グッバイ!花先生5
病床の周造のそばでたんぽぽの目を
読む吉平。
そこへ、ふじが帰ってくる。
吉平がいるのをみて睨みつけるふじ
だった。
そして走って家の外へ出て行った。
吉平はふじを追いかけていって
「ふじ、こぴっと話あおう」と
いう。
「おらのいねぇ間におとうやんにとりいる
なんて調子いいんだから」
そう、どなってまた走って家の中に入
って戸を閉めた。
吉平はとりつくしまもない。
学校では子供たちから花先生の
おじいさんにお見舞いと花を
もらった。
花は「ありがとう、気を付けて帰るのよ」
といって子供たちを見送った。
だれもいなくなった廊下に人影があら
われた。
サダだった。サダは頭を下げた。
「おとうの女だ・・・」花は思った。
学校から帰った花。
かまどで食事の支度をするふじ
「ただいまぁ」
「おかえり」
「おじいやん?大丈夫け?」
「ああ、おけぇり。」
花はふじに話しかけた。
「今日、学校にサダさんがきて・・」
というとふじは驚いた。
「おらもびっくりしたけど謝りに来
ただ。もともとおとうとは何もな
かったって・・・」
その時の話はこうであった。
あの話は全部、嘘だった。
吉平とは、何もないのだ。
あまりにも仲のいい夫婦らしいので
どんな夫婦なのか見に来た。
そして
つい、嘘をついたという。
ふじは吉平を信じているし
何を言っても吉平をかばうし
こんなに旦那を愛している
奥さんもいるのかと思うと悔しかった。
「その櫛は?」と花が聞くと
自分で気に入ったから買ったと
いう。
そのとき、吉平はふじに櫛をあ
げたときのことをうれしそうに
したという。
それから富士山の話も嘘だった。
表富士をみせてあげようといっ
たこと。
本当は、「うちのやつに表側の
ふじをみせてやりてぇだ。
俺の故郷の
景色を見てもらいたい」って。
ふじは、驚いた。
「おとうは教会の本の部屋にいる」
というとふじは、取るものもとりあえず
あわてて出て行った。
周造は「何べんいったらわかるだ。
こっちが表であっちが裏だ・・」という。
教会についたふじは、吉平を探した。
「あんた、全部聞いただよ。
花の学校にサダさんが来たんだ。
それで。
あんたいつ、表の富士山を見に連れて
いってくれるのだ?おらを生まれ故郷に
連れて行きたいなんてそんなことを
思っていてくれたなんて
うれしいよぉ~~~~~~~~ぉ」
ふじは泣き声になった。
「おれはお前と一緒になってここで暮らして
甲府が大好きになった。
おまえにも俺の生まれ故郷を好きになって
ほしい・・・」
ふじは、泣き続けた。
周造は花に、タンポポの目を何べんも
読んでもらったことを話した。
周造は花が子供のころ、本当の名前は
周造ではなく、周右衛門とか
周左衛門だったら景色が変わるという話を
したことがあるといった。
「名前が変われば見える景色も変わるんだよ。
自分が花子だと思うと
ほら・・・風の匂いまで違うじゃん」
「花に言われてからわしは、時々周左衛門
になっているよ。すると花の言った通りわく
わくしてくるだ。花の夢を見る力がわしにも
伝わるんだ。
花、見つけた夢は夢中になって追いかけ
るべし。」
そういって周造は花の手を取った。
「この手で、わしの見つけられなかった
ものを見つけてくれ・・・。
たんぽぽの目・・じいは大好きだ。」
周造は笑いながら、花の頭を撫でた。
「おじいやん・・・」花は嬉しかった。
周造は本を大事そうに見た。
翌日から吉平はふじと一緒に畑へ
いった。
花は朝市と一緒に学校へ行った。
「行ってきます!!」家族の声が
元気に一日の始まりを
告げていた。
周造はみんなを見送った。
「行ってくるし・・・。」
静かになった家。
その日、初雪が降った。
雪を見ながら周造は
辞世の句を詠んだ。
「まだまだと
おもいすごし
おるうちに
はや、死の道へ
むこうものなり
周左衛門・・・」
初雪は静かに降り続いた。
★甲府に初雪が降った日
周造は眠るように
息を引き取りました。
花は周造を送るために
学校を休み
学校へ出た日に職員室で
その挨拶をした。
「ぶじに祖父を送ることができま
した」と。
「顔は怖かったけど、優しい爺
さんだった」
と、校長がいった。
緑川も
「安東先生、
お力落としの無いように。」
「ありがとうごいっす。」
「なくなったおじいやんも
花嫁姿を見たかったろうね」
「いえ、祖父は私に夢を追い
かけろと言ってくれました。」
「ゆめ??
よめ・・・ではなく
ゆめ・・・??」
「ええ、夢です。」
教会の本の部屋で花は
朝市に相談があるからと
呼び出した。
花は、あの時の大事な話は
何だったのかと聞く。
朝市はサダの騒動で
忘れたとうそをいった。
それよりどうしたのかと
花に聞く。
「東京から出版社の人が
来たことが合ったでしょ?
あのことで・・・
おかあたちを残して状況は
できないとあきらめたけど。」
朝市は、さっしていった。
「花は東京へ行きたいか?」
「うん・・。」
「じゃ、いけっし。」
「朝市・・・」
「一生懸命やって
勝つ事の次にいいことは
一生懸命やって
負けることだ。」
花はうなずいた。
朝市は、笑顔で答えた。
★ごきげんよう
さようなら
*****************
あっけらかんとサダの騒動は
収まりました。
吉平たちの仲の良さに
焼きもちを焼いたことが
発端なのでしょう。
ふじが怒ると怖いですね。
でも、単純ですけどね。
よかったこと。
一家の母親が暗くなると全体が
暗くなりますから。
おじいやん、花になにげに東京
へいって夢を追いかけろといい
ました。
嫁に行けとはいいませんでした。
力のない小作の一生を送った周造。
しかし、孫の花には周造がみれな
かった世界を見る力があると信じて
くれました。
この時代に女性に夢を追いかけろ
とはかなり革新的です。
緑川先生の
夢?嫁ではなく夢?
と、いうセリフが
その時代を反映しています。
朝市も、本当なら花を嫁さんに
と思っていたのですが
それを伝えないまま、夢に向かう
ように励まします。
花にとって朝市の木場家は
花が去りしあと両親をささえて
もらえる大事なご近所様です。
その朝市から行けと言われたことは
花にとってこれ以上にない
後押しだったのではと思います。
そして吉平も家に居着き、農業を
することになったようです。
これも花にとっての安心の材料です。
周造の辞世の句は幼いころの
花が詠んだ
句です。
周造が詠むと、この世をさるひとの
威厳を感じます。
周造の夢は花の夢と一緒になり
ました。
夢とは・・
いくつになっても大事なものだと
思います。
病床の周造のそばでたんぽぽの目を
読む吉平。
そこへ、ふじが帰ってくる。
吉平がいるのをみて睨みつけるふじ
だった。
そして走って家の外へ出て行った。
吉平はふじを追いかけていって
「ふじ、こぴっと話あおう」と
いう。
「おらのいねぇ間におとうやんにとりいる
なんて調子いいんだから」
そう、どなってまた走って家の中に入
って戸を閉めた。
吉平はとりつくしまもない。
学校では子供たちから花先生の
おじいさんにお見舞いと花を
もらった。
花は「ありがとう、気を付けて帰るのよ」
といって子供たちを見送った。
だれもいなくなった廊下に人影があら
われた。
サダだった。サダは頭を下げた。
「おとうの女だ・・・」花は思った。
学校から帰った花。
かまどで食事の支度をするふじ
「ただいまぁ」
「おかえり」
「おじいやん?大丈夫け?」
「ああ、おけぇり。」
花はふじに話しかけた。
「今日、学校にサダさんがきて・・」
というとふじは驚いた。
「おらもびっくりしたけど謝りに来
ただ。もともとおとうとは何もな
かったって・・・」
その時の話はこうであった。
あの話は全部、嘘だった。
吉平とは、何もないのだ。
あまりにも仲のいい夫婦らしいので
どんな夫婦なのか見に来た。
そして
つい、嘘をついたという。
ふじは吉平を信じているし
何を言っても吉平をかばうし
こんなに旦那を愛している
奥さんもいるのかと思うと悔しかった。
「その櫛は?」と花が聞くと
自分で気に入ったから買ったと
いう。
そのとき、吉平はふじに櫛をあ
げたときのことをうれしそうに
したという。
それから富士山の話も嘘だった。
表富士をみせてあげようといっ
たこと。
本当は、「うちのやつに表側の
ふじをみせてやりてぇだ。
俺の故郷の
景色を見てもらいたい」って。
ふじは、驚いた。
「おとうは教会の本の部屋にいる」
というとふじは、取るものもとりあえず
あわてて出て行った。
周造は「何べんいったらわかるだ。
こっちが表であっちが裏だ・・」という。
教会についたふじは、吉平を探した。
「あんた、全部聞いただよ。
花の学校にサダさんが来たんだ。
それで。
あんたいつ、表の富士山を見に連れて
いってくれるのだ?おらを生まれ故郷に
連れて行きたいなんてそんなことを
思っていてくれたなんて
うれしいよぉ~~~~~~~~ぉ」
ふじは泣き声になった。
「おれはお前と一緒になってここで暮らして
甲府が大好きになった。
おまえにも俺の生まれ故郷を好きになって
ほしい・・・」
ふじは、泣き続けた。
周造は花に、タンポポの目を何べんも
読んでもらったことを話した。
周造は花が子供のころ、本当の名前は
周造ではなく、周右衛門とか
周左衛門だったら景色が変わるという話を
したことがあるといった。
「名前が変われば見える景色も変わるんだよ。
自分が花子だと思うと
ほら・・・風の匂いまで違うじゃん」
「花に言われてからわしは、時々周左衛門
になっているよ。すると花の言った通りわく
わくしてくるだ。花の夢を見る力がわしにも
伝わるんだ。
花、見つけた夢は夢中になって追いかけ
るべし。」
そういって周造は花の手を取った。
「この手で、わしの見つけられなかった
ものを見つけてくれ・・・。
たんぽぽの目・・じいは大好きだ。」
周造は笑いながら、花の頭を撫でた。
「おじいやん・・・」花は嬉しかった。
周造は本を大事そうに見た。
翌日から吉平はふじと一緒に畑へ
いった。
花は朝市と一緒に学校へ行った。
「行ってきます!!」家族の声が
元気に一日の始まりを
告げていた。
周造はみんなを見送った。
「行ってくるし・・・。」
静かになった家。
その日、初雪が降った。
雪を見ながら周造は
辞世の句を詠んだ。
「まだまだと
おもいすごし
おるうちに
はや、死の道へ
むこうものなり
周左衛門・・・」
初雪は静かに降り続いた。
★甲府に初雪が降った日
周造は眠るように
息を引き取りました。
花は周造を送るために
学校を休み
学校へ出た日に職員室で
その挨拶をした。
「ぶじに祖父を送ることができま
した」と。
「顔は怖かったけど、優しい爺
さんだった」
と、校長がいった。
緑川も
「安東先生、
お力落としの無いように。」
「ありがとうごいっす。」
「なくなったおじいやんも
花嫁姿を見たかったろうね」
「いえ、祖父は私に夢を追い
かけろと言ってくれました。」
「ゆめ??
よめ・・・ではなく
ゆめ・・・??」
「ええ、夢です。」
教会の本の部屋で花は
朝市に相談があるからと
呼び出した。
花は、あの時の大事な話は
何だったのかと聞く。
朝市はサダの騒動で
忘れたとうそをいった。
それよりどうしたのかと
花に聞く。
「東京から出版社の人が
来たことが合ったでしょ?
あのことで・・・
おかあたちを残して状況は
できないとあきらめたけど。」
朝市は、さっしていった。
「花は東京へ行きたいか?」
「うん・・。」
「じゃ、いけっし。」
「朝市・・・」
「一生懸命やって
勝つ事の次にいいことは
一生懸命やって
負けることだ。」
花はうなずいた。
朝市は、笑顔で答えた。
★ごきげんよう
さようなら
*****************
あっけらかんとサダの騒動は
収まりました。
吉平たちの仲の良さに
焼きもちを焼いたことが
発端なのでしょう。
ふじが怒ると怖いですね。
でも、単純ですけどね。
よかったこと。
一家の母親が暗くなると全体が
暗くなりますから。
おじいやん、花になにげに東京
へいって夢を追いかけろといい
ました。
嫁に行けとはいいませんでした。
力のない小作の一生を送った周造。
しかし、孫の花には周造がみれな
かった世界を見る力があると信じて
くれました。
この時代に女性に夢を追いかけろ
とはかなり革新的です。
緑川先生の
夢?嫁ではなく夢?
と、いうセリフが
その時代を反映しています。
朝市も、本当なら花を嫁さんに
と思っていたのですが
それを伝えないまま、夢に向かう
ように励まします。
花にとって朝市の木場家は
花が去りしあと両親をささえて
もらえる大事なご近所様です。
その朝市から行けと言われたことは
花にとってこれ以上にない
後押しだったのではと思います。
そして吉平も家に居着き、農業を
することになったようです。
これも花にとっての安心の材料です。
周造の辞世の句は幼いころの
花が詠んだ
句です。
周造が詠むと、この世をさるひとの
威厳を感じます。
周造の夢は花の夢と一緒になり
ました。
夢とは・・
いくつになっても大事なものだと
思います。
