最高のクリスマス4
「私は・・私は武が必要なんだ。」
かよの切羽詰まった状況を理解できない
花は、「武が必要???」
と、混乱した。
かよは、「武だけではなくおねえやんも朝市も
醍醐さんも、それから・・・それから・・」

よくよく聞くとカフェでクリスマス
パーティをするという。女給ひとり
につき、10人の集客が
ノルマだという。
「おら東京に知り合いなんていないし。
どうしよう?」

「なあんだ、お姉やんに任せて。
こぴっと集めるし・・。」

花は真実を聞いてほっとした。
そして、集客もできると思った。

★大正八年。このころ銀座の町では
クリスマスパーティがはやり始めて
おりました。

そのパーティの当日。
醍醐も、花も、梶原も・・・
集まった。
ところが宇田川はこの店の状況に
そぐわない仕事スタイルで原稿を書いて
いる。
「どうして今日は騒々しいのよ」
と宇田川は言う。
三田は、「この状況でも原稿が書けるなんて
さすがとしか言いようがありません。」
とよいしょした。
「こんばんは・・・」と、梶原と三田。
朝市と武・・花、醍醐。
いまのところ6人。
武は美形の女給に夢中だった。
ところが、女給がひとり風邪で倒れて
花が女給のピンチヒッターをした。
「どうぞ・・・」と花がビールとおつまみを
運ぶと、梶原と三田はびっくりした。
「金に困ってついに女給を始めたか」と三田。
「安東君、そんなに困っているのか?」と梶原。
「今日だけですと」花は言った。
そこに蓮子さんがきた。
「ま、花ちゃん、女給さんになったの?」
驚く蓮子に花は照れるとその横を宇田川が
「どきなさいよ」、といって通った。
「先生、お帰りになるのですか?」と花。
「うるさくて仕事になりやしない。」
宇田川は店を出ようとして
振り返って蓮子を見た。
「ひょっとして・・・
白蓮?」

「ええ・・・失礼ですけどあなたは?」
「私のこと知らないの?」
「私の担当の先生、宇田川先生よ」と花。
「ごめんなさい。現代小説はあまり読まないので。」
と蓮子は言った。
宇田川は「こっちはよく存じているわ。」
「それはどうも・・・」
「私がこの世で一番嫌いな女よ!」
蓮子は、にこっとして、「お目にかかれて
光栄です。」という。
「大正三美人の一人とか言われて
いい気にならないでよ。」
宇田川は睨み付けてドアを開けて出て
いった。

「ごきげんよう。」蓮子は言った。
「蓮子さま・・・ごきげんよう。
お久しぶりです。」と醍醐が声をかけた。
「あら、醍醐さん、ごきげんよう!!」
三田は、「ごきげんようの嵐なんですけど・・」という。
そこへ、村岡兄弟が来た。
郁弥は「メリークリスマス」といった。
「村岡さん、ごきげんよう」と蓮子は言う。
「どうも・・・」と英治。

かよは、花に「おねえやん・・・実は須藤さん
がまだなので、9人のままなんだけど。」
という。そのうち来ると思うと花は言うが。
自信がない。
しかし、花の周りのにぎやかさから言うと
あと一人ぐらいなんとかなる。
外に龍一と友達がいた。
「お祭り騒ぎだな」
「たまにはいいだろう」
と入った。
★おやまぁ、クリスマスというのに吉太郎は
憲兵のお仕事ですか。

吉太郎は上司と龍一を監視していた。
「ブルジョワだの革命を起こすだの
というのにうかれている。
・・所詮ああいう主義者は
頭でっかちの割には坊ちゃんだ。」

「同感であります」と吉太郎は言った。
上司は店に入らないといけないなと
面倒くさそうに言う。

吉太郎は、「自分が店の中に入って
見張ります」と言って店に入って行った。

龍一は人ごみの中で遠くから蓮子を
みつけた。
「あの女にかかわるなといっただろ?
ここは石炭王もくるらしいではないか。」
と友達は言う。
龍一は、あの日、伝助が蓮子の髪に
うつくしいティアラをつけて
「おお~~~ようにおちょるわい」と
いった光景を思い出した。
そして蓮子を見た。
龍一はカウンターにすわって
「かよちゃん、強い酒をくれ」といった。
龍一に気づいて蓮子はそばによって
話しかけた。
「龍一さん・・・」
その様子を吉太郎は帽子を深くかぶって
みていた。

「今日は石炭王と一緒じゃないのですか?」
龍一は蓮子に嫌味を言った。
「あの日はごめんなさい。おめにかかって
謝りたかったの。」

この、微妙な男女の会話の中にふてぶて
しく入ってきたやつがいる。
武だった。
「どうも、おひさしぶりじゃん・・・」

蓮子は、「あの?」と聞く

「はなたれんとこの地主の徳丸武と
いいます。」
武は、甲府の実家に帰る花と一緒に
甲府へむかった蓮子を覚えていた。
だが、蓮子は覚えがない。
「どこのどなたか全く思い出せないわ。」
そこへ朝市がきた。
「蓮子さん、お久しぶりです~」
「あら、朝市さんお懐かしいわ。」
朝市は笑って挨拶をした。
多くの邪魔が入って龍一と蓮子は
話ができず、龍一は友だちと一緒に
場所を変えた。
その後ろ姿をおった朝市は
店の隅っこにいた吉太郎をみつけた。

「て!吉太郎さんじゃん!」

花も、かよも朝市も急いで
吉太郎のそばにいった。
「あにやん、来てくれたの?」
「あにやん!」
これでなぜか10人というが。

「いや、たまたま通りかかったら
すごくにぎやかだったから」と
吉太郎は答えた。

「ああ、これで10人ジャン。」
かよは言った。
「勢揃いね。吉太郎さん、乾杯しましょう?」
蓮子は言った。
吉太郎は、「まだ仕事中なので」という。
武は「なんでまた、吉太郎と朝市と
蓮子が知り合いなのか」と聞く。
花が女学校時代、甲府へ帰ったとき
蓮子も一緒で朝市と吉太郎と
花、蓮子の四人で釣りに行ったことが
あると朝市は言った。
「蓮子さん、こんなでっかい魚を釣ったでな。」
「おおげさよ、こんなものよ。」と両手を小さく
して蓮子は言った。
みんな大笑いをした。
「楽しかったわね」と花は言う。
吉太郎は、あの日蓮子と釣りをして
一緒に釣竿をにぎって魚をつったことを
思い出して笑った。
「釣れたわ。釣れたわ」と蓮子は大喜び
をしていた。

時間もすぎ、お先にと梶原たちは帰って行った。
龍一はほかの女給と仲良くしていた。
そして、急にかよを捕まえて
「かよちゃん、踊ろう」とさそった。

その様子を蓮子はじっと暗い顔をして
見つめていた。
「蓮様・・・」花はその様子を心配そうに見た。

からりと音を立てて店のドアが開く。
「酔っぱらった・・・・」といって
龍一は店の外へ出た。

その後を蓮子は追いかけた。
「龍一さん・・」と声をかけた。
そこへ伝助がやってきた。
龍一はいった。
「これはこれは・・・
石炭王の
嘉納・・・
伝助

様・・・ではありませんか??」

「よかごきげんやなぁ。」
といいながら「迎えに来た」と蓮子に言った。
「これはぁ、お優しい御主人だぁ~~~」
「知り合いか?」と伝助は蓮子に聞いた。
蓮子は、「いいえと」いう。
少なからず龍一はショックを受けたのでは
ないだろうか。
「さぁ、帰ろう」と伝助は蓮子を連れて
帰ろうとした。
龍一は「待ってくれ!!!待ってくれよ~~」という。
伝助は「よっぱらいたい。相手するんじゃなか」と
いって蓮子を連れて帰って行った。
あっけにとられて後姿を見守る龍一だった。
そしてそれをじっと見つめる吉太郎は
なにかを感じたのだろうか。

★蓮子たちがそんなことになっていたとは
知らず、花は三杯目のワインを飲もうとして
いました
「やっぱり徳丸商店のワインはうめーな?」
花は「うめー」という。
朝市も郁弥も笑った。

カウンターでは醍醐と英治が飲んでいた。
挿絵の話をする醍醐。
「なかなか難しいですね。」と英治は言う。
「宇田川先生はもしかしたら英治さんだけの銀河
の乙女を見たいのではないでしょうか?
遠い遠い星まで傷つきながら旅をする銀河の
乙女。銀河の乙女はだれの心にもいると
思うのです。英治さんの心にもいるのです。」
「僕の心の中にもいる???」
そこにキラキラ星が聞こえた。
花がよっぱらって歌っている。
驚く醍醐。
英治も驚いた。
よたよたとしながらキラキラ星を
歌っているが、足元がふらふらして
ついに倒れた。
その花をサポートしたのは朝市と
英治だった。
朝市は、英治を見てハッとした。
「やさしいですね~~?」と花は英治に言った。
「花子さん、コピットしてください。」
「ええ?」と花。

朝市の表情が変わった。
そして、英治と花を連れてこっちへといって
移動した。
店は閉店となった。
かよは掃除をしていた。
花はカウンターにもたれて寝ていた。
朝市と英治は二人で飲んでいた。
英治は花を見て「やっぱり寝て
しまいましたね」といった。
朝市は押し黙った顔をしていた。
「朝市さんは花子さんの幼馴染なんですね。」
英治の言葉に朝市は言った。
「花のことを花子というのですね。」
英治は小さく笑った。
「村岡さん、花に英語の辞書を送ったのは
あなたですか。」
「はい、そうですけど?」
「やっぱりそうけ・・・

あんたに言っておきたいことがある。

花は・・・」

★まぁ怖い
朝市は決闘を申し込むのでしょうか?
ごきげんよう
さようなら。
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にぎやかなクリスマスパーティでした。
たくさんの人が入り乱れて
花の社会人になってからの
登場人物の総集編のような
感じでしたね。
朝市と武はほんわかとして面白い
ですね。
梶原と、三田はやりての社会人と
上司という感じ。
蓮子と醍醐。女学校時代の同窓生。
宇田川と蓮子・・・ライバル?
それから・・龍一とかよの関係は?
ただの女給と客?
郁弥とかよは?
これもただの女給と客?
伝助と龍一は?
おそろしい三角関係。
吉太郎と蓮子は?
監視役と初恋の人
英治と花は???
あけてはいけない箱・・・。