その恋、忘れられますか?6
英治から話があると電話があった。
六時にドミンゴで待ち合わせになった。
ドキドキする花。
英治は、ドミンゴへ行く用意をして
会社を出ようとしたとき、電話が
なった。
妻、香澄が喀血したとの病院から
の電話だった。
六時になった。
ドアのベルが鳴るたびに花はそちらをみた。
英治かと思いたちあがった。
が、違う客。
がっかりしてまた椅子に座る。
かよはそんな花の様子を見ていた。
時計はとっくに六時を回っていた。
かよは、宇田川に呼びつけられたと
おもって、「もう二時間も待っている
よ、許せんね、あの先生。
すっぽかされたんだよ。」という。
宇田川ではないと花は言った。
またにぎやかに客が来た。
そっちを見る花・・・。
しかし違う。
やがて、9時すぎになった。
★ひたすら待っている花を見てかよは
気づきました。
かよは、村岡に電話をした。
郁弥がでた。
「もしもし、かよさん?うれしいな。
かよさんから電話をもらうなんて。」
「お兄さんはいらっしゃいますか?」
郁弥は、兄としって、テンションが下がった。
「兄は姉さんの病院へ行きました。
今日は帰ってこれないと思いますけど?」
「そうですか・・・・。」
閉店の時間となった。
かよは、花に声をかけて帰ろうと
花の手を取っていった。
帰る道々かよはいった。
「お姉やん、もうあの人のこと。まったり
したらだめだ。村岡さんにすっぽかされた
だ。」
「どうしたのかな?事故に会ったのかな?
ごめん、先に帰ってくりょ」と花は言う。
そして、「村岡印刷さんへいってみる」という。
かよは、あわてて花の手を取った。
「何でそんなに村岡さんを好きになったの?」
「なんでって・・・」
「村岡さんは事故になんかあってないよ。
奥さんの病院へ行っただ。」
花は、笑っていった。
「かよ何を言っているだ?
奥さんて?」
「村岡さんには胸を患っている奥さんが
いるだよ。村岡さんは結婚しているだ。
おら・・知っていたのに
黙っていてごめん。」
花は、今日、話があるといった村岡
の話とは、こういうことなのか、
そして忘れてくださいと言ったのは
こういうことなのかと、理解できた。
「なんだ、こういうことなのか。
そうか、そうか・・・こういう
ことなのか・・・。」
花は後ろを向いて、つとめて
笑顔で言った。
「かよ、教えてくれてありがとう
おねえやんほんとうにばかだったね
おとうからもあんだけ言われたのに
全く東京の男は信じられんさ・・」
かよはだまっていた。
「さ、かえろ、かえろ・・」
花は歩き始めた。
かよは、その後ろをついていき
そして花の手を取っていっしょに
歩いた。
その夜、ねむれない花はあの雨の日
抱きしめられたことを思っていた。
傘が飛んいった。あの傘はまだ、花のもとに
あった。
それを見るとつらかった。
「わすれよう、忘れるだ、こんどこそ。」
そういって、声が震えた。
聡文堂では、花のページの割り付けを
みて、各ページに書かれた挿絵とともに
編集者一同、満足げだった。
しかし、ほかの頁とは全く違うので
これでいいのだろうかという意見もあった
が。醍醐がこれだけ遊び心があっても
いいのではといった。
花は「こんな素敵なページに仕上げていただいて
ありがとうございます。」
と郁弥にいった。
郁弥は、「それは兄にいってください。」という。
「え?」と花は聞きなおした。
挿絵を描いたのは英治だったこと。
何度も割り付けをし直して、熱心だった
ことなどを笑顔で言う。
みんなは、すごいなと感心していた。
花は複雑な気分だった。
夕方になった。
醍醐は、花が割り付けの原稿を
見ているそばに来ていった。
「花さん、私は英治さんのことを
あきらめるわ。」という。
「こんな素敵なページを作るほど
花さんのことが好きなんですもの。
私の入る隙間なんてないわ。
私はあきらめて次に恋に行くわ。」
「醍醐さん・・」
「花さんたちのことは応援するから。」
「ごきげんよう!」
そういって醍醐は帰っていった。
ため息をつく花。
英治は結婚しているのに・・・・。
でもあの素敵なページを見て
また心が動いた。
わすれようとしても、心が動いた花だった。
家の近くで立っている人がいた。
英治だった。
「昨日はスミマセンでした」という。
「僕のほうから時間を作ってくれと
いったのに、本当にすみません
でした。」
花は、どうしたらいいものかと
とまどった。
「別に気にしていませんから。」
花はそういって家に入ろうとした。
「あの・・・
ゆうべ話そうと思っていたのは・・・」
英治が言った。
が、花は
「奥様のことでしょ?」と返した。
「聞きました。全部。」
「そうですか・・・
言いそびれてすみません。」
「どうぞお大事になさってください。」
「ありがとうございます。」
「こちらこそ、王子と乞食の挿絵
ありがとうございました。」
「これからも花子さんの翻訳するページは
手伝わせてください。」
花は振り返った。
「どうしてですか?いったでしょ。
優しくしないでって。」
「優しさではありません。
今の僕にはそれしかありませんから。
あなたにできることはそれしかありません
から・・・。」
花は言葉もなく英治の顔を目を大きく見開いて
見つめた。
英治は頭を下げて去って行った。
英治の靴音が遠くなって
消えてしまった。
じっと、うつむきその場に
たたずむ花だった・・・・。
★ごきげんよう
さようなら
*******************
まさしくタイトル通り
「その恋、忘れられますか?」
でございます。
英治が結婚していると知って
なにもかもわかった花は忘れよう、
今度こそ忘れようと思うのです。
しかし、郁弥から挿絵を描いたのは
英治だと知り、醍醐と同じ
く、愛情を感じたのでした。
だから、忘れられないのです。
タメイキばかりです。
道ならぬ恋をしてはいけませんと蓮子に
言った花なのに、自分の恋はまさしく
その道ならぬ恋なのです。
知らなかったこととはいえ、
好きになった人には奥様がいたのです。
こんなひどい運命ってないですよね。
だったらなかったことにすればいいと思う
のですが花にはそんななかったことにするほど
器用な切り替えボタンなどついていません。
リセットすればいいのですが
リセットボタンはありません。
これほど愛情に深い花なので、もしかしたら
こういう道ならぬ恋をしってなおさら
愛情が深くなったのでしょうか。
英治に対する恋心と奥様に対する申し訳
なさ。人の不幸の上に自分の幸福は
成り立たないと知っていながら
どうにもならない、身を引くことも
できない・・・。
花は、道ならぬ恋の苦しみに落ち込む
べきなのか・・・・。
落ち込んでどうなるのだろうか?
その先には何があるのだろうか?
朝ドラにはめずらしく不倫と
ヒロインというテーマになって
しまいました
英治から話があると電話があった。
六時にドミンゴで待ち合わせになった。
ドキドキする花。
英治は、ドミンゴへ行く用意をして
会社を出ようとしたとき、電話が
なった。
妻、香澄が喀血したとの病院から
の電話だった。
六時になった。
ドアのベルが鳴るたびに花はそちらをみた。
英治かと思いたちあがった。
が、違う客。
がっかりしてまた椅子に座る。
かよはそんな花の様子を見ていた。
時計はとっくに六時を回っていた。
かよは、宇田川に呼びつけられたと
おもって、「もう二時間も待っている
よ、許せんね、あの先生。
すっぽかされたんだよ。」という。
宇田川ではないと花は言った。
またにぎやかに客が来た。
そっちを見る花・・・。
しかし違う。
やがて、9時すぎになった。
★ひたすら待っている花を見てかよは
気づきました。
かよは、村岡に電話をした。
郁弥がでた。
「もしもし、かよさん?うれしいな。
かよさんから電話をもらうなんて。」
「お兄さんはいらっしゃいますか?」
郁弥は、兄としって、テンションが下がった。
「兄は姉さんの病院へ行きました。
今日は帰ってこれないと思いますけど?」
「そうですか・・・・。」
閉店の時間となった。
かよは、花に声をかけて帰ろうと
花の手を取っていった。
帰る道々かよはいった。
「お姉やん、もうあの人のこと。まったり
したらだめだ。村岡さんにすっぽかされた
だ。」
「どうしたのかな?事故に会ったのかな?
ごめん、先に帰ってくりょ」と花は言う。
そして、「村岡印刷さんへいってみる」という。
かよは、あわてて花の手を取った。
「何でそんなに村岡さんを好きになったの?」
「なんでって・・・」
「村岡さんは事故になんかあってないよ。
奥さんの病院へ行っただ。」
花は、笑っていった。
「かよ何を言っているだ?
奥さんて?」
「村岡さんには胸を患っている奥さんが
いるだよ。村岡さんは結婚しているだ。
おら・・知っていたのに
黙っていてごめん。」
花は、今日、話があるといった村岡
の話とは、こういうことなのか、
そして忘れてくださいと言ったのは
こういうことなのかと、理解できた。
「なんだ、こういうことなのか。
そうか、そうか・・・こういう
ことなのか・・・。」
花は後ろを向いて、つとめて
笑顔で言った。
「かよ、教えてくれてありがとう
おねえやんほんとうにばかだったね
おとうからもあんだけ言われたのに
全く東京の男は信じられんさ・・」
かよはだまっていた。
「さ、かえろ、かえろ・・」
花は歩き始めた。
かよは、その後ろをついていき
そして花の手を取っていっしょに
歩いた。
その夜、ねむれない花はあの雨の日
抱きしめられたことを思っていた。
傘が飛んいった。あの傘はまだ、花のもとに
あった。
それを見るとつらかった。
「わすれよう、忘れるだ、こんどこそ。」
そういって、声が震えた。
聡文堂では、花のページの割り付けを
みて、各ページに書かれた挿絵とともに
編集者一同、満足げだった。
しかし、ほかの頁とは全く違うので
これでいいのだろうかという意見もあった
が。醍醐がこれだけ遊び心があっても
いいのではといった。
花は「こんな素敵なページに仕上げていただいて
ありがとうございます。」
と郁弥にいった。
郁弥は、「それは兄にいってください。」という。
「え?」と花は聞きなおした。
挿絵を描いたのは英治だったこと。
何度も割り付けをし直して、熱心だった
ことなどを笑顔で言う。
みんなは、すごいなと感心していた。
花は複雑な気分だった。
夕方になった。
醍醐は、花が割り付けの原稿を
見ているそばに来ていった。
「花さん、私は英治さんのことを
あきらめるわ。」という。
「こんな素敵なページを作るほど
花さんのことが好きなんですもの。
私の入る隙間なんてないわ。
私はあきらめて次に恋に行くわ。」
「醍醐さん・・」
「花さんたちのことは応援するから。」
「ごきげんよう!」
そういって醍醐は帰っていった。
ため息をつく花。
英治は結婚しているのに・・・・。
でもあの素敵なページを見て
また心が動いた。
わすれようとしても、心が動いた花だった。
家の近くで立っている人がいた。
英治だった。
「昨日はスミマセンでした」という。
「僕のほうから時間を作ってくれと
いったのに、本当にすみません
でした。」
花は、どうしたらいいものかと
とまどった。
「別に気にしていませんから。」
花はそういって家に入ろうとした。
「あの・・・
ゆうべ話そうと思っていたのは・・・」
英治が言った。
が、花は
「奥様のことでしょ?」と返した。
「聞きました。全部。」
「そうですか・・・
言いそびれてすみません。」
「どうぞお大事になさってください。」
「ありがとうございます。」
「こちらこそ、王子と乞食の挿絵
ありがとうございました。」
「これからも花子さんの翻訳するページは
手伝わせてください。」
花は振り返った。
「どうしてですか?いったでしょ。
優しくしないでって。」
「優しさではありません。
今の僕にはそれしかありませんから。
あなたにできることはそれしかありません
から・・・。」
花は言葉もなく英治の顔を目を大きく見開いて
見つめた。
英治は頭を下げて去って行った。
英治の靴音が遠くなって
消えてしまった。
じっと、うつむきその場に
たたずむ花だった・・・・。
★ごきげんよう
さようなら
*******************
まさしくタイトル通り
「その恋、忘れられますか?」
でございます。
英治が結婚していると知って
なにもかもわかった花は忘れよう、
今度こそ忘れようと思うのです。
しかし、郁弥から挿絵を描いたのは
英治だと知り、醍醐と同じ
く、愛情を感じたのでした。
だから、忘れられないのです。
タメイキばかりです。
道ならぬ恋をしてはいけませんと蓮子に
言った花なのに、自分の恋はまさしく
その道ならぬ恋なのです。
知らなかったこととはいえ、
好きになった人には奥様がいたのです。
こんなひどい運命ってないですよね。
だったらなかったことにすればいいと思う
のですが花にはそんななかったことにするほど
器用な切り替えボタンなどついていません。
リセットすればいいのですが
リセットボタンはありません。
これほど愛情に深い花なので、もしかしたら
こういう道ならぬ恋をしってなおさら
愛情が深くなったのでしょうか。
英治に対する恋心と奥様に対する申し訳
なさ。人の不幸の上に自分の幸福は
成り立たないと知っていながら
どうにもならない、身を引くことも
できない・・・。
花は、道ならぬ恋の苦しみに落ち込む
べきなのか・・・・。
落ち込んでどうなるのだろうか?
その先には何があるのだろうか?
朝ドラにはめずらしく不倫と
ヒロインというテーマになって
しまいました
