想像のツバサ?4
職員室で花は校長先生に退職届を提出した。
校長は受け取ってじっとみた。
花は「短い間でしたがご迷惑をおかけして
本当に申し訳ございませんでした。」
といって礼をして去ろうとした。
朝市が職員室にいてその様子を見ていた。
「ちょっとまてっし・・」
と校長が言う。
「たったの一か月で退職届を出す教師が
どこにいるだ???」
「だって・・・・校長先生がわたしが
教師に向いてないって・・。」
「だっても、くそもない。すぐに代用の教師も
みつからんし、明日から心を入れ替えて
こぴっとやれっし!!!」
花も朝市も驚いた。
「これは預かっておく
今度また問題を起こしたら本当に
やめてもらうぞ」
「はい。ありがとうごいっす。」
実のところ子どもたちが、花先生を
辞めさせないでと校長先生に
言ってきたらしい。
花は「あの子供たちが?と信じられない。」
と驚く。
それを知っていた朝市は、「本当だよ」
という。
花は嬉しくて・・・うれしくて・・・。
翌日のこと花は出かけるときに
「まだ、何も失敗していない」と
自分に言い聞かせる。言い聞かせながら
風呂敷に教科書を詰める。
「今日は新しい日だ・・・まだなにも失敗して
いない。大丈夫だ・・・まだなにも・・・」
出かけるとき、周造がいった。
「人生では失敗はよくあるが、同じ失敗を
しないければ、失敗する数は限られて
いる。すると失敗をさっさとしてしまえば
もう失敗することなどない。」
花は「・・・なるほど・・」と思った。
「おじいやん、いいこというな・・おらもう
失敗をしつくしたかもしれない。」
音楽の時間、子供たちが大きな声でふじの山を
歌う。
国語の時間、子供たちに笑うべし、と読んで笑う
生物の時間、子供たちと魚に餌をやってみる。
★ようやく花も先生らしくなってきたある日
一通の手紙が届きました。
こずかいさんが、それを花に渡した。
てがみといっても、それは・・
★それはひと月前に学校をやめた小山たえ
の手紙でした。
切手を買うお金もないたえの手紙は
人の手から手へと渡り、何日もかかって花の
もとにたどり着いたのでした。
「て!」
「花先生、ごきげんよう。おげんきずらか。
おらは双子の子守りをしながらひもじい思い
もすることがなくなりました。
でも、あんまし元気ではありません。
ここはしらねーひとばっかりでおらは
ひとりぼっちです。
おとうや弟にあいてーです。
学校にも行きてーです。
みんなにもあいて―です。
花先生にあいてーなー。
さみしくて泣きたくなる時も
あります。そんな時は想像の翼を
広げてあの本の部屋に飛んでいくだ
よ。」
花はあの日、教会の図書室につれていった
ことやたくさんの本を見て嬉しそうな
たえを思い出した。
そしてたえは
花の作ったお話を喜んで聞いてくれた。
「先生が作ったお話の続きをいつか
教えてくりょ。
楽しみにしています」
花は手紙をにぎりしめた。
そして・・・
原稿に向かって、一枚目・・・
真ん中の行に「みみずの女王」と
書いた・・・・。
執筆の第一歩だった。
「あるところにたいそう長くてふとった
みみずが
おりました・・・・・・。」
やがて日も落ちて夕方になった。
時間を忘れて原稿を書いている花。
そこへ朝市がやってきた。
花は「できた・・・・」といった。
朝市に気が付いた。
小山たえのために童話を書いたことを
話したが・・・送ろうにも住所が
わからない。
朝市は考えた。
「て!
そうだ!!」
朝市は雑誌を見せた。
「ここに・・・」それは懸賞付きの
応募だった。
「雑誌にのればたえさんも読んでくれ
るかもしれない。」と朝市。
★なるほど、その手があったか。
朝市、グッドアイディア。
一方福岡の嘉納家では、蓮子は冬子の
行儀作法の指導をしていた。
夕食のステーキを無骨な手つきで
食べる冬子。
「塩とっちゃんさい。」という。
「御塩を取っていただけますかでしょ?」
「御塩を取っていただけますか。」
「それを英語で言ってみましょう。」
「は?英語なんかわからん。」
「昨日も言ったでしょ。私の後についていって
ごらんなさい。」
「クジューバスミーザソルト、プリーズ。」
「くじゅーみーぱ・・す・・・」
「もう一度!
クジュー・・・」
「もうよかろうの!!」
冬子は怒って立ち上がった。
「食事の途中で立ち上がるのは不作法です。
座りなさい。食事を続けなさい。」
冬子は怒って蓮子を睨み付けさっていった。
女中たちはためいきをついて、「冬子さまの
ためにおにぎりを・・・」という
「育ちざかりの子にご飯も食べさせんで
はぁ~~旦那様もたいがいひどい人と
結婚したものやね~~~~」
そこに伝助が帰ってきた。
「今夜も何時にお戻りになるかわからない
ので先にいただきました」と蓮子は言う。
伝助はそんなことはいいといいながら
冬子のお皿を見て、「ろくに食ってないぞ」という。
たったまま
お皿のおかずを手でつまみあげて口に運んだ。
驚く蓮子。
伝助は「夜は女学校の打ち合わせに宴会
じゃけん」と言って
出て行った。
★福岡に理想の女学校を作るという夢は
伝助との結婚で見出した蓮子の唯一の
希望の光なのでした。
ところが・・・・・
翌朝のこと、女学校の教育方針はすべて
他人任せで伝助は口は出さんが金は出す
ということにしたという。
(そもそも、伝助の何がなぜ学校なのか?
伝助の気持ちがわからない。)
「約束が違う」と蓮子はいうが、約束も何も
していないといいながらトーストに
醤油をかけて食べる伝助だった。
「また私をだましたのですね」と蓮子は言う。
「亡くなった奥様との間には子供がいないと
言ってそのうえまた・・・・。」
「もうその話はよかろうが」と伝助。
「女学校のことはあきらめません」。
「大体この田舎に英語とか淑女とかいう
女学校を作っても仕方がないという。
そげな上等な女学校はいらん。
おなごは勉強などできなほうがかわいげ
があっていい」といって立ち上がった。
蓮子は伝助を追いかけるようにいった。
「それは私に対するあてつけですか!」
伝助は蓮子を見てそして何も言わずに
去って行った。
女中たちはそれに合わせて食堂から
でていった。
★蓮子を支えていた夢はあっけなく
砕け散ったのでした。
一方夢への一歩を踏み出そうとして
いた花は・・・
あの原稿用紙の右の角に穴をあけて
こよりでつづった。
そして、題目の下に
安東・・・と名前を書こうとして
手が止まった。
「花ちゃんは花子と呼ばれたかった
のよね。
世に出るときはその名前を使えば
いいじゃない」
「ペンネームね・・・」
あの日、蓮子と話したことを思い浮かべ
花は 「安東花子」と書いた。
朝市は、「花子か・・・」といって
嬉しそうに花を見た。
花は花子として世に出る一歩を
感じた。
ごきげんよう
さようなら
*****************
花はやっと教師らしくなり
夢をたえを通して実現しようとした。
蓮子は、夢が破れるのを感じた。
二人の相対的な人生をみながら
この二人がこの先、どうこでどう
折り合いをつけて、出会うことになるのかと
思う。
伝助の学校の方針作りは他人任せにする
ものではないと思う。
賢い女性はかわいくないというが、
それは男のレベルが低いからである。
その低さを認めたくないのである。
女は自分よりあほで単純であってほしい
のなら蓮子を嫁にもらうのはやめたほう
がよかったはずだったのに・・・。
伝助は蓮子に一目で惚れていたのかと思う。
冬子さん・・・気の毒だと思うけど
伝助の教育の結果であろう。
このような教育観の持ち主なので
彼は学校の方針作りにかまないほうがいい
と思うが。
職員室で花は校長先生に退職届を提出した。
校長は受け取ってじっとみた。
花は「短い間でしたがご迷惑をおかけして
本当に申し訳ございませんでした。」
といって礼をして去ろうとした。
朝市が職員室にいてその様子を見ていた。
「ちょっとまてっし・・」
と校長が言う。
「たったの一か月で退職届を出す教師が
どこにいるだ???」
「だって・・・・校長先生がわたしが
教師に向いてないって・・。」
「だっても、くそもない。すぐに代用の教師も
みつからんし、明日から心を入れ替えて
こぴっとやれっし!!!」
花も朝市も驚いた。
「これは預かっておく
今度また問題を起こしたら本当に
やめてもらうぞ」
「はい。ありがとうごいっす。」
実のところ子どもたちが、花先生を
辞めさせないでと校長先生に
言ってきたらしい。
花は「あの子供たちが?と信じられない。」
と驚く。
それを知っていた朝市は、「本当だよ」
という。
花は嬉しくて・・・うれしくて・・・。
翌日のこと花は出かけるときに
「まだ、何も失敗していない」と
自分に言い聞かせる。言い聞かせながら
風呂敷に教科書を詰める。
「今日は新しい日だ・・・まだなにも失敗して
いない。大丈夫だ・・・まだなにも・・・」
出かけるとき、周造がいった。
「人生では失敗はよくあるが、同じ失敗を
しないければ、失敗する数は限られて
いる。すると失敗をさっさとしてしまえば
もう失敗することなどない。」
花は「・・・なるほど・・」と思った。
「おじいやん、いいこというな・・おらもう
失敗をしつくしたかもしれない。」
音楽の時間、子供たちが大きな声でふじの山を
歌う。
国語の時間、子供たちに笑うべし、と読んで笑う
生物の時間、子供たちと魚に餌をやってみる。
★ようやく花も先生らしくなってきたある日
一通の手紙が届きました。
こずかいさんが、それを花に渡した。
てがみといっても、それは・・
★それはひと月前に学校をやめた小山たえ
の手紙でした。
切手を買うお金もないたえの手紙は
人の手から手へと渡り、何日もかかって花の
もとにたどり着いたのでした。
「て!」
「花先生、ごきげんよう。おげんきずらか。
おらは双子の子守りをしながらひもじい思い
もすることがなくなりました。
でも、あんまし元気ではありません。
ここはしらねーひとばっかりでおらは
ひとりぼっちです。
おとうや弟にあいてーです。
学校にも行きてーです。
みんなにもあいて―です。
花先生にあいてーなー。
さみしくて泣きたくなる時も
あります。そんな時は想像の翼を
広げてあの本の部屋に飛んでいくだ
よ。」
花はあの日、教会の図書室につれていった
ことやたくさんの本を見て嬉しそうな
たえを思い出した。
そしてたえは
花の作ったお話を喜んで聞いてくれた。
「先生が作ったお話の続きをいつか
教えてくりょ。
楽しみにしています」
花は手紙をにぎりしめた。
そして・・・
原稿に向かって、一枚目・・・
真ん中の行に「みみずの女王」と
書いた・・・・。
執筆の第一歩だった。
「あるところにたいそう長くてふとった
みみずが
おりました・・・・・・。」
やがて日も落ちて夕方になった。
時間を忘れて原稿を書いている花。
そこへ朝市がやってきた。
花は「できた・・・・」といった。
朝市に気が付いた。
小山たえのために童話を書いたことを
話したが・・・送ろうにも住所が
わからない。
朝市は考えた。
「て!
そうだ!!」
朝市は雑誌を見せた。
「ここに・・・」それは懸賞付きの
応募だった。
「雑誌にのればたえさんも読んでくれ
るかもしれない。」と朝市。
★なるほど、その手があったか。
朝市、グッドアイディア。
一方福岡の嘉納家では、蓮子は冬子の
行儀作法の指導をしていた。
夕食のステーキを無骨な手つきで
食べる冬子。
「塩とっちゃんさい。」という。
「御塩を取っていただけますかでしょ?」
「御塩を取っていただけますか。」
「それを英語で言ってみましょう。」
「は?英語なんかわからん。」
「昨日も言ったでしょ。私の後についていって
ごらんなさい。」
「クジューバスミーザソルト、プリーズ。」
「くじゅーみーぱ・・す・・・」
「もう一度!
クジュー・・・」
「もうよかろうの!!」
冬子は怒って立ち上がった。
「食事の途中で立ち上がるのは不作法です。
座りなさい。食事を続けなさい。」
冬子は怒って蓮子を睨み付けさっていった。
女中たちはためいきをついて、「冬子さまの
ためにおにぎりを・・・」という
「育ちざかりの子にご飯も食べさせんで
はぁ~~旦那様もたいがいひどい人と
結婚したものやね~~~~」
そこに伝助が帰ってきた。
「今夜も何時にお戻りになるかわからない
ので先にいただきました」と蓮子は言う。
伝助はそんなことはいいといいながら
冬子のお皿を見て、「ろくに食ってないぞ」という。
たったまま
お皿のおかずを手でつまみあげて口に運んだ。
驚く蓮子。
伝助は「夜は女学校の打ち合わせに宴会
じゃけん」と言って
出て行った。
★福岡に理想の女学校を作るという夢は
伝助との結婚で見出した蓮子の唯一の
希望の光なのでした。
ところが・・・・・
翌朝のこと、女学校の教育方針はすべて
他人任せで伝助は口は出さんが金は出す
ということにしたという。
(そもそも、伝助の何がなぜ学校なのか?
伝助の気持ちがわからない。)
「約束が違う」と蓮子はいうが、約束も何も
していないといいながらトーストに
醤油をかけて食べる伝助だった。
「また私をだましたのですね」と蓮子は言う。
「亡くなった奥様との間には子供がいないと
言ってそのうえまた・・・・。」
「もうその話はよかろうが」と伝助。
「女学校のことはあきらめません」。
「大体この田舎に英語とか淑女とかいう
女学校を作っても仕方がないという。
そげな上等な女学校はいらん。
おなごは勉強などできなほうがかわいげ
があっていい」といって立ち上がった。
蓮子は伝助を追いかけるようにいった。
「それは私に対するあてつけですか!」
伝助は蓮子を見てそして何も言わずに
去って行った。
女中たちはそれに合わせて食堂から
でていった。
★蓮子を支えていた夢はあっけなく
砕け散ったのでした。
一方夢への一歩を踏み出そうとして
いた花は・・・
あの原稿用紙の右の角に穴をあけて
こよりでつづった。
そして、題目の下に
安東・・・と名前を書こうとして
手が止まった。
「花ちゃんは花子と呼ばれたかった
のよね。
世に出るときはその名前を使えば
いいじゃない」
「ペンネームね・・・」
あの日、蓮子と話したことを思い浮かべ
花は 「安東花子」と書いた。
朝市は、「花子か・・・」といって
嬉しそうに花を見た。
花は花子として世に出る一歩を
感じた。
ごきげんよう
さようなら
*****************
花はやっと教師らしくなり
夢をたえを通して実現しようとした。
蓮子は、夢が破れるのを感じた。
二人の相対的な人生をみながら
この二人がこの先、どうこでどう
折り合いをつけて、出会うことになるのかと
思う。
伝助の学校の方針作りは他人任せにする
ものではないと思う。
賢い女性はかわいくないというが、
それは男のレベルが低いからである。
その低さを認めたくないのである。
女は自分よりあほで単純であってほしい
のなら蓮子を嫁にもらうのはやめたほう
がよかったはずだったのに・・・。
伝助は蓮子に一目で惚れていたのかと思う。
冬子さん・・・気の毒だと思うけど
伝助の教育の結果であろう。
このような教育観の持ち主なので
彼は学校の方針作りにかまないほうがいい
と思うが。
