想像のツバサ?5
★夏休みが近づいたある日のこと
 夕方、花は朝市とともに学校から帰ってきた。
ふじは、花に郵便が来ていると告げた。
「なんずら?」と花はその包みを開けた。
中は本。しかし、その本はいつか童話「みみずの
女王」をかいて応募したあの出版社の本で・・・


しかも・・花のミミズの女王は・・・
「えええ!!!!!」と花
その声を聴いてそばにきた朝市は
本を見て
「て!!!!!!!」
と驚きの声を上げた。
二人は顔を見合わせて・・・・またじっと
本を見た。


★なんと、花が児童雑誌に応募したみみずの女王
が賞をとったのです。もしやいつもの妄想でしょうか?
花はほっぺたをつねったが、「いたい。」
夢ではないと感じた。
★おめでとう!

するとうわさはあっという間に広がり
あの放送局のようなリンが
「花が小説家になっただと?」といって
かけつける。
朝市が「雑誌の懸賞に応募した小説が
賞をとった」というと
村の人たちは、大喜びをした。
で、それはどんなお話かというと

★花がかいた童話「みみずの女王」は
ふと子さんという威張りん坊のミミズが
おなかをすかせた小鳥たちに食べられて
しまうというユニークなおはなしでした。

朝市はみんなの前でそれを読み上げた。
「へんてこな話だけんどおもしろいな」
「こんな話を思いつく花のあたまはど
うなっているのかな」
とみんなそれぞれ、ほめているのか・・
けなしているのか・・・

しかし朝市の横で花は浮かない顔をした。
どうしたのかと聞くと、安東花子で応募
したのになぜ花なのかと、不満だった。

あの日、蓮子が世に自分の作品を出すと
き、安東花子の名前を使えばいいと
いったこと。
小説の原稿一頁め、題名の下に安東花子
とかいたこと。
花の思いをつぎこんだ「花子」だった。

「どうして、花が花子になったんだろう?」
「誤植じゃないのか?」と朝市。
花は印刷所を確認するため本の一番後ろの
頁を開けたら・・・・

「て!!!」
村岡印刷・・・とあった。

ふじは徳丸の所に借金を返しに行った。
地主の徳丸はそれを受け取りながら
ため息をついた。

「せっかく花が教師で働くようになっても
給料を借金を返すためにつかうとは・・
吉平はどうしているのか」といまいましそうに
聞く。「このまま帰ってこないで吉太郎が
兵隊に行くと男では周造だけになるが
いいのか」とふじにいった。

その日は実は、吉太郎の兵役検査だった。
めでたく甲種合格になっても・・・
めでたくもありめでたくもなし・・・ですかね。

その吉太郎を待っている家族。
ふじは落ち着かない。
「遅いじゃん、吉太郎。」とふじ。
「おかあ・・・」と花は言ったが。
そこへ頭を丸刈りにした吉太郎が
帰ってきた。
甲種合格になったという。
ふじは驚いた。

本当は、落ちてほしかったのか?
それとも?

吉太郎は冬になったら入営だという。
呆然とするふじ。
「喜んでくれんのけ?」
「よかったじゃん、吉太郎・・
おめでとう」
「あにやん、おめでとう」と花。

周造は言葉がなかった。
その夜、縁側で一人
吉太郎はあの日、蓮子がくれた
本を読んでいた。

君死に給うことなかれ・・・・
君死に給うことなかれ・・・

ももがきた。
「兄やんがいなくなったらさみしいな」

「おらが軍隊に行くのは家族のためだから。
みんなにちっとは楽をさせてやりたい
から・・
花が帰ってきたし兄やんもこれで安心して
いけれる。」

「兄やん好きな人はいねーのけ?」
「だけんどもう遠くに言っちまった」
「さみしいね・・・」
「おぼこのくせにませたことを言うな!」
ももは笑った。

その本を贈った本人は福岡にいた。
居間で本をかたづけているとき
ふと手にした本に「みみずの女王」の
小説が載っていた。安東花とある。
蓮子は驚きのあまり、その小説に
ひきつけられた。

そこへ伝助が帰ってきた。
「旦那様お帰りなさいませ。」
女中が言う。
「冬子は?」
ときくとお風呂に入っていると答えた。
居間に行くと蓮子がじっと
本を読んでいた。
伝助が帰ったことにも気がつかない。
じっと本を読む蓮子。
それをじっとみる伝助。
この間、数分間だった。
亭主が帰ってきてもお帰りなさいもない。
伝助は蓮子のそばにしゃがんだ。
ハッと気が付いた蓮子。
「あんたは本を読んでいるときが
一番ごきげんがいいちゃね。」

蓮子は、友達が小説を書いて
賞を取ったと話をした。
すごく面白いといってその本を
ひらけて伝助の前に見せた。
伝助はじっとみていたが
「俺は本は好かん」といった。

★伝助は本が嫌いなのではなく
字が読めないということに
蓮子はとっくに気が付いていました。
★無学であることをばねにここまでのし上がった
男なのです。

「はなちゃん。ご無沙汰しております
みみずの女王大変おもしろく拝読しました。
本で知ったのですが甲府に帰られたのですね
お母様やご家族の皆様はお元気で
おすごしですか?ああ、花ちゃん、なにもかもが
懐かしくてたまりません・・・」

そこまで書いて蓮子は気が付いた。
あの日・・・・蓮子はひどいことを言ったのだ。


「いい加減にして下さらない。こどもじみた
友情ごっこは飽き飽きしました。
まさか、本当に私と腹心の友になったと
お思いではないですよね。
そもそも、伯爵家で育った私と
山梨の貧しい農家で育ったあなたとは
住む世界が違いすぎるんです。」

蓮子は手紙をたたんだ

「私から連絡なんかできるはずなんか
ないのに・・・」そう呟いて
手紙をくしゃくしゃとまるめた。

★その頃花は、受賞のために東京に
きておりました。
受賞会場でのこと。
花は主催者にあいさつをした。

「ごきげんよう。このたびは祝賀会に
お招きいただきありがとうございました。」

主催者は「おめでとうございます。もうすぐ
祝賀会が始まりますから」といった。
人が集まっている中から花を見知った人がいた。

村岡英治だった。

「あ、」というと花も気が付いた。
「安東花さんこのたびは受賞おめでとう
ございます。」
「花ではなりません、花子です。」
「はい?」
花は村岡が花の本名を知っているので
名前を間違えたんだと思ったのでそういった。
村岡は、「は?」という。
「私の名前間違えて乗っています」

花は「私は安東花子と書いて送りました。」
という。
「お名前を間違えるとは失礼しました。」
と、出版社の人が言う。

「入稿するときは花子になっていた」というが。
「お宅の印刷所がまちがえたんだ」という。
村岡は「それは違う」というが
「なぜ間違えたのかなぞだ」という。
「それで謝っているつもりですか?」
花はおかんむりだった。

村岡は「あったら言おうとしたことがある
みみずの女王は面白いと・・」といった。
花は「話をすり替えないでください」という。
「いえ、本当にそう思いました。
みみずのふと子さんとセキレイの親子の
対比が実にいい。あなたの想像力には
脱帽しました。」

「そのお言葉が本当なら作者の名前を
間違えたりするかしら?」
「またそこに戻りますか?」
「あたりまえでしょ。だって村岡印刷さん」
「その呼び方やめていただけますか?
僕は村岡英治です。」
「ほら、ご自分だって名前にこだわって
いるくせに。
私は初めて本に自分の名前が載ったんです。
一生の記念なのに名前を間違えられるなんて。
この悔しさがお分かりですか?
村岡印刷さん。」

「またいった。今のはわざとですよね。」
「あらぁごめんあそばせ、村岡印刷さん」
「安東花さんも結構嫌味な性格ですね。」
「嫌味って何よ、自分の失敗を棚に上げて」
「失敗ってね・・」

「もうそのくらいにしたまえ!」
痴話げんかのような状況に割って入ってきた
のは、梶原だった。

「口げんかで女性に勝てる男は
いないよ。」
「梶原さん!」花は久しぶりの編集長に
「ごきげんよう、ご無沙汰しております」
と挨拶をした。

梶原は「あの作品は面白かったよ。
みみずのふと子さんとセキレイの親子の
対比が実にいい。」
村岡は、「あれっ」と思った。
「梶原さんにそう言っていただけるのは
感激です。」と喜ぶ花。
同じことをさっき自分も言ったのに
なぜこの反応が違うのかと村岡は
合点がいかない。

★なぜ花子が花になったのか真相はいかに?

村岡は花を見る。

つんとする花・・・
ごきげんななめのふたり。

ごきげんよう

さようなら・・・
**************
蓮子の結婚生活も、おかしなものになって
いる。
伝助が字が読めないことをわかっていて
ほら・・・と本を広げて
読ませようとしたことは、なんでしょうか?
いけずでしょうか?

そして花に手紙を書こうとしたけど
確かにひどいことを言ったのであれでは
手紙なんか出せない。
悔しい、さみしい思いをする蓮子さん。

村岡との再会で名前を間違えられて
怒りをぶつける花。
面白いと言えば面白い。

花は小説家になるのでしょうか。

吉太郎はもしかしたら、蓮子が
結婚しなかったら、君死に給うことなかれ
といわれたので、兵隊へ
行くことをやめたでしょうか。

貧乏だから、自分が兵隊に行くと
いうが、それが悲しい。
貧乏だから、人を殺しに行かないと
お金が入らない・・・
貧乏だから自分の命を
投げ出して兵隊になり、それと交換に
お金をもらわないと
家族が生きていけれない・・
何か矛盾してないかな??

伝助にしろ、吉太郎にしろ、文字が
読めたら、もっと違う人生になって
いたのではないかと思う。

自分を啓発することができるしね。

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昨日の分を今日書いています。
もう少ししたら、今日の分を書きます。
しばし・・・お待ちくださいませ・・・。