最高のクリスマス5
クリスマスパーティが終わった
ドミンゴで、朝市と英治は
酔いつぶれた花を横において
話をしていた。
「花に英語の辞書を送ったのはあんたですか?」
と朝市が言う。
「あんたに言っておきたいことがある。
花は・・・
甲府に帰ってきたとき、あの辞書を捨てようと
したのです。
あんな大事なものを投げ捨てよう
とするなんてびっくりして止めました。
あんときの花はおらがみたこともないような
悲しい目をしていたです。
あの辞書をくれたあんたのことを
必死で忘れようとしていたです。」
英治は、真剣に聞いていた。
「今は、元気になってもとの花に戻った
ように見えるけど・・
やっぱりおらには違って見えます。
いくら明るく笑っていても
昔の屈託のない笑顔の花とは違います。
花はきっとおらの知らない
花になってしまった。
・・・・・
あんたのせいじゃないですか?
あんたが花のことを好きなら花の気持ちを
こぴっと受け止めてくりょ!」
「ちょっと待ってください。
どうしてそれを僕に言うのですか?
あなたは僕よりずっと彼女のことを
わかっている。
朝市さんこそ花さんのことを好きなんじゃ
ないですか?」
・・・・・・・
「はい、・・・・おらは花が好きです
子どものころから花はずっとおらのそばに
いました。いつか、おらの嫁さんになって
ほしいと思っていました。」
「そんなに思っているなら
あなたが彼女と結ばれるべきだ」
「まだわからんけ?
おらじゃだめじゃん
あんたじゃなければだめなんだ。」
寝ている花。
聞いているかよ。
朝市はお酒を飲んだ。
そして、「はぁ・・・・酔っぱらったぁ。
といって、武頑張っているから
帰る」といった。
かよは、「電車がないよ」と言った。
朝市はコートを着ながら
「歩いて帰る、ちょうどいい酔い覚ましだ」
といった。
そして、英治の背中に向かって
「花のこと、よろしくお願いします」と
頭を下げた。
ドアが閉まる音がした。
背中で朝市の気持ちを感じて朝市が去っていく
のも、感じた英治。
郁弥も、寝ながらそれを全部聞いていた。
翌朝となった。
ドミンゴに、武と朝市が朝食を
食べていた。
ふたりは皿まで食べる勢いだった。
「ここのライスカレーも
食べおさめじゃ。」
と武は食べながら言った。
かよは、「やっと甲府に帰るべか」と聞く。
「そんなにさみしいならもっといてやろっか?」
かよは、頭を振った。
そしてコップに水をついだ。
武と朝市は水をいきおいよく飲み干した。
そして、空になったカレー皿を前に
手を合わせて言った。
「ごちそうさまでした!」
武はかよに代金を渡した。
「つりはいらん、世話になったジャン」
「わぁ、武が初めてチップくれたじゃん。
ありがとう!」
武に続いて朝市も帰る格好でつづいた。
かよは、「お姉やんに会わんで帰るのか」と
きくが、「うん、いいだ。こぴっとがんばれと
かよちゃんからいっといてよ。」という。
かよは、「昨夜の朝市かっこよかったよ」という。
朝市は照れた。
「なんで?朝市のどこがかっこいいんだ?」と
武が聞く。朝市は「早く、汽車に乗り遅れるから」
と、武を追い立てて店を出て行った。
かよは、笑顔で送った。
★朝市が花のためにそんなかっこいいことを
してくれたなんて、露ほどもしらない
花でした。
聡文堂では、銀河の乙女の確認をしていた。
英治の挿絵だけである。
若干二日酔い気味の花だった。
案の定、さっぱり覚えていたない。
挿絵はきっといい絵が上がってくると
醍醐は言う。「そんな気がする・・・」と。
「安東さん」、郁弥が声をかけた。
「あとで、ちょっと話したいことがあります」と
いった。「兄のことで・・・。」
その頃英治は、真っ白な紙をまえに悩んでいた。
「銀河の乙女はだれの心にもいると思います。
英治さんの心にもきっといると思います・・・」
昨夜の醍醐の言葉が浮かんできた。
英治はエンピツを走らせた。
薄暗くなった時間のドミンゴでは、
花と郁弥がいた。
郁弥は、昨夜ここで朝市さんと兄が話を
しているのを聞いたという。
かよは、気を聞かせて「あのね、お姉やんは
寝ていたけど二人でお姉やんの話を
していただよ。」
といった。
花は、なるほどと納得して、それで?
と郁弥に聞いた。
「やはり兄とあなたは心が通じ合っていたの
ですね・・・。姉がなくなる前から。
姉も気が付いていました。」
かよは、「それでお姉さんは突然英治さんと
別れたいといいだしたのですか?」といった。
「姉の気持ちになるとあなたと兄が一緒に
なることは許せないのです。」
・・・・・
「そうだと思います。
私も自分のこと許せないのです。
正直に言います。お兄さんの離婚話を聞いたとき
一瞬だけ考えました。
一緒になれるのではと。
そんなことはもう絶対に考えません。
好きだとか、一緒にいたいとか
そんなことは甲州の山の中に捨ててきました
から!
どうか、安心してください。」
「・・・そうですか。」
「村岡さんとはいい仕事の仲間でいたいです。
いま、心からそう思っています。」
「そうですか・・・。」
郁弥はそう言って「わかりました」と
笑顔でいった。
花はまだ仕事が残っているからといって
帰って行った。
その夜英治は根を詰めて書き込んでいた。
花も、原書を前にペンを走らせた。
夜が白々と明けた。
英治がペンを置いたとき
明け方の鳥がないた。
聡文堂に、郁弥がきた。
英治が書いたという原稿をもって。
編集部はみんな集まった。
花は封筒から原稿をだして絵を見た。
「わぁ素敵・・・。」と醍醐。
「これなら、宇田川先生も気に入って
くれるわね。」と花。
その絵は空を飛ぶ少女だった。
「この絵は花さんよね?」と醍醐が言った。
「え?」
「だって想像の翼を広げているから・・。」
花はその原稿をまじまじとみた。
★英治の心の中にいる銀河の乙女と
いうのは、ひょっとして・・・
「て・・・・・!!!」
驚く花。
ごきげんよう
さようなら
****************
心の底を包み隠さず・・・
朝市と英治は話し合いました。
朝市はだれよりも花を理解していたけど
花にとって朝市は身近な存在すぎて
家族のようなものだったのでしょう。
よくわかりすぎて恋愛の対象にもならない
朝市と花。
だから朝市は花の気持ちが手に取るように
わかっていた。そしてあの辞書を送ったのは
英治だと気が付いた。
しかも、英治は花を花子さんと呼ぶ。
何者だと朝市は思ったはずだった。
だから気持ちをストレートに話すと
案の定・・・英治と花は・・・である。
しかし・・・
それに最初に気が付いたのはあの、香澄だった。
それを郁弥がしり、香澄の突然の離婚
申し立てとなった。
「あなたの心の中には私ではない女の人が
います。」
そう香澄は言った。
そして、静かに世を去った。
花は一緒になれるかもと少しは
思った。それは正直な気持ちだった。
だけど、ここで郁弥の話を聞けば
それは許されないことだと
花は知った。
いい仕事仲間で・・・いたい。
英治は渾身の力を込めて
銀河の乙女を書き上げた。
まるで・・・挿絵は
花のようだと醍醐が言った。
花のように自由に空を飛べる
ツバサをもっている少女が
英治の中にいる銀河の乙女だった。
そしてそれは・・・
安東花だったのである。
隠しきれない気持ちをどうするつもりなのか
英治と花・・・。
クリスマスパーティが終わった
ドミンゴで、朝市と英治は
酔いつぶれた花を横において
話をしていた。
「花に英語の辞書を送ったのはあんたですか?」
と朝市が言う。
「あんたに言っておきたいことがある。
花は・・・
甲府に帰ってきたとき、あの辞書を捨てようと
したのです。
あんな大事なものを投げ捨てよう
とするなんてびっくりして止めました。
あんときの花はおらがみたこともないような
悲しい目をしていたです。
あの辞書をくれたあんたのことを
必死で忘れようとしていたです。」
英治は、真剣に聞いていた。
「今は、元気になってもとの花に戻った
ように見えるけど・・
やっぱりおらには違って見えます。
いくら明るく笑っていても
昔の屈託のない笑顔の花とは違います。
花はきっとおらの知らない
花になってしまった。
・・・・・
あんたのせいじゃないですか?
あんたが花のことを好きなら花の気持ちを
こぴっと受け止めてくりょ!」
「ちょっと待ってください。
どうしてそれを僕に言うのですか?
あなたは僕よりずっと彼女のことを
わかっている。
朝市さんこそ花さんのことを好きなんじゃ
ないですか?」
・・・・・・・
「はい、・・・・おらは花が好きです
子どものころから花はずっとおらのそばに
いました。いつか、おらの嫁さんになって
ほしいと思っていました。」
「そんなに思っているなら
あなたが彼女と結ばれるべきだ」
「まだわからんけ?
おらじゃだめじゃん
あんたじゃなければだめなんだ。」
寝ている花。
聞いているかよ。
朝市はお酒を飲んだ。
そして、「はぁ・・・・酔っぱらったぁ。
といって、武頑張っているから
帰る」といった。
かよは、「電車がないよ」と言った。
朝市はコートを着ながら
「歩いて帰る、ちょうどいい酔い覚ましだ」
といった。
そして、英治の背中に向かって
「花のこと、よろしくお願いします」と
頭を下げた。
ドアが閉まる音がした。
背中で朝市の気持ちを感じて朝市が去っていく
のも、感じた英治。
郁弥も、寝ながらそれを全部聞いていた。
翌朝となった。
ドミンゴに、武と朝市が朝食を
食べていた。
ふたりは皿まで食べる勢いだった。
「ここのライスカレーも
食べおさめじゃ。」
と武は食べながら言った。
かよは、「やっと甲府に帰るべか」と聞く。
「そんなにさみしいならもっといてやろっか?」
かよは、頭を振った。
そしてコップに水をついだ。
武と朝市は水をいきおいよく飲み干した。
そして、空になったカレー皿を前に
手を合わせて言った。
「ごちそうさまでした!」
武はかよに代金を渡した。
「つりはいらん、世話になったジャン」
「わぁ、武が初めてチップくれたじゃん。
ありがとう!」
武に続いて朝市も帰る格好でつづいた。
かよは、「お姉やんに会わんで帰るのか」と
きくが、「うん、いいだ。こぴっとがんばれと
かよちゃんからいっといてよ。」という。
かよは、「昨夜の朝市かっこよかったよ」という。
朝市は照れた。
「なんで?朝市のどこがかっこいいんだ?」と
武が聞く。朝市は「早く、汽車に乗り遅れるから」
と、武を追い立てて店を出て行った。
かよは、笑顔で送った。
★朝市が花のためにそんなかっこいいことを
してくれたなんて、露ほどもしらない
花でした。
聡文堂では、銀河の乙女の確認をしていた。
英治の挿絵だけである。
若干二日酔い気味の花だった。
案の定、さっぱり覚えていたない。
挿絵はきっといい絵が上がってくると
醍醐は言う。「そんな気がする・・・」と。
「安東さん」、郁弥が声をかけた。
「あとで、ちょっと話したいことがあります」と
いった。「兄のことで・・・。」
その頃英治は、真っ白な紙をまえに悩んでいた。
「銀河の乙女はだれの心にもいると思います。
英治さんの心にもきっといると思います・・・」
昨夜の醍醐の言葉が浮かんできた。
英治はエンピツを走らせた。
薄暗くなった時間のドミンゴでは、
花と郁弥がいた。
郁弥は、昨夜ここで朝市さんと兄が話を
しているのを聞いたという。
かよは、気を聞かせて「あのね、お姉やんは
寝ていたけど二人でお姉やんの話を
していただよ。」
といった。
花は、なるほどと納得して、それで?
と郁弥に聞いた。
「やはり兄とあなたは心が通じ合っていたの
ですね・・・。姉がなくなる前から。
姉も気が付いていました。」
かよは、「それでお姉さんは突然英治さんと
別れたいといいだしたのですか?」といった。
「姉の気持ちになるとあなたと兄が一緒に
なることは許せないのです。」
・・・・・
「そうだと思います。
私も自分のこと許せないのです。
正直に言います。お兄さんの離婚話を聞いたとき
一瞬だけ考えました。
一緒になれるのではと。
そんなことはもう絶対に考えません。
好きだとか、一緒にいたいとか
そんなことは甲州の山の中に捨ててきました
から!
どうか、安心してください。」
「・・・そうですか。」
「村岡さんとはいい仕事の仲間でいたいです。
いま、心からそう思っています。」
「そうですか・・・。」
郁弥はそう言って「わかりました」と
笑顔でいった。
花はまだ仕事が残っているからといって
帰って行った。
その夜英治は根を詰めて書き込んでいた。
花も、原書を前にペンを走らせた。
夜が白々と明けた。
英治がペンを置いたとき
明け方の鳥がないた。
聡文堂に、郁弥がきた。
英治が書いたという原稿をもって。
編集部はみんな集まった。
花は封筒から原稿をだして絵を見た。
「わぁ素敵・・・。」と醍醐。
「これなら、宇田川先生も気に入って
くれるわね。」と花。
その絵は空を飛ぶ少女だった。
「この絵は花さんよね?」と醍醐が言った。
「え?」
「だって想像の翼を広げているから・・。」
花はその原稿をまじまじとみた。
★英治の心の中にいる銀河の乙女と
いうのは、ひょっとして・・・
「て・・・・・!!!」
驚く花。
ごきげんよう
さようなら
****************
心の底を包み隠さず・・・
朝市と英治は話し合いました。
朝市はだれよりも花を理解していたけど
花にとって朝市は身近な存在すぎて
家族のようなものだったのでしょう。
よくわかりすぎて恋愛の対象にもならない
朝市と花。
だから朝市は花の気持ちが手に取るように
わかっていた。そしてあの辞書を送ったのは
英治だと気が付いた。
しかも、英治は花を花子さんと呼ぶ。
何者だと朝市は思ったはずだった。
だから気持ちをストレートに話すと
案の定・・・英治と花は・・・である。
しかし・・・
それに最初に気が付いたのはあの、香澄だった。
それを郁弥がしり、香澄の突然の離婚
申し立てとなった。
「あなたの心の中には私ではない女の人が
います。」
そう香澄は言った。
そして、静かに世を去った。
花は一緒になれるかもと少しは
思った。それは正直な気持ちだった。
だけど、ここで郁弥の話を聞けば
それは許されないことだと
花は知った。
いい仕事仲間で・・・いたい。
英治は渾身の力を込めて
銀河の乙女を書き上げた。
まるで・・・挿絵は
花のようだと醍醐が言った。
花のように自由に空を飛べる
ツバサをもっている少女が
英治の中にいる銀河の乙女だった。
そしてそれは・・・
安東花だったのである。
隠しきれない気持ちをどうするつもりなのか
英治と花・・・。
