人間だろうと思った。
泣くほどのつらい思いも
飛び上がるほどの楽しい思いも
どうしようもないほどのときめきも
全部村岡さんから教えてもらった。
村岡さん好きにならなかったら
こんな自分に出会えなかっただ。
おとう!
おかあ!
おら、村岡さんと一緒に生きていきたい。
結婚させてくださいっ!!!」
黙って静かに聞いていた英治は、花が
頭を下げたので
一緒に、「お願いします!」と大きな声で
いった。
「必ず!花子さんを幸せにします!!!!」
ふじは、頭を下げる二人を見て
思い出した。
そして笑いながら、いった。
「自分たちもそうだった」と・・・。
若かりしとき父、周造にふたりしてお願いをした
時のことがあった。
「おとうやん、おねがいします、この人と
結婚させてくりょ!」
「お願いします!!」
「おとうやんは本当に頑固で・・・」とふじは
いう。
「本当に許してくれたのはおじいやんが
亡くなる前だった。」と吉平。
「そんなに待っていたら
花はおばあやんになってしまう。
英治さん?
今のうちにもらってやってくりょ・・・・。
花のことしあわせにしてやってくりょ。」
吉平は
改めて言った。
「英治君、頼む・・・。」
英治は「はいっ」と答えた。
花は、
「ありがとう、ありがとうごいっす」
といった。
二人は、教会の本の部屋に行った。
「ここが、花子さんの一番好きな場所
ですか?」
「はい・・・。」
英治はぐるっと見回した。
「そうだ、花子さん、ここで結婚式を
やりましょう?」
「結婚式?」
「はい、この甲府で。」
★甲府で結婚式?
さて、どんな結婚式になるでしょう。
ごきげんよう
さようなら・・・。
*************
あの・・・
英治君って
村岡印刷の会社の
ちょっと西洋っぽい
おしゃれな事務所が似合う
と思っていたので
花の農家の雰囲気は
浮いていましたね・・・・。
あの小さな農家にこのような
大きな男性がスーツを着て座っているのは
なんとも・・間違って書いた絵を
見ているようでした。
ふじも吉平も花が失恋した相手と
まさか結婚するとは思っても
みなかったことです。
そりゃそうです。
英語の辞書の人は結婚していて
花は失恋したのですから・・・。
その相手がこうして花を嫁に欲しい
なんて・・・ね???
まさか・・・そんな展開に
なるはずは
ないのだけどね・・・。
で、さっきの話だけど、最後のシーンが
教会の本部屋だったけど。
明かりを取り入れる
ステンドグラスが村岡の雰囲気とあって
いるので、またほっとしました。
花は蓮子と言い
英治と言い
いつぞやは梶原と言い・・
恐ろしく、安東家の日常と掛けはなれた
雰囲気の人とお付き合いがあります。
それは花の才能のなせる業ではないかと
思いました。
