想像のツバサ1
1945年昭和20年東京・・・
花子はアンの翻訳をつづっている。
「わたし、もうきめたのよ。
ここに残って先生になるの。
だから私のことは心配しないでね。」
「でもあんたには夢が合ったじゃないか」
「今まで通り夢はあるわ。
ただ夢のありかたがかわったのよ。
いい先生になろうと思うの。
ここでせいいっぱいやってみるつもりよ。
そうすればきっと最高のものが帰ってくる
はずよ・・。」
そこまで書いて花は思った
「わたしはちっともいい先生になれなかった。
でも最高のものが帰ってきたわ・・・」
★修和女学校を卒業した花は故郷にかえり
アンと同じように小学校の先生になりました。
1913年大正2年4月甲府。
★今日は新任初日の朝です。
花は風呂敷に教科書を詰めた
「いってまいります・・・。」
周造は「大丈夫か」と聞く
でも、ふじは「上手に英語を教えていたから
大丈夫だ」というが・・
花は日本語のほうが緊張しているという。
朝市がおなじく新任教師だが
花を迎えに来た。
★花たちの担任だった本多先生は校長先生
になっていました。
花と朝市は校長に挨拶をした。
校長はほかの先生方に二人を紹介した。
「木場朝市です。
母校の教師になれてふんとにうれしいです。
がんばります。」
「安東花です。
はやく6年生のクラスになれるようにがんばります。」
するとある男の先生が聞いた。
「6年生のカラス?」
花は「6年生のクラスです」といった。
校長は「それは英語け?」と聞く。
「あ、・・・そうです。」
校長は、「あー安東君は東京のミッチョンスクールに
通っていたから英語ができるずら・・・うん・・」
花は「あの・・・ミッションスクールです・・・」というが・・。
先ほどの先生は緑川幾三という先生で
メガネをかけた男の先生である。
その緑川が、校長先生に言った。
「こんな先生を6年生の担任にして大丈夫ですか」と聞く。
「西洋かぶれの先生が子供たちにろくなことを
ふきこまんといいのですが。
ね?先生方?」
授業の鐘が鳴った。
教室に入ると花は「みなさんごきげんよう」といった。
爆笑だった。
「ごきげんようってなんずら?」
「ごきげんいかがですか?ってことです。」
「先生は東京の女学校から来たってホントけ?」
「ええ、10歳まではこの学校にいたのよ。」
花はひとりひとり出席を取り始めた。
その中に小山たえという少女がいる。
たえは、背中に弟を背負っていた。
昔の花のようだった。
そのたえが遅れてきた。
学校に来る途中、弟がおしっこをもらした
というのだ。
他の子供たちは「くせーくせー」といって
はやしたてた。
花は「みんなもこどものころはもらしていただ!」と
いう。
なんにせよ、なにかあると
わぁーわぁーさわぐクラスだった。
作文の授業だ。
題は友だち。
「おらの友達はひろし君だ。
毎日二人で虫を取って遊びます。
おらはバッタの次にひろし君がすきです。」
わーわーである。
「まさるくんありがとう。
つぎは・・・たえさん。」
「はい・・・・。」
たえはたったままだったが、花が手に持っていた
原稿を見ようとしたらたえは隠した。
するとまさるが、「書いてるじゃん」といって
原稿をひったくって
読み始めた。
「わたしの友達は双子の河童です。
いつも川へ水を汲みに行くと
その河童たちに会えます。」
まさるたちはワーワーと笑い始めた。
「なんで~~双子の河童って笑わせるじゃん。」
そういって、原稿を返した。
花は続きを読むように言った。
「先生続きが聞きたいさ。」
「弟が泣き止まないとき
河童たちは愉快な踊りをして弟を
あやしてくれます。
二人は夕日の国に住んでいて
金色や茜色のきれいな着物を
何枚も持っています。
わたしもいつかその夕日の国にいって
みたいです。」
「たえさん、すばらしいわ。
先生は想像を掻き立てられて
わくわくしました。」
たえは花をじっと見た。
「河童なんて嘘に決まってんじゃん
こいつんちは貧乏で友達なんか
いねーじゃん。」
「そうだ、そうだ!!」
まさるたちである。
「うそつき、貧乏」
「うそつき、貧乏~~」
またわーわーである。
「やめなさい!!!」
花は叫んだが・・。
わーわーは静まらない。
緑川がやってきた。
「これ~~~~静かにしないか!!!
うるさくて授業にならんが・・。
静かにしろし!!」
それでもワーワーだった。
花は叫んだ。
「ビークワイエット!!!!!!」
一瞬、静かになった。
「ビー クワイ???」
緑川が聞いた。
花は、やってしまったと思った。
職員室では緑川が英語なんかで生徒を注意して
聞くわけないという。
「東京のミッチョンスクールだか何だか知らんが。」
「ミッションスクールです・・ミッション・・・」
と花は言い直すが。
「そんな御たいそうな学校出たんなら
教員なんかならんで
早く嫁にいキャーいいのに、早く!!!」
花はじーーっと緑川をにらんだ。
「何でぇその目は?
これだから女は好かん。」
朝市は心配そうにそのやり取りを見ていた。
「うちは静かに授業をやっているのだから
邪魔だけはしないでくれちゃ!!!!」
と怒鳴られたが・・・・。
静かになどならない。
授業はどんどん雑音騒音満載で
子どもたちは騒ぐ一方である。
「勉強なんかやりたくない」
「勉強なんかやりたくない~~」
「おねがいだから、静かにして!!」
朝市のクラスまで騒音が聞こえてくる。
気になる朝市。
「それでは、今日の理科の授業は
生き物の勉強をします!」
と言って机をバンとたたいた。
その瞬間、静かになった。
静かになったので朝市はほっとした。
ところが緑川が大騒ぎを始めた。
校長に、6年生のクラスがからっぽで
花もいないと報告した。
たしかにからっぽだった。
しばらくして、教室に連中が帰ってきた。
「はーい
グッド モーニング
グッド、アフタヌーン
グッド イブニング~~」
と声をそろえて言いながら帰ってきた。
「はーい
グッド・・」
と繰り返そうとしてそこに大きな男が
立ちふさがった。
花は、「て!!!」と叫んだ。
その男は
教会に朝市と忍び込んだ時
追いかけてきた教会の下僕の
男だった。
それを思い出して花はぞっとした。
「花先生、どうしただ?」
「小遣いさんしっているの?」
と聞く。
「え?こづかいさん???」
男は、「早く教室に戻れ。
校長先生の雷が落ちるぞ」
といった。
教室に入ろうとしたら、そこに
校長がやってきた。
緑川も朝市も。
どこへ行っていたのかと聞く校長に
校外授業ですといった。
「花先生とバッタを取りました。」
「花もつみました。」
「河童を探しに行こうって花先生がいうから。」
「英語も教わったジャン」
「英語??」と校長先生。
「花先生を叱らないでくりょ。」と、たえ。
「校長先生!!!」とクラス全員が声をそろえて
「アイム ソーリー~~」といった。
「うるせーーーーー!!!!!!!!!
金輪際生徒に英語なんか教えるんじゃない!
英語は禁止
河童も禁止
わかったな!!!」
「すみません~~~」と花はあやまるが。
朝市は、「安東先生は生徒が騒いで他の教室に
うるさいから気を使って校外授業に出かけた
と思います。今日だけは許してやってください
お願いします。」と頭を下げた。
校長は、「おまえまで花の肩をもつだか?」
という。
「生徒たちもこんなに楽しそうだし」
「楽しければいいってもんじゃない
おまえら二人とも教師の自覚がたらーーーん!
花!!!
朝市!!!!
たっちょれーーーーーーーー!!!」
赤ん坊が泣いた。
かくして、二人の先生はバケツを持って廊下に
立たされた。
「ごめんなさい。朝市までこんなことになって。」
「さすがに、河童を探しに行くのはまずいな。」
「でもあの森の向こうに河童がいるなんて
思うと気持ちがわくわくして楽しくなるじゃん。」
思い返せば、小学校の時も
こんな場面があったと朝市はおもった。
「あんときみてーじゃん。」
★そういえば昔もこんなことがありましたね・・・
そんな二人を子どもたちはそっと
見ていた。
★ごきげんよう
さようなら・・・。
*********************
お話が、いっきに
田舎になりました。のどかになりました。
あの丁寧な東京のお嬢様言葉から
いっきに、地方の方言に・・
しかも、緑川・・・
さっさと嫁に行けとか
おなごはすかんとは・・・先生の言う言葉ではない。
子どもたちが騒ぐのは、仕方がない。
おもしろくないのだから・・・。
だったら・・・と思うけどさすがに・・・
校外学習は校長の許可がいると思うけど。
もともと朝市と違って花は教師になりたいと
思っていたわけではないのでその辺の
覚悟がない。
こんな先生でいいのかと思うけど、たえという少女
の作文は面白い。
きっと彼女は想像のツバサをもっているのだろうと
思う。
双子の河童の話である。
毎日どんなことがあったのか、河童の話を
聞きたくなる。
春・・・の設定の学校。
廊下も、校舎も
透明のガラス窓。
木製のガラス窓わく。
がたがたと、あける音。
そして、鳥の鳴き声が
よく聞こえる。
なんだか懐かしい設定である。
1945年昭和20年東京・・・
花子はアンの翻訳をつづっている。
「わたし、もうきめたのよ。
ここに残って先生になるの。
だから私のことは心配しないでね。」
「でもあんたには夢が合ったじゃないか」
「今まで通り夢はあるわ。
ただ夢のありかたがかわったのよ。
いい先生になろうと思うの。
ここでせいいっぱいやってみるつもりよ。
そうすればきっと最高のものが帰ってくる
はずよ・・。」
そこまで書いて花は思った
「わたしはちっともいい先生になれなかった。
でも最高のものが帰ってきたわ・・・」
★修和女学校を卒業した花は故郷にかえり
アンと同じように小学校の先生になりました。
1913年大正2年4月甲府。
★今日は新任初日の朝です。
花は風呂敷に教科書を詰めた
「いってまいります・・・。」
周造は「大丈夫か」と聞く
でも、ふじは「上手に英語を教えていたから
大丈夫だ」というが・・
花は日本語のほうが緊張しているという。
朝市がおなじく新任教師だが
花を迎えに来た。
★花たちの担任だった本多先生は校長先生
になっていました。
花と朝市は校長に挨拶をした。
校長はほかの先生方に二人を紹介した。
「木場朝市です。
母校の教師になれてふんとにうれしいです。
がんばります。」
「安東花です。
はやく6年生のクラスになれるようにがんばります。」
するとある男の先生が聞いた。
「6年生のカラス?」
花は「6年生のクラスです」といった。
校長は「それは英語け?」と聞く。
「あ、・・・そうです。」
校長は、「あー安東君は東京のミッチョンスクールに
通っていたから英語ができるずら・・・うん・・」
花は「あの・・・ミッションスクールです・・・」というが・・。
先ほどの先生は緑川幾三という先生で
メガネをかけた男の先生である。
その緑川が、校長先生に言った。
「こんな先生を6年生の担任にして大丈夫ですか」と聞く。
「西洋かぶれの先生が子供たちにろくなことを
ふきこまんといいのですが。
ね?先生方?」
授業の鐘が鳴った。
教室に入ると花は「みなさんごきげんよう」といった。
爆笑だった。
「ごきげんようってなんずら?」
「ごきげんいかがですか?ってことです。」
「先生は東京の女学校から来たってホントけ?」
「ええ、10歳まではこの学校にいたのよ。」
花はひとりひとり出席を取り始めた。
その中に小山たえという少女がいる。
たえは、背中に弟を背負っていた。
昔の花のようだった。
そのたえが遅れてきた。
学校に来る途中、弟がおしっこをもらした
というのだ。
他の子供たちは「くせーくせー」といって
はやしたてた。
花は「みんなもこどものころはもらしていただ!」と
いう。
なんにせよ、なにかあると
わぁーわぁーさわぐクラスだった。
作文の授業だ。
題は友だち。
「おらの友達はひろし君だ。
毎日二人で虫を取って遊びます。
おらはバッタの次にひろし君がすきです。」
わーわーである。
「まさるくんありがとう。
つぎは・・・たえさん。」
「はい・・・・。」
たえはたったままだったが、花が手に持っていた
原稿を見ようとしたらたえは隠した。
するとまさるが、「書いてるじゃん」といって
原稿をひったくって
読み始めた。
「わたしの友達は双子の河童です。
いつも川へ水を汲みに行くと
その河童たちに会えます。」
まさるたちはワーワーと笑い始めた。
「なんで~~双子の河童って笑わせるじゃん。」
そういって、原稿を返した。
花は続きを読むように言った。
「先生続きが聞きたいさ。」
「弟が泣き止まないとき
河童たちは愉快な踊りをして弟を
あやしてくれます。
二人は夕日の国に住んでいて
金色や茜色のきれいな着物を
何枚も持っています。
わたしもいつかその夕日の国にいって
みたいです。」
「たえさん、すばらしいわ。
先生は想像を掻き立てられて
わくわくしました。」
たえは花をじっと見た。
「河童なんて嘘に決まってんじゃん
こいつんちは貧乏で友達なんか
いねーじゃん。」
「そうだ、そうだ!!」
まさるたちである。
「うそつき、貧乏」
「うそつき、貧乏~~」
またわーわーである。
「やめなさい!!!」
花は叫んだが・・。
わーわーは静まらない。
緑川がやってきた。
「これ~~~~静かにしないか!!!
うるさくて授業にならんが・・。
静かにしろし!!」
それでもワーワーだった。
花は叫んだ。
「ビークワイエット!!!!!!」
一瞬、静かになった。
「ビー クワイ???」
緑川が聞いた。
花は、やってしまったと思った。
職員室では緑川が英語なんかで生徒を注意して
聞くわけないという。
「東京のミッチョンスクールだか何だか知らんが。」
「ミッションスクールです・・ミッション・・・」
と花は言い直すが。
「そんな御たいそうな学校出たんなら
教員なんかならんで
早く嫁にいキャーいいのに、早く!!!」
花はじーーっと緑川をにらんだ。
「何でぇその目は?
これだから女は好かん。」
朝市は心配そうにそのやり取りを見ていた。
「うちは静かに授業をやっているのだから
邪魔だけはしないでくれちゃ!!!!」
と怒鳴られたが・・・・。
静かになどならない。
授業はどんどん雑音騒音満載で
子どもたちは騒ぐ一方である。
「勉強なんかやりたくない」
「勉強なんかやりたくない~~」
「おねがいだから、静かにして!!」
朝市のクラスまで騒音が聞こえてくる。
気になる朝市。
「それでは、今日の理科の授業は
生き物の勉強をします!」
と言って机をバンとたたいた。
その瞬間、静かになった。
静かになったので朝市はほっとした。
ところが緑川が大騒ぎを始めた。
校長に、6年生のクラスがからっぽで
花もいないと報告した。
たしかにからっぽだった。
しばらくして、教室に連中が帰ってきた。
「はーい
グッド モーニング
グッド、アフタヌーン
グッド イブニング~~」
と声をそろえて言いながら帰ってきた。
「はーい
グッド・・」
と繰り返そうとしてそこに大きな男が
立ちふさがった。
花は、「て!!!」と叫んだ。
その男は
教会に朝市と忍び込んだ時
追いかけてきた教会の下僕の
男だった。
それを思い出して花はぞっとした。
「花先生、どうしただ?」
「小遣いさんしっているの?」
と聞く。
「え?こづかいさん???」
男は、「早く教室に戻れ。
校長先生の雷が落ちるぞ」
といった。
教室に入ろうとしたら、そこに
校長がやってきた。
緑川も朝市も。
どこへ行っていたのかと聞く校長に
校外授業ですといった。
「花先生とバッタを取りました。」
「花もつみました。」
「河童を探しに行こうって花先生がいうから。」
「英語も教わったジャン」
「英語??」と校長先生。
「花先生を叱らないでくりょ。」と、たえ。
「校長先生!!!」とクラス全員が声をそろえて
「アイム ソーリー~~」といった。
「うるせーーーーー!!!!!!!!!
金輪際生徒に英語なんか教えるんじゃない!
英語は禁止
河童も禁止
わかったな!!!」
「すみません~~~」と花はあやまるが。
朝市は、「安東先生は生徒が騒いで他の教室に
うるさいから気を使って校外授業に出かけた
と思います。今日だけは許してやってください
お願いします。」と頭を下げた。
校長は、「おまえまで花の肩をもつだか?」
という。
「生徒たちもこんなに楽しそうだし」
「楽しければいいってもんじゃない
おまえら二人とも教師の自覚がたらーーーん!
花!!!
朝市!!!!
たっちょれーーーーーーーー!!!」
赤ん坊が泣いた。
かくして、二人の先生はバケツを持って廊下に
立たされた。
「ごめんなさい。朝市までこんなことになって。」
「さすがに、河童を探しに行くのはまずいな。」
「でもあの森の向こうに河童がいるなんて
思うと気持ちがわくわくして楽しくなるじゃん。」
思い返せば、小学校の時も
こんな場面があったと朝市はおもった。
「あんときみてーじゃん。」
★そういえば昔もこんなことがありましたね・・・
そんな二人を子どもたちはそっと
見ていた。
★ごきげんよう
さようなら・・・。
*********************
お話が、いっきに
田舎になりました。のどかになりました。
あの丁寧な東京のお嬢様言葉から
いっきに、地方の方言に・・
しかも、緑川・・・
さっさと嫁に行けとか
おなごはすかんとは・・・先生の言う言葉ではない。
子どもたちが騒ぐのは、仕方がない。
おもしろくないのだから・・・。
だったら・・・と思うけどさすがに・・・
校外学習は校長の許可がいると思うけど。
もともと朝市と違って花は教師になりたいと
思っていたわけではないのでその辺の
覚悟がない。
こんな先生でいいのかと思うけど、たえという少女
の作文は面白い。
きっと彼女は想像のツバサをもっているのだろうと
思う。
双子の河童の話である。
毎日どんなことがあったのか、河童の話を
聞きたくなる。
春・・・の設定の学校。
廊下も、校舎も
透明のガラス窓。
木製のガラス窓わく。
がたがたと、あける音。
そして、鳥の鳴き声が
よく聞こえる。
なんだか懐かしい設定である。
